NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第36回

金属のイオン化傾向

  • 化学基礎監修:東京学芸大学附属高等学校教諭 岩藤 英司
学習ポイント学習ポイント

金属のイオン化傾向

捨てる?捨てない?
  • 廃棄のもの
  • 捨てられない男?

ケンとローザが、研究所の実験器具などを整理しています。
ケンが「廃棄」に分別したものを捨てに行こうとしたところ、所長がそれを止めに入ります。

所長 「ちょっと待て、ちょっと待て!これは、かつて私が実験に使っていた道具じゃないか!どれもこれも、すべて大事なものだ!捨てるなんて、とんでもない!!」

ケン 「所長って、意外と“捨てられない男”だったんですね。」

所長 「人には、モノをすぐに捨てる人、捨てない人といった違いがあるように、金属にはすぐに電子を失うもの、なかなか電子を失わないものという違いがあるのだ。どうだ、なかなか興味深いだろう?」

2人 「……。」

所長 「今日は、そんな“金属のイオン化傾向”について、めくるめく化学の扉を開いてみようではないか!」

金属は酸化剤?還元剤?
  • 酸化剤と還元剤

所長 「まずは酸化還元反応についてなんだが、『酸化剤』と『還元剤』について、説明できるかな?」

ケン 「酸化還元反応において、相手の物質を酸化させて自身は還元される物質が『酸化剤』。逆に、相手の物質を還元させて自身は酸化される物質が、『還元剤』です。」

所長 「その通りだ。では、金属は酸化剤かな?それとも還元剤かな?」

金属を酸に溶かすと?
  • 塩酸に亜鉛を入れる
  • 水素を発生させて亜鉛が溶ける

塩酸・HClの入った試験管に、亜鉛・Znの板を入れる実験を見てみます。
塩酸に亜鉛の板を入れると、水素を発生しながら、亜鉛が溶けていきます。

化学反応式は、次のとおりです。

Zn + 2HCl → ZnCl + H

反応式から、亜鉛と塩酸が反応して、塩化亜鉛と水素ができたことがわかります。
では、このとき、亜鉛は酸化剤・還元剤のどちらでしょうか。

亜鉛は還元剤

亜鉛と塩酸の化学反応式を表した模型で、それぞれの原子やイオンの「酸化数」を考えてみます。

まずは、左辺についてです。
亜鉛・Znは単体の原子なので、酸化数は0です。
塩酸・HClは、水溶液中では塩化物イオン・Clと、水素イオン・Hに電離しています。
塩化物イオンはClなので酸化数は−1、水素イオンはHなので酸化数は+1です。

次に右辺についてです。
塩化亜鉛・ZnClは、水溶液中では塩化物イオン・Cl2個と、亜鉛イオン・Zn2+に電離しています。
先ほど見たとおり、塩化物イオンの酸化数は−1です。
また、亜鉛イオンはZn2+なので、酸化数は+2です。
そして、水素・Hは単体なので、酸化数は0です。

亜鉛の酸化数は、“0”から“+2”に増えたため、亜鉛原子は酸化されたことになります。
これは相手の物質、この場合、水素を還元させたことになります。
つまり、亜鉛は還元剤です。

すべての金属は、酸などに溶けるとき、電子を失って陽イオンになります。
つまり、酸化数が増えるので還元剤です。

ただし、金属によって電子の失いやすさ、すなわち陽イオンへのなりやすさには違いがあります。

陽イオンになりやすい金属決定戦!
  • 陽イオンになりやすい金属決定戦
  • 東京学芸大学附属高等学校のみなさん

ケンとローザは、5種類の金属について、陽イオンへのなりやすさにどのような違いがあるか調べることになりました。

調べる金属は、「銅・Cu」「鉄・Fe」「マグネシウム・Mg」「鉛・Pb」「亜鉛・Zn」です。
もっとも陽イオンになりやすい金属はどれなのでしょうか。

東京学芸大学附属高等学校のみなさんに協力していただき、2種類ずつの金属が対戦する形で、比較していきます。

  • 銅版と硝酸銅(II)水溶液
  • 亜鉛版と硝酸亜鉛水溶液

【銅 VS 亜鉛】
銅板を硝酸亜鉛水溶液・Zn(NOに、亜鉛板を硝酸銅(U)水溶液・Cu(NOに投入し、観察します。

  • 亜鉛版の表面が黒っぽく変色

すると、亜鉛板の表面が黒っぽく変色してきます。
これは、亜鉛板の表面に銅が付着しているためです。

  • 亜鉛が電子を失い亜鉛イオンとなって溶け出す
  • 析出

このとき硝酸銅(U)の水溶液の中では、亜鉛の単体が電子を失って陽イオンである亜鉛イオン・Zn2+になり、水溶液中に溶け出しました。
水溶液中の銅(U)イオン・Cu2+は、亜鉛から電子を受け取って銅の単体となり、亜鉛板の表面に付着します。

このような現象を、析出(せきしゅつ)といいます。

一方、硝酸亜鉛の水溶液の中では、電子のやり取りが起きませんでした。

このことから、銅より亜鉛の方が電子を失いやすい、つまり陽イオンになりやすい
ということがわかります。

この勝負に勝ったのは亜鉛でした。

  • マグネシウム板に鉛が析出
  • マグネシウムがもっとも陽イオンになりやすい

このような形で、5種類の金属が総当りで、全部で10試合の対戦を行いました。

その中で、マグネシウム 対 鉛のように、圧倒的な差がついた勝負もありました。
左写真で、マグネシウムの板の表面に付着しているのは、すべて析出した鉛です。

対戦の結果、マグネシウムが4勝0敗で、もっとも陽イオンになりやすい金属に決定しました。

陽イオンになりやすい順番は?
  • 左から陽イオンになりやすい

ローザ 「実験の結果、この5種類の金属の中では、マグネシウムがもっとも陽イオンになりやすく、銅がもっとも陽イオンになりにくいということがわかりました。」

所長 「そうだな。しかし、金属はこの5種類だけではないぞ。他の金属についても、陽イオンになりやすい順番がどうなっているのか、知りたくはないか?」

  • 岩藤 英司 先生(東京学芸大学附属高等学校 教諭)
  • 代表的な金属元素を書いたブロック

ここで、特別研究員の岩藤 英司 先生(東京学芸大学附属高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。
岩藤先生が持ってきたのは、リチウム・Li、カリウム・K、カルシウム・Ca、ナトリウム・Naという、代表的な金属元素を書いたブロックです。


岩藤先生 「これらを、陽イオンになりやすい順に並べるには、どうしたらいいと思いますか?」

ケン 「さっきやったように、それぞれの金属の板と硝酸塩溶液を使って、実験すればいいんじゃないですか?」

岩藤先生 「そう思いますよね。ところが、金属によっては空気中ですぐに反応が始まってしまうため、単体の金属として反応させることが難しいものもあるんですよ。また、金属イオンにとてもなりにくくて、イオンとして反応させることが難しい金属もあるんですね。だから、すべての金属で、さっきと同じような実験ができるわけじゃないんです。」

ローザ 「では、どうすればいいんですか?」

岩藤先生 「ひとつの方法として、2種類の金属の間で、電子がどう移動するかを測定するというものがあります。」

  • 針が亜鉛の方向に動く
  • Mgが失った電子が亜鉛に移動する

その実験を見てみました。

硝酸カリウム水溶液を染み込ませたろ紙の上に2種類の金属を置き、検流計で調べます。
まず、陽イオンになりやすい順番がわかっているマグネシウムと亜鉛で確かめてみました。

検流計の端子でそれぞれの金属に触れると、亜鉛の方向に針が振れました。
マグネシウムから失われた電子が亜鉛に移動するときに、針を押していると考えるとわかりやすいですね。

  • Mgの方が陽イオンになりやすい
  • Znの方が陽イオンになりやすい

ここに、まだ陽イオンになりやすい順番がわかっていないアルミニウムを加えます。
マグネシウムとアルミニウムでは、アルミニウムの方向に針が振れました。
これは、マグネシウムの方が陽イオンになりやすいということを示します。

亜鉛とアルミニウムでは、針が触れたのは、亜鉛の方向です。
亜鉛よりも、アルミニウムのほうが陽イオンになりやすいことがわかります。

左から陽イオンになりやすい順

いろいろな金属の組み合わせで この実験を行えば、陽イオンになりやすい順番を知ることができます。

陽イオンになりやすい順番は、

リチウム・Li
カリウム・K
カルシウム・Ca
ナトリウム・Na
マグネシウム・Mg
アルミニウム・Al
亜鉛・Zn
鉄・Fe
ニッケル・Ni
スズ・Sn
鉛・Pb
銅・Cu
水銀・Hg
銀・Ag
白金・Pt
金・Au

となります。
もっとも陽イオンになりにくいのは、金です。

イオン化列
  • H<sub>2</sub>?

所長 「例えるならば、モノをすぐに捨ててしまうローザはリチウム。ケンは真ん中あたりの鉄かなぁ……。で、私は金といったところだな。」

ローザ 「ちなみに、岩藤先生は、どの辺りですか?」

岩藤先生 「そうですね。私は鉛と銅の間辺りでしょうかね?」

ローザ 「岩藤先生は、けっこうモノを大切にするんですね。あれ?H……、水素ですか?水素は、金属元素じゃないですけど?」

岩藤先生 「そうなんですけど、水素は金属イオンと同じように陽イオンになりますし、基準になる元素なので、この表に加えているんですよ。」

この並びを「イオン化列」といい、金属の単体が水溶液中で陽イオンになろうとする性質を「イオン化傾向」といいます。
陽イオンになりやすい金属を「イオン化傾向が大きい」、なりにくい金属を「イオン化傾向が小さい」という言い方をします。

金属元素の性質

先ほど完成させた「イオン化列」を使って、金属元素の性質を整理します。

まず、「常温の空気中での反応」についてです。
●リチウム・カリウム・カルシウム・ナトリウムは、すみやかに酸化されます。
●マグネシウムから銅までは、酸化されて表面に酸化物の皮膜、つまり「さび」を生じます。
●そして、水銀・銀・白金・金は、酸化されません。

次に、「水との反応」についてです。
●リチウム・カリウム・カルシウム・ナトリウムは、常温で水と反応します。
●マグネシウムは熱水と反応します。
●アルミニウム・亜鉛・鉄は、高温の水蒸気と反応します。
●ニッケルよりもイオン化傾向が小さい金属は、水とは反応しません。

最後に、「酸との反応」についてです。
●水素よりイオン化傾向が大きい金属は、塩酸や希硫酸と反応して水素を発生します。
●銅・水銀・銀は、硝酸や熱濃硫酸に溶けます。
●白金と金は、王水には溶けます。


ケン 「このイオン化列を知っていれば、実験にとても役立ちますね。」

岩藤先生 「そうですね。特に、酸化還元反応を考える場合、イオン化傾向が大きい金属の方が、より強い還元剤ということになります。金属によって、陽イオンへのなりやすさに違いがあることを、しっかり把握しておきましょう。」

金属を析出させよう!
  • 銅線の樹
  • キラキラしたものが析出

最後に、イオン化傾向を利用した実験を行います。
銅線を曲げて作った木を、硝酸銀水溶液の入ったビーカーに入れてみます。
時間をおくと、キラキラとしたものが析出して、溶液の色も青みがかってきます。


岩藤先生 「銅と銀では、銅の方がイオン化傾向が大きい。つまり、陽イオンになりやすいんです。銅線の銅が電子を手放して銅(U)イオンになり、溶液中に溶け出したため、溶液が青くなりました。そして、溶液中の銀イオンは電子を受け取って銀の単体となり、銅線の表面に析出しました。」


このようにイオン化傾向が大きい金属を、イオン化傾向が小さい金属の溶液に浸すと、電子のやり取りが起きてイオン化傾向が小さい金属が析出します。

  • トタン
  • 次回もお楽しみに〜

イオン化傾向の違いは、実際に、いろいろなところで応用されています。
たとえば、建築などで使われているトタンがあります。
トタンは、鉄の板に亜鉛をメッキしたものです。
亜鉛が内部の鉄を守っており、傷がついた場合も亜鉛が先に溶けていくため、鉄が腐食するのを防ぎます。

また、電池の原理も、イオン化傾向と密接に関係しています。
電池については、次回詳しく学びます。


それでは、次回もお楽しみに〜!

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