NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第35回

酸化剤と還元剤

  • 化学基礎監修:神奈川大学附属中・高等学校教諭 小柳 めぐみ
学習ポイント学習ポイント

酸化剤と還元剤

  • テーブルクロスについた赤い染み
  • 酸化型、還元型の2種類の漂白剤

ローザが難しい顔をしてテーブルを見つめています。


ケン 「ローザおはよう。どうしたの?そんな恐い顔して。」

ローザ 「これ見て。テーブルクロスに赤い染みがついてる。誰?こんなことしたのは。」

ケン 「僕じゃないよ。僕だったら素直に謝ってるよ。そういうのは漂白剤で落ちるんじゃないかな。確かこのへんに……。あれ、2本ある。酸化型と還元型?」

ローザ 「これ、どうちがうの?」

ケン 「それは……。酸化するか、還元するか……?」

所長 「それは要するに、酸化剤と還元剤ということじゃないかな。」

ケン 「酸化剤と還元剤って何ですか?」

所長 「酸化還元反応の中には、物質を酸化する酸化剤と還元する還元剤が必ず関わっている。日常生活の中でもそんな化学反応は、さまざまな形で利用されているんだ。染み抜きにも役立つ!酸化剤と還元剤のケミカルパワーだ!」

酸化と還元
  • 酸化銅(U)と水素の化学反応式
  • 酸化剤と還元剤は電子の受け渡しでも考えられる

まずは、酸化と還元について復習してみましょう。
酸化銅(U)と水素の化学反応式は

CuO + H → Cu + H

と表せます。

水素は、酸化銅(U)から酸素を受け取って水・HOになりました。
つまり水素は酸化されたということです。

一方、酸化銅(U)・CuOは、酸素を失って銅原子になりました。
つまり酸化銅(U)は、還元されたということになります。

このとき酸化銅(U)が水素を酸化しますが、このように相手の物質を酸化して、自身は還元される物質を「酸化剤」といいます。

一方 水素は酸化銅(U)を還元しますが、このように相手の物質を還元し、自身は酸化される物質を「還元剤」といいます。

また、酸化還元反応は電子の受け渡しで考えることもできます。
還元剤は電子を失う物質で、酸化剤は電子を受け取る物質です。
このとき注意しなければならないのが、「酸化数」です。

酸化還元反応と酸化数
  • 酸化銅(U)と水素の化学反応式での酸化数
  • 酸化剤と還元剤のまとめ

所長 「酸化銅(U)の状態では銅原子の酸化数は+2だな。それが反応後は0になっている。酸化数が減るのは、電子を受け取ったということだ。」

ローザ 「電子を受け取ると酸化数が減るというのが、よく分からないんですけど。」

所長 「電子はマイナスの電荷を持っているから、電子を受け取ると酸化数が減ると覚えておくといい。」

ローザ 「なるほど。」

所長 「一方、水素原子は、最初は酸化数が0だったが、反応後は酸素と結びついて、酸化数が+1になっている。酸化数が増えるのは、電子を失ったということだ。」

ケン 「酸化数の増減が電子のやりとりを示しているんですね。」


酸化剤と還元剤について、まとめます。
酸化剤は、相手から電子を受け取ります。
そのとき、相手は酸化剤に電子を渡したので、酸化されていることになります。
このように、相手を酸化する物質を「酸化剤」といいます。

それによって酸化剤自身は還元されます。

一方、還元剤は電子を失います。
そのとき、電子を与えるので、相手を還元します。
このように、相手を還元する物質を「還元剤」といいます。

そのため還元剤自身は酸化されることになります。

硫酸酸性の過酸化水素水とヨウ化カリウム水溶液の反応
  • 小柳 めぐみ 先生(神奈川大学付属中・高等学校 教諭)
  • 過酸化水素水、ヨウ化カリウム水溶液

酸化還元反応を、特別研究員の小柳 めぐみ 先生(神奈川大学付属中・高等学校 教諭)に実験で解説していただきます。

硫酸を加えて酸性にした過酸化水素水と、ヨウ化カリウム水溶液を反応させる実験を行いました。

普通、過酸化水素水は、相手の物質から電子を受け取る酸化剤としてはたらきます。
ヨウ化カリウム水溶液と混ぜると、ヨウ化カリウムは過酸化水素に電子を与えて酸化されます。
ヨウ化カリウムが還元剤としてはたらくということです。

酸化剤である過酸化水素水と、還元剤であるヨウ化カリウム水溶液を反応させます。

  • 過酸化水素水とヨウ化カリウム水溶液を混ぜる
  • ヨウ素により褐色になった混合液

過酸化水素水と、ヨウ化カリウム水溶液を混ぜてみます。
すると、水溶液の色が徐々に黄色くなり、最終的に褐色(かっしょく)に変化しました。


小柳先生 「この褐色はヨウ素の色です。過酸化水素とヨウ化カリウムが反応して、単体のヨウ素が出てきたんです。」

ローザ 「混ぜる前はどちらも無色だったのに、不思議ですね。」

小柳先生 「そうですね。ではこの反応を、電子を含むイオン反応式で表してみましょう。」

  • 酸化剤、過酸化水素水のイオン反応式
  • 還元剤、ヨウ化カリウム(ヨウ化物イオン)の反応式

まずは、酸化剤としてはたらいた過酸化水素の反応です。
反応に関係したイオンと電子eだけで表すと、左図のようになります。

過酸化水素の中の酸化数−1が、反応後には−2になります。
酸化数が減っているので、過酸化水素自身は還元されたことになります。

次に、還元剤としてはたらいたヨウ化カリウムの電子を含むイオン反応式を見てみます(右図)。

ヨウ化カリウム水溶液に含まれていたヨウ化物イオンの酸化数−1が、反応後には0になっています。
酸化数が増えているので、ヨウ化物イオンは、電子を失って酸化されたということです。
水溶液の色が褐色になったのは、ヨウ化物イオンが酸化されてヨウ素になったためです。

硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液と過酸化水素水の反応
  • 過酸化水素水と過マンガン酸カリウム水溶液

次は、硫酸を加えて酸性にした過マンガン酸カリウム水溶液と、過酸化水素水の反応を実験で見てみます。
先ほどの実験では、過酸化水素は、相手の物質から電子を受け取る酸化剤としてはたらきました。
今度は、過マンガン酸カリウム水溶液が酸化剤として、過酸化水素は還元剤としてはたらきます。


ローザ 「過酸化水素は、酸化剤としてはたらくんじゃないんですか?」

所長 「過酸化水素は、過マンガン酸カリウムのような強い酸化剤に対しては還元剤としてはたらくんだよ。」

小柳先生 「そうなんです。では、反応させてみましょう。」

  • 硫酸酸性の過マンガン酸水溶液に過酸化水素水を混ぜる
  • 水溶液の色が無色に変化
  • 酸素の泡が出る

硫酸酸性の過マンガン酸水溶液に、過酸化水素水を加えます。
すると、すぐに水溶液の色が赤紫色から無色透明に変化しました。
さらに、気泡が出てきています。

  • 過マンガン酸カリウムのイオン反応式
  • 過マンガン酸カリウムと過酸化水素水のイオン反応式

この実験で何が起きたのか、電子を含むイオン反応式で見てみます(左図)。

過マンガン酸カリウムを水に溶かすと、カリウムイオン・Kと過マンガン酸イオン・MnOに分かれます。
このMnOが赤紫色をしています。
ここに、過酸化水素水を加えるとMnOは電子を受け取って酸化剤としてはたらき、マンガン(U)イオン・Mn2+になります。

このMn2+は、濃度が薄いときにはほとんど無色になります。
過酸化水素の方では電子を放出して還元剤としてはたらき、酸素・Oが発生します。
このときの、電子を含むイオン反応式は、次のように表すことができます。

 → O + 2H + 2e

この実験で発生した気泡は酸素だったいうことです。

全体では、右図のような化学反応式で表すことができます。
過マンガン酸イオン・MnOが酸化剤として、そして過酸化水素・Hが還元剤としてはたらいたことが分かります。

酸化剤の利用
  • 化学的酸素要求量 COD

化学的酸素要求量 COD(ケミカル・オキシゲン・ディマンド)による、湖や海などの水質検査では、過マンガン酸カリウムが利用されています。

検査では、水質汚染の原因になる有機物を計測しますが、酸化して分解するのに必要な酸素の量を酸化剤の量に置き換えて計測します。
酸化剤は、環境を守るための指標としても利用されています。

ジーンズと還元剤
  • デニム生地
  • インディゴ

酸化剤だけでなく、還元剤も身の回りのいろいろな所で役立っています。

たとえば、ジーンズの青い色を出すのにも還元剤が利用されています。
ローザは、広島県三次市にあるジーンズの生地を専門に作っている工場を訪ねました。

ここでは、糸作りから糸の染色、そして糸を織り上げて生地として出荷するまでの作業を行っています。
左写真は、ジーンズの生地「デニム」です。

デニムの鮮やかな青は、白い糸を「インディゴ」という染料で染めたものです。
インディゴは、染色や印刷などに古くから利用されてきた染料です。
もともとは植物から採取されていましたが、現在では人工的に作られることが多くなりました。

  • 黄緑色に染まった糸
  • 徐々に青く染まる糸

工場の中で、白い糸がインディゴの入った染色液につけられていきます。
すると糸は黄緑色に染まります。しかしその色は、次第に青く変わっていきます。
このとき、いったい何が起こっているのでしょうか。

  • 染まったように見えるが…
  • 水で洗うと色が落ちてしまう

商品開発課の前原 章浩さんに、糸の染色の過程についてうかがいました。

インディゴを入れたお湯に白い糸をつけてみると、うっすら青く染まったように見えます。
しかし、水で洗うと色は落ちてしまいます。
これは、インディゴが繊維に定着していないためです。

  • ハイドロサルファイト

そこで、色の定着のために還元剤を加えます。
使用されるハイドロサルファイトナトリウムは、漂白剤としても使われる強力な還元剤です。

  • 染料液にハイドロサルファイトナトリウムを加える
  • ハイドロサルファイトナトリウムを加え、10分後の液

水酸化ナトリウムを加えて水溶液を塩基性にし、還元剤としてはたらきやすいようにしてからハイドロサルファイトナトリウムを加えます。
10分後、色が黄緑色に変わりました。
このときインディゴは構造が変化し、水に溶けやすく繊維に染み込みやすい性質に変わっています。

  • 黄緑色になった溶液に糸を浸す
  • 青色に染まった糸

黄緑色に変化した溶液に糸を浸すと、糸が染まりました。
そしてしばらくすると、糸の色が青色へと変化しました。

空気に触れて酸化されることにより、インディゴは色が青く変わります。
実はこのとき、インディゴの構造が再び変化し、繊維に定着しやすい形になっているといいます。

  • 同じインディゴでもいろんなバリエーションができる

ローザ 「染色の魅力って何ですか?」

前原さん 「染色を何度も繰り返して、ねらった色に仕上げていくのが、腕の見せどころなんです。淡色、中色、濃色。赤み、青み、黒み。同じようでも、いろんなバリエーションが染め方によってできるんです。」

  • 加工前のジーンズとダメージ加工後のジーンズ
  • ヤスリでジーンズの表面を削る

こうして綺麗なブルーに染められたジーンズですが、その色をわざわざ脱色して履き古したようにみせる製品も、最近人気があります。
ダメージ加工と呼ばれるものです。

そのダメージ加工でも、還元剤が使われているといいます。
ローザが次に訪れたのは、神奈川県平塚市にあるジーンズのダメージ加工の工場です。

この工場には、縫製を終えたジーンズが日本各地から運ばれてきます。
ここではなんと、ヤスリでジーンズを削っています。
糸が切れてしまわないように注意しながら表面だけを削っていきます(右写真)。

  • 軽石を使ったストーンウォッシュ
  • 薬品を使ったケミカルウォッシュ

軽石を使って生地にダメージを与えるのが、ストーンウォッシュです。
石と一緒にジーンズを水に浸し回転させながら、生地に傷をつけます。

そして薬品を使って脱色するのがケミカルウォッシュです。
ここでまた、還元剤が活躍します。

  • インディゴの構造変化前
  • インディゴの構造変化後

ここでは、還元剤を塩基性の薬品と一緒に使います。
染色したときと同じように、還元剤によってインディゴの構造を変化させ、水に溶けやすくして脱色します。

  • ケミカルウォッシュでの脱色直後
  • 乾燥させたジーンズ

左写真は、ジーンズの脱色が終了したところです。
薬品を洗い流して、乾かせば完成です。
ジーンズのダメージ加工について、企画開発の大室 翔平さんに話をうかがいました。


大室さん 「本物のビンテージジーンズだと、高価だったりしますし、手軽に楽しめるのがこういったものだと思います。」

ローザ 「ダメージ加工の面白さって、何ですか?」

大室さん 「還元剤で何を使うか、どれくらいの時間、その液にさらすかで仕上がりが全然違ってくるので、それが魅力だと思います。」

ローザ 「面白かったです。ありがとうございました。」

  • 赤ワインには酸化型の漂白剤
  • 次回もお楽しみに〜

ローザ 「酸化剤、還元剤って、実験室の中だけのものじゃなくて実際に役立っているということがよく分かりました。」

所長 「そうだ。酸化還元反応はいろいろな所で利用されているんだ。そう言えば、テーブルクロスの染みも……。」

小柳先生 「これは赤ワインの染みのようですね。酸化型の漂白剤がいいんじゃないですか。地の色が落ちないように、塩素系ではなくて酸素系の漂白剤を少しずつ使ってみたらどうでしょう。」

ケン 「でも、赤ワインなんて誰が……。」

所長 「私じゃないですよ!私は白ワインしか飲みませんから!」

ケン 「赤ワインが好きなのは……。」

ローザ 「あ、そう言えば私、昨日ここで飲んでいたとき……。いやー、意外な犯人でしたね!」

みんな 「ローザ!」

ローザ 「ごめんなさい……。」

  • 酸化型の漂白剤で赤ワインがよく落ちる

ローザが、酸化型の漂白剤で、テーブルクロスについた赤ワインの染みを落としています。


ローザ 「あー、すごい!どんどん薄くなってきてる!酸化剤の威力ってすごいね。」

ケン 「本当だね。染みから電子を奪って酸化させたんだね。」

ローザ 「電子は見えないけどね。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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