NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第33回

酸化・還元

  • 化学基礎監修:東京都立府中高等学校教諭 貝谷 康治
学習ポイント学習ポイント

酸化・還元

身近な酸化・還元
  • 機械のつまみを回そうとするケン
  • 酸化して茶色くなったリンゴ

ケンが、機械のつまみを回そうとしていますが、しばらく使用していなかったため、なかなか回りません。
ローザも挑戦してみますが、つまみを回すことはできませんでした。


所長 「つまみが回らないのは、金属部品がさびているからだろう。」

ケン 「あ〜、やっぱり。」

所長 「鉄は湿った空気に触れていると酸化されてさびてくる。

ローザ 「さびって酸化なんですね。」

所長 「そう!物質が酸素と結びつく変化を『酸化』そして、逆に酸素を失う変化を『還元』、両方合わせて『酸化還元反応』というんだ。実は、物質が『燃焼』したり、金属が溶けてイオンになる化学反応も『酸化還元反応』なんだ。あっ、そうそう!ローザがむいたリンゴもそろそろ酸化しているんじゃないか。」

ローザ 「えっ!どういうことですか?うわっ、茶色くなってる!どうして?」

所長 「切ったリンゴの色が変わったのは、リンゴに含まれているポリフェノールという物質が空気中の酸素に触れて酸化されたからなんだ。」

ローザ 「え〜、リンゴまで酸化しちゃうなんて。」

所長 「我々の身の回りではいろんな酸化還元反応が起こっている。今日はそんな酸化・還元反応の謎に迫ってみよう。」

酸素のやりとり
  • 酸化とは
  • 還元とは

酸化とは、物質が酸素と化合することをいいます。
「酸素と化合する」ので酸化です。

一方、還元は酸化の反対です。
酸素との化合物、つまり酸化物が酸素を失って元に還る反応のことを、還元といいます。
「元に還る」ので還元です。

このように、酸化・還元とは酸素をやり取りする反応のことをいいます。


ローザ 「酸素をやり取りするってどういうことですか?」

所長 「では、実際に酸素と化合したり酸素を失ったりする反応を見てみよう。」

銅線を熱すると?
  • 銅線
  • 銅線をガスバーナーで加熱する
  • 加熱前、加熱後の銅線

用意したのは銅線です。
この銅線をガスバーナーで熱します。
すると銅線の色が黒くなりました。


所長 「さて、熱した銅線はどうして黒くなったのか、分かるかな?」

ケン 「それは、熱で焦げて炭がついたからじゃないですか?」

所長 「間違いです。化学的に言うと、銅が空気中の酸素と結びついて黒みがかった酸化銅(II)という物質に変わったんだ。つまり、銅が空気中の酸素と化合して酸化されたということなんだ。」

  • 銅の酸化の化学反応式

先ほどの実験を化学反応式で表すと

2Cu + O → 2CuO

と表すことができます。

これは、銅が酸化されて、酸化銅(II)になったということです。
このように、ある物質が酸素と化合した時に、その物質は「酸化された」といい、その反応を酸化といいます。
では次に、酸素を失う「還元」を実験で見てみます。

酸化銅(II)を水素の中に入れると?
  • 酸化銅(II)
  • 水素の入った試験管

銅が酸素と結びついてできた酸化銅(II)が用意されています。
試験管の中には水素ガスが入っています。

  • 水素の中に酸化銅を入れる
  • 酸化銅の還元の化学反応式

この試験管の中に、熱して黒くなった酸化銅(U)をまだ熱いうちに入れると、試験管が一瞬曇り、元の銅の赤い色に戻りました。
そして、試験管の中には水滴がついています。

この実験を化学反応式で表すと

CuO + H → Cu + H

と表せます。
酸化銅(II)が水素と反応して、銅と水が出来たということです。

『還元』とは、『酸化されたものが、元に還る』つまり、酸素を失うことをいいます。
ここで、酸素を失ったのは、酸化銅(II)です。

酸化銅(II)と水素を反応させると、酸化銅(II)は酸素を失って銅に戻りました。
つまり酸化銅(U)が還元されたということです。


所長 「この時、試験管の中が一瞬曇ったが、これは水素・Hが酸素と化合して水・HOになったからなんだ。つまり、水素は酸化されて水になったんだ。酸化銅(U)が『還元」』されて銅になるのと同時に、水素は『酸化』されて水になった。このように酸化と還元は同時に起こるので、まとめて『酸化還元反応』というんだ。」

ローザ 「酸化と還元はコンビみたいなものなんですね!」

所長 「まあ、そんなところだな。ところで、最初にものが燃える『燃焼』も酸化還元反応といったが、一般に空気中でものが燃える時には酸素の受け渡しがあるんだ!」

ケン 「酸素がないと、ものは燃えませんからね。」

所長 「そうなんだが、酸素にもいろいろな形があるんだ。」

ローザ 「えっ、どういうことですか?」

  • 貝谷 康治 先生(東京都立府中高等学校・教諭)

ここで、特別研究員の貝谷 康治 先生(東京都立府中高等学校 教諭)に解説していただきます。


ローザ 「貝谷先生、酸素がないと、ものは燃えませんよね。」

貝谷先生 「普通そう思いますよね。本当にそうなのか、実験で確かめてみましょう。」

COの中で物は燃える?
  • 二酸化炭素を入れた集気瓶
  • ロウソクの火は集気瓶の中で消える

集気瓶の中に二酸化炭を十分に入れます。
そして、火のついたロウソクをその中に入れます。
すると、ロウソクの火は消えてしまいました。


ケン 「あっ、消えた。」

ローザ 「ほら!やっぱり酸素がないと火は燃えないんですよ!」

貝谷先生 「確かにロウソクの炎は二酸化炭素がつまった集気瓶の中で消えました。」

  • マグネシウム

今度は、マグネシウムで実験してみます。
マグネシウムは軽い金属で、よく合金の材料などに使われています。

  • 空気中で激しく燃焼するマグネシウム
  • 集気瓶の中でも燃焼し続けるマグネシウム

まず、空気中でマグネシウムに火をつけると、激しく燃焼します。

次に、燃えているマグネシウムを二酸化炭素が入った集気瓶の中に入れてみます。
すると、マグネシウムは、二酸化炭素の中でも燃焼し続けました。

  • 集気瓶に付着した炭素
  • マグネシウムの燃焼の化学反応式

燃えた後には黒い固まりが出来ました。

空気中で燃焼したマグネシウムを二酸化炭素で満たされた集気瓶に入れると、二酸化炭素の中でも燃え続けました。
酸素・Oがないにもかかわらず、どのように燃焼したのでしょうか。

この時の反応を化学反応式で表すと、

2Mg + CO → 2MgO + C

となります。


貝谷先生 「マグネシウムを二酸化炭素と反応させると、酸化マグネシウムと炭素が出来ます。この反応では何が酸化されてどのような物質に変わりましたか?」

ケン 「これも、マグネシウムが酸化されて、酸化マグネシウムが出来たっていうことですか?」

貝谷先生 「そうですね!マグネシウムが酸化されて、酸化マグネシウムが出来ました。そして、それと同時に二酸化炭素・COが還元されて、黒い塊の炭素・Cになりました。酸化と還元が同時に起こっていますね。集気瓶の中では、酸素・Oがなくても燃焼しました。マグネシウムはどのようにして酸化マグネシウム・MgOに変化したのでしょうか?」

ローザ 「もしかして、この二酸化炭素・COの中の酸素を使ったってことですか?」

貝谷先生 「はい、厳密に言うと、マグネシウムは二酸化炭素・COからこの酸素・Oを奪って反応できたので、二酸化炭素の中でも燃えたんです。」

ローザ 「マグネシウムってすごいんですね!」

  • 炭素
  • 炭素で字を書いてみた

貝谷先生 「ところで、燃焼後に残った黒い塊がこれ。還元によってできた炭素の粒なんです。」

ケン 「炭素の粒って、鉛筆の芯と同じってことですか?」

貝谷先生 「そうですね、なにか紙に書いてみてください。」

ケン 「書けた!鉛筆の芯と同じだ!二酸化炭素からできた炭素なんですね!」

水素のやりとり
  • 硫黄

所長 「ところで、ここまでは酸素のやり取りの酸化還元反応を見てきたが、酸化還元反応は酸素のやり取りだけではないんだ!」

ケン 「えっ、どういうことですか?」

貝谷先生 「実は、酸化還元を水素のやり取りで考えることもできるんです。分かりやすい例で見ていきましょう。この黄色いものは、なんだと思いますか?」

ローザ 「これ、この前に温泉に行った時に見たことがあります。これは硫黄ですか?水素のやり取りによる酸化還元って、温泉と何か関係があるんですか?」

貝谷先生 「はい。温泉のお湯の中ではいろいろな化学反応が起こっていて、場所によっては水素のやり取りによる酸化還元が行なわれているんです。硫化水素が酸素と反応して、この硫黄が出来たのもそのうちの1つなんですよ。では、硫化水素と酸素の反応を、化学反応式で見てみましょう。」

  • 硫化水素と酸素の化学反応式
  • 酸素と水素それぞれの酸化還元

硫化水素・HSの水溶液に酸素・Oを吹き込むと、硫黄・Sが生じて水が出来ます。
今まで学んだ酸素とのやり取りで考えると、硫化水素・HSは酸素と反応したので、硫化水素・HSは酸化されて硫黄・Sになったといえます。(左図)


ケン 「えっ!でも硫黄には酸素は受け渡されていませんよね!」

貝谷先生 「そうなんですが、酸化還元反応は水素のやりとりで考えることもできるんです。」

ケン 「水素のやり取りで考えるってどういうことですか?」

貝谷先生 「硫化水素・HSは水素を失って硫黄になりました。このように水素を含む物質が水素を失った時も、その物質は『酸化された』というんです。では、その水素をもらった物質はどれですか?」

ケン 「酸素・Oが水素をもらって水・HOになりました。」

貝谷先生 「そうですね!このように、ある物質が水素と化合した時、その物質は、『還元された』といいます。」

ローザ 「え〜、酸化還元って、酸素のやり取りで考えたり、水素のやり取りで考えたり、ややこしいですね!」


酸素と水素の役割を、まとめて考えてみます。(右図)
酸素との反応でいう酸化還元反応は、『酸化』は酸素を得る、『還元』は酸素を失うということです。
水素との反応でいう酸化還元反応は、『酸化』は水素を失う、『還元』は水素を得るということです。


このように酸素と水素の役割は全く逆になります。

いろいろな酸化・還元
  • カイロを持った所長

所長 「ところで酸化還元反応には『穏やかな酸化還元』と、『激しい酸化還元』があるんだ。」

ローザ 「私の自転車、結構さびてるから激しい酸化還元かな?」

所長 「それは、ちょっと違うんだなあ。金属のさびは、普通は時間をかけてゆっくり進むものなので『穏やかな酸化還元反応』なんだ。一方、物が光や熱を発生させながら燃える『燃焼』などは『激しい酸化還元』といえるんだ。」


このように、金属がさびるのも、ものが燃えるのも同じ酸化還元反応です。
そのため、鉄を急速にさびさせることができれば、燃焼と同じように、熱を発生させることも可能になります。
この鉄の酸化を応用して、暖をとれるようにした身近な商品がカイロです。

カイロが暖かくなるのも、酸化還元反応です。

カイロのしくみ
  • 医薬品メーカー研究部土屋 顕晴さん
  • カイロの中身

ローザは東京都にある医薬品メーカーを訪ね、研究部の土屋 顕晴さんにカイロのしくみについてうかがいました。


ローザ 「使い捨てカイロって、鉄の酸化還元とどんな関係があるんですか?」

土屋さん 「はい。使い捨てカイロが発熱する仕組みは、鉄を濡れたまま放置しておくと、空気中の酸素と反応してさびが出る酸化還元反応と同じなんです。ここにあるのがカイロの材料です。」

ローザ 「えっ!?これがカイロの中に入っているんですか?」


並んでいるのは、鉄粉・水・塩・バーミキュライト・活性炭です。

  • 鉄粉
  • バーミキュライト

カイロに入っているのは鉄粉、そして鉄粉の酸化を早めるはたらきがある水と塩です。
水は、保水性の高いバーミキュライトという物質の中に含まれています。
同様に、活性炭は空気を取り込んで酸素を供給する働きがあります。

  • カイロの袋の構造
  • 空気の通りを調節

カイロ本体を包んでいる袋は、布とフィルムの二重構造になっています。
外側の布は空気をよく通しますが、内側のフィルムは空気を通しません。
そこで、フィルムには目に見えないほど小さな穴を開けています。

空気が一気に入ってしまうと熱くなり過ぎ、空気が少な過ぎると暖かくならないため、ちょうどいい量になるようにコントロールしています。

  • カイロに入っている鉄粉は0.1mm
  • 3種類の鉄粉の粒の温度

そして、反応する酸素の量をコントロールするために重要なのが、鉄粉の粒の大きさです。
このカイロでは直径を約0.1mmに調整してあります。

粒がより大きい場合と比べてみます。
3つのビーカーには、大きさの違う鉄粉が入っています。(右写真)
左から、直径0.1mm、0.3mm、1mmです。
はじめの温度は、3つとも26℃です。
ここに、塩と水を入れて酸化反応を起こしてみます。

  • 10分後の鉄粉の温度

塩と水を入れたそれぞれのビーカーでは、鉄粉の温度が上昇していきます。
10分後、再び温度を測ってみました。

直径1mmの鉄粉は、26.4℃と、ほとんど温度が上がっていません。
0.3mmのものは、49.8℃で、0.1mmのものは、60.8℃まで温度が上がりました。

なぜ、粒が小さい鉄粉のほうが温度が上がったのでしょうか。

  • 同じ重さの鉄粉
  • 粒が小さいほど表面積は大きい

鉄粉は重さが同じであれば、小さい粒に分かれれば分かれるほど酸素に触れる表面積が大きくなります。
そのため、酸化反応も進んで多くの熱を出します。


ローザ 「カイロの酸化反応って、鉄粉に触れる酸素の量が重要なんですね!」

土屋さん 「そうなんです。やはり酸素が多いほど酸化反応も大きく熱もたくさん発生するのですが、その分、酸化による熱の持続時間は短くなってしまうんです。カイロは程よい暖かさを長時間持続させるために、さまざまな工夫で酸化還元反応をコントロールしています。」

  • 次回もお楽しみに〜

所長 「今日はいろんな酸化還元反応を見てきたが、どうだったかな?」

ケン 「僕は、酸化還元反応が酸素だけでなく、水素のやりとりでも成り立つということが意外でした。」

ローザ 「私は、鉄のさびとカイロが同じ酸化還元反応ってことに驚きました!」

所長 「酸化還元については、この先もいろんなことを学んでいくので、しっかり覚えておくように!」

むいたリンゴが変色しない方法
  • リンゴにレモン果汁を絞る
  • ローザがむいたリンゴ

ローザ 「リンゴにレモン果汁を絞ると、レモンに含まれているビタミンCが、リンゴのポリフェノールの酸化を防いでくれるんですよ。」

それでは、次回もお楽しみに〜!

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