NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第32回

中和滴定

  • 化学基礎監修:東京都立小川高等学校教諭 永島 裕
学習ポイント学習ポイント

中和滴定

  • ミカンを食べるケンとローザ
  • 中和滴定

ケンとローザがミカンを食べています。


ケン 「ミカンの味って、ものによって結構違うよね。」

ローザ 「そうなの。でも、ミカンジュースの味は、同じ製品ならだいたいいつも同じ味だよね。あれってどうやって調整してるんだろう。」

ケン 「それが品質管理ってやつでしょ。」

ローザ 「だから、どうやってやるの?」

所長 「品質管理が重要なのは、ジュースだけではない。このワインだって同じだ。ワインの味を左右するものの中で重要なものの一つは酸味なんだ。」

ローザ 「酸味ですか。」

所長 「ワインだけではないぞ。たとえば、味噌、しょう油、日本酒など多くの発酵食品で、酸味をコントロールすることが、極めて重要なんだ。」

ケン 「でもどうやって、その酸味を調べるんですか?」

ローザ 「あ、酸と塩基の関係ですね。」

ケン 「そうか!酸と塩基の量的関係を使えば、酸の濃度が調べられるってことですか。」

ローザ 「実験室の中だけじゃなくて、製品を作るのにも使われているんですか。」

所長 「もちろんだ。キーワードは、酸と塩基の中和反応を利用した “中和滴定” だ。」

中和滴定とは?
  • 中和するとき
  • 水溶液の体積から濃度計算

中和滴定とは、中和反応を利用して酸や塩基の濃度を調べることです。

前回、「中和反応の量的関係」を学びました。
酸と塩基がちょうど中和するのは、酸から生じる水素イオンの物質量と塩基から生じる水酸化物イオンの物質量が同じときでした。

式で表すと、

の物質量=酸の価数×濃度×体積=a×c×v
OHの物質量=塩基の価数×濃度×体積=b×c’×v’

から、

a×c×v=b×c’×v’

のようになり、両辺が等しくなれば、ちょうど中和します。
この関係式を利用すると、濃度が分からない酸、または塩基の水溶液の濃度を求めることができます。
そして、この操作のことを「中和滴定」といいます。



ローザ 「濃度が分かっている酸、または塩基と中和させてみればいいんですね。」

所長 「そういうことだ。たとえば、濃度が分からない塩酸と濃度が正確に分かっている水酸化ナトリウム水溶液を反応させて、中和反応に要する2つの水溶液の体積を正確に測定すれば、濃度を計算で求めることができるんだ。」

  • 濃度の分からない塩酸の濃度を求める
  • 計算式に数値を当てはめる

濃度の分からない塩酸の濃度を求めてみます。
体積が10.0mLの塩酸を、濃度0.104mol/Lの水酸化ナトリウムで中和するとします。

計算式に数値を当てはめてみます。

塩酸の場合、
価数a=1
濃度c=x
体積v=10.0

水酸化ナトリウム水溶液では、
価数b=1
濃度c’=0.104

から、

1×x×10.0=1×0.104×v’

となります。

すると、この時点で分からないのは塩酸の濃度 x と、水酸化ナトリウム水溶液の体積 v’ です。
つまり、ちょうど中和したときの水酸化ナトリウムの体積 v’ が分かれば、塩酸の濃度 x が分かるということです。

これを実験で調べてみます。

ビュレットの使い方
  • 永島裕先生(東京都立小川高等学校教諭)
  • ビュレット

ここで、特別研究員の永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)に、中和滴定のやり方を解説していただきました。

10.0mLの塩酸と、ちょうど中和する水酸化ナトリウム水溶液の体積 v’ を中和滴定で調べます。

中和滴定をするときには、特別な器具を使います。
たとえば、ビュレットは滴下した液体の体積を正確に量る器具で、長いガラスでできています。

  • 下にはコックがついている
  • ビュレットの上の部分には目盛りがある

下の方にはコックがついていて、滴下する液体の量をコントロールできるようになっています。
また、上の方には細かい目盛りがついており、滴下する前後の目盛りの差で滴下した液体の量を求めます。

また、ビュレットを使う前には、「共洗い」という大切な作業があります。
器具の内部が水で濡れた状態で使用すると、中に入れた溶液が薄まってしまいます。
そこで、実験に使用する溶液で、内側を数回洗ってから使用します。
今回の場合だと、水酸化ナトリウム水溶液です。
同じ溶液で洗うことから、「共洗い」といいます。

洗い終わったビュレットに、濃度0.104mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を入れていきます。
溶液を入れた後、勢いよくコックを開きます。
これは、先端に残っている空気を押し出すためです。

塩酸10.0mLを量り取る
  • ホールピペット
  • 標線がある

次に塩酸の準備をします。
濃度の分からない塩酸を、ホールピペットで10.0mL量り取ります。
ホールピペットは、ある体積の液体を正確に量り取る器具で、「標線」と呼ばれる線が引いてあります。
この線まで塩酸を吸い上げると、体積がちょうど10.0mLになります。
ホールピペットも、先ほどのビュレットと同様に、使用する前には必ず共洗いします。

  • 少量の液体が残ってしまうことがある

ホールピペットの先端に少量の液体が残ってしまうことがよくあります。
これも全て出し切らないと、誤差が出る原因になります。

  • 中央のふくらんだ部分
  • 手で包んで温める
  • 最後の一滴まで出せた

そこで、ホールピペットの中央のふくらんだ部分を手で包んで温めるようにすると内部の空気が膨張して最後の一滴まで出しきることができます。

フェノールフタレイン溶液を加える
  • フェノールフタレイン溶液を数滴加える
  • コニカルビーカーをセット

量り取った塩酸に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加えます。
フェノールフタレイン溶液を加えると、水溶液が塩基性になれば赤く変化するはずです。
中和滴定では中和させることが目的のため、色が変わるか変わらないか、ぎりぎりのところで止めることを目指します。

ビュレットの下に、塩酸とフェノールフタレイン溶液の入ったコニカルビーカーをセットします。
これで中和滴定の準備は完了です。

  • 水酸化ナトリウム水溶液を加えていく
  • かき混ぜると色はすぐに消える

さっそく、濃度の分からない塩酸10.0mLを中和するための水酸化ナトリウム水溶液の体積を量っていきます。

はじめに、ビュレットに入っている水酸化ナトリウム水溶液の目盛りを確認しておきます。
目盛りは上からふってあり、最小目盛りの10分の1まで目測で読み取ります。
滴下する前の水酸化ナトリウム水溶液の体積は、6.61mLです。

ここから、ビュレットのコックを開けて、水酸化ナトリウム水溶液を加えていきます。
加えた瞬間、塩酸の溶液が赤くなりますが、コニカルビーカーを揺すってかき混ぜると色はすぐに消えてしまいます。
このとき、全体はまだ酸性の状態です。
色が消えるまでに時間がかかるようになったら、1滴ずつ慎重に加えていきます。

  • 赤い色が残ったら中和した
  • 3回実験して平均値を出す

滴下を続け、赤い色が残るようになったら、実験ではここを中和点とします。

このときの、ビュレットの目盛は16.57mLです。
実験を始める前の目盛りは6.61mLでした。

中和に必要とした水酸化ナトリウム水溶液の体積は、引き算で求められ、9.96mLとなります。

測定の誤差を小さくするために、3回実験を行って平均値を求めると、9.96mLでした。

  • 塩酸の濃度は?

この結果を、「中和反応の量的関係の式」に当てはめてみます。
水酸化ナトリウム水溶液について、体積 v’ は測定の結果9.96mLとなります。

式は、

a×c×v=b×c’×v’
1×x×10.0=1×0.104×v’
10.0x=1×0.104×9.96
x=0.104

と計算でき、塩酸の濃度は、0.104mol/Lになります。

このように中和滴定をすることで、濃度の分からない塩酸の濃度も調べることができます。

滴定曲線
  • 滴定曲線とpHジャンプ
  • 強酸+強塩基の滴定曲線

中和滴定では、最後は水酸化ナトリウム水溶液を1滴ずつ慎重に落とす必要があります。
中和点付近では、ほんの少しの量でもpHの値が大きく変化するためです。


ローザ 「それって、どんな酸と塩基の組み合わせでも同じような変化なんですか?」

所長 「いや、変化のしかたは酸と塩基の組み合わせによって変わってくるんだ。」


中和滴定を行うと、コニカルビーカーの中の水溶液のpHが変化していきます。
その変化を記録したものが、滴定曲線です。

中和点付近でpHが急に変化する部分を、pHジャンプといいます。

曲線の形は、酸と塩基の組み合わせによって少し違います。

「強酸」の塩酸と「強塩基」の水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定するときは、中和点のpHはおよそ7で、その前後でpHが急激に変化します(右図)。

  • 弱酸+強塩基の滴定曲線
  • 強酸+弱塩基の滴定曲線

「弱酸」の酢酸を「強塩基」の水酸化ナトリウムで中和滴定するときは、中和点におけるpHが塩基性側に偏り、中和点付近のpHの変化の幅はやや狭くなります(左図)。

「弱塩基」のアンモニア水を「強酸」の塩酸で中和滴定するときは、中和点におけるpHは酸性側に偏り、やはり中和点付近のpHの変化の幅はやや狭くなります(右図)。

指示薬の選択
  • 強酸+強塩基の指示薬

そこで、中和滴定によって中和点を知るには、指示薬はどのようなものを選ぶ必要があるか考えてみます。
酸と塩基の組み合わせで、滴定曲線の形が変わるため、指示薬を使い分ける必要があります。

「強酸」を「強塩基」で中和滴定するときには、中和点のpH7付近でpHジャンプが起き、pHの変化が大きくなります。
この場合、フェノールフタレインとメチルオレンジのどちらを使っても、中和点を知ることができます。

  • 弱酸+強塩基の指示薬
  • 強酸+弱塩基の指示薬

「弱酸」と「強塩基」の場合は、pHの大きく変化する範囲が、塩基性側に偏っています。
そのため、指示薬には塩基性側に変色域があるフェノールフタレインを使う必要があります。
弱塩基と強酸の場合はpHの大きく変化する範囲が、酸性側に偏っています。
そのため、指示薬には酸性側に変色域があるメチルオレンジを使う必要があります。

このように、中和滴定をするときには、中和する酸と塩基の組み合わせに応じて指示薬も使い分ける必要があります。


ケン 「ところで、この中和滴定、実際にはどんなところで使われているんですか?」

所長 「私たちの暮らしに欠かせない食品関係に多いんです。」

ローザ 「あ、そうか。ジュースとかワインとか。」

ケン 「発酵食品でも重要なんでしたよね。」

お酢の工場でも中和滴定
  • 木の桶がたくさん並ぶ
  • 表面は酢酸菌の膜

ケンは、千葉県鎌ヶ谷市にある「お酢」の醸造会社を訪ねました。
この会社では、100年以上続く昔ながらのやり方で酢を作っています。
研究開発部の伊藤史郎さんに案内していただきました。

杉の木でできた桶の中には、酒粕からとったアルコールが入っています。
これを2か月から3か月かけて、ゆっくりと発酵させ、酢を作ります。
すると、木の香りが酢に移り、まろやかな味に仕上がるといいます。

桶の中を見せていただきました。


ケン 「表面に膜みたいなものがありますが、これは何ですか?」

伊藤さん 「これは、酢酸菌の集合体です。酢酸菌は、我々人間と同じで空気を好んで増殖するものなので、この液体の表面だけでしか増殖することができないんです。」

  • 温度を約40度で保つ
  • 微妙な開け具合

品質の良い酢を作るためには、生き物である酢酸菌を上手に育てなければなりません。
酢酸菌は発酵すると、熱を発します。
そのため、桶の中が暑くなりすぎたり冷たくなりすぎたりしないように、温度を約40度に保ちます。

空気の管理は、さらに微妙です。
桶のふたを閉めっぱなしにすると、中の酸素が不足します。
しかし、大きく開けると中の温度が下がってしまいます。
酢酸菌の状態を見ながら、ふたの開け方を微妙に調整します。

  • 中和滴定をする堂前さん
  • ちょうど中和した

このお酢の工場でも、品質管理に役立っているのが中和滴定です。
研究開発部の堂前清香さんが調べているのは、まもなく発酵を終わらせようとしているお酢です。
酢酸の濃度を調べ、お酢の発酵の状態を知るために中和滴定を行っています。


堂前さん 「ピンク色に変わったときが……。」

ケン 「あっ、色が変わってきましたね。」

堂前さん 「お酢の発酵を、酢酸菌発酵を見るだけの管理ではなく、数値でも管理することで、正常な発酵ができているかということを調べています。」


このように、伝統的なお酢の工場でも、中和滴定を使って品質管理をしていました。

  • 次回もお楽しみに〜

ローザ 「ここで作られたお酢は、どんなところで使われてるの?」

ケン 「日本料理の高級料亭や、あとはお寿司屋さんなどで使われているんだって。」

ローザ 「所長。たまにはそんなお酢が使われているお店に連れていってくださいよ。」

ケン 「それも化学の勉強ですよね。」

所長 「まずは職人さんの技術や勘に頼っていた昔ながらの方法が、化学的にはどういうものなのか。それから中和滴定という方法の意味づけについて、もう少し実験で調べてみなくてはな。料理を食べるのは、それからにしよう。」

2人 「え〜。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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