NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第31回

中和反応の量的関係

  • 化学基礎監修:東京都立小川高等学校教諭 永島 裕
学習ポイント学習ポイント

中和反応の量的関係

バランスが大事!
  • バランスボードにのるローザ
  • フラメル所長

ローザがバランスボードに乗り、バランスをとっています。


ケン 「あれ、ローザ、何やってるの?」

ローザ 「所長がこの間、言ってたの。研究者というのはバランス感覚が大事だって。だから私もバランス感覚を鍛えようと思って。」

ケン 「バランス感覚って、そういうことじゃないと思うけど。」

ローザ 「でもこれ、なかなかいいよ!体のバランスがすごく良くなって脳が活性化されるって感じ。ケンもやってごらんよ!」

ケン 「こういうの、僕は苦手なんだよ。体を使ってその場でなんとかするんじゃなくて、あらかじめ計算してキッチリやる方が得意なんだ。」

ローザ 「何それ?ロボットじゃないんだから。」

所長 「確かに、バランスを取るには計算も必要だな。たとえば酸と塩基だ。うまくバランスを取って中和させるには、微妙なさじ加減が必要だ。しかし、化学反応式がわかっていれば、あらかじめ計算して、必要な分量を割り出すことも可能だ。」

ケン 「酸と塩基の世界は、まだまだ奥深いんですね。」

所長 「もちろんだ!今回も酸と塩基の本質に迫るぞ。」

中和反応
  • 電離したHCL
  • 電離したNaOH

酸と塩基、そして中和反応とは何か、ボードを使って復習してみます。

図のビーカーの中には塩酸・HClが入っています。
そして、上から水酸化ナトリウム水溶液・NaOHを滴下します。
ビーカーの中の塩酸・HClは、水溶液の中では、HとCIに電離しています。
水に溶けて、水素イオン・Hを生じるのが、酸の特徴です。

同じく、水酸化ナトリウム・NaOHはNaとOHに電離しています。
水に溶けて、水酸化物イオンOHを生じるのが塩基の特徴です。

中和反応を考えるときは、HとOHがポイントでした。

  • H2Oが生成
  • 中和反応の式

塩酸に水酸化ナトリウムを加えると、水素イオン・Hと水酸化物イオン・OHが結合して水・HOが出来ます。

水素イオン・Hと水酸化物イオン・OHが過不足無く
同じ数結合し、水・HOになることが中和反応です。


中和反応を化学反応式を使って考えてみます。(右図)
塩酸・HClに水酸化ナトリウム・NaOHの水溶液を反応させると、塩化ナトリウム・NaClと水・HOができました。
このときHClやNaOH、NaClは、水溶液中ではほぼ全部が電離してイオンになっているので、イオン反応式で考えられます。

塩化物イオン・Clとナトリウムイオン・Naは反応の前後で変化していないので、両辺から取り除きます。

すると、変化している部分だけが残り、

 + OH → H

と、表せます。

つまり、中和反応とは酸から生じる水素イオン・Hと、塩基から生じる水酸化物イオン・OHが結びついて、水・HOができる反応です。

酸と塩基の量的関係
  • 酸と塩基の水溶液
  • H+とOH−が同じ数なら過不足なく反応して中和する

所長 「では、ここから中和反応についてさらに詳しく考えてみよう。キーワードは “量的関係” だ。たとえば、2つのビーカーの中に酸と塩基が入っている。この2つを混ぜて中和させるにはどうしたら良い?」

ケン 「2つを同じ量だけ混ぜればいいんじゃないですか?」

所長 「量って、何の量だ?」

ケン 「たとえば、酸の水溶液を100gと塩基の水溶液を100gとか……。」

ローザ 「でも、濃度も同じにしなくちゃ。たとえば、どちらも10%の濃度として」

所長 「10%?それは質量パーセント濃度のことか?」

ケン 「モル濃度で考えなくちゃ。たとえば、どちらも1mol/Lにします。」

所長 「モル濃度で考えるというのは、ある体積の中の粒子の数で考えるということだ。酸から生じるHと塩基から生じるOHの関係で言えば?」

ローザ 「わかった!HとOHの個数を同じにすればいいんだ!」

所長 「そう。HとOHが同じ数なら、過不足なく反応して中和するはずだな。実験で確かめてみよう。」

  • 東京都立小川高等学校 教諭

特別研究員の永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)に解説していただきます。


所長 「あれっ、永島先生、そのパイプは?」

永島先生 「小さな試験管より、大きいほうが見やすいと思って用意しました。」

  • 0.1mol/Lの塩酸300mL
  • 0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液

実験を進めながら、酸と塩基の量的関係を考えていきます。
メスシリンダーに、0.1mol/Lの塩酸・HClを300mL用意します。
BTB溶液が入れてあり、塩酸は酸性なので、水溶液は黄色です。

もう一方のメスシリンダーには、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液・NaOHを300mL用意します。
水酸化ナトリウムは塩基性なので、青色です。

永島先生 「では、水酸化ナトリウム水溶液で塩酸300mLを中和し、中性にしたいと思います。水酸化ナトリウム水溶液を何mL加えればよいでしょうか?」

ケン 「どちらも濃度は同じ0.1mol/L。だから塩酸と同じ300mLを加えればいいのではないでしょうか。」

永島先生 「では、やってみましょう。300mLの塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜてみます。2つを混ぜた液が中性になれば、何色になるはずですか?」

ローザ 「中性は緑色です。」

永島先生 「そうですね。では、混ぜてみましょう。」

  • 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液300mLを混ぜる
  • 緑色に変化した水溶液

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると、水溶液は緑色に変化しました。


永島先生 「0.1mol/Lの塩酸・HCl300mLと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液・NaOH300mLを混ぜると、ちょうど中和しました。」

  • 水酸化ナトリウム300mLでちょうど中和した
  • 量的関係を式で表す

実験の量的関係を確認してみます。

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の濃度はどちらも0.1mol/Lでした。
体積は、300mL=300/1000mLで、0.3Lです。

それぞれの物質量を考えてみます。
濃度が0.1mol/Lということは1Lの中に0.1molなので、0.3Lの場合、
0.1×0.3=0.03mol
となります。

塩酸も水酸化ナトリウムも物質量は0.03molとなり、同じ物質量です。
とOHの物質量も同じなので、ちょうど「中和」したことになります。


ローザ 「酸と塩基を中和させるには、酸と塩基の物質量を同じにすればいいんですね?」

所長 「いい線いってます。だが、いつもそうなるとは限らないんだ。」

ローザ 「ええーっ。なんでですか?」

所長 「では、違う場合について永島先生に実験をお願いしよう。」

塩酸と硫酸 何が違う?
  • 0.1mol/Lの硫酸300ml
  • 黄色のままの水溶液

0.1mol/Lの硫酸を300mlと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液が用意されています。


永島先生 「硫酸300mLに、この水酸化ナトリウム水溶液を何mL混ぜたら、中性になるでしょうか?」

ローザ 「今度は塩酸じゃなくて硫酸を中和させるんですね。何が違うんだろう?でも、どちらも同じ0.1mol/Lで同じ濃度だから、やっぱり水酸化ナトリウム水溶液を硫酸と同じ300mL混ぜれば、中和できるんじゃないのかな?」

永島先生 「本当に?塩酸の時と同じでいいですか?」

ローザ 「同じモル濃度で、同じ体積なら、HとOHの数は同じになると思います。」


実際に、硫酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えてみますが、溶液は黄色のままです。
つまり、中性にはならず、酸性のままということです。

価数がポイント
  • 価数とは

なぜ予想通りに硫酸が中和されなかったのか、考えてみます。

硫酸と水酸化ナトリウムの物質量は、どちらも0.03で同じでした。
しかし、300mLずつ混ぜても、ちょうど中和することはありませんでした。
そこで考えなくてはならないのが価数です。


ケン 「酸や塩基が電離したときに出す、水素イオンや水酸化物イオンの数のことですよね。2価の酸、3価の酸とかありましたけど……。」

ローザ 「そうか。硫酸は、2価の酸だ!」

硫酸と水酸化ナトリウムの化学反応式、量的関係

SO 1分子からは、2個の水素イオンが出るので、価数は2です。
1molの硫酸から水素イオンは2mol出てきます。
今の実験では、硫酸は0.03molであり、そこからHは0.06mol出てきます。
そして、それと反応する水酸化ナトリウムは1価なので、出てくる水酸化物イオンOHは0.03molとなります。
水素イオンと過不足なく結びつくためには、OH¯が0.06mol、水酸化ナトリウムが0.06mol、つまり2倍の600mL必要だったということです。

このように、酸と塩基の物質量だけではなく、HとOHの物質量を考えなくてはなりません。

  • H<sup>+</sup>の物質量とOH<sup>−</sup>の物質量を求める式
  • 0.1mol/Lの硫酸300mLと中和する水酸化ナトリウムの量は?

中和するためには、Hの物質量とOHの物質量が同じになる必要があります。

酸の価数をa、濃度をc(mol/L)、体積をv(mL)、塩基の価数をb、濃度をc’(mol/L)、体積をv´(mL) として式に表します。(左図)

の物質量を求めるには、濃度×体積だけでなく、価数aをかけなければなりません。
そしてOHも同様に価数bをかけます。

そして両辺が等しくなったとき、はじめて中和します。


両辺に1000をかけて簡単にすると

a × c × v=b × c´ × v´

となります。

実験の数値をこの関係式に入れてみます。(右図)

2価の硫酸0.1mol/Lが300mLと、1価の水酸化ナトリウム水溶液0.1mol/Lがv´ mLのため、

2 × 0.1 × 300=1 × 0.1× v´
v´=600

となります。

このように、酸と塩基が中和するとき、量の関係を等式で示すことができます。

中和を確かめる
  • Question

ケン 「式がわかれば実験をしなくても、どれくらいの量で中和するか、わかるんですね。」

所長 「その通り。ちょっと練習をしてみようか。では問題です!」


0.2mol/Lの塩酸・HCl 300mLをちょうど中和するのに必要な0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液・NaOHは何mLか?

これは、異なる濃度で、価数が同じ酸と塩基の場合です。
まず、先ほどの式を使って塩酸の水素イオンHの物質量を求めてみます。

  • H+の物質量を求める
  • 水酸化ナトリウムの物質量を求める

1価の塩酸0.2mol/Lが300mLなので、左辺は、

a × c × v=1×0.2×300=60

となります。(左図)

次に、それを中和させるための水酸化ナトリウムの量を計算します。(右図)

1価の水酸化ナトリウム0.1mol/Lがx mLとすると

b × c’ × v’=1×0.1× v’ =0.1x

と表せます。
これが60に等しいということは、

0.1x=60
x=600

したがって水酸化ナトリウムは600mL必要ということです。
本当に水酸化ナトリウム600mLで中和するか確かめてみます。

  • 0.2mol/LのHCL300mLと0.1mol/LのNaOH水溶液600mL
  • 混合する
  • 緑色に変化した水溶液

0.2mol/Lの塩酸・HCl 300mLに、計算で出した、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液・NaOHを600mL加えてみます。

すると、黄色だったBTB溶液の色が、緑色に変わりました。
つまり、中和したということです。

  • 目がくらんだケンとローザ
  • 輝く永島先生

所長 「計算した通りの量で塩酸を中和できることが実験で確認できましたね。」

永島先生 「何度やってもそうなんですが、計算式で導いた値と、実験結果が同じになるこのぴったり感がたまらないですよね。化学の世界は、素晴らしいと思いませんか?」

ケン 「化学の神秘が神秘でなくなる瞬間ですね。」

ローザ 「おおーっ。先生の姿がまぶしい!」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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