NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

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今回の学習

第29回

中和反応と塩の性質

  • 化学基礎監修:神奈川大学附属中・高等学校教諭 小柳 めぐみ
学習ポイント学習ポイント

中和反応と塩の性質

  • 見た目はいいが……
  • 中和反応のしくみ

ローザが鼻歌を歌いながら、料理を作っています。
料理が完成すると、そこへケンがやってきました。

豪華な料理に目を輝かせて から揚げを試食するケンですが、味付けが塩辛く、表情がゆがんでしまいます。
心配になって、ケンに卵焼きの味見も頼むローザですが、今度は甘すぎたようです。

 
ローザ 「まだ練習中なんだから、しょうがないでしょ!それに、しょっぱいのと甘いのとで、中和してちょうどいいじゃない。」

ケン 「そうそう、おなかの中で混じると中和していい味になる……って、そういうことじゃないでしょ!食べるときにいい味にしてよ。」

所長 「お〜っ、おいしそうだな。まさかローザが作ったのか?」

ケン 「所長、見た目はいいけど……。」

所長 「全部聞こえていたぞ。『塩辛いものと甘いものを食べたから中和』だと?君らの言ってることは中和でも何でもない。酸と塩基を組み合わせることで、互いの性質を打ち消し、新たなものが生まれる。それが、私の先祖の錬金術士たちが操ってきた中和反応だ!今日はその謎に迫ってみよう。」

中和反応
  • 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を用意
  • 塩酸にマグネシウムを入れる

中和反応とは、酸と塩基を混ぜると互いの性質を打ち消しあう反応のことをいいます。
しかし、互いの性質を打ち消すとは、どのようなことなのでしょうか。

ここで、酸と塩基を使った実験で、中和反応がどういうものなのか見てみます。

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を用意します。
塩酸にBTB溶液を入れると黄色くなるため、酸性であることが分かります。
一方、水酸化ナトリウム水溶液は塩基性です。
酸性の塩酸にマグネシウムを入れると、気体が発生しながらマグネシウムが溶けていきます(右写真)。
酸はマグネシウムなどの金属を溶かし、水素を発生させるという性質があります。

  • 水酸化ナトリウム水溶液を加える
  • 酸性が打ち消されて中和した
  • 水酸化ナトリウム水溶液を加え続けた

この塩酸に塩基性の水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加えていきます。
すると、水素の発生が次第に穏やかになり、やがて止まりました。
水酸化ナトリウムの塩基性によって、塩酸の酸性が打ち消されて「中和」した状態です。

塩酸と水酸化ナトリウムが中和すると、塩化ナトリウム水溶液になります。
溶液の色も酸性の黄色から、中性を示す緑色に変わりました。

さらに、水酸化ナトリウムを加え続けると、溶液の色は青く変わりました。
今度は塩基性に変わったことが分かります。


ローザ 「互いの性質を打ち消すっていうのは、酸が金属を溶かす性質を、塩基が止めるということですか? 」

所長 「まあ、そうとも言えるな。」

ケン 「それって、どうやって止めているんですか?」

所長 「では、今見た反応がどのようにして起きたのか、ミクロの世界をのぞいて検証してみよう。」

  • 水溶液中では塩酸も水酸化ナトリウムも電離
  • H<sup>+</sup>とOH<sup>−</sup>でH<sub>2</sub>Oに

塩酸は水溶液の中ではHとClに電離しています。
水に溶けてHを生じるのが酸の特徴です。

一方、水酸化ナトリウムは、NaとOHに電離しています。
水に溶けてOHを生じるのが塩基の特徴です。

塩酸に水酸化ナトリウムを加えると、OHが水溶液中のHと結びついて、水・HOができます。

「お互いの性質を打ち消す」とは、酸性の素だったHと塩基性の素だったOHが結びついて水・HOになることで、酸性と塩基性が互いに打ち消されたということです。

  • H<sup>+</sup>とOH<sup>−</sup>が過不足なく結びつく
  • さらにNaOHを加えると、塩基性に

さらに水酸化ナトリウムを加えて、HとOHが過不足なく同じ数結びつくと、塩酸のHがなくなりました(左図)。
このような反応を「中和反応」といいます。

さらに、NaOHを入れ続けると、水溶液中にはOHが増え、塩基性に変わっていきます(右図)。

HClとNaOH、NaClは、ほぼすべて電離

この塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応を化学反応式で表すと、

HCl + NaOH → NaCl + H

となります。

この式は、塩酸・HClに水酸化ナトリウム・NaOHの水溶液を反応させると、
塩化ナトリウム・NaClと水・HOができることを示しています。

これをイオンで考えると上図の下段の式のようになります。
この式から、

HClがHとCl
NaOHがNaとOH
NaClがNaとCl

のように、水溶液中では、ほぼ全部が電離してイオンになっていることが分かります。

ここで、塩化物イオン・Clと、ナトリウムイオン・Naは反応の前後でどちらもイオンのまま水溶液中に溶けています。
つまり、この二つのイオンは変化していないため、両辺から除きます。
すると、変化している部分だけが残って、

 + OH → H

というイオン反応式になります。

  • 中和反応とは
  • 水を生じない中和反応

所長 「中和反応とは、酸から生じる水素イオン・Hと、塩基から生じる水酸化物イオン・OHが結びついて水・HOができる反応ともいえるのだ。」

ケン 「なるほど。酸と塩基を混ぜて、水ができたら中和したと覚えておけばいいんですね!」

所長 「まあ、そうだな。しかし、塩化水素とアンモニアを混ぜたときなど、水を生じない場合もあるので注意しよう。」


塩化水素とアンモニアの反応では、

HCl + NH → NHCl

となり、HOは生じません。

中和反応でできる生成物
  • 中和反応の生成物は塩(えん)

ここからは、中和反応によってできる生成物に注目していきます。

塩酸と水酸化ナトリウムを反応させると、塩化ナトリウムと水ができました。
これを言い換えると、「中和反応で酸と塩基が反応すると、塩(えん)と水ができた」となります。
中和反応の生成物は塩(しお)ではなく、「塩(えん)」といいます。

酸の水素イオン・Hと塩基の水酸化物イオン・OHは水になってしまいました。
そのため、酸の陰イオン・Clと塩基の陽イオン・Naが残っている状態です。

この、酸の陰イオンと塩基の陽イオンが結びついてできたものが「塩」です。


所長 「この塩は塩化ナトリウムとは限らないんだ。」

ローザ 「中和反応で水と一緒にできたものは、すべて塩なんですね。」

所長 「そうなんだ。そして、この 塩は3つのグループに分かれるんだ。」

塩の性質
  • 小柳 めぐみ 先生(神奈川大学附属中・高等学校 教諭)
  • 塩の3つのグループ

「塩」のグループについて、特別研究員の小柳 めぐみ 先生(神奈川大学附属中・高等学校 教諭)に解説していただきました。


ケン 「小柳先生、塩は3つのグループに分かれるってどういうことですか?」

小柳先生 「中和反応で生じる塩は、正塩、酸性塩、塩基性塩という3つのグループに分けることができます。どのグループに所属するかは、化学式を書けば、見てすぐに判断できるものなんです。」


塩は、次のように3つのグループに分けられます。

【酸性塩】
中和したときに、元の酸の「H」が、残っている塩
例:硫酸水素ナトリウム・NaHSO、炭酸水素ナトリウム・NaHCO

【塩基性塩】
中和したときに、元の塩基の「OH」が、残っている塩
例:塩化水酸化マグネシウム・MgCl(OH)、塩化水酸化銅(II)・CuCl(OH)

【正塩】
中和したときに、酸の「H」も塩基の「OH」も残っていない塩
例:塩化ナトリウム・NaCl、酢酸ナトリウム・CHCOONa


小柳先生 「それからひとつ注意点です。正塩・酸性塩・塩基性塩といいますが、必ずしも『酸性塩の水溶液だから酸性』、『塩基性塩の水溶液だから塩基性』、『正塩の水溶液だから中性』ということではありません。」

ローザ 「酸性塩なのに酸性じゃない?それって、どういうことですか?」

正塩は酸性?中性?塩基性?
  • 3種類の正塩の水溶液

正塩の水溶液について、実験を行いました。

試験管にそれぞれ塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウムの水溶液を用意しました。
3つの水溶液はいずれも正塩です。

水溶液にBTB溶液を入れて調べてみると、次のように色が変化しました。

塩化ナトリウム・NaCl → 中性を示す緑色
塩化アンモニウム・NHCl → 酸性を示す黄色
酢酸ナトリウム・CHCOONa → 塩基性を示す青色

  • 正塩の水溶液は必ず中性というわけではない
  • その見分け方

3つの正塩の水溶液の性質をまとめてみます。

BTB溶液を加えた際の色の変化から、塩化ナトリウム水溶液は中性、塩化アンモニウム水溶液は酸性、酢酸ナトリウム水溶液は塩基性です。
つまり、3つはどれも正塩ですが、その水溶液はすべてが中性ということではありません(左図)。


ローザ 「これは、見分けられるんですか?」

小柳先生 「はい、正塩の場合は中和する前の酸と塩基の強さに着目すると簡単に見分けられます。


覚え方は、右の図のとおりです。
「強いもの」どうしだとその強さを打ち消しあって中性に、つまり「強酸」と「強塩基」の場合は「中性」となります。
「強いもの」と「弱いもの」の場合は「強いもの」が勝ちます。
つまり、「強酸」と「弱塩基」では「酸性」になり、「弱酸」と「強塩基」の場合は「塩基性」となります。

正塩の酸性・塩基性

これを具体的に見てみます。
塩化ナトリウム・NaClは、強酸の塩酸・HClと強塩基の水酸化ナトリウム・NaOHからできた塩のため、中性です。

塩化アンモニウム・NHClは、強酸の塩酸・HClと弱塩基のアンモニア・NHからできた塩のため、酸性になります。

酢酸ナトリウム・CHCOONaは、弱酸の酢酸・CHCOOHと強塩基の水酸化ナトリウム・NaOHからできた塩のため、塩基性です。


小柳先生 「『中和する前の酸と塩基の強さに縁がある』ということなんです。」

草津の中和事業
  • 草津温泉
  • pH2.3と、強酸性

所長 「ところでローザ、中和反応がどんなところで利用されているのか調べてきてくれたかな?」

ローザ 「はい。バッチリ!温泉に行って調査してきました!」


群馬県にある白根山は、現在も活動を続ける活火山です。
その南東にあるのが、江戸時代から湯治場として栄えてきた草津温泉です。

白根山の影響を受けた草津の強酸性の温泉は殺菌力が強く、万病に効くと言われてきました。
温泉街の中心にある「湯畑」からは、毎分4000Lの温泉が湧き出ています。
ローザがpHの値を測定すると、pH2.3と、かなり強い酸性を示しました。

  • コンクリート(Before)
  • 30日間湯川の水に浸してボロボロに

人々を癒してくれる温泉ですが、お湯が流れ込む湯川では、魚も生きていけないほどです。
pH2.1の湯川の水にコンクリートの塊を30日間浸けておくと、ボロボロになってしまいます。

  • 草津中和工場
  • 草津中和工場の川村洋介さん

そこで、1963年に作られたのが、草津中和工場(品木ダム水質管理所)です。
この施設の川村洋介さんに、お話をうかがいました。


ローザ 「ここはどういう施設なんですか?」

川村さん 「この施設では、強酸性水を中和するための作業を行っています。」

  • 川の水のpHは日々変化する
  • 石灰石を砕いた中和剤を温泉水に投入

川の水のpHは日々、微妙に変化するため、その値に合わせて中和剤を川に投入します。
中和剤は、石灰石を細かく砕いて温泉水に混ぜたものです。
この作業が365日、24時間続けられています。

  • 1.5km下流の水を採取
  • pH4.7

中和剤と混じった川の水が流れていく過程で、中和反応が進んでいきます。
草津中和工場から1.5km下流で川の水を採取し、pHを測定すると、値は4.7でした。

  • 中和工場から50km下流
  • pH6.9

そして、中和工場から約50km下流でもう一度pHを測ってみると、値は6.9を示し、ほとんど中性になっていることが分かりました。

かつては「死の川」と呼ばれた川も、中和反応によって魚が住みつき、農業用水としても使われるようになりました。


ローザ 「鉄やコンクリートも傷めてしまう強い酸性の水が、魚も住める水に変わるって、すごいですよね。」

所長 「そうだな。酸や塩基を中和することによって、水が様々な用途に利用できるようになる。また、そのとき同時に生まれてくる塩も様々な製品に姿を変えて、我々の身近なところで使われているんだ。」

身近に使われる塩
  • 身近にある塩からできた製品
  • 次回もお楽しみに〜

ケン 「所長、もしかして、ここに並んでいるのも塩からできた製品ですか?」

所長 「そうだ。多分、どれも見たことがあるものだと思うが、なにかしらの塩が使われているんだ。」


テーブルに並んでいるのは、花火・入浴剤・石鹸・ベーキングパウダー・胃薬・スポーツドリンクです。


ローザ 「スポーツドリンクには食塩、乳酸ナトリウム、塩化カリウム。いろんな塩が入っているんですね。」

所長 「そう、スポーツドリンクは運動の際に、汗とともに失われた成分などを補給できるんだ。」

ケン 「花火にも塩が入っているの!?」

所長 「銅やカリウム、カルシウムなどのイオンを含む塩を加熱すると、夜空を彩る花火の美しい光が生まれるんだ。」

ローザ 「中和反応って、私たちの暮らしを豊かにしてくれているんですね。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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