NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第28回

指示薬とpHの測定

  • 化学基礎監修:東邦大学教授 今井 泉
学習ポイント学習ポイント

指示薬とpHの測定

雨水は酸性・中性・塩基性?
  • リトマス紙を探すケンとローザ
  • 紫キャベツと所長

昨日降った雨が酸性雨かどうかを調べようと、ケンがリトマス紙を探しています。
ローザも手伝って、リトマス紙の箱を見つけましたが、中身は空になっていました。


ローザ 「残念ね。でもリトマス紙がなくちゃ仕方ないわね。」

所長 「いやいや、酸性・塩基性を調べる道具は、リトマス紙だけではない。身近なものを利用することもできるぞ。たとえば、ムラサキキャベツだ!」

ローザ 「そうか!ムラサキキャベツは酢をかけると赤く変わりました!」

所長 「これを使ってリトマス紙の代わりの試験紙を作るんだ!」

ケン 「そんなことできるんですか!?」

所長 「もちろん!酸性・塩基性を調べるにはさまざまな方法がある。それを使い分けることで真実に迫ることができるのだ。」

ムラサキキャベツで試験紙を作ろう!
  • 紫キャベツを煮る
  • 紫キャベツの煮汁を抽出
  • 煮汁にクッキングペーパーを浸す

ムラサキキャベツで試験紙を作ってみました。

まずは、ムラサキキャベツを細かくちぎり、沸騰したお湯に入れて煮ます。
お湯が冷めるまで待ってから、ボールに煮汁を移しクッキングペーパーを浸します。

乾燥させたら試験紙のできあがりです。

雨水のpHは?
  • 雨水のpHを測定
  • ムラサキキャベツで作った試験紙の色の変化

ムラサキキャベツに含まれるアントシアニンという色素は、
・中性で紫色
・酸性でピンク〜赤
・塩基性で青〜緑〜黄色
のように、色が変化します。

実際に雨水の入ったビーカーに試験紙を浸すと、試験紙の色がピンク色に変わりました。


ローザ 「ピンクになった!ということは……。」

ローザ 「弱酸性っていうことですね。」

ケン 「でも、さすがにムラサキキャベツでは、pHまでは分からないですよね。」

所長 「それはそうだな。pHまで正確に計りたいときは、やはりpHメーターだ!」

  • pHメーター
  • 雨水のpH測定

先ほどの雨水のpHを測定してみました。

雨水にpHメーターを浸すと、4.5という値を示しました。
つまり、弱酸性です。


ケン 「なるほど、やはりpHの値はpHメーターでないと測定できないんですね。」

所長 「いやいや、pHメーターがなくても、おおよその値は、pH指示薬を使えば調べることができるぞ!」

ローザ 「pH指示薬って?BTB溶液とかのことですか?」

所長 「そうだ!どのようにして測定するかは、特別研究員の今井先生に説明してもらおう。」

pH指示薬とは?
  • 特別研究員の今井 泉 先生

特別研究員の今井 泉 先生(東邦大学 教授)にpH指示薬について説明していただきました。

pH指示薬は、「酸塩基指示薬」ともいって、色の変化によってpHのおおよその値を調べることができる薬品です。

実際にpH指示薬を使用して、pHを測定してみました。

pH指示薬:メチルオレンジ
  • メチルオレンジ
  • メチルオレンジの変色域

メチルオレンジという指示薬を使用して、pHを測定してみました。

pHの値を1から11にしてある水溶液に、それぞれメチルオレンジを入れていくと、次々に色が変化していきます。
溶液をよく混ぜて、色を確認します。

pH1、2では赤色、pH3〜5ではオレンジ色から黄色になり、pH5以上では黄色のまま変化がありません。


今井先生 「実はメチルオレンジで色が変わるのはpH3.1〜pH4.4の間なんです。このように、色が変化するpHの範囲を『変色域』といいます。」

ローザ 「どのpHでも色が変わるわけではないんですね。」

今井先生 「はい。メチルオレンジはpH3.1〜pH4.4で色が変化していくことが分かり、それより小さいpHでは赤に、それより大きいpHでは黄色になります。」

pH指示薬:フェノールフタレイン
  • pH指示薬:フェノールフタレイン
  • フェノールフタレインの変色域

次は、「フェノールフタレイン」です。
先ほどと同様に、pHが異なる水溶液に順番に入れてみます。
フェノールフタレインを入れていくと、pH8までは無色透明です。
そして、pH9はピンク色、pH10以上は赤色に変化しました。


ローザ 「メチルオレンジで色が変わった、pHが低いところでは変化がありませんね。」

ケン 「pH9で、うっすらピンク色になりました。」

今井先生 「フェノールフタレインの変色域はpH8〜9.8の間なんです。」

ローザ 「pH10以上だと、濃い赤になりますね。」

今井先生 「フェノールフタレインを使うと、pH8〜pH9.8で色が変化し、おおよそのpHを見分けることができそうですね。」

ケン 「メチルオレンジとは守備範囲が違うんですね。」

ローザ 「でも、真ん中のpH7あたりは、どちらも色が変わっていませんよ(右写真)。」

指示薬:BTB
  • BTB
  • pH7付近での色の変化

所長 「そこに使えるのが、BTBだ。」


BTBの変色域はpH6.0〜7.6の間です。
先ほどと同様に、BTBをpHの違う、それぞれの水溶液の中に入れてみます。

BTBを入れていくと、pHが小さい水溶液では同じ色ですが、pH6で少し色の変化が見られます。
溶液をよく混ぜて色を確認すると、pH5以下では黄色、pH7では緑色になります。
また、pH8以上では青色に変化しました。

  • 三種類の指示薬での比較

ローザ 「メチルオレンジ、BTB、フェノールフタレインとpH指示薬を入れた水溶液を並べてみると、すごく綺麗ですね!」

所長 「そうだな。守備範囲の違いも、よく分かるだろう。」


pH指示薬は、
・pHが3付近…メチルオレンジ
・pHが7付近…BTB
・pHが9付近…フェノールフタレイン


のように使い分けることがポイントです。

万能pH試験紙
  • 万能pH試験紙

ケン 「でも、pHによって3種類の指示薬を使い分けるのって大変ですよね?!」

ローザ 「一度に全部を調べられるpH指示薬があればいいのに。」

今井先生 「実は、数種類のpH指示薬をミックスして、ろ紙に染み込ませて乾燥させたものが万能pH試験紙です。この試験紙なら1つでpH1から11までおおよそのpHが測定できるんですよ。」

ケン 「そのケースの色が指示薬の色ってことですか?」

今井先生 「そうなんです。試験紙を測定する液に浸けると色が変わるので、その色とケースの色を比較してpHを調べるんです。」

身の回りの物質のpH
  • 身の回りの物質
  • 雨水はpHpH4.5

万能pH試験紙を使って、身の回りのさまざまなもののpHを測定してみました。
測定するのは、
レモン・リンゴ・醤油・ヨーグルト・こんにゃく・セッケン水・ケンがためた雨水です。
pHをひとつずつ調べて、pHの表に並べていきます。

先ほど調べた雨水はpH4.5だったので、pH4と5の間に置きました。

  • レモン汁に万能pH試験紙を浸す
  • レモンでの万能pH試験紙の変化

所長 「ではケン、まずはレモンだ。」

ケン 「レモンはすごく酸っぱいから、きっと強い酸性ですね。」


試験紙をレモン汁に浸すと、オレンジ色に色が変わりました。
ケースの色と照らし合わせると、pH2〜3であることが分かります。

このように、レモンはクエン酸が含まれているため、強い酸性です。
「酸っぱい」という味覚を感じるのも、クエン酸が含まれているためです。

同様にクエン酸を含んでいるリンゴは、pH3程度です。

  • こんにゃくでの万能pH試験紙の変化
  • こんにゃくはpH11

ローザ 「じゃあ私は、こんにゃく。こんにゃくはほとんど味がしないから、きっと中性よね。」


試験紙がこんにゃくに触れると、すぐに黒っぽく変色しました。
万能試験紙のケースと比較すると、pH11付近です。

こんにゃくは固める時に水酸化カルシウムを使うため、こんにゃくをさらした水は塩基性になります。

  • セッケン水のpH
  • 醤油とヨーグルトのpH

ほかにも、ヤシの油などから作った固形セッケンは塩基性で、セッケン水のpHは8.0〜9.0です。
また、発酵食品の醤油やヨーグルトはpH4.0〜5.0を示しました。


所長 「では、最後はたまねぎと鉄アレイの2つを使って調べてもらおう!」

ケン 「たまねぎは分かりますけど、鉄アレイってどうするんですか?」

所長 「決まっているじゃないか。鉄アレイでいい汗かいて、汗のpHを調べるんだ。ローザにはたまねぎを刻んで涙のpHを調べてもらおう!」

  • 涙のpHは8〜9
  • 汗を採取
  • 汗のpHは6

ケンは鉄アレイで運動を、ローザは包丁でたまねぎを刻みます。

たまねぎを切ったローザの涙を採取し、pHを測定するとpH8〜9、つまり弱い塩基性を示しました。
次に、ケンの汗のpHは5〜6と、酸性であることが分かりました。

身の回りの物質をpH順に並べる

そのほか、体に関するpHを見てみると、

・唾液のpH…6.4
・血液のpH…7.4
・胃液のpH…1.5

といった値となります。


所長 「胃液は強い酸性なんだ。」

ローザ 「同じ体なのに、pHはこんなに違うんですね。」

所長 「人間の体はpHのこんな微妙なバランスで健康を保っているんだ。」

酸性の雨は「酸性雨」?
  • 環境のpH

次は、環境のpHについて考えてみます。

最初に調べた雨水は弱酸性でした。
雨水には、常に大気中にある二酸化炭素が溶け込んでいるためです。


ケン 「それがよく問題になっている “酸性雨” ですか?」

所長 「いや、“酸性の雨” が、すべて “酸性雨” ということではないんだ。では、ケンには、酸性雨のことについて、調べてきてもらおう。」

酸性雨ってどんな雨?
  • アジア大気汚染研究センター
  • 大気圏研究部長 箕浦 弘明さん

ケンがやってきたのは、新潟県にある、大気汚染のモニタリング調査を行っている研究所です。

アジア大気汚染研究センター 大気圏研究部長の箕浦 弘明さんに、酸性雨について解説していただきました。

  • 酸性雨のメカニズム
  • 酸性雨の森林への影響

酸性雨とは、pHが5.6以下の酸性の雨を示しています。
工場や自動車から排出される、二酸化硫黄やチッ素化合物が硫酸や硝酸になり、雨に溶け込んで降ってくるのが主な原因とされています。
このようなガスの他に、大気中のPM2.5や、大陸から飛んでくる黄砂粒子などに汚染物が付着して降ってくる酸性雨もあります。


ケン 「雨が酸性になると、どんな問題があるんですか?」

箕浦さん 「川や湖の魚が死んだり、森の木が枯れたりする影響が出る恐れがあります。1950年代から80年代あたりまで、ヨーロッパや北アメリカなどで大きな被害がありました。しかし、我々が暮らす地球には、地上に落ちてくる酸性の雨を中和する素晴らしい自浄(じじょう)システムがあるんですよ。」

地球の自浄システム
  • 地球の自浄システム
  • 酸性の水と土

酸性雨は、地上に落ちると土やその下の岩石に浸み込んでいき、その過程で中和されます。

ここで、簡単な実験を行ってみました。
pH5.0の酸性の雨水と、研究所の庭の土を用意します。

  • 濾過
  • ろ過後の数値

この雨水を土の入った容器に入れてよく混ぜてろ過すると、土の中のカルシウムやマグネシウムなどの塩基性成分の中和作用によってpHは6.2になりました。

さらに、この水を地中の岩石に含まれる成分のひとつである炭酸カルシウムに入れてよく混ぜます。
その後 ろ過すると、pHは7.0と、ほぼ中性になりました。

これが地球の自浄システムです。


ケン 「中性の水を作る自然のフィルターみたいなイメージですね。このシステムが地球にあるから、環境も守られているんですね。」

箕浦さん 「そうです。ただこのシステムも、土壌や岩石の種類によって効果は変わってきますし、中和できる量にも限界があります。大気から落ちてくる汚染物質を減らすことが最も大事なことです。」

大気汚染の観測にもpHは活かされている!
  • 地域ごとの二酸化硫黄排出量
  • 東アジア13か国が協力して観測

箕浦さん 「現在、アジアの多くの国々で、大気環境は深刻な状況にあります。酸性雨や大気汚染の原因になる工場や自動車から出る排気ガスなどを抑えるため、各国は対策に取り組んでおり、その効果をウォッチしていく必要があります。そのため、東アジア13か国が協力して雨水のpHや大気中のPM2.5の量などを24時間、365日観測し続けているのです。」

ケン 「pHを測定することで、地球の環境の状態も分かるんですね!」

  • 次回もお楽しみに〜!

ケン 「酸性雨のことも分かったけど、地球の自浄システムってすごいでしょ!」

ローザ 「そう!でもそれに甘えてちゃダメ。大事なのは世界中の人が協力して環境を守っていくことなのよ。その指標の1つがpH測定なの。」

所長 「ローザさん、すごいじゃないですか!じゃあ、環境のことを考えながら、またpHの測定をやってみようか?」

ローザ 「でも、たまねぎとか鉄アレイは環境と関係ないですからね!」

ケン 「僕ももう勘弁して下さ〜い!」


最後に、ムラサキキャベツで作った試験紙に、文字を書いてみました。
ケンはレモン果汁を使って「ハート」を、ローザは塩基性洗剤を使って「円マーク」を書きました。
どちらも、くっきりと浮かび上がりました!


それでは、次回もお楽しみに〜!!

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