NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第27回

水素イオン濃度とpH

  • 化学基礎監修:東邦大学教授 今井 泉
学習ポイント学習ポイント

水素イオン濃度とpH

数値化すれば一目瞭然!
  • ケンとローザの貢献度争い
  • ケンの勝ち!

ケンとローザが、研究所における貢献度について言い争っています。


ケン 「違うよ!僕だって言ってんだよ!」

ローザ 「何言ってんの、私だって!私に決まってるじゃない!」

所長 「そういう、一見分かりづらいことは、“数値化” すればいい。ケンとローザの貢献度を、3つの項目で数値化してみよう。1つの項目について、点数は10点。それぞれが、自分の貢献度を主張して、それを基に、私が点数を割り振る。いいか、恨みっこなしだぞ。」


こうして、
・研究活動による貢献度
・研究所の運営に対する貢献度
・所長への癒しの貢献度
の3項目で貢献度を数値化することになりました。

結果は、合計17対13でケンの勝ちです。


ローザ 「ええっ、なんで!?納得できないわ!そもそも、数値化なんて意味がないわよ!」

所長 「そんなことないぞ。数値化することは、化学においても、とっても重要なんだ。たとえば、酸と塩基についても、数値化がとっても役に立っているんだぞ。」

水は水素イオンと水酸化物イオン
  • 純水は、H<sup>+</sup>とOH<sup>−</sup>に電離している

100%の純度の水、つまり「純水」は、電気を通さないことは以前学びました。
しかし実は、純水はごくわずかではありますが「電気伝導性」を示します。

純水は、水分子・HOがたくさん集まっていますが、その一部は水素イオン・Hと水酸化物イオン・OHに電離して存在しています。

  • 純水には電気が流れないはず…
  • 純水中の水素イオンと水酸化物イオンのモル濃度

ケン 「そっか、イオンが存在するなら、電気が流れるはずですね。でも、以前実験したときは、確かに電気は流れませんでしたよ?」

所長 「それは、存在するイオンの量がとても少ないからなんだ。どのくらいかというと、純水中の水素イオンと、水酸化物イオンのモル濃度は、25℃のとき、1×10−7mol/Lだ。」

モル濃度は、

モル濃度[mol/L]=溶質の物質量[mol]/溶液の体積[L]

という式で表されます。
しかし、「1×10−7mol/L」とは、どのくらい少ないものなのでしょうか。

  • 純水1Lに、水分子は55.6mol
  • [H<sup>+</sup>]と[OH<sup>−</sup>]

そこで、まずは純水1Lに水分子は何molあるか考えてみます。
水分子のモル質量は18g/mol、純水1リットルを1000gと考えると、

1000[g]/18[g/mol]≒55.6[mol]

と計算できます。
この、純水1Lに含まれる約55.6molの水分子のうち、1×10−7molが、水素イオンと水酸化物イオンに電離しています。
この割合は、5億5千6百万分の1です。


ローザ 「それだけ少ないから、実際には電気は流れないってことですね。」

所長 「そうだ。だがごくわずかではあっても、水素イオンと水酸化物イオンが存在しているのは確かなんだ。」


この、水素イオンのモル濃度を「水素イオン濃度」、水酸化物イオンのモル濃度を「水酸化物イオン濃度」といいます。

それぞれは、
水素イオン濃度 → [H
水酸化物イオン濃度 → [OH
のように、決まった書き表し方があります。

とOHでわかる?
  • 純水の模型
  • [H<sup>+</sup>]=[OH<sup>−</sup>]=1×10<sup>−7</sup>mol/Lのとき、中性

次に、水素イオン濃度・水酸化物イオン濃度と、水溶液の酸性・中性・塩基性との関係について見ていきます。

テーブルの上には、純水を示している分子模型が用意されています。
たくさんある水分子は省略していますが、そのうちの一部は、模型で示すように水素イオンと水酸化物イオンに電離しています。

このとき、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度は等しく、25℃であれば
[H]=[OH]=1×10−7mol/L
です。

そして、このような水溶液を、「中性」といいます。
つまり、純水は中性です。

  • 水素イオンだけを加え、いくつかは水分子に
  • 酸性になると水素イオン濃度が大きく

ここに、塩酸や硫酸などの酸を溶かすと、水溶液は酸性になります。
単純化するため、酸から生じる水素イオンだけを、模型に加えてみます。
すると、水素イオンが増え、いくつかは水素イオンと水酸化物イオンが結合して水分子になります。
このとき、水分子になったものは外しておきます。

ここで酸性の水溶液は、水素イオン濃度が1×10−7mol/Lより増え、同時に水酸化物イオン濃度は1×10−7mol/Lより減ります(右写真)。
このように、酸性の水溶液の中にも、水酸化物イオンが存在しています。

酸性・中性・塩基性と[H<sup>+</sup>]と[OH<sup>−</sup>]の関係

このことについて、もう少し詳しく見てみます。

純水のように中性の場合、
水素イオン濃度=水酸化物イオン濃度=1×10−7mol/L
が成り立っています(上写真中)。

酸性の水溶液では、水素イオン濃度が1×10−7mol/Lより大きくなり、水酸化物イオン濃度は小さくなります(上写真左)。


一方、純水に塩基を加えると、水溶液は塩基性になります。
水溶液が塩基性のとき、水酸化物イオン濃度は1×10−7mol/Lより大きくなって、水素イオン濃度は小さくなります(上写真右)。

水素イオン濃度・水酸化物イオン濃度と、酸性・中性・塩基性との関係は、しっかり理解しておく必要があります。

  • [H<sup>+</sup>]×[OH<sup>−</sup>]=1×10<sup>−14</sup>(mol/L)<sup>2</sup>
  • 純水でもそれぞれのイオン濃度の積は一定

所長 「では、もう一つ、大事なことを教えておこう。中性の水溶液に酸や塩基を加えたとき、水素イオンと水酸化物イオンが結合して、水分子になったよね?実は、水分子になる割合には、ある法則があるんだ。」

その法則とは、「温度が一定ならば、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の積は一定の値になる」というものです。
たとえば25℃のとき、その値は
[H]×[OH]=1×10−14(mol/L)になります。

この法則は、水溶液が酸性でも、中性でも、塩基性でも成り立ちます。

純水の場合、水素イオン濃度も水酸化物イオン濃度も、1×10−7mol/Lでした。
これらをかけると、
(1×10−7mol/L)×(1×10−7mol/L)=1×10−14(mol/L)
になります。


ローザ 「ちょっと待って!今日のテーマは、“数値化”でしたよね?つまり、この水素イオン濃度とか水酸化イオン濃度が、“酸や塩基の数値化”ってことですか?また10のマイナス何乗とか、細かい数字なの?」

所長 「安心しなさい。その細かい数字を扱いやすくするために、ちょっとした工夫をするんだ。それこそ、水素イオン指数 “pH” だ。」

pHって なに?
  • 今井 泉 先生(東邦大学 教授)
  • 1×10<sup>−7</sup>を探す

ここで、酸性・中性・塩基性の数値化について、特別研究員の今井 泉 先生(東邦大学 教授)に詳しく解説していただきました。
最初に、水素イオン濃度に注目して、考えてみます。


今井先生 「まず、中性の水溶液の水素イオン濃度は、いくつでしたっけ?」

ローザ 「1×10−7mol/Lです。」

今井 「その通りです。私が持ってきた、この角柱の中に、『10−7』と書いてあるものがあるはずなんですが、それを探して、pH表の『中性』と書いてあるところに立ててください。」


さっそく、「10−7」と書かれた角柱を探し、pH表の模型に立てます。

  • 水素イオン濃度が中性より大きくなった場合
  • 10<sup>0</sup>=1

次に、水素イオン濃度が、中性より大きくなった場合を考えます。
1×10−7mol/Lの10倍の濃度は、

10−7×10=10−6

となり、水素イオン濃度は1×10−6mol/Lです。

そこで、角柱の中から「10−6」と書いてあるものを探し、pH表の「10−7」の左側に置きます。


今井 「ここで、ひとつ注意です。この2つは、“10−7” と “10−6” ですから、10倍の違いがあります。実際に10倍の大きさにすると、あっというまにこの研究所に入りきらなくなってしまうので、見た目はそれほど差がありませんが、そこだけ気をつけてください。」


この要領で、続けて10−5、10−4と、pH表の上に、順番に左側に並べていきます。
10は、10−1、つまり1/10の10倍であり、「1」のことです。

水素イオン濃度で見た、酸性〜塩基性

次に、水素イオン濃度が、中性より小さくなっていく場合を考えます。

水素イオン濃度は、
10−7×(1/10)=10−8
10−7×(1/100)=10−9
10−7×(1/1000)=10−10
という順番になっていきます。
10−8から10−14まで、順番に並べて完成です。


今井先生 「では、水素イオン濃度と、水溶液の酸性・中性・塩基性との関係を確認してみましょう。」

水素イオン濃度が1×10−7mol/Lのときは、中性です。
10−7より左側は酸性で、10−6、10−5と大きくなるに従って、強い酸性ということになっていきます。
一方、10−7より右側は、塩基性になります。
10−8、10−9という風に、数字が小さくなるに従って、強い塩基性に変わっていきます。


ローザ 「ベースがもう一つありますけど、ということは、水酸化物イオン濃度についても、同じことをやるってことですか?」

今井先生 「鋭いですね。その通りです。」

  • [OH<sup>−</sup>]で見た酸性〜塩基性
  • きれいな対称形

10−7の角柱を「中性」のところに立て、今度は先ほどとは逆に角柱を置いていきます。
つまり、指数が大きいものは右側、指数が小さいものは左側になります。
10−7より右に行くほど強い塩基性、左に行くほど強い酸性ということになります(左写真)。

先ほどの水素イオン濃度の場合と比べてみると、きれいな対称形になっています(右写真)。
このように、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の、どちらを使っても水溶液の酸性・中性・塩基性を表すことができます。

  • 指数を足すと「−14に」
  • [H<sup>+</sup>]×[OH<sup>−</sup>]が一定に

ここで、水素イオン濃度と水酸化物イオンを重ねてみました。
すると、角柱の上面が、きれいに揃いました。


今井先生 「さきほど、温度が一定であれば、水溶液中の水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の積が一定の値になるという話がありましたね。これを見て、気づくことはありませんか?」

ケン 「あっ!縦に重ねた角柱の数値を見ると、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の組み合わせは、10−14と10、10−13と10−1というように、指数の部分が、足して “−14” になります。」

今井 「そうです。温度が25℃のとき、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の積が、1×10−14になるんでしたね。これを見れば、そのことが納得できるのではないかと思います。」

ケン 「なるほど!」

  • pH
  • 指数を取り出して−を外して対応させる

今井先生 「さて、このように、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度のどちらを使っても、水溶液の酸性・中性・塩基性を表すことができます。そこで、水素イオン濃度に注目して、さきほど所長が言った “ちょっとした工夫” をしてみましょう。もうひとつ、角柱が残っていると思いますので、それをこの上に載せてください。水素イオン濃度の指数を取り出して、マイナスを外したものを対応させるんです。」


こうすると、最も強い酸性の水溶液は0、中性の水溶液は7、最も強い塩基性の水溶液なら14というように表すことができます。
この数値を、pH、または水素イオン指数といいます。

このような “ちょっとした工夫” で数値化をすることで、『10−X』のように、ややこしい数字で表す必要がなくなり、分かりやすくなります。

  • pHの書き方
  • 次回もお楽しみに〜

pHは、pは小文字、Hは大文字で書くのが決まりです。
また、pHは単位ではありません。
そのため、「7pH」や、「1pH」といった書き方をせず、等号を使って「pH=7」のように書きます。
また、酸性の水溶液は「pH<7」、塩基性の水溶液を「pH>7」というように、不等号を使うこともあります。


所長 「では、今井先生、最後にまとめをお願いします。」

今井先生 「水溶液の酸性・塩基性の強さを表すには、pHが用いられます。身近なものを使ってpHの値を調べることもできます。また、pHを調べることで、地球環境のことも分かったりします。それについては、また次の機会に見ていきましょう。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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