NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

今回の学習

第26回

酸と塩基の強さ

  • 化学基礎監修:開成学園中学・高等学校教諭 宮本 一弘
学習ポイント学習ポイント

酸と塩基の強さ

  • 酸っぱさに驚くケン
  • レモン汁は弱い酸?

ローザが、フルーツジュースを作っているところ、ケンがやってきました。
ジュースもらったケンがそれを飲み始めると、あまりの酸っぱさに驚いてしまいます。
ローザがケンにあげたジュースは、100%のレモンジュースでした。


ケン 「こんなに強い酸を飲ませるなんて、僕を殺す気?」

ローザ 「おおげさね。レモンの酸はクエン酸よ。いくら濃くたって死にはしないわよ。」

ケン 「クエン酸だって、酸は酸だからね。金属だって溶かすくらいなんだから。」

ローザ 「金属を溶かすのは塩酸とか硫酸とかでしょ?レモン汁の酸とは違うわよ。」

ケン 「何が違うの?」

ローザ 「塩酸や硫酸は……強い酸。レモン汁のクエン酸は……弱い酸。」

所長 「実に興味深い議論だな。レモンのクエン酸もお酢の酢酸も確かに酸の仲間だが、塩酸や硫酸とは何が違うのか?『強い酸』、『弱い酸』というのはある意味正しいが、それがどういうことなのか、もう少し詳しく知る必要があるな!」

レモン汁は金属を溶かす?
  • レモン汁は金属を溶かす
  • 酢酸も金属を溶かす

レモン汁や酢酸が金属を溶かすのか、マグネシウムリボンを使用して実験しました。

レモン汁にマグネシウムリボンを浸すと、気泡が発生して溶け始めました。
次に、酢酸にマグネシウムリボンを浸すと、こちらも気泡が発生して溶け始めました。


ケン 「マグネシウムが溶けている!やっぱり金属を溶かすんだ。」

所長 「そう。レモン汁のクエン酸も、酢の酢酸も金属を溶かす。酸の共通の性質なんだ。」


では、酸の性質は全て同じなのでしょうか。
そこで今度は、反応のしかたを比べてみます。

塩酸と酢酸 金属との反応
  • 酢酸より塩酸のほうが激しく反応する
  • 塩酸はマグネシウムリボンを全て溶かした

試験管に、同じ濃度の酢酸と塩酸の水溶液を用意しました。

それぞれにマグネシウムリボンを入れると、どちらもマグネシウムリボンから気泡が発生して溶け始めます。
しかし、酢酸よりも、塩酸の水溶液の方が激しく反応しています。


酢酸と塩酸は同じ濃度ですが、このように、塩酸の方が激しく反応することが分かりました。
一口に酸と言っても、強い酸=強酸と、弱い酸=弱酸があります。

アレーニウスの定義では、酸は、「水に溶けて水素イオン・Hを生じる物質」のことです。
酸の強弱は、その水素イオンと深い関係があります。


ローザ 「もしかして、強い酸っていうのは、たくさんの水素イオンを出す物質のこと?」

所長 「その通り!」

ケン 「ということは、弱い酸は、水素イオンをあまり出さない。」

所長 「そうなんだ。それも実験で確かめてみよう!」

強酸と弱酸の違い
  • 水溶液に電極を浸して電球の明るさを比較
  • 塩酸のほうが明るい

先ほどと同じ濃度の塩酸と、酢酸の水溶液が用意されています。
強酸と弱酸の違いが水素イオンに関係していることを、実験で確かめてみます。

水溶液中では、イオンが電極に移動することで電気が流れます。
つまり、水素イオンが多いほうが、よりたくさんの電気が流れるということです。

まず、酢酸の水溶液に、電源装置と電球に接続した電極を浸します。
すると、電球が光りました。
次に、塩酸の水溶液に電極をすと、酢酸よりも電球が明るく光りました。

塩酸の方が明るいということは、水素イオンが酢酸の水溶液よりも多いということです。

  • 宮本 一弘 先生(開成学園中学・高等学校 教諭)
  • 電離している水素イオンの量が酢酸は少ない

強酸と弱酸の違いについて、特別研究員の宮本 一弘 先生(開成学園中学・高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。

右図は、塩酸と酢酸の水溶液を比べたものです。
塩酸の場合、ほとんどのHClが電離していて、水溶液の中に多くの水素イオンがあります。
それに対して酢酸・CHCOOHでは一部の分子しか電離せずに、水素イオンがとても少ない状態です。

塩酸で電気がよく流れるのは、たくさんの水素イオンを出すためです。
また、マグネシウムが激しく溶けるのも、水素イオンの数に関係があります。

水溶液中で多くの水素イオンを出す塩酸は、強酸と呼ばれます。
一方、水溶液中で一部だけが電離している酢酸は弱酸です。
レモン汁に含まれるクエン酸も、弱酸です。

  • 強塩基と弱塩基
  • 電離度

酸に「強酸・弱酸」があるように、塩基にも「強塩基・弱塩基」があります。
アレーニウスの定義では、塩基とは、水に溶けて水酸化物イオンOHを生じる物質です。
塩基の強弱を決めているのは、水酸化物イオンOHです。

代表的な強塩基である水酸化ナトリウム・NaOHが水に溶けるときの反応式は、左図の上の式のように表されます。
水酸化ナトリウム・NaOHは、ほぼすべてがNaとOHに電離しています。


一方、弱塩基のアンモニアNHが水に溶けるときの反応式は、左図の下の式のようになります。
NHとOHに電離するのは、一部の分子だけです。

塩基の強弱は、同じ濃度の場合、水に溶かしたときに電離して生じる水酸化物イオンの数で決まります。
同じ濃度の場合、酸の強弱は水素イオンの数で決まります。

酸や塩基が強いか弱いかを判断する物差しになるものが、「電離度」です。
電離度とは、溶かした酸や塩基のうちどれぐらいが電離したかという割合で、αで表されます(右図)。

電離度とは?
  • 塩酸の電離度
  • 酢酸の電離度

塩酸と酢酸の場合を例に、電離度を見てみます。

水に100個の塩酸HCl分子を溶かしたとします。
塩酸は水溶液の中で、ほぼすべてのHClが電離します。
これを電離度の式に当てはめてみます。

電離度α=電離しているHCl[mol]/溶けたHCl[mol]


となるため、溶けたHClの電離度は1となります。

一方、酢酸は分子100個のうち、ほぼ1個が電離するくらいです。
溶けた酢酸100個に対し、電離している酢酸は1個のため、電離度は0.01となります。

塩酸の水溶液は電離度1、酢酸の水溶液は電離度0.01で、強酸の塩酸の方が電離度が大きくなっています。
このように、電離度が分かれば、酸の強弱が分かる、ということになります。

塩基も同様に電離度から強弱が分かります。

紅花染めで使われる酸と塩基
  • 群馬県高崎市にある染料植物園
  • 紅花

酸と塩基は、古くから生活の中で利用されてきました。
自然の草花を使って繊維を染める草木染もその一つです。

ローザは草木染の染色方法を調べるため、群馬県高崎市にある染料植物園を訪ねました。
この植物園ではガマズミや藍、コブナグサなど、草木染に使われるさまざまな植物を栽培しています。

今回は、草木染の一つである紅花染めに挑戦します。

紅花染めは、古くから世界各地で行われてきた染色法の一つです。
日本でも、奈良時代にはすでに行われていました。
アフリカ原産とも言われる紅花は、シルクロードを経て、はるばる日本に伝えられたとされています。

  • 染色家の山崎和樹さん
  • 一晩水につけた紅花

紅花染めの指導をしていただくのは、染色家の山崎 和樹さんです。

はじめに、乾燥させた紅花を一晩水につけたものを、絞っていきます。

  • 黄色い色素を、紅花から絞り出す
  • 残った赤い色素は、どうやって取り出す?
  • 塩基性の炭酸カリウム

紅花には、黄色の色素と赤い色素が入っています。
黄色の色素は水に溶けやすい性質があります。
一方、赤い色素は、水に溶けにくい性質があります。

今回使わない黄色い色素を紅花から絞り出すと、赤い部分が残りました。
残った赤い色素は、水に溶けにくい性質がありますが、どのように取り出すのでしょうか。

そこで用いるのが、炭酸カリウムです。
炭酸カリウムは、塩基です。

  • 紅花の赤い色素・カルタミン
  • 塩基を加えるとカルタミンの構造が変化
  • 水に溶けるようになる

紅花の赤い色素・カルタミンは、もともと水と結びつきにくい構造をしています。
しかし、塩基を加えることでカルタミンの構造が変わり、水との親和性が高くなります。
そのため、水が色素の間に入り込み、水に溶けるようになります。

  • カルタミンを加えて2時間ほど置く
  • 2時間後、赤い色素を絞る

十分に赤い色素を取り出すために、炭酸カリウムを加えて2時間ほど置きます。

2時間後、紅花を絞ると、赤い色素が出てきました。

  • 酸を加えて染料液を中和
  • 鮮やかな赤になったら染め頃
  • だんだん赤が濃くなる

ローザ 「ここで、この液にストールをつければ完成ですね。」

山崎さん 「いえ、それではダメなんです。この液では、この繊維と赤い色素の親和性が少なくて、うまく染まらないんですよ。」

ローザ 「2時間も待ったのに……。」

山崎さん 「そうなんです。もうひと工夫いるんです。」


紅花の赤い色素は、水に溶けやすい状態になっているので、このままでは繊維に定着しません。
そこで用いるのが、酸であるクエン酸です。
酸を加えて染料液を中和すると、赤い色素が水に溶けにくくなって、繊維との親和性が高まり染着しやすくなります。
これは、「赤い色素を再び水に溶けにくい状態に戻す」ということです。

クエン酸を水に溶かし、染料液に加えていきます。
染料液の色が、鮮やかな赤になってきたら染め頃です。

ローザが染料液にストールを浸すと、すぐに鮮やかな赤色に染まっていきました。


ローザ 「うわー!だんだん赤が濃くなってくる!」

  • 水洗いをして乾かせば完成

水洗いをして乾かせば、完成です。


ローザ 「これ、ものすごく鮮やかな色ですね。紅花染めって、とても古くからあったものだと思うんですけど、酸とか塩基とか知識もない時代によく考えたものですね。」

山崎さん 「そうですよね。昔の人は、酸とか塩基とかの概念はなかったかもしれませんが、理屈よりも経験から生まれたもので、より美しく、鮮やかに、より定着するような方法を、試行錯誤して見つけたんでしょうね。」

多段階の電離
  • 1価・2価・3価の、主な酸
  • リン酸の多段階の電離

所長 「ところで酸には、“2価の酸”、“3価の酸” というような『価数』というものがあったのを覚えているかな?」

ケン 「水素イオンを1分子からいくつ放出できるかということです。」


左図は1価・2価・3価の、主な酸をまとめたものです。
2価と3価の酸は、電離してそれぞれ水素イオンを2つ、あるいは3つ放出します。
しかし、その電離は必ずしも一気に進むわけではなく、少しずつ段階的に電離が進みます。

これを多段階の電離といいます。

例として、3価の酸であるリン酸・HPOの場合を見てみます(右図)。

リン酸は、1度目の電離で、水素イオンとリン酸二水素イオンになります。
そして、リン酸二水素イオンは、2度目の電離で水素イオンとリン酸一水素イオンになります。
さらに、リン酸一水素イオンは、3度目の電離で水素イオンとリン酸イオンになります。

このように、同じ酸でも、いろいろな状態があり得ます。
特に弱酸の場合、電離度は濃度や温度によっても変化します。

  • 紅茶の色はレモンを入れると薄くなる
  • 次回もお楽しみに〜!

ブレイクタイムにローザが紅茶を運んできました。


ローザ 「お待たせしました〜。レモンティーですよ。」

所長 「お、ローザありがとう!レモンティーといえば、このレモンを入れると、紅茶の色が薄くなるのを知っているよね?」

ローザ 「もしかして、レモンの酸が関係しているんじゃないですか?」

宮本先生 「そうですね。紅茶に含まれるテアフラビンという色素は、酸にあうと色が薄くなるんです。」

ケン 「じゃ、塩基性になると?」

宮本先生 「色が濃くなります。」

ローザ 「紅花染めから紅茶まで、酸と塩基は、結構身近なことと関わっているんですね!」

所長 「そうだな。でもそれだけじゃない。酸と塩基の話はまだまだ続くぞ。酸と塩基の本当の面白さはこれからだ!」


それでは、次回もお楽しみに〜!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約