NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第25回

酸と塩基

  • 化学基礎監修:開成学園中学・高等学校教諭 宮本 一弘
学習ポイント学習ポイント

酸と塩基

  • 紫キャベツに酢をかける
  • 色が変わった

ケンとローザが昼食をとろうとしています。
紫キャベツのサラダにかけるドレッシングがなかったので、代わりに酢をたっぷりとかけるローザ。
すると、しだいに紫キャベツの色が変わってきます。


ケン 「あれ、だんだん紫キャベツが赤くなってきた!」

ローザ 「え?そう?」

ケン 「さっきはこんなに赤くなかったよ。」

ローザ 「あー。確かにそうね。どうしてかしら?」

所長 「それは、紫キャベツに含まれる “アントシアニン” という色素が、酢のために酸性になって色が変ったんだ。」

ケン 「酸性になると色が変わるんですか?」

  • アントシアニンは塩基性で緑色に
  • リトマス紙はリトマスゴケから作られた

所長 「そうだ。アントシアニンは酸性なら赤だが、塩基性なら緑色になる。そして、目玉焼きに入れるとこんな具合だ。」

ローザ 「何この色!気持ち悪い!」

ケン 「卵の白身は塩基性なのか。酸性・塩基性が色で分かるなんてリトマス紙みたいですね。」

所長 「そうだな。リトマス紙も元々はリトマスゴケという生物の色素から作られたんだ。」

ローザ 「塩基って、生き物とも関係が深いんですね。」

所長 「酸と塩基は、なかなか奥が深いぞ。今日はその真実に迫ってみよう。」

身近な酸と塩基
  • 塩基性とアルカリ性の違い

身の回りにある酸性・塩基性の物を見ていく前に、「塩基性」と「アルカリ性」の違いを整理します。
“塩基” に比べ、“アルカリ” という言葉の方が、私たちに馴染みのある言葉だと言えるかもしれません。
しかしアルカリよりも、塩基の方が少し広い概念の言葉です。

塩基の中で「水に溶けた物」を「アルカリ」といい、その水溶液の性質を「アルカリ性」といいます。
塩基は、水に溶けていないものも含んでいます。

  • 酸性の物
  • 酢には酢酸

まず、酸性の物から見ていきます。

【酸性の物】
トイレ用洗剤、ヨーグルト、食酢、レモン、ミカン、オレンジ、リンゴ、炭酸水


この中には果物が並んでいます。
たとえばレモンをかじると酸味を感じるのは、レモンにクエン酸という酸が多く含まれているためです。
また、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、牛乳の乳糖などを分解して乳酸を作り出します。
そのため、ヨーグルトは酸性になり、少し酸味があります。
酢も酸味を感じますが、これは酢酸が含まれているためです。

  • 塩基性の物
  • 水酸化ナトリウムがタンパク質を溶かす

続いて、塩基性についてです。

【塩基性の物】
漂白剤、パイプ用洗剤、重曹、洗濯用洗剤、石けん

石けんも、塩基性です。
また、パイプ用洗剤も塩基性を示します。
パイプ用洗剤は、含まれる水酸化ナトリウムが、パイプを詰まらせる髪の毛などのタンパク質を溶かします。

重曹はホットケーキを作るときによく使われます。
重曹には炭酸水素ナトリウムが含まれており、ホットケーキを膨らませるはたらきをします。

このように酸と塩基は、身の回りのさまざまなものに含まれており、用途に応じてうまく使い分けられています。


ローザ 「でも所長。根本的な疑問があるんですが。そもそも酸と塩基って……何ですか?」

酸ってなに?
  • 宮本 一弘 先生(開成学園中学・高等学校 教諭)
  • 酸の特徴

ここで、「酸と塩基」について、特別研究員の宮本 一弘 先生(開成学園中学・高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。

宮本先生 「ではまず、酸の特徴には、どんなことがありますか?」

ケン 「酸は青いリトマス紙を赤に変えます。」

ローザ 「指示薬のBTB溶液を、黄色に変えます。」

宮本先生 「そうですね。でも、それだけではないんですよ。そのほかにも、金属と反応するなどの特徴があります。」

  • 塩酸にマグネシウムを入れる
  • ポンという音がして燃焼

酸と金属との反応を、塩酸とマグネシウムの実験で確かめてみます。
塩酸の入った試験管に、マグネシウムを入れると、マグネシウムから気体が発生しました。
試験管に気体をためた後、炎を近づけると、「ポン」という音を出して燃焼しました。

このことから、発生した気体は水素だと分かります。


ではここで、酸の特徴をまとめてみます。

【酸の特徴】
・水溶液は酸味を示す
・青色リトマス紙を赤色に変える
・BTB溶液を黄色に変える
・亜鉛、マグネシウムなどの金属を溶かし水素を発生させる



宮本先生 「レモンなどは酸っぱい味がしますね。ただし、果物ならいいですが、実験のときは、その物質の性質を味覚で確かめることはしないでくださいね。」


上に示したような水溶液の性質を「酸性」といいます。
また、酸性を示す物質を「酸」といいます。



ローザ 「これで酸性の特徴については完璧ですね。」

所長 「いやいや、そうとばかりは言えないぞ。」

ケン 「えっ、どういうことですか?」

宮本先生 「ではそのことに関しては、次の実験で説明しましょう。」

  • 氷酢酸とは
  • 純度の高い氷酢酸の方が反応が穏やか

試験管に「氷酢酸」と、それを水で溶かした「酢酸水溶液」を用意します。


ローザ 「氷酢酸って普通の酢酸と違うんですか?」

宮本先生 「気温が低くなる冬には、凍って固体になるので凍る酢酸 “氷酢酸” と呼ばれています。ここで大事なポイントは、ほとんど水分を含んでいないということです。」

純度が高い酢酸「氷酢酸」にマグネシウムを入れてみます。
ケンは、「酢酸は酸性なので、金属と反応するはず」と予想しましたが、実際はマグネシウムを入れた後、少ししてから徐々に気泡が発生しました。

次に、水を加えて薄めた「酢酸水溶液」で調べてみます。
先ほどと同様にマグネシウムを入れると、氷酢酸に比べて、激しく反応しています。

このことから、純度が高い酢酸「氷酢酸」よりも、酢酸水溶液の方が反応しやすいことが分かります。


ケン 「同じ酢酸なのに、反応に違いが出たのは、どういう理由なんですか?」

宮本先生 「それは、もう一つ実験をすると分かります。」

ローザ 「どんな実験ですか?」

宮本先生 「それは、氷酢酸と酢酸水溶液が “電気を通すかどうか” という実験です。」

  • 氷酢酸は電気を通さない
  • 酢酸水溶液は電気を通す

氷酢酸と酢酸水溶液が入ったビーカーを用意し、電球につながれた電極を、それぞれの水溶液に入れてみます。

最初に、氷酢酸に電極を入れてみますが、電球は点灯しません。
つまり、氷酢酸は電気を通さないことが分かります。

次に、酢酸水溶液に電極を入れてみます。
すると、今度は電球が点灯し、酢酸水溶液は電気を通すことが分かりました。

氷酢酸は電気を通さず、酢酸水溶液は電気を通しました。
このような違いが出たのは、なぜでしょうか。

水素イオンを出すと酸性に

酢酸水溶液、つまり酢酸が水に溶けると、上の図のようにCHCOOHとHに別れ、水素イオン・Hが出ます。

酸性を示すのは「水素イオン・H」があるからです。
また、電気を通すのはCHCOOHと、Hのイオンのためです。

酢酸以外のほかの酸も、水溶液の中では水素イオンを出すのでしょうか。
ほかの酸の例も見てみます。

塩酸は水溶液中で電離して、水素イオンを出します。
硫酸も電離して水素イオンを出します。

酸味や金属との反応など、酸の水溶液が示す共通の性質は、水素イオン・Hによるものです。


ケン 「なるほど。氷酢酸は、水をほとんど含んでいないので、水素イオン・Hをあまり出さない。そのため、金属との反応が弱くて、電流もあまり流れなかったんですね。」

宮本先生 「そういうことです。そして、酸の1分子から放出することのできる水素イオン・Hの数を『酸の価数』といいます。」


たとえば、塩酸・HClは、Hを1個放出できるので「1価の酸」といいます。
また、硫酸・HSOは、Hを2個放出できるので、「2価の酸」といいます。

「酸は水に溶けて、水素イオンを出す物質」と定義することができます。
この酸の定義を提唱した人物の名前をとって、これを「酸についてのアレーニウスの定義」といいます。

塩基ってなに?
  • 塩基

次に、塩基の特徴を見ていきます。

【塩基の特徴】
・薄い水溶液は苦味があり、手につくとぬるぬるする
・赤色リトマス紙を青色に変える
・BTB溶液を青色に変える
・フェノールフタレイン溶液を赤色に変える
・酸と反応して酸性を打ち消す



ローザ 「薄い水溶液は苦味があり、手につくとぬるぬるする。」

所長 「ただし、実験のときは、なめたり触ったりしてはいけないぞ。」


現在では、塩基という言葉は「酸を中和する物質の総称」として使われることが多くなっています。
そして、水に溶ける塩基を、特にアルカリと呼んでいます。



ケン 「ところで、アレーニウスは塩基については、どのように定義したんですか?」

所長 「アレーニウスは塩基を、“水に溶けて水酸化物イオン・OHを生じる物質” とした。」

OH<SUP>−</SUP>を生じるものが塩基

代表的な塩基の例で見てみます(上図)。

水酸化ナトリウム・NaOHや、水酸化カルシウム・Ca(OH)の水溶液は、どちらも水に溶かすと電離して水酸化物イオン・OHを生じます。
この水酸化物イオンを生じるものが、「塩基」です。


塩基にも酸と同じように「価数」があります。
塩基については、電離してOHとなることのできるOHの数を「塩基の価数」といいます。

たとえば、水酸化ナトリウム・NaOHは、OHを1つ生じるので「1価の塩基」といいます。
また水酸化カルシウムCa(OH)は、OHを2つ生じるので「2価の塩基」といいます。


ここでアレーニウスの酸・塩基の定義をまとめると、

酸:水に溶けて水素イオン・Hを生じる物質
塩基:水に溶けて水酸化物イオン・OHを生じる物質


ということになります。

  • 広い意味での酸と塩基の定義

所長 「酸と塩基の定義は、アレーニウスによると “水に溶けて” というのがポイントだったな。」
 
ケン 「はい。つまり、水と反応しないと、酸か塩基かを、決めることができないということでした。」

ローザ 「ということは、水に溶けないと説明ができない。」

所長 「そういうこと。水に溶けにくい物質や、気体同士の場合は説明できない。」

ケン 「それでは、困りますよね。」

所長 「そこで、ブレンステッドさんと、ローリーさんの登場だ。この2人は、水なしでも使える “広い意味での酸と塩基” の定義を考えたんだ。」

ローザ 「広い意味っていうのは?」

所長 「それについては、宮本先生に実験を見せてもらおう。」

  • 濃アンモニア水と濃塩酸
  • 白煙が発生

宮本先生に、気体同士の反応の実験を見せていただきました。

酸の濃塩酸と、塩基の濃アンモニア水を用意します。
どちらも、気体が水に溶けている水溶液で、典型的な酸と塩基です。
瓶のふたを取ると、これらの水溶液からは塩化水素とアンモニアが気化して出てきます。

濃塩酸をつけたガラス棒を、濃アンモニア水に近づけてみます。
すると、白い煙が発生しました(右写真)。

これは、気体同士が反応したためです。

  • 気体の反応

この反応をイオンの移動で考えてみます。

上の化学反応式では、濃塩酸に溶けていた気体の塩化水素・HClと濃アンモニア水に溶けていた気体のアンモニア・NHが反応して、塩化アンモニウム・NHClという物質ができたことを表しています。


宮本先生 「白い煙のように見えたのは、塩化アンモニウムの微結晶、つまり小さな結晶でした。水溶液の酸と塩基の反応と同じような反応が起こっていたんです。しかしこれは、気体同士の反応なので、アレーニウスの酸と塩基の定義は当てはまりません。」


アレーニウスの定義とは、「酸は水溶液中で電離して水素イオン・Hを出す物質」というものでした。
また、「塩基は水溶液中で電離して水酸化物イオン・OHを出す物質」です。

  • 広義の酸と塩基の定義
  • 次回もお楽しみに〜

そこでブレンステッドとローリーは、アレーニウスの定義を広げるため、イオンのやりとりに注目しました。
先ほどの実験の反応では、HClはアンモニアに水素イオン・Hを与えています(左図)。
一方、アンモニアNHは、水素イオン・Hを受け取っています。

そのため、ブレンステッドとローリーは、酸と塩基を、

「酸はHを与える分子やイオンであり、塩基はHを受け取る分子やイオンである」

と、広い意味で定義することにしました。
これなら、水溶液以外の反応についても、酸や塩基を定義することができます。


ケン 「水素イオンを与えるか受け取るか。」

ローザ 「酸かアルカリかって言っていたときより、世界が広がった感じがしますね。」

所長 「そうだろう。酸と塩基の話は、まだまだ奥が深いんだ。」


それでは、次回もお楽しみに!

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