NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第24回

化学の基本法則

  • 化学基礎監修:立教新座高等学校教諭 渡部 智博
学習ポイント学習ポイント

化学の基本法則

  • 燃焼とは

ケンが「物が燃える」という反応について、実験レポートを書いていますが、煮詰まっています。


所長 「おーい、ケン!レポートはまとまったか?」

ケン 「物が燃える反応を突き詰めて考えてみると、けっこう難しい現象だなあ、とか考え始めて……。」

ローザ 「そんなことを言ってると、(所長の怒りに)火に油を注いじゃうよ!」

所長 「何を言っているんだ!燃焼とは『発熱と発光をともなう酸化反応』のことだ。2人とも、なぜそんなに火にこだわっているんだ。」

ケン 「燃焼というのは、単純なようでいて、意外に奥が深い化学反応なんじゃないかと思えてきて……。」

所長 「確かにそうだな。歴史の上でも、燃焼についての実験をきっかけに化学全体につながる基本法則が発見されたんだ。では、燃焼を通して化学の奥深さを学ぶ実験の火蓋を切ろう。」

木を燃やすと軽くなる?重くなる?
  • 木材と分銅がつりあっている
  • 木が燃えて軽くなった

はじめに、燃焼についての基本的な実験をしてみました。
上皿てんびんの上には、木材と分銅が置かれており、つりあった状態です。
つまり、両者は同じ重さです。
この木を燃やし、燃焼が終わったときに、質量はどうなっているでしょうか。

実際に火をつけて燃やしてみると、燃えつきたときには、てんびんは重りの方に傾いていました。


ケン 「木は燃えて軽くなったということですね。」

所長 「そう、木は燃えて軽くなった。ではどうしてそうなったのか、説明できるかな?」

ローザ 「燃えることによって、木に含まれている水分が蒸発して軽くなった、ということじゃないですか?」

所長 「うん。それもある。」

ケン 「そうか!木が燃えて二酸化炭素が発生したんですよ。だから、軽くなった!」

所長 「その通り。木材にはたくさん炭素が含まれているから、燃えて二酸化炭素が発生したんだ。」

金属を燃やすと軽くなる?重くなる?
  • スチールウールは分銅とつりあっている

所長 「では、金属だったらどうだろう?主に鉄でできているスチールウールを燃やしたら、重さはどうなると思う?」

ローザ 「やっぱり軽くなるんじゃないかな。燃えて、気体が発生して、軽くなる。」

所長 「どんな気体?」

ローザ 「二酸化炭素かな?」


今度はスチールウールで実験しました。
スチールウールは、燃やす前はてんびんの上で重りとつりあっています。

  • スチールウールを燃やす
  • スチールウールが重くなった

ピンセットでスチールウールを持ちながら着火し、燃焼させます。

燃焼が終わり、スチールウールをてんびんに戻すと、今度はスチールウールのほうに傾いています。
つまり、スチールウールは重くなりました。


所長 「どうして重くなったんだと思う?」

ローザ 「燃焼というのは酸化するということだから……。」

ケン 「スチールウールが空気中の酸素と結びついて重くなったんだ!」

ローザ 「でも、二酸化炭素が発生して、その分軽くなったりはしないんですか?」

所長 「スチールウールには、炭素はほんの少ししか含まれていないから、二酸化炭素が発生するとしても、ごくわずかだな。」

ローザ 「それよりも、空気中の酸素と結びつく量の方が多いってことですか。」

所長 「そうだ。物が燃えても必ずしも軽くなるとは限らない。そもそも、燃焼とは、一体どんな現象なのか。歴史上の化学者たちも、そのことを最初から正確に理解していたわけではないんだ。」

燃焼とは何か?
  • 渡部 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)

燃焼が正確に理解されるまでの歴史について、特別研究員の渡部 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)に解説していただきました。

「燃焼」は、人類にとって身近な化学反応ですが、その意味するところを正確に理解するのには時間がかかったといいます。


渡部先生 「今でこそ、燃焼というのは物質が空気中の酸素と結びつくことだと皆さん理解しているわけですが、少し時代をさかのぼって、18世紀にはどんなふうに考えられていたのか、振り返ってみましょう。」

  • フロギストン説
  • フロギストンは物に軽さを与える?

18世紀の西洋では、「フロギストン説」が主流でした。
物質にはフロギストンという一種の元素が含まれており、燃焼とは、「物質に含まれているフロギストンが外に逃げ出すこと」だと考えられていました。
「フロギストン」は “燃える” という意味のギリシャ語です。
木炭や石炭などの燃えやすい物質にはフロギストンがたくさん含まれており、燃えにくい物質には少ししか含まれていないと考えられていました。

フロギストン説では、木が燃えて軽くなることを説明できます。
その一方で、スチールウールのように燃えると重くなる場合は、説明がつきません。
その現象を説明するために、フロギストンは物に軽さを与えるもので、フロギストンが出ていけば、物は重くなるという考え方をする人もいました。
しかし、それでは燃えて軽くなる場合を説明できません。

  • ラボアジェ
  • スズは燃えると重くなる

そこでフロギストン説にとらわれず、物が燃えるとはどのようなことか、徹底的に調べた人物がいました。
18世紀のフランスの化学者、アントワーヌ・ラボアジェです。

物が燃えるとき何が起こっているのかを知るため、ラボアジェは金属のスズを燃やし、燃える前後で質量がどう変化するのか正確に測定しました。

実は、同様にスズを燃やす実験は、ラボアジェに先立つこと100年前にも行われていました。
その実験の結論は、スズは燃えると重くなるということでした。

  • 反応前後で全体の重さは変わらない
  • 空気に含まれるある気体とは?

ラボアジェは、この実験をできる限り厳密な条件でもう一度行うことにしました。
燃やすスズをはじめ、使う容器や容器内の空気も含め、反応に関係するすべての物質の質量を計測しました。その上で、燃焼前後で質量がどのように変化するのか確かめました。

すると、燃焼の前後で、関係するすべての物質の質量の合計は変わりませんでした。
しかし内訳を見ると、スズの質量は増えています。
全体の質量は変わらないため、スズの質量が増えた分だけ何かが減っていなければ計算が合いません。

容器の質量は変わらないので、容器内の空気に含まれるある気体がスズと結びついたのではないかとラボアジェは考えました。

  • 水銀を燃やす
  • 残った空気に生き物を入れると死ぬ

その気体の正体を知るためのヒントになる実験がありました。
水銀を容器の中で燃やすと、ある量だけ空気の質量が減り、水銀は赤い色の水銀に変わります。
このとき、残った空気の中に生き物を入れると死んでしまいました。

  • このとき発生した気体では生き物は死なない
  • 「ある気体」は今で言う酸素だった

さらに赤い色の水銀を加熱すると、ある気体が発生して水銀は燃焼前と同じ質量に戻りました。
このとき発生した気体の中に生き物を入れても、死ぬことはありませんでした。


水銀に結びついたり離れたりするこの気体を調べてみると、今で言う酸素だということが分かりました。

ラボアジェはこうして、燃焼とは物質が酸素と結びつくことであり、化学反応の前後で全体の質量は変化しないことを証明しました。
これが「質量保存の法則」です。


所長 「化学反応の前後で全体の質量が変化しないということは、反応に関わった物が消えてしまったり、別の物が急に現れたりしないということだ。」

ケン 「だから反応に関わった物を全部集めて調べれば、どんな反応だったのかが分かるということですね。」

渡部先生 「そうです。化学の重要な基本法則の一つです。」

所長 「それを発見したのが、近代化学の父とも呼ばれるラボアジェだ。その天才が、あんな悲劇に見舞われるとは皮肉なことでしたね。」

  • ギロチンの露と消えたラボアジェ

ラボアジェは研究に没頭するかたわら、実験の費用を得るため、税金を集める徴税請負人の仕事をしていました。
やがて国全体を揺るがす大事件、フランス革命起こります。
国王や貴族が次々と処刑され、税金を集める徴税請負人も市民から目の仇にされました。
そしてラボアジェも裁判にかけられ、有罪の判決が下されました。

1794年、ラボアジェは50歳の若さでギロチンの露と消えました。
同時代のある科学者は、「ラボアジェの首を切るのは一瞬だが、彼と同じ頭脳が再び現れるには100年かかるだろう」と嘆いたといいます。

定比例の法則とは?
  • ジョゼフ・プルースト

その後 彼の考えを受け継ぎ、さらに推し進めたのが、やはりフランスの化学者ジョゼフ・プルースト(1754〜1826年)でした。
ジョゼフ・プルーストは、もうひとつの化学の基本法則「定比例の法則」を発見した化学者です。

定比例の法則とはどんな法則か、渡部先生に実験を見せていただきました。

  • 銅粉を3皿用意
  • 銅と酸素を結合させる

銅粉を、1.00g、2.00g、3.00gの3皿用意します。
次に、それぞれを加熱して、酸素と結合させます。
このときできる化合物、酸化銅(II)の質量を計測し、結合した酸素の質量を調べてみます。

  • 銅粉を加熱する
  • 1.25gになった

まずは1.00gの銅粉から順に、ガスバーナーで加熱していきます。
加熱後、冷やして質量を計測すると、1.25gでした。

  • 実験結果の表

残りの銅粉も同様に加熱して質量を計測します。

加熱前後で比べると、上の表のようになりました。
銅が酸素と結合して、質量がどれも増えていることが分かります。

  • 実験結果のグラフ
  • 水色部分は化合した酸素の質量

この結果をグラフにしてみました(左写真)。
横軸が銅の質量、縦軸が反応後の酸化銅(II)の質量です。

反応後も質量が変わらなければ、2本の直線のうち、傾きが小さいほう(45度)の点線で示されるはずです。
しかし実際には質量は増えており、増えた分は実線と点線との差の部分で、グラフ中では水色で表されています(右写真)。

  • 銅と結合する酸素の量が一定の割合

この差は、銅と化合した酸素の質量を表しており、銅と結合する酸素の量の関係が常に一定の割合になっていることが分かります。


渡部先生 「銅と酸素がどれも4:1です。1gのときも、4:1。2gのときも4:1、3gのときも4:1という割合で結合しているんです。酸化銅(II)であれば、どんなものでも質量の比は、銅:酸素、が4:1となります。

所長 「定比例の法則というのは、『化合物を構成する元素の質量の比は常に一定である』ということなんだ。」

物質は何からできている?
  • 17世紀までの物質観

ローザ 「なるほど。でも、それって、大発見なのかもしれないけど、なんとなく、当たり前のような。」

ケン 「質量保存の法則にしても、定比例の法則にしても、『そりゃそうだろ』っていう感じはありますね。」

所長 「今となっては当たり前に聞こえるかも知れないが、当時は決して当たり前ではなかった。」

渡部先生 「物質は何からできているのか?という物質観が、この基本法則でガラリと変わってしまったんです。17世紀まで西洋の学者たちの多くは、アリストテレスの4元素説を信じていました。」

所長 「4元素とは、火・空気・水・土のことですよね。」

渡部先生 「すべての物質のもとになる共通の物質に、湿・乾・熱・冷の4つの性質が加わると、たとえば乾と熱なら火に変わり、湿と冷なら水に変わる。乾と冷なら土に変わり、熱と湿なら空気に変わる。こうして世界の基本となる火や空気や水や土が生まれ、さまざまな物質が作られているということなんです。」

  • ジョン・ドルトンによる原子説
  • 次回もお楽しみに〜

この考え方に沿えば、同じ物質が全く違うものに変化することができます。
別の金属から金を作り出すという錬金術も、この考え方から生まれたといいます。

しかし、「質量保存の法則」では、化学反応の前後で全体の質量は変わりません。
しかも「定比例の法則」により、必ず同じ比率で反応します。
これらの考え方などを押し進めたときに出てくる考え方が、「物質は粒子でできている」という原子説です。

原子説は、イギリスの化学者 ジョン・ドルトン(1766〜1844年)によって提唱されました。
物質は原子などの粒子でできていると考えると、質量保存の法則や、定比例の法則が成り立つ理由をうまく説明することができます。


ケン 「化学反応で全く違うものができるわけではなくて、分子や原子の結びつきが変わるだけだ、ということですね。」

所長 「そして、あらゆる物質が原子や分子などの粒子でできていると考えることで、さらにさまざまな現象を化学の力で解明できるようになっていったんだ。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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