NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第17回

構成粒子と物質の分類

  • 化学基礎監修:東京学芸大学附属高等学校教諭 岩藤 英司
学習ポイント学習ポイント

構成粒子と物質の分類

  • どちらも主成分は二酸化ケイ素
  • 構成粒子の種類、結合のしかたが異なる

ローザが水晶玉をじっくりと見つめています。

ローザ 「水晶って、何だか神秘的な輝きがあるのよね。昔から、パワーストーンとして
祈祷や儀式で使われてきたっていうのも、分かる気がするわ。」

ケン 「研究者らしくない発言だね。見た目は、ガラスと大して違わないんじゃない?ガラス玉と比べてみてよ。見分けがつかないでしょ。」

ローザ 「何いってるのよ。輝きが全然違う……ような……?」

ケン 「主な成分はどちらも二酸化ケイ素だよ。しかも、見た目もそっくり。」

ローザ 「うーん。何が違うんだろう?」

所長 「水晶の輝きは古くから人々を魅了してきた。占い師や魔術師は水晶の光の中に霊的な存在を見いだすこともある。その真偽はともかく、水晶とガラスは、主な成分は同じでも違う物質だ。」

ローザ 「何が違うんですか?」

所長 「それぞれを作る構成粒子の種類。そして、結合のしかたが違うんだ。粒子が結びつき、さまざまな結晶を形づくる神秘の力を知るがいい。」

4種類の結晶
  • 4種類の結晶

水晶とガラスの違いを考える前に、主な結晶についてまとめてみます。

これまで、

・金属結晶
・イオン結晶
・分子結晶
・共有結合の結晶
という4種類の結晶を見てきました。
これらは、それぞれ違う種類の粒子で構成されています。

  • 金属結晶の代表
  • 金属結合の性質

金属結晶の代表は、金です。
構成粒子はもちろん、金属原子であり、この金属原子が金属結合して結晶ができています。
銀や鉄、鉛も同様です。
金属結合とは、たくさんの金属原子を自由電子が結び付けている結合です。
自由電子が電気や熱のエネルギーを運ぶため、電気伝導性や熱伝導性が大きいという性質があります。

  • NaClの結晶
  • 固体では電気を通さない

イオン結晶では、代表例として、塩化ナトリウム・NaClが挙げられます。

イオン結晶の構成粒子は陽イオンと陰イオンで、塩化ナトリウムは、陽イオンのNaと陰イオンのClがイオン結合してできた結晶です。
イオン結晶は固体では電気を通しませんが、融解したり水溶液にしたりすることで電気を通します。

  • 分子間力による結合
  • ドライアイスは分子結晶の代表

分子結晶の構成粒子は分子で、例としてドライアイスが挙げられます。
ドライアイスは、二酸化炭素の分子が集まってできた分子結晶です。
分子結晶は、分子の間に働く引力=分子間力によって分子が引き合い、規則正しく配列してできた結晶です。
二酸化炭素の分子間にはたらく分子間力は弱いため、小さなエネルギーで離れてしまいます。
このように分子結晶は、分子間力が弱いため融点が低いという特徴があります。
ドライアイスが、常温でも固体から気体に変わる「昇華」をしやすいのはこのためです。

  • 共有結合の代表

共有結合の結晶の例として、ダイヤモンドや黒鉛があります。
ダイヤモンドや黒鉛の場合、共有結合の構成粒子は炭素の原子で、多くの原子が互いに電子を共有する共有結合によって結晶ができています。
共有結合は非常に強固な結合のため、融点は極めて高いという特徴があります。

水晶とガラス
  • 水晶はどの結晶?
  • 岩藤 英司 先生(東京学芸大学附属高等学校 教諭)

ローザ 「ところで所長、水晶とガラスは、どれに分類されるんですか?」

所長 「水晶は、鉱物としては石英だな。主な成分は、二酸化ケイ素SiOだ。これが水晶の原石だ。」

ローザ 「綺麗!これ、先の方がとがってますけど、人がこの形に削ったわけじゃないですよね?」

所長 「もちろん自然がつくり出した形だ。水晶はどの結晶に当てはまるかな?」

ローザ 「見た目は透明で、塩化ナトリウムの結晶に似てますよね。イオン結晶かな?」

ケン 「いやいや、しっかり結びついた共有結合の結晶じゃないかな。」


ここで、特別研究員の岩藤 英司 先生(東京学芸大学附属高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。

  • 水晶の構造
  • ガラスはアモルファス

水晶、つまり石英の結晶は、共有結合の結晶です。
左図は、水晶の構造を平面的に表したものです。
水晶の主成分は二酸化ケイ素で、結晶の中ではケイ素と酸素が価電子を共有する「共有結合」をして整然と並んでいます。

それに対して、ガラスは結晶ではありません。
ガラスの主成分は水晶と同じ二酸化ケイ素ですが、ガラスの場合はケイ素と酸素が整然と並んでいません(右図)。
さらに、ガラスはNaのようなイオンも含んでいます。
このように、構成粒子の配列が不規則な状態をアモルファス、または非晶質といいます。

  • ガラスの融点は決まっていない
  • ガラスは壊れやすい

ローザ 「結晶とアモルファスでは性質も変わるんですか?」

岩藤先生 「共有結合している石英の結晶の融点は1500℃以上にもなります。融点が高い理由は、ケイ素と酸素が、がっちり結合して規則正しく繋がっているからなんです。」

ローザ 「だから、高温にしないと 溶けないんですね。」

岩藤先生 「そうなんです。それに対して、アモルファスのガラスには決まった融点がありません。およそ600℃〜700℃くらいで軟らかくなります。その軟化する特徴を利用してガラス製品が作られているんです。」


ガラス製品は、熱を加えて軟らかくしてから加工し、それを冷やし固めて作られています。
短時間のうちに温度が下がって固まると、ガラスの構成粒子であるケイ素原子や酸素原子はバラバラのまま固まってしまいます。
ガラス製品が壊れやすいのは、このためです。

一方 水晶は、大地の中で時間をかけてケイ素原子と酸素原子が共有結合を繰り返した結果、結晶になったものです。
水晶が強いのは、このためです。

  • ガラス玉のほうが冷たく感じる
  • 水晶のほうが冷たく感じる

ローザ 「水晶とガラスを見分けるにはどうしたらいいんですか?」

岩藤先生 「カギになるのは熱伝導率です。今ここにプラスチックの玉とガラス玉があります。これを同時に、下唇の辺りに当ててみて下さい。どちらが冷たく感じるでしょうか?」

ローザ 「ガラス玉の方が冷たい!」

岩藤先生 「そうですよね。プラスチックよりもガラスの方が熱伝導率が大きくて、体温が奪われやすいので、ガラスの方がヒヤッとしたわけです。それでは今度は、水晶玉とガラス玉で比べてみて下さい。」

ローザ 「水晶の方が冷たいです!」

岩藤先生 「それは、水晶の方が熱伝導率が大きいからなんです。」

ローザ 「確かにはっきりと違いますね。水晶とガラスは主な成分が同じなのに、性質が違うということなんですね。」

ケン 「成分が同じ、ということで言えばダイヤモンドと黒鉛についてはどうなんですか?どちらも同じ炭素のはずなのに、色や形や固さが全然違いますよね。僕は、ダイヤモンドと黒鉛が同じ炭素だということ自体、ちょっと信じられないんですけどね……。」

ダイヤモンドと黒鉛は同じ炭素でできている
  • 本当にどちらも炭素でできている?
  • 黒鉛と炭素をそれぞれ加熱する

ここで、ダイヤモンドと黒鉛が、どちらも炭素でできていることを確かめる実験を見てみました。

熱に強い石英でできた管の中に、黒鉛を入れて酸素を加えながら加熱していきます。
ダイヤモンドも、同様に管の中に入れて、酸素を加えながら加熱していきます。
どちらも、石英の管につないだ試験管には、二酸化炭素と反応すると白く濁る石灰水が入っています。

  • 黒鉛が燃え始める
  • 石灰水が濁る

まずは、黒鉛から加熱していきます。
黒鉛が燃え始めると、石灰水が白く濁ってきました。
黒鉛の炭素が燃え、二酸化炭素が発生したことを示しています。

  • ダイヤモンドを加熱
  • やはり二酸化炭素が発生

次に、ダイヤモンドを加熱すると次第に赤くなり、石灰水が白く濁ってきました。
ダイヤモンドも、やはり炭素でできていることを示しています。

  • ダイヤモンドのモデル
  • 4個の価電子を共有結合

どちらも炭素でできているにもかかわらず性質が大きく違うのは、炭素の結合のしかたが違うためです。

ダイヤモンドは、炭素原子が正四面体の中心と頂点を通るように結合して、これを基本単位とする立体網目構造を形成します(右写真)。
そして、各炭素原子は4個の価電子を全部使い、となり合う4個の炭素原子と共有結合しています。


ケン 「4本の腕でしっかりつながっているんですね。」

岩藤先生 「ダイヤモンドは全ての炭素原子が強い共有結合だけで結合しているので、非常に硬く、融点も極めて高いんです。また価電子が動かないから、電気を通しません。」

  • 各炭素原子は隣り合う3個の炭素原子と共有結合
  • 層状構造の黒鉛

一方、黒鉛は、正六角形を基本単位とする平面の層状構造をしています。

各炭素原子は3個の価電子を使い、となり合う3個の炭素原子と共有結合しています(右写真)。
しかし、層状構造どうしは、弱い分子間力で積み重なっているだけです。
そのため、黒鉛は軟らかく、薄くはがれやすいという性質があります。

また、共有結合にかかわらない1つの価電子が自由に動くことができるため、電気をよく通す性質があります。


ケン 「炭素の結合のしかたによって、こんなにも性質が違うんですね。」

周期表と化学結合の意味
周期表と結晶の分類を重ねる

4種類の結晶は、どのような元素からできるかが、おおよそ決まっています。
結晶の構成粒子を、金属元素か非金属元素か、ということで分類すると上写真の右下の図のようになります。

金属元素の原子や陽イオンは、金属結晶やイオン結晶を作ります。
非金属元素の陰イオンは、イオン結晶を作ります。
そして、非金属元素の分子は分子結晶を、原子は共有結合の結晶を作ります。


岩藤先生 「ここに周期表を重ねてみましょう。水色が金属元素、黄色が非金属元素を表しています。金属結晶、イオン結晶、分子結晶、共有結合の4つの結晶が、周期表の金属元素でできているのか、非金属元素でできているのか、あるいは金属と非金属、その両方でできているのかということが、周期表の金属元素・非金属元素の分布と一緒にイメージできるといいですね。」

カラフルなイオン結晶
  • カラフルなイオン結晶
  • 銅が含まれると青系の色になる

結晶には、カラフルなものもあります。
左写真の上段左から、

硫酸銅(II)の結晶 CuSO・5H
塩化ニッケル(II)の結晶 NiCl・6H
塩化コバルト(II)の結晶 CoCl・6H
クロム酸カリウムの結晶 KCrO
二クロム酸カリウムの結晶 KCr

と並んでおり、全てイオン結晶です。


岩藤先生 「イオン結晶は、金属元素の陽イオンと、非金属元素の陰イオンからなりますが、この “色” というのは、陽イオンの種類で基本的なものが決まるんです。」

ローザ 「どういうことですか?」

岩藤先生 「例えば、この硫酸銅(II)の結晶は、陽イオンである銅(II)イオンと、陰イオンである硫酸イオンでできていますが、銅のイオンが含まれていると、大体このような青系の色になるんです。後は、そのとき結合している陰イオンの種類によってその色合いが微妙に変わってくるんです。」

  • 岩藤先生が作った硫酸銅(U)の結晶

写真は、岩藤先生が長い時間かけて作った硫酸銅(II)の結晶です。

作り方は、まず粉末の硫酸銅(II)の結晶を水に溶かし、その溶液を自然に蒸発させます。
そこに、さらに溶液をかけて蒸発させることを繰り返すと、やがて結晶が成長して大きくなります。
これをさらに何度も繰り返すと、このように大きな結晶ができます。

写真の大きさにするまでに、約半年かかったといいます。

カラフルな水晶
  • 紅水晶と紫水晶
  • 次回もお楽しみに〜

また、共有結合の水晶にもカラフルなものがあります。
左写真は、紅水晶と紫水晶です。


ケン 「先生、紅水晶と紫水晶は、無色透明な水晶と何が違うんですか?」

岩藤先生 「紅水晶には、わずかにチタンが入っているんですよ。」

ローザ 「チタンが入るとピンク色になるんですか。不思議ですね。」

岩藤先生 「紫水晶には、わずかに鉄が入っているんです。」

所長 「無色透明な水晶に、宝石としての付加価値をもたらしているものがチタンや鉄などの不純物だ、というのは面白いですね。」


それでは、次回もお楽しみに!

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