NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

今回の学習

第16回

分子の極性

  • 化学基礎監修:東京都立府中高等学校教諭 貝谷 康治
学習ポイント学習ポイント

分子の極性

  • 2つ食べると主張するローザ
  • 原子同士が共有電子対を引っ張りあっているよう

ケンとローザが、さくら餅とウグイス餅を取り合っています。

ローザ 「さくら餅とウグイス餅って、色といい、味といい絶妙のペアだよね。だったら1つずつ食べるんじゃなくて、2つとも食べた方がいいと思うんだけど。」

ケン 「そんなこと言ったって、1つずつしかないんだよ。」

ローザ 「だったらジャンケンよ。勝った方が2つとも食べる。」

ケン 「え?1つずつ分けて食べようよ。」

所長 「さくら餅とウグイス餅の取り合いどっちが勝つか、興味あるところだな。というのは、2人のさくら餅とウグイス餅の取り合いは、まるで原子と原子が共有電子対を引っ張っているようだからな。」

ケン 「え? 原子と原子が共有電子対を引っ張り合っている?」

所長 「そうだ。その結果、分子には “分子の極性” を持つものがあるんだ。」

  • 共有電子対を引き合う

たとえば ケンとローザが、共有結合している水素原子だったとします(上写真)。

2個の水素原子は、2個の電子を共有して結合し、水素分子を作っています。
2つの水素原子は、ケンとローザが さくら餅とウグイス餅を取り合っていたように、共有電子対を引き寄せあっています。

ここで、2人が同じ水素原子であれば同じ力で引っ張り合うことになり、共有電子対はどちらにも偏りません。

  • 片方が塩素原子
  • 塩素の方が引きつける力が強い

では、片方の水素原子が塩素原子だった場合はどうでしょうか。
水素原子と塩素原子が共有結合した、塩化水素の分子の場合です。

このとき、塩素の方が水素より共有電子対を引きつける力が強いため、電子対は塩素の方に引き寄せられることになります。
電子はマイナスの電荷を持っているため、塩素原子の方にマイナスの電荷がわずかに多くなります。
一方、水素原子の方は、その分だけマイナスの電荷が減ってプラスの電荷が多くなります。

このように、1つの分子の中でプラスの部分とマイナスの部分ができることを「電荷の偏り」といいます。

ローザ 「でも、どうして塩素原子の方が、電子対を引きつける力が強いの?」

所長 「それは、 “電気陰性度” の違いだ。」

電気陰性度
  • 共有電子対を引きつける強さが電気陰性度
  • フッ素・Fが一番大きい値

共有電子対を引きつける強さは原子の種類によって異なり、その強さを表す値が電気陰性度です。

いくつかの原子の電気陰性度を見てみましょう。
共有電子対を引きつける強さ、すなわち電気陰性度は、それぞれ右図のような値になります。
大まかに言えば、陰性が強い右上のフッ素・F に向かって値が大きくなっています。

  • 塩素が水素の共有電子対を引き寄せる

所長 「これを見ると、共有電子対を引きつける強さ、電気陰性度が一番大きいのはフッ素だ。」

ケン 「次が、酸素。そして、その次が塩素ですね。」

ローザ 「塩素の電気陰性度は、水素より大きい。だから、塩化水素の分子では共有電子対は塩素の方に引き寄せられるんですね。」

  • 塩化水素分子の電子式
  • 共有結合でできる電荷の偏りを結合の極性という

図は、塩化水素分子を電子式で表したものです。
共有電子対が塩素の方に引き寄せられると、塩素原子はわずかにマイナスの電荷を持ちます。
この状態を「δ−(デルタマイナス)」と表します。

一方、このとき水素原子は共有電子対が偏った分だけプラスの電荷を持ちます。
この状態を「δ+(デルタプラス)」と表します。

ギリシャ文字のδは、科学の世界では「とても小さい」ということを表す際によく使われます。
電子対が引き寄せられることで増減する電荷はとても小さいため、「δ+」や「δ−」のように表されます。

このように共有結合のときにできる電荷の偏りを、「結合の極性」といいます。

  • 極性分子
  • 無極性分子

塩化水素分子にはδ+、δ−の電荷の偏りによって「結合の極性」が現れます。
この塩化水素のように、結合の極性がある分子を「極性分子」といいます。


しかし、水素分子や塩素分子のように、2つの同じ原子が共有結合した分子では結合の極性は現れません。
このような分子を「無極性分子」といいます。


所長 「極性分子と無極性分子。分かったかな?」

ケン 「はい。異なる原子が共有結合している分子は、結合の極性が現れるので極性分子ですね。」

所長 「ふふふ。そうは問屋がおろさない。今、ケンが言ったのは、2つの原子が共有結合している “二原子分子” の場合だ。しかし、3個以上の原子が結合している “多原子分子” の場合は、もう少し複雑だ。」

  • 貝谷 康治 先生(東京都立府中高等学校 教諭)
  • 水は極性分子で二酸化炭素は無極性分子?

ここで、多原子分子の場合の極性・無極性について、特別研究員の貝谷 康治 先生(東京都立府中高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。


貝谷先生 「まず、多原子分子の例として水素原子2個、酸素原子1個、合計3個の原子が共有結合した水の分子です。これは……。」

ローザ 「極性分子ですか?」

貝谷先生 「はい、そうです。次は二酸化炭素の分子です。これも異なる原子が共有結合していますが、これは無極性分子です。」

ケン 「なんだか、よく分かりません。どちらも異なる分子が共有結合しているのに、水は極性分子で、二酸化炭素は無極性分子?」

  • 水はまっすぐではない

貝谷先生 「この2つをよく見てください。どこに違いがありますか?」

ケン 「原子の種類が違いますね。」

貝谷先生 「確かにそうですね。酸素、炭素、水素はそれぞれ電気陰性度が異なりますので、水の分子も、二酸化炭素の分子も、内部に結合の極性があります。」

ケン 「結合の極性があるのに、二酸化炭素は無極性分子。どういうことですか?」

ローザ 「あ、分子の形が違う!二酸化炭素は原子がまっすぐ並んでいるけど、水はまっすぐじゃない。」

貝谷先生 「そのとおりです。分子の形によって極性分子と無極性分子という違いがでるんです。」

多原子の場合の極性・無極性
  • 分子内部に結合の極性がある
  • 折れ線形のため結合の極性が消えない

分子の形によって極性分子になったり、無極性分子になったりするしくみを見てみます。

二酸化炭素は、左図のように、分子の内部に結合の極性を持っています。
しかし、原子が一直線に並んでいるため結合の極性がお互いに打ち消し合い、分子全体としては無極性分子になります。

水分子も結合の極性を持っています。
水分子の場合は3つの原子が「折れ線形」に結合しているため、結合の極性が打ち消されず極性分子になります(右図)。

このように多原子分子では、内部に結合の極性があっても分子の形によって極性分子になったり、無極性分子になったりします。

極性分子と無極性分子

二酸化炭素は、3つの原子が直線形に並んでいます。
また、メタンは正四面体形に並んでいます。

このように多原子分子の場合、内部に結合の極性があっても分子全体としては、極性を打ち消しあって無極性分子になることがあります。

ところが、水やアンモニアのような形では、結合の極性が打ち消されないため極性分子になります。

似たものどうしは仲よし
  • 似たものどうしは仲よし

次に、極性分子・無極性分子の性質について考えていきます。
貝谷先生によると、極性分子・無極性分子の関係を一言でいうと「似たものどうしは仲よし」だといいます。

極性分子の物質どうしは溶けやすく、また、無極性分子の物質どうしも溶けやすいという性質があります。
一方、極性分子の物質と無極性分子の物質は、溶けにくいという性質があります。

  • それぞれ溶けるか実験
  • ヘキサンは無極性分子

実験で、「似たものどうしは 仲よし」という極性分子・無極性分子の性質を確かめてみました。

水・HO、ヨウ素・I、ヘキサン・C14を用意しました。

水は極性分子の物質です。
ヨウ素は、2つのヨウ素原子が共有結合した物質であるため、結合の極性がなく無極性分子です。
ヘキサンは、炭素6個と水素14個が右写真のように共有結合しています。
一見 複雑に見えますが、結合の極性は打ち消しあっており、無極性分子です。

  • ヨウ素は水に溶けにくい
  • 水と油のように溶けにくい

それぞれが「仲よし」かどうか、調べていきます。

まず、ヨウ素を水に入れてみましたが、試験管を振っても溶けませんでした。
このように、ヨウ素は水に溶けにくいという性質があります。

次に、ヘキサンを水に入れると、「水と油」のように上下2層に分かれました。
上がヘキサン、下が水です。
このように、ヘキサンと水どうしも溶けにくいという性質があります。

  • ヨウ素はヘキサンによく溶ける
  • 実験まとめ

最後に、ヘキサンにヨウ素を入れると、溶液が紫色になってよく溶けました。


実験をまとめると、

・「水とヨウ素」、「水とヘキサン」のように、極性分子の物質と無極性分子の物質は溶けあわないことが多い
・「ヨウ素とヘキサン」のように、無極性分子どうしは溶けあうことが多い

となります。

水の性質
  • 水の沸点は高い
  • 酸素の水素との電気陰性度は大きい

所長 「私たちの身近にある水は、実はとても面白い性質を持っているんだ。」

貝谷先生 「水の沸点は、よく似た構造の他の分子に比べて、とても高いんです。」


水と、水に似た構造の分子の沸点を比較してみました(左図)。
比較するのは、酸素と同じ16族の元素が水素と化合した物質です。

水以外の物質の沸点は0℃以下ですが、水の沸点は100℃と高いことが分かります。
これは、水の分子では、分子どうしが「水素結合」していることが理由です。

水素結合について知るために、まず電気陰性度を見てみます。
酸素の電気陰性度を、同じ16族の元素と比較してみました(右図)。
酸素・Oの電気陰性度は「3.4」と、同じ16族の硫黄・S、セレン・Se、テルル・Teと比べると、大きい値であることが分かります。
つまり酸素は、他の物質と比べて、水素との電気陰性度の差が大きいといえます。

  • δ+とδ−が引きつけあう
  • 次回もお楽しみに!

ローザ 「酸素は、水素との電気陰性度の差が大きい。これが、水素結合に関係あるんですか?」

貝谷先生 「水の分子で考えたとき、別々の分子のδ+とδ−が引きつけ合い、水素と酸素が結びつくのが水素結合です。電気陰性度の大きい酸素が、水素原子をなかだちとして作る結合です。」

ケン 「他の分子の水素と酸素が結びつくんですね。」

貝谷先生 「そうです。2つの分子だけでなく、たくさんの水の分子が、水素結合で結びつきあいます。このため、水はよく似た構造の他の物質に比べて、沸点が高いんです。」

ケン 「水は、水素結合のために分子がバラバラになりにくいので、気体にするには、高い温度が必要だということですね。」

ローザ 「うーん、なんだかケミカルワールドの神秘を見た感じがするわね。」


それでは、次回もお楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約