NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第15回

分子からなる物質 〜有機化合物、高分子化合物〜

  • 化学基礎監修:東京都立府中高等学校教諭 貝谷 康治
学習ポイント学習ポイント

分子からなる物質〜有機化合物、高分子化合物〜

炭素は “4本腕”
  • 共有結合
  • 腕が4本あるが…

ケンが、ロボットアームを持った新しい宇宙服のスケッチを書いています。

ローザ 「これ、何?」

ケン 「この前、“共有結合” ってやっただろ?」

ローザ 「不対電子がどうこうってやつね。」

ケン 「そう。炭素には、不対電子が4つ。つまり腕を4本持っているようなものだから、いろいろな原子といろいろな結合ができるんだよ。そこで、パッとひらめいたんだ!宇宙空間でも、腕が4本あったらきっと便利だから、ロボットアーム付きの宇宙服を開発しようってね!」

ローザ 「このロボットアーム、どうやって動かすの?」

ケン 「その絵をしっかり見てよ。ちゃんと操縦桿(そうじゅうかん)がついてるでしょ!」

ローザ 「手で操縦しなきゃいけないなら、結局使えるのは2本じゃん!」

ケン 「あ!」

所長 「ハッハッハ、一本取られたな、ケン!しかし、炭素の特徴に気がついたことは素晴らしいぞ。昔の化学者も、炭素に注目して有機物に関する化学、『有機化学』を発展させてきたのだ。」

ケン・ローザ 「ユウキカガク?」

所長 「そうだ。そもそも、我々人類は古くから、自然界に存在するさまざまなモノに働きかけて幾多の発見・発明を成し遂げて来た。なかでも、有機体に由来するモノは特別な力を持つと信じられていて、特に強い関心を集めてきたのだ。」

有機化合物
  • 「生物由来なら有機物」という考え方
  • ヴェーラー

古くから、生物の身体を構成する物質は、「有機物」と呼ばれていました。 そして、有機物には生命力が宿っていて、特別な性質があると考えられるようになります。

そこで、物質は「生物から得られるもの」である有機物と、「鉱物から得られるもの」である無機物に分けられました。

しかし1828年、ドイツの化学者ヴェーラーが、無機物から有機物を合成することに成功しました。
有機物は生物と関係なく合成することができるようになり、そこから有機物を扱う「有機化学」は、飛躍的な発展を遂げることになります。
そして、ヴェーラーは、「有機化学の父」と呼ばれるようになりました。

こうして、「生物由来かどうかで分類する」という考え方は意味を失いました。
しかし、有機・無機という分類は、今も続いています。
現在では、「炭素原子を骨格とする化合物」を「有機化合物」と呼ぶことになっています。


ケン 「炭素原子を骨格とする化合物が有機化合物……。つまり、炭素が主人公?」

ローザ 「所長、どうして炭素なんですか?」

所長 「そこに炭素があったから……。」

ケン 「なんですか、その昔の登山家みたいな理由は!」

所長 「まぁ、そうとしか説明できないんだ。多くの有機物を調べると、必ず炭素が中心になって結合していることが分かってきたということなんだな。しかし炭素には、主人公になるべき大きな特徴があった。ケンが注目したように、炭素には不対電子が4つあるということだ。」

  • 炭素同士はいろいろな結合が可能
  • 炭素を含んでも無機物

有機物の例として、炭化水素の模型を見てみます。
炭化水素は、どれも炭素と水素だけでできた化合物です。

炭素同士は、単結合・二重結合・三重結合と、いろいろな結合が可能です。
また、数が増えたり、酸素が加わったりして有機物の世界をより多彩にしています。

ただし「炭素の単体」や「二酸化炭素」など、炭素を含んでいても無機物に分類される物もあるため注意が必要です。

  • 都市ガスに利用されるメタン
  • プロパンとブタン

いろいろな有機物を、実際に見てみました。

はじめはガスバーナーの炎です。
燃焼している都市ガスは、代表的な有機物のひとつであり、もっとも構造が単純な炭化水素「メタン」を原料としています。

メタン・CHは、1つの炭素原子の4本の腕に、水素原子が1つずつ結びついた有機物です。
同じように燃焼するガスでも、プロパンガスのプロパン・C、ライターやカセットコンロなどに使われているブタン・C10は、構造が少し異なります。

  • エタノールや酢酸も有機物

私たちの身体に必要な “三大栄養素” である「炭水化物」「タンパク質」「脂質」も、代表的な有機物です。
炭水化物を発酵させて作るアルコールや、アルコールから作られる酢も有機化合物です。
物質名としては、たとえば「酢酸・CHCOOH」と、「エタノール・COH」ということになります。

  • 青いバナナは硬い
  • 室に入れる
  • エチレンガスで熟す

私たちに馴染み深いバナナも、食卓へやってくるまでに有機物が利用されています。

普段食べるバナナの色は、黄色です。
しかし、外国から輸入するときは、まだ熟していない青い状態で運ばれてきます。
この状態で割ってみても、まだまだ固く、おいしくありません。

この青いバナナを「室(むろ)」と呼ばれる倉庫に入れて、中にエチレンガスを噴射します。
エチレン・Cは、果実の成熟に関係している植物ホルモンの一種で、2つの炭素原子と4つの水素原子が結びついた有機化合物です。
室に入れたバナナは、エチレンのおかげで次第に熟し、黄色く色づいてくるのです。

エチレンとポリエチレン
  • 二重結合のエチレン
  • 単結合にして空いた手同士でつながる

エチレンに少し手を加えると、面白いことが起きるといいます。
そこで、特別研究員の貝谷 康治 先生(東京都立府中高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。


貝谷先生 「炭素同士は単結合でもつながることが出来るので、エチレン分子をどんどんつなげていくことができるんです。」

ケン 「分子がつながっていく?どういうことですか?」

貝谷先生 「では、私たちが炭素原子になったとして、説明してみましょう。」

水素原子は省略するとして、所長とケン、貝谷先生とローザがそれぞれ両手を繋ぎます。
このとき、エチレン分子が2つあることになります。

この状態では二重結合ですが、片手を離すと単結合になり、全員片手が空いている状態となります。
そこで、ケンとローザが手を繋いでみます。
このとき、貝谷先生も所長も片手が空いており、同様に次々と繋がっていくことができます。

  • 二重結合のエチレン
  • 単結合になる
  • ポリエチレンに

続いて、分子模型を使って、より詳しく見てみます。
炭素原子の二重結合は、アーチ状の棒で表されています(左写真)。
このアーチ状の棒を外して、単結合を表すまっすぐな棒に付け替えます(中写真)。
すると、炭素原子は単結合で次々とつながっていくことが可能になります。

こうしてできた鎖状の模型を、さらにつなげていくと、とても長い鎖ができあがります(右写真)。
しかし、これでもまだ「ほんの一部」だといいます。

このように、エチレン分子がたくさんつながったものが、「ポリエチレン」です。
「ポリ」とは、“たくさんの” という意味です。


ローザ 「ちょっと待ってください。ポリエチレンって、プラスチックですよね?プラスチックも、有機化合物なんですか?」

貝谷先生 「そうです。プラスチック製品の原料は、石油です。その石油は、動植物の遺骸が地中に堆積して、長い年月をかけて高温・高圧を受けて変成したものと考えられています。ですから、プラスチックは炭素骨格を持つ、れっきとした有機化合物です。」


ポリエチレンは原料価格が安く、構造が単純で成形もしやすいという特徴があります。
また、電気絶縁性や耐水性、耐薬品性に優れるなどさまざまなメリットがあります。
そのため、現在もっとも多く使われているプラスチックです。

  • 高分子化合物

ポリエチレンは1000個以上のエチレン分子が共有結合し、結びついて巨大な分子となっています。
このような化合物を「高分子化合物」といいます。
高分子化合物はプラスチックだけでなく、タンパク質や炭水化物など、自然に存在するものの中にもあります。



ケン 「この模型の何倍も長くなっても、一つの分子なんですね。ちょっと気が遠くなりそう。」

所長 「実際に、高分子化合物を作ってみたくないか?」

高分子化合物
  • 2つの溶液を用意
  • 二層になり、ナイロンの膜ができた

ここで、高分子化合物のひとであるナイロンを作ってみましした。
ナイロンは、洋服の生地などにも使われています。

ヘキサメチレンジアミンという有機化合物と、水酸化ナトリウム水溶液を混合した溶液を用意します。
また、アジピン酸ジクロリドのヘキサン溶液も用意します。

アジピン酸ジクロリドのヘキサン溶液を、ヘキサメチレンジアミンと水酸化ナトリウム水溶液の入った瓶に、静かに加えていきます。
すると2つの溶液が層になり、2種類の溶液の境界面に、ナイロンの膜ができました。

  • 糸状のものが引き上げられる

この膜を引き上げると、それにつながって糸状のものが続いて引き上げられるため、これをガラス棒に巻き取っていきます。
このとき、二つの溶液の境界面では、次々とナイロンが生成されて糸状になっています。

  • ペットボトルに使われる
  • 耐熱性が高い

プラスチックには、ほかにもたくさんの種類があります。

身近でよく見かけるプラスチックといえば、PET=ポリエチレンテレフタラートがあります。

PP=ポリプロピレンは、耐熱性が高く強度も優れていて、さまざまな分野で使われています。

  • 透明性が良い
  • 着色や印刷が容易

PS=ポリスチレンは、透明性が良いことが特徴です。

ABS樹脂は、細かい形を作るのに向いており、色をつけたり表面に印刷することも簡単です。

理想的なリサイクルは?
  • 電機メーカーの家電リサイクルプラント
  • リサイクル推進統括部長の井関さん

身近で便利なプラスチックですが、、使い終わったら一体どうなるのでしょうか。
ケンは千葉県市川市にある、電機メーカーの家電リサイクルプラントを訪れ、リサイクル推進統括部長の井関康人さんに話をうかがいました。

井関さん 「理想的なリサイクルは、“自己循環リサイクル”。つまり、使い終わった家電製品から取り出したプラスチックを、再び家電製品に使うことです。」

  • 簡単に取り外せるポリスチレン製品は…
  • 選別して再びポリスチレンの製品に

冷蔵庫の場合、まず手作業で野菜室の白いカゴや透明な棚などが取り出されます。
透明な部品は、ポリスチレンでできています。
簡単に取り外せるものは、同じ種類のプラスチックだけを集めます。
こうして選別することで、再びポリスチレンの製品にすることができるのです。

  • 巨大な冷蔵庫破砕機
  • 金属のみ磁石で取り除く

それ以外の部分は、巨大な「冷蔵庫破砕機」で粉々にします。
30秒に1台のペースで、この機械に運び込まれると、大型の冷蔵庫であっても、すぐに粉々になってしまいます。

破砕機から出てきた冷蔵庫の破片は、この時点ではプラスチックだけでなく金属なども一緒になっています。
そこで、強力な磁石で鉄を取り除くなどしてプラスチックだけを残し、さらに細かく砕きます。

  • 浮くPP、沈むPSとABS

こからさらに、プラスチックを種類ごとに選別していきます。
その工程は、別の工場で行われています。

井関さん 「このプラントでは、家電製品でもっとも多く使われているPP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、ABSの3種類に選別をしています。」

ケン 「具体的に、どうやって選別しているんですか?」

井関さん 「まずは比重に注目して、水に浮くか沈むかで選別をします。」


粉々に砕いたプラスチックを水に入れて、よくかき混ぜると、水に浮くものと沈むものに分かれます。
ポリプロピレンは比重が小さく、浮かびます。
一方、比重が大きく、沈むのはポリスチレンとABSです。

湿式比重選別機という装置を使った実際の工程でも、この性質を利用して最初にポリプロピレンを選別します。

  • 静電気を利用してPSとABSを選別
  • ABSはマイナス側に

続いて、比重では分けられないポリスチレンとABSは、静電気を利用して選別します。
静電選別機の回転する装置の中で、ポリスチレンとABSがこすりあわされます。
すると、ポリスチレンはマイナスに、ABSはプラスに帯電します。
この状態で装置から出てくると、その先にある溝に落ちていきます。

溝の両側にはプラスとマイナスの電極があり、ポリスチレンはプラス側に、ABSはマイナス側に引き寄せられます。
そのため、装置から出てきた破片は、左右に分かれて落ちていくことで選別されます。

  • リサイクルプラスチックを利用した電化製品

廃棄された電化製品のプラスチックは、このようにして、かなり高い精度で選別することができます。
しかし、再び新品同様にすると、コストが高くなることは避けられません。

また、リサイクルプラスチックに抵抗感を持つ消費者もいるため、100%の自己循環は簡単ではないといいます。


井関さん 「新品とリサイクル材、この両方の適所適材を考えながら、循環型社会の構築を、当社は目指していきます。」

  • 日本ではサーマルリサイクルがほとんど
  • 次回もお楽しみに〜

ローザ 「プラスチック製品は大事に使って、使い終わったらちゃんとリサイクルしなきゃってことですね。」

貝谷先生 「今のリポートで見たのは、使用済みのプラスチックを、そのまま再利用する “マテリアルリサイクル” の例です。そのほかに、化学反応によって原料にまで分解して再利用することを “ケミカルリサイクル” といいます。また、燃料として燃やして、エネルギーとして使うことを “サーマルリサイクル” といいます。現在、日本では、日用品として使われたプラスチックのリサイクルは、ほとんどがサーマルリサイクルです。」


それでは次回もお楽しみに〜!

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