NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第13回

金属と金属結合

  • 化学基礎監修:東京都立小川高等学校教諭 永島 裕
学習ポイント学習ポイント

金属と金属結合

  • 金属が人類の文明を支えてきた

「人類の歴史の中で一番重要な役割を果たした金属は何だと思う?」というローザの質問に、「銅」と答えたケンは、倉庫で見つけた青銅の剣を取り出します。


ケン 「一概には言えないけど、やっぱり銅じゃないかな。」

ローザ 「何それ、錆びてるじゃない。」

ケン 「銅は紀元前3千年以上前から利用されているけど、その銅にスズを混ぜて作った青銅は硬く丈夫で、それまでとは比べ物にならない画期的な道具が作られたんだ。」


ところが、ローザは「鉄」だと反論します。
銅よりも軽い鉄ですが、炭素を加えて鋼(はがね)にすると飛躍的に硬くて強くなり、青銅は比較にならないといいます。

そこへ現れた所長が持っていたのは、黄金の剣です。
金は銅にも劣らず古くから利用されてきた金属です。
ツタンカーメンの黄金のマスクをはじめ、古代エジプトではさまざまな装飾品が作られました。


所長 「いにしえから、金は人類の憧れの的だったんだ。」

ケン 「所長は金について語らせたら止まらないからな……。」

所長 「だがそれだけではない。さまざまな金属が人類の文明を支えてきた。今日はその秘密に迫ってみよう。」

金属の性質
  • クギを金づちで叩くと
  • ナイフのように薄くなった

金属にはさまざまな種類がありますが、いくつかの共通の性質があります。
1つは「金属光沢」と呼ばれる輝きがあることです。
金や銀は特に、その美しさから貴金属としても人気です。

金属の特徴として2つ目に、「展性」という性質があります。
展性とは、ハンマーなどで叩くと薄く広げることができる性質です。

鉄のクギを金づちで叩き続けると、クギは次第に薄くなり、ナイフのようになりました。

この「鉄」以上に展性があるのが金です。
金は非常に柔らかく、武器などには適していません。
しかし非常に柔らかいからこそ、さまざまなものに加工しやすいという特性があります。

金は非常に薄く加工することができます。
そのプロの技を見てみます。

  • 金箔を使った伝統工芸品
  • 向こう側が透けるほど薄い

金箔は日本の伝統工芸に古くから使われ、そのきらびやかで豪華な輝きは、時を越えて多くの人の心をとらえてきました。
その薄さは、明かりにかざすと向こう側が透けて見えるほどです。

金箔の厚さを1万円札と比べると、その差は歴然です。
1万円札の厚さは0.1mmですが、金箔は1万分の1mmという薄さです。

つまり、金箔は千枚重ねてようやく1万円札と同じ厚さになるほど薄いのです。

  • まずは機械でプレス
  • 1分間に700回叩く箔打ち機

薄い金箔が出来上がる過程を見ていきます。

はじめに、金の板を機械でプレスして薄くし、約千分の1mmの厚さにします。
これを更に10分の1に薄くしなければなりません。
その作業に使うのが、箔打ち機です。
1分間に700回という、目にも留まらぬ速さで叩き続けます。

このとき金箔は、きれいに伸びるように特別な和紙に挟んでおきます。
均等に薄くするため、叩く位置を微妙に変えながら何日もかけて叩き続けます。

  • 極限の薄さに
  • 1gの金から70cm四方の金箔に

この結果、金箔は1万分の1mmという極限の薄さになります。
これは計算上、金の原子が約350個しか並ばない原子レベルの薄さです。

高度な技術を持った職人が叩くことで、たった1gの金で70cm四方もの大きさの金箔を作ることができると言われています。

  • 永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)
  • 金属結合

金はなぜそんなに薄く広げることができのか、永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。
金の場合は極端な例ですが、金属は似たような性質をもっているといいます。

金属の中には、多数の金属原子が規則正しく配列しています。
このとき、金属原子の価電子は金属中を自由に動き回ることができます。

このような電子のことを「自由電子」といいます。
金属では、この自由電子が金属原子同士を結びつける役割をしています。

このような自由電子による金属原子の間の結合を、「金属結合」といいます。

金属に「展性」という性質があるのは、この金属結合が関係しています。
金属に叩く等の力が加わると、変形して原子の位置がずれてしまいます。
しかし、自由電子が移動することによって、金属結合が保たれます。

先ほど見た、金箔の金の原子同士をつないでいるのは自由電子なのです。

  • 銅板と導線は同じ重さ

金属には、平らに広げるだけでなく、引っ張って長くのばすことができる「延性」という性質もあります。
写真の銅の板と銅線はどちらも同じ重さですが、この銅線は、銅の板を引き延ばすことによって長さ17mになりました。


ケン 「銅線は、文字通り銅を引っ張って作るんですか?」

永島先生 「はい、そうなんです。」

所長 「金属の性質 “延性” は、この銅線のような細いものだけでなく、ロープウェイや送電線などで使われている、太くて長いワイヤーロープをつくるときにも利用されている性質なんだ。」

  • ワイヤーロープを作る工場
  • 工場長の和田公祐さん

ワイヤーロープを作る際に、金属の延性はどのように利用されているのでしょうか。
金属を加工してワイヤーロープを作る工場を、ケンが訪れました。

この工場では、クレーンや送電線、ロープウェイなどで使われる太くて長いワイヤーロープを作っています。

はじめに、工場長の和田 公祐さんに、ワイヤーロープを見せていただきました。

  • ワイヤーロープの断面
  • ワイヤーロープの材料である鋼鉄の針金

ワイヤーロープは想像以上に太く、ケンが手に持ってみると、ずっしりと重く感じました。
断面を見ると、たくさんのワイヤーが束になってできていることが分かります。

右写真は「線材」と呼ばれる、ワイヤーロープの材料となる鋼鉄の針金です。
直径5.5mmのこの線材を引っ張り、長くのばしていきます。

  • ダイスが線材を細く、長くする
  • 線材をのばす装置

針金をのばす装置の一部である、金属の箱の中にあるのが、独特の形をした
「ダイス」という部品です(左写真)。
ダイスには穴が空いており、その中を線材が通ります。
入り口よりも出口が狭くなっているため、線材は絞り出されて細くなり、のびて長くなります。
この機械にはダイスが11個並んでおり、これによって少しずつ線材を細く加工していきます。

機械で引きのばされたワイヤーは、長さは約7倍になり、直径は半分以下に細くなっています。

  • 線材が切れるまで引っ張る
  • 引きのばしたワイヤーのほうが強い

細く加工したワイヤーは、強度が落ちているのかどうか調べてみます。
引きのばす前の線材と引きのばした後のワイヤーを、線材が切れるまで上下から引っ張り、そのときの重量を1mmあたりで計算して強さを比べてみました。

結果は元の線材が126kg/1mm、細く加工したワイヤーは208kg/1mmと、引きのばしたワイヤーのほうが強くなっています。

引きのばして細くなったワイヤーが、かえって強くなっているのはなぜなのでしょうか。

  • 引き伸ばした後は、同じ方向に線が揃う
  • 寄り合わせたロープをさらに寄り合わせる

左写真(左側)は、引きのばす前の線材を縦に割った断面の顕微鏡写真です。
色の濃い所と薄い所があり、不規則な組織になっています
一方、引きのばした後では縦の方向に線が綺麗にそろい、組織が細長くなっています(左写真-右側)。

この一方向に揃った構造により、引っ張る力に対して強くなったのでした。

引きのばして強くなったワイヤーを寄り合わせていきます。
より太いワイヤーロープを作る場合には、寄り合わせたワイヤーをさらに寄り合わせます(右写真)。
こうして作ったワイヤーは、同じ断面積の1本のワイヤーの2倍から3倍の強度があるといいます。


永島先生 「金属には、『展性』『延性』の他に、『熱伝導性』や『電気伝導性が大きい』という性質があります。金属はなぜ熱伝導性や電気伝導性が大きいのかというと、自由電子が移動するときに電気や熱のエネルギーを運ぶからなんです。」

所長 「でも、熱伝導性や電気伝導性は、金属の種類によって違いますよね。」

永島先生 「はい、そうなんです。では、金属の種類によってどれくらい熱伝導性が違うのか、実験で確かめてみましょう。」

  • それぞれの金属を加熱
  • 加熱後2分でアルミニウムのロウソクが倒れる

左写真のように、銅・アルミニウム・鉄の棒をセットし、アルコールランプで加熱します。
棒の上にはロウソクが立っており、熱が伝わって熱くなるとロウソクが倒れる仕組みです。

加熱してから1分20秒後、最初にロウソクが倒れたのは銅です。
加熱してから2分後、今度はアルミニウムのロウソクが倒れました。
鉄のロウソクが倒れたのは、加熱してから6分10秒後でした。

このように、銅が最も熱を伝えやすいという結果になりました。


ローザ 「そう言えば銅のお鍋もありますよね。」

永島先生 「熱をよく伝える金属は自由電子が移動しやすい金属ということなんです。」

金属の種類ごとの熱伝導性と電気伝導性

上の図は、金属の種類ごとに熱伝導性と電気伝導性の大きさを示したものです。
それぞれの値は、銀を100としたときのものです。

先ほど実験した熱伝導性と同様に、鉄よりアルミニウム、アルミニウムより銅が電気伝導性が高いことが分かります。
また、銅と鉄では電気伝導性は5倍以上も差があり、金属の種類によって性質に大きな違いがあります。

身近な金属製品
用意した金属

テーブルに、水銀の温度計・銅線・アルミニウムの鍋・鉄クギを用意しました。
どれも私たちの身近な所で利用されている金属製品です。
これらの製品はそれぞれ違う金属で作られていますが、それには理由があります。

温度計に水銀が使われるのは、常温で液体であるということと、温度が上がると一定の割合で体積が増えるという特徴があるためです。

銅はとても電気を伝えやすい金属で、しかも柔らかくて延ばしやすいという特徴があります。
そのため加工しやすく、電気のケーブルに利用されています。

アルミニウムは、軽く、丈夫で熱もよく伝えます。
熱をよく伝えるという点では銅の方が優れていますが、銅はアルミニウムに比べ重量があります。
そのため、軽くて扱い易い鍋の素材としてアルミニウムがよく利用されています。

クギに利用される鉄は、硬くて丈夫です。
しかも値段が安いということも重要です。

  • 人類が利用する金属の90%は鉄
  • 鋼鉄

私たちの暮らしの中で使われている金属には、「合金」も多くあります。
合金とは、いくつかの金属をまぜることで、もとの金属に無い性質をもたせたものです。
左図は、世界における金属の生産量です。

永島先生 「生産量から見ると、鉄はアルミニウムのおよそ35倍にもなります。さらに、鉄は人間が利用している全金属のおよそ90%になります。そこで、この鉄をベースに、加える金属の種類や量を変えて合金を作ることがよく行われているんです。」


代表的なものに「鋼鉄」があります。
鋼鉄は、鉄に少量の炭素を混ぜることにより硬くて強い金属に変えたもので、鉄道のレールやビルの建築材料として利用されています。
また、混ぜる炭素の量を変えると、その性質が変化します。
鋼鉄よりも炭素を混ぜる量を少なくすると、「軟鉄」という軟らかい性質のものになります。
軟鉄は針金などに使われています。

  • 次回もお楽しみに!

所長 「ただ、鉄には錆びて腐食しやすいという欠点もありますよね?」

永島先生 「そうなんです。そのため、クロムやニッケルを加えて『ステンレス鋼』と呼ばれる合金にしたりするんです。」

所長 「ステンレスは、英語の “stainless”=“さびない” というのが名前の由来ですよね。」

ローザ 「ステンレスは流し台で使われていますよね。合金は身近なところにあるんですね。」

ケン 「いろいろな金属の長所を合わせた合金が、これからも作られるかも知れないですね。」


それでは次回もお楽しみに!

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