NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第12回

イオン結合とイオン結晶

  • 化学基礎監修:東京都立小川高等学校教諭 永島 裕
学習ポイント学習ポイント

イオン結合とイオン結晶

陽イオンと陰イオンの結合
  • ビニールひもが浮かぶ

ケンとローザが、ビニールひもを宙に浮かべる実験をしています。

水道管のパイプをフェルトでよくこすり、細く裂いた荷造りのビニールひもを、同様にフェルトでよくこすります。
ビニールひもの下からパイプを近づけると、静電気の反発でひもが浮かびます。


所長 「我がフラメル研究所の研究員たるもの、そのしくみを、ちゃんと分かっているんだろうな。」

  • パイプには−の静電気がたまる
  • −の電気どうしは退けあう

ケン 「このパイプをフェルトとこすりあわせるとパイプには、マイナスの静電気が貯まります。また、このひもにも、マイナスの静電気が貯まっています。マイナスの電気同士は、しりぞけ合うのでひもが浮くんです。」

所長 「なるほど。では、ひもがケンの服にくっついているのはなぜだ?」

ケン 「僕の服には、プラスの静電気が溜まっています。だから、マイナスの電気を持っているこのひもは僕の服にくっつくんです。」

所長 「うん、その通りだ。プラスの電気とマイナスの電気は引きつけ合う。一方、プラスとプラスはしりぞけ合い、またマイナスとマイナスもしりぞけ合う。」

ローザ 「ひもが浮いたり、服にくっついたりするのは、プラスの電気とマイナスの電気のはたらきなんですね。」

所長 「そうだ。そして、実はこの電気の力で結晶ができることもある。たとえば食塩の結晶だ。ナトリウムの陽イオンと塩素の陰イオンが電気の力で引きつけ合って結晶になるんだ。多くの化学の作用は、プラスとマイナスの電気のはたらきで起こると言っても過言ではない。」

  • 食塩の結晶
  • ナトリウムと塩素の電子配置

食塩、つまり塩化ナトリウムは、ナトリウムイオン・Naと塩化物イオン・Clが電気の力で結合した物質です。
では、ナトリウムと塩素は、どのようにしてイオンになるのでしょうか。

ナトリウム原子は11個の電子が右図(左側)のように配置されています。
価電子は1個です。
一方、塩素原子は17個の電子が右図(右側)のように配置されています。

  • イオン結合
  • イオン結晶

このときナトリウムの価電子が塩素の最外殻に移動すると、ナトリウムはマイナスの電子を失い陽イオンのナトリウムイオンになります。
一方、電子を受け取った塩素は陰イオンの塩化物イオンになります。

こうして陽イオンと陰イオンになったナトリウムと塩素は互いに静電気的な力で引き合い結合します。
このように陽イオンと陰イオンが静電気的な力で結合することを「イオン結合」といいます。


所長 「食塩、塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンと塩化物イオンが『イオン結合』してできた物質だ。」

ローザ 「なるほど、それが塩化ナトリウムの『分子』ですね。」

所長 「違う。これは『分子』とは言わない。というのは、塩化ナトリウムはナトリウムイオン1個と塩化物イオン1個が結びついた形で存在するのではなく、たくさんのイオンが規則正しく結合した形で存在するからだ(右写真)。」

ローザ 「イオンがいっぱい!」

所長 「このように陽イオンと陰イオンが規則正しく並んでイオン結合した結晶を『イオン結晶』というんだ。このイオン結晶には、面白い性質がある。」

イオン結晶の性質
  • 食塩の結晶のへき開
  • イオンの位置がずれてしりぞけ合う

所長が持っている模型に力を加えると、模型は直線的に割れました。
実際の食塩の結晶も、力を加えるときれいに割れます(左写真)。
ケンが食塩の結晶に釘を打ち込むと、直線的に割れました。
このように、イオン結晶が、ある面できれいに割れることを「へき開」といいます。

食塩の結晶は、陽イオンと陰イオンが、それぞれ静電気の力で結びついています。
ここに外から力を加えるとイオンの位置がずれ、プラスとプラス、マイナスとマイナスのしりぞけ合う力がはたらきます(右写真)。
食塩の結晶はこのようなしくみで「へき開」し、きれいな面ができます。


所長 「さて、食塩などのイオン結晶は、へき開以外にもいくつかの特徴がある。どんな特徴か分かるかな。イオンといえば、電気に関係がある。」

ケン 「もしかしたら、イオン結晶は電気を通す……ですか?」

所長 「さあ、どうかな。確かめてみよう。」

  • 銅は電気を通す
  • 食塩は電気を通さない

電気を通すものに電極が触れると電球が点灯する装置を用意し、イオン結晶が電気を通すかどうか確かめてみました。

試しに銅板に触れると電球が点灯することから、銅は電気を通すことが分かります。
続いて食塩の結晶に電極を接触させますが、電球は光りません。

このように、食塩の結晶は電気を通しません。
しかし、食塩を熱して融解すると、電気が通るようになります。

  • 食塩をすりつぶして加熱
  • 塩化ナトリウムが融解
  • 電気を通した

実際に実験を行って確かめてみます。
まず、食塩を融解しやすくするため細かくすりつぶします。
これを試験管に入れ、ガスバーナーで熱すると、次第に溶け始めました。
塩化ナトリウムの融点は、約800℃です。

ほとんど融解したところで、先ほどの装置の電極を塩化ナトリウムの中に入れると、電球が点灯しました。
熱して液体になった塩化ナトリウムは、電気を通すことを確認することができました。

  • 永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)
  • イオンが動くことで電気が流れる

液体の食塩はなぜ電気を通すのでしょうか。
永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。

イオン結晶には陽イオンと陰イオンがあり、それぞれがイオン結合しています。
しかしこの状態では、イオン同士が強く結びついているため、動くことはできません。
そのため、固体のイオン結晶は電気を通しません。


しかし、熱を加えて融解すると、それぞれのイオンは自由に動けるようになります。
プラスやマイナスの電気を持ったイオンが動くようになると、電気が流れます。
液体の食塩に電気が流れたのはこのためです。

  • 水に溶かすとイオンが自由に動く

所長 「では、ガッチリ結合したイオンを自由に動くようにする方法が他にもあるのを覚えているかな?」

ケン 「はい。水に溶かせば、イオンが自由に動きます。」

所長 「その通りだ。塩化ナトリウムの水溶液は電気を通すことは確かめた。そこで今回は、同じイオン結晶の塩化カルシウムで実験してみよう。」

  • 純水は電気を通さない
  • 塩化カルシウムを溶かすと電球が点灯

塩化カルシウム・CaClの水溶液が電気を通すことを確かめてみました。

まず、純水が電気を通さないことを確かめます。
電気を通すか確かめる装置の電極を純水に入れますが、点灯しません。

この状態で、純水に塩化カルシウムを溶かしていきます。
すると電球が点灯し、溶かす塩化カルシウムの量を増やすと、より明るさが増しました(右写真)。

塩化カルシウムの水溶液も電気を通すことが分かりました。


永島先生 「このようにイオン結晶は、熱して液体にしたり、水溶液にしたりすると電気を通すようになります。これは、イオンが自由に動けるようになったからです。

ローザ 「ところで、塩化カルシウム・CaClの塩素の記号の後には、何で “2” が付いているんですか?塩化ナトリウム・NaClは“2”が付いてなかったのに……。」

所長 「おー、ローザ。今までで1番素晴らしい質問だ。」

イオンでできた化合物の表し方
  • カルシウムは価電子が2個
  • 塩化物イオンは1価の陰イオン

塩化カルシウム・CaClに「2」が付いているのは、電子配置を見ることでその理由が分かります(左図)。

カルシウム原子の価電子は2個あります。
そのため、カルシウムは電子2個を失ってCa2+のように、2価の陽イオンになります(右図)。
一方、塩化物イオンは1価の陰イオンです。
電気のバランスを取るためには、塩化物イオンがもう1つ必要です。
塩化物イオンがもう1つ増えることで「+2」と「−2」が釣り合い、電気のバランスがとれます。

このように塩化カルシウムは、カルシウムイオン1個と、塩化物イオン2個の割合でイオン結合した結晶です。
これを表すために塩素の記号の右下に2をつけて、CaClと書きます。

  • 価数×個数が等しくなる
  • 個数は整数になる

ローザ 「陽イオンのプラスと陰イオンのマイナスのつり合いが大切なんですね。」

永島先生 「はい。イオン結晶では陽イオンが持つプラスの電荷の総和=合計と陰イオンが持つマイナスの電荷の総和が等しくなければなりません。ですから陽イオンの価数と個数をかけたものと、陰イオンの価数と個数をかけたものが等しくなるように結合します。」

ケン 「これで、プラスの電荷の総和と、マイナスの電荷の総和が釣り合いますね。」

永島 「そうです。たとえば今まで出てきたイオン結晶以外で見てみると、アルミニウムイオンと酸素の陰イオン、つまり酸化物イオンが結合した酸化アルミニウムでは、アルミニウムイオンの価数は3、酸化物イオンの価数は2です。このとき、それぞれのイオンの個数が何個なら、電荷が釣り合いますか?」

ケン 「アルミニウムイオンの個数を “1” とすると、かけ算の答えは “3” になるから、酸化物イオンの個数は “1.5” になります。これで釣り合いますが、でも1.5なんて個数はダメですよね?」

永島 「はい。1,2,3のような整数でないといけません。」

ケン 「じゃあ、アルミニウムイオンの個数を “2” とすると、かけ算の答えは “6” になるから酸化物イオンの個数は “3”。これでOKですね。」

永島 「はい、その通りです。酸化アルミニウムは、アルミニウムイオン2個と酸化物イオンが3個の割合でイオン結合した結晶なんです。ですから、酸化アルミニウムは “Al” と書き表します。」


イオンの種類とその個数の割合を最も簡単な数で表したものを「組成式」といいます。

イオンでできた化合物
  • 塩化カルシウムは除湿剤や融雪剤に利用
  • 酸化アルミニウムは宝石に

  • 炭酸カルシウムは貝殻や真珠に含まれる
  • 炭酸水素ナトリウムは重曹に

様々なイオン結晶の組成式を表してみます。

塩化ナトリウム・NaCl … 食塩
塩化カルシウム・CaCl … 除湿剤や融雪剤に使われる
酸化アルミニウム・Al … 大きな結晶は宝石のルビーやサファイアとして存在
炭酸カルシウム・CaCO … 貝殻や真珠に含まれる
炭酸水素ナトリウム・NaHCO … 「重曹」として洗剤やベーキングパウダーに使われる

このように、私たちの身近なところで、たくさんのイオン結晶が利用されています。


それでは次回もお楽しみに!

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