NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

今回の学習

第11回

イオンの形成

  • 化学基礎監修:東京都立小川高等学校教諭 永島 裕
学習ポイント学習ポイント

イオンの形成

“イオン” とは
  • 麻袋が6つ
  • ローザは1つ渡して2つ持つ

研究所に怪しげな麻袋が6つ届きます。

所長 「お、頼んでおいたものが届いたようだな。この荷物、私の研究室まで運んでおいてくれ。頼んだぞ。」

ケン 「6個あるから、3個ずつ運ぼうか。あ、けっこう重いな。」

ローザ 「左右同じ数ずつ持った方が、安定して運べるんじゃない?私の分、1個受け取って!じゃ、よろしく。」


こうして、ローザは自分の持分のうちの1つをケンに渡し、両手に1つずつ袋を持ちます。

所長 「ちょっと待て、ローザ!今のやりとり、まるでイオンだな!」

ローザ 「イオン?スマホやノートパソコンのバッテリーに使われている『リチウムイオン電池』のイオンってこと?」

所長 「そうだ。リチウムという物質のイオンの特性を利用して、繰り返し充電して使うことができる。それが、リチウムイオン電池だな。」

ケン 「宇宙開発でも、ロケットのエンジンでイオンエンジンってありますよね。」

所長 「その通り。イオンがプラスやマイナスの電荷を持っていることを利用して、少ない燃料で長時間動かすことができる。それが、イオンエンジンだ。イオンこそは、化学反応を知るための大いなる鍵のひとつなのだ。」

電流の流れる水溶液
  • LEDは光らない
  • 塩化ナトリウムを入れると
  • LEDが点灯

まずは、イオンについて知るために、水に電流が流れるか実験をしてみます。

用意したのは、ほとんど不純物が入っていない水、「純水」です。
さらに、電流を通すものに触れるとLEDが光るしくみの電気回路を用意し、端子を純水につけてみます。
しかしLEDは光らず、純水には電流が流れないことが分かります。

次に、純水に塩化ナトリウムを溶かし、先ほどと同様に電気回路の端子をつけてみます。
すると今度はLEDが光り、電流が流れました。
つまり、塩化ナトリウム水溶液には電流が流れるということが分かります。

なぜ塩化ナトリウム水溶液になると電流が流れるのでしょうか。

  • NaCl水溶液中に±の電荷を持つ粒子
  • 電圧をかけると正の粒子は+に、負の粒子は−に

塩化ナトリウムの水溶液中には、正(プラス)の電荷を持つ粒子と、負(マイナス)の電荷を持つ粒子があります。
そして、これらの粒子は水溶液の中を移動します。
電圧をかけるとプラスの粒子はマイナス極に、マイナスの粒子はプラス極に引かれるため、電流が流れるようになります。


この電荷を持つ粒子のことを「イオン」といい、正の電荷を持つ粒子を「陽イオン」、負の電荷を持つ粒子を「陰イオン」といいます。
また、物質が陽イオンと陰イオンに分かれる現象を「電離」といい、塩化ナトリウムのように水に溶けて電離する物質を「電解質」といいます。

イオンの動きを観察
  • 2つの電解質を用意
  • 硝酸カリウム水溶液で湿らせたろ紙にクロム酸銅

実際のイオンの動きを捉えた、「電気泳動」という実験を見てみます。

用意したのは、硝酸カリウムの水溶液と、クロム酸銅(U)の結晶です。 この2つは、どちらも電解質です。

電源装置に接続された正と負の電極のクリップに、ろ紙をはさみます。
硝酸カリウムの水溶液を、ろ紙全体に満遍なくかけて湿らせ、ろ紙に電流が流れるようにします。
続いて、ろ紙の中央にクロム酸銅(U)を置いて電流を流します。

  • クロム酸銅(U)が電離
  • 永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)

クロム酸銅(U)の右側に注目すると、次第に黄色い色が広がってくるのが観察できます。
このとき、クロム酸銅(U)が電離し、陰イオンがプラス極の方向に動いています。

そして、左側にも青い色が現れてきました。
陰イオンが移動するだけでなく、陽イオンもマイナス極の方向に動いています。


イオンはなぜプラスやマイナスの電荷を持っているのでしょうか。
永島 裕 先生(東京都立小川高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。


永島先生 「イオンは、もともとは原子です。原子のうち、電子配置が安定なもののグループがあったと思いますが、覚えていますか?」

ケン 「ヘリウムとかネオンとか……。」

ローザ 「希ガスですよね?」

永島先生 「そうですね。そして希ガス以外の原子には、電子を失ったり受け取ったりして、希ガスと同じ安定な電子配置になろうとする傾向があるんです。」

  • ナトリウム原子・Na
  • 電子が10個になる

永島先生 「たとえば、ナトリウムは原子番号が11です。ということは、陽子と電子をそれぞれ何個持っていますか?」

ケン 「原子番号が11なら、陽子と電子はそれぞれ11個ずつあるはずです。」


ナトリウム原子は陽子と電子を11個ずつ持っており、プラスとマイナスがつりあって、電気的には中性になっています。

ところがナトリウム原子は、最外殻にある1個の価電子を失いやすい傾向があります。
すると陽子は11個のままですが、電子は10個になります。
そして、全体としてはプラスが1つ多い状態、つまり1価の陽イオンになります。

このときの電子配置は、K殻に2個、L殻に8個となります。
これは、希ガスのネオンと同じ、安定な電子配置です。

  • 塩素は電子を1つ受け取りやすい
  • 電子が18個になる

次に、塩素原子の場合について考えてみます。
塩素は陽子と電子を17個ずつ持っており、電気的に中性です。

しかしナトリウムとは逆に、塩素は電子を1つ受け取りやすい傾向があります。
すると陽子は17個のまま、電子は18個になります。
そして、全体としてはマイナスが1つ多い、つまり1価の陰イオンになります。

このときの電子配置は、K殻に2個、L殻に8個、M殻にも8個となります。
これは希ガスのアルゴンと同じ安定な電子配置です。

イオンのでき方
  • ヨウ素と亜鉛
  • 固体同士を混ぜても変化無し

ヨウ素と亜鉛を使って、実際にイオンを作る実験を行いました。
ヨウ素は陰イオンになりやすく、亜鉛は陽イオンになりやすい元素です。

粉末状のヨウ素と亜鉛を混ぜ合わせてみますが、変化がありません。
実は、ただ混ぜ合わせただけでは電子のやり取りは起きず、水を加えることで電子のやりとりが起きやすくなります。

  • 水を加えると、ヨウ素の気体が発生
  • 亜鉛の陽イオンとヨウ素の陰イオンが存在

そこで純水を加えると、ヨウ素の気体が発生しました。
亜鉛とヨウ素が反応した熱で、ヨウ素の一部が昇華したためです。
つまり、亜鉛とヨウ素の間で電子のやり取りが行われたということです。

ヨウ素と亜鉛を混ぜた蒸発皿の中には、電子を失った亜鉛の陽イオンと、電子を受け取ったヨウ素の陰イオンが確実に存在しているということになります。


所長 「今の実験で、亜鉛とヨウ素がイオンになりました。しかし逆に、イオンが元の元素に戻ることもありますよね?」

永島先生 「はい。陽イオンが電子を受け取ったり、陰イオンが電子を失ったりすれば、元の元素の単体に戻ります。」

  • ヨウ化亜鉛水溶液を得る
  • 試験管に移して電流を流す

実験でできた亜鉛とヨウ素のイオンを、元の単体に戻してみます。

反応しないで残った亜鉛を、ろ過して取り除きます。
こうして得られたのは、亜鉛とヨウ素の化合物であるヨウ化亜鉛の水溶液です。
これを試験管に移して、電流を流します。
電流が流れるということは、この水溶液の中で電離が起きているということを意味します。

  • 陽極付近が茶色くなる
  • デンプン溶液を加えると青紫色に

電流を流すと、プラス極では水溶液が茶色くなってきました。
陰イオンであるヨウ素のイオンが陽極で電子を失い、元のヨウ素の単体に戻るためです。
そのヨウ素が水に溶け込んで、水溶液が茶色くなったのでした。

この水溶液はヨウ素溶液になっており、でんぷんの水溶液を加えると青紫色に変化します。

  • マイナス極に注目
  • 亜鉛の単体に戻っていた

ケン 「亜鉛のイオンは、どうなったのですか?」

永島先生 「亜鉛のイオンは、マイナスの電極の方に移動します。そこで電子を受け取って、単体の亜鉛に戻ります。」

マイナス極に注目すると、水溶液に浸っていた部分の色が銀色に変化していました。
このマイナスの電極を ろ紙にこすり付けると、亜鉛の単体が付着しました。
陽イオンが陰極で電子を受け取り、亜鉛の単体に戻ったのでした。


永島先生 「このように、原子などの間で電子のやり取りをすることで、イオンができます。身の回りの物質でも、食品に含まれるミネラル分など、イオンとして存在しているものがたくさんあります。ぜひ、探してみてください。」

イオンの表し方
  • ナトリウムイオン
  • 塩化物イオン

イオンの表し方には決まりがあります。

イオンを表すには、元素記号の右上に、やり取りした電子の数=「価数」を書きます。
価数は、陽イオンであればプラス、陰イオンであればマイナスの記号を書きます。
イオンをこのように表したものを、「イオン式」といいます。

たとえば、ナトリウムは1価の陽イオンになります。
ここで数字の1は省略することになっているため、ナトリウムの元素記号「Na」の右上にプラスの記号を書き、「Na」と表します。

塩素の場合は、1価の陰イオンになります。
元素記号Clの右上にマイナスを書き、「Cl」と表します。

これらのように原子1個からなるイオンのことを「単原子イオン」と呼びます。

一方、単原子ではないイオン、つまり「多原子イオン」もあります。
たとえば、1個の窒素原子と4個の水素原子が集まって1価の陽イオンになるアンモニウムイオンなどです。
この場合、NHを先に書いて、その右上にプラスを書き、「NH」のように表します。

イオンの価数、イオン式、名称

イオンは、呼び方にも決まりがあります。
単原子の陽イオンの場合は、「水素イオン」「ナトリウムイオン」のように、元素名にそのまま「イオン」を付けます。

一方、陰イオンの場合は少し異なります。
塩素は「塩化物イオン」、酸素は「酸化物イオン」のように元素名の「素」を取り、「化物イオン」を付けます。

アンモニウムイオンなど多原子イオンの場合は、固有の呼び方があるため、それぞれ覚える必要があります。

  • 化合物が何からできているか分かる

イオンの名前を覚えておくと、化学反応でどのような物質ができるか、あるいは化合物がどのような物質から出来ているかが一目で分かります。

たとえば、水酸化物イオンとナトリウムイオンが反応した場合、水酸化ナトリウムになります。
逆に、酸化マグネシウムと言えば、酸化物イオンとマグネシウムイオンが反応したものだと分かります。

化合物の名前は、陰イオンが先に、その後に陽イオンを付けるということもポイントです。

  • 豆腐とイオン?
  • にがりは塩化マグネシウムが主成分

所長 「ところで、イオンは化学実験だけで使われているわけではないぞ。普段の生活の中で、二人もいろいろとお世話になっているんだ。たとえば、二人とも豆腐は好きだろ?」

ケン 「豆腐? 確かに好きですけど……。」

ローザ 「どういうことですか?」

所長 「豆腐は、大豆をしぼってできる豆乳を固めたものだ。どうやって固めるのかというと、『にがり』を使うんだが、この主な成分は塩化マグネシウムなんだ。」

ケン 「塩化マグネシウムということは、塩化物イオンとマグネシウムイオン?」

所長 「ごく簡単に言うと、大豆のたんぱく質は、豆乳の中ではマイナスに帯電している。マイナスに帯電したたんぱく質が反発しあっているために、そのままでは豆乳は固まらないんだ。ところが、にがりに含まれるマグネシウムイオンが、たんぱく質のマイナスの電荷を打ち消してしまうので、反発力を失って豆乳が固まりはじめるというわけだ。」

ローザ 「陽イオンで固まるなら、わざわざ『にがり』とか使わなくても、食塩だけでいいんじゃないですか?陽イオンのナトリウムイオンが含まれていますよね?」

所長 「フフフ。そう言うだろうと思って、豆腐づくりの材料を用意しておいたぞ。実際にやってみよう。いざケミカル・クッキング!」

  • 3種類で比較
  • にがり や 塩化ナトリウムを加えて加熱

計量カップで豆乳100mLを計り、耐熱容器に移します。

今回は、
・豆乳だけで何も入れないもの
・にがりを入れるもの
・塩化ナトリウムを入れるもの
の3種類で比較してみます。

豆乳入りのカップの1つに にがり小さじ1杯を入れ、泡立てないように静かにかき混ぜます。
もう1つのカップには、塩化ナトリウム水溶液を入れてかき混ぜます。

密閉しないようにラップを軽くかけた3つのカップを、電子レンジ(500W)で2〜3分温めた後、5分ほど蒸らします。
※分量や加熱時間は、条件によって異なる場合があります。

  • 塩化ナトリウム入りは固まらない
  • 価数が大きいほうが豆乳を固める力が大きい

加熱して蒸らした それぞれの豆乳を比較します。

にがり入りのものは、ほどよく固まり、豆腐ができていました。
しかし、「豆乳のみ」と、「塩化ナトリウム入り」のものは固まりませんでした。


所長 「ナトリウムイオンもマグネシウムイオンも陽イオンだが、価数が違っていたな?」

ローザ 「ナトリウムイオン・Naは1価、マグネシウムイオン・Mg2+は2価です。」

所長 「そうだ。価数が大きい方が、豆乳を固める力が強いということだな。今日のところはここまで。しかし、イオンについて知らねばならないことは、まだまだあるぞ!」


次回も引き続き、イオンについて学びます。
それではお楽しみに〜!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約