NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第9回

電子殻と電子配置

  • 化学基礎監修:東邦大学教授 今井 泉
学習ポイント学習ポイント

電子殻と電子配置

  • ケンが撮った土星

ローザが研究所にやってくると、ケンが自分で撮影したという土星の写真を見ています。

ケン 「土星は、主に水素からできている巨大なガスの惑星なんだよ。周りの輪も、きれいに撮れてるでしょ?」

ローザ 「帽子の『つば』のような形ね。その輪は何でできてるの?」

ケン 「惑星探査機の調査によれば、直径数センチから数メートルの氷の塊がたくさん土星の周りを回っていて、それが全体として輪のように見えるんだって。しかも、いくつもの衛星が同じように回っているんだ。」

ローザ 「そうなんだ。でも、これって何かに似てるね。そうだ。原子ってこんな形なんだよね?原子核の周りを電子が回ってるんでしょ?」

ケン 「宇宙のようなマクロの世界と、原子のようなミクロの世界で同じような形があるなんて、なんだか不思議だね!」

所長 「そうだ。いにしえから詩人や科学者は、極めて小さい物の中に宇宙を見ていた。一方、大宇宙の無数の天体は小さな粒子からできている。」

電子の並び方
  • 電子殻
  • マグネシウムの電子配置

前回、原子の中心には原子核があり、その周りを電子が回っているということを学びました。

電子は、原子核の周囲にいくつかの層をなして存在し、この層のことを「電子殻」といいます。
電子殻にはそれぞれ名前が付いており、内側から、K殻、L殻、M殻…と続きます。
また、それぞれの電子殻に入ることができる電子の数は決まっています。



たとえばマグネシウムの原子番号は12なので、陽子の数も12個、そして電子の数もそれと同じ12個です。
12個の電子は、各電子殻に無秩序に存在するわけではなく、内側から順番に入ります。

いちばん内側のK殻には2個入ります。
L殻には8個入り、余る2つはM殻に入ります。

このように、それぞれの電子殻に入ることのできる電子の数は、
K殻…2個
L殻…8個
M殻…18個
のように、細かく決まっています。

このような電子の並び方を「電子配置」といいます。
原子によって電子の数は異なるため、電子配置も異なります。

マグネシウムの場合、M殻にはあと16個の電子が入る余裕があります。


ケン 「でも所長、原子は電子顕微鏡でやっと見えるくらい小さいのに、どうして原子の中の電子配置まで分かるんですか?」

所長 「そのことは、特別研究員の今井先生に聞いてみることにしよう。」

  • 今井 泉 先生(東邦大学 教授)

原子の中の電子配置が明らかになってきた経緯について、今井 泉 先生(東邦大学 教授)に詳しく解説していただきました。

先ほど学んだ電子配置図は、約100年前にニールス・ボーアという物理学者が考えたものだといいます。


ケン 「100年前では、原子を見ることもできなかったですよね。」

今井先生 「そうですね。このモデルは、原子の中を実際に見て作ったのではなく、ある実験の結果をもとに、それを説明するために作られたものだったんです。」

  • 分光器
  • 分光器内部のDVD
  • 分光器のしくみ

ボーアの行った実験を、実際に行ってみました。

使用するのは「分光器」です。
分光器は、ある光に、どんな色の光が混ざっているか調べることができます。

分光器のスリットから入った光は、鏡に反射して、録画などに使うDVDを小さく切ったものに当たります。
DVDの表面には目に見えないほど細かい溝が刻まれており、そこに光が当たると、光に含まれている色が虹のように分かれて見えます。

  • 白熱灯の光

まず、照明に使われている白熱灯(電球)の光を見てみました。
肉眼で見ると白い光ですが、分光器を通して見ると虹色に見えます。
このように、普通に見ると白い光でも、いくつもの光が混ざってできていることが分かります。

  • 水素が入った放電管に高電圧をかける
  • 赤と青がくっきり見える

次に、水素の光について調べてみます。

室内を暗くし、水素が入った放電管に高電圧をかけます。
発生する光を分光器で見ると、赤と青が筋状に分かれて見えます。

この光と電子には、どのような関係があるのでしょうか。

  • 高電圧でエネルギーが与えられ電子が外側へ
  • 電子が元に戻ろうとしてエネルギー放出

水素原子は、安定な状態では電子がK殻にあります。
しかし高い電圧をかけてエネルギーが与えられると、電子はL殻、M殻、N殻と外側の電子殻に移動します(左図)。

しかし、それは不安定な状態のため、電子は元の状態に戻ろうとします。
このとき、電子は光を発してエネルギーを放出します。


ケン 「どうして いろいろな色があるのですか?」

今井先生 「先ほど分光器で見た赤い線は、電子がM殻からL殻へ落ちるときに放出されます。また、青の線は、電子がN殻からL殻へ落ちるときに観察できる線です。」


このように、原子の放出する光にどのような波長の光が含まれているのかを、多くの科学者が解析しました。
その結果、電子殻について次第に明らかになっていきました。

閉殻ってなに?
原子ごとの電子配置

上の図は、研究の結果得られた、原子ごとの電子配置です。
電子配置は原子の種類によって異なりますが、中でも注目すべきは一番外側の電子殻に入っている電子=「最外殻電子」です。

  • 価電子

最外殻電子の中でも、図のように、青く示した電子と赤く示した電子の2種類があり、赤く示した電子のことを「価電子」と呼びます。
価電子は、他の原子との「反応のしやすさ」に深くかかわっている電子で、この価電子が原子の性質を決めているといっても過言ではありません。

  • 水素は価電子1
  • ヘリウムは価電子0

価電子が原子の性質とどう関わっているのか、実験で調べてみました。

用意したのは、水素とヘリウムです。
水素の価電子は1個です。
ヘリウムの電子は2個ですが、右図で電子が青で示されているとおり、価電子がありません。

  • 水素は、火を近づけるとポンという音がする

水素とヘリウムの違いを実験で比べてみます。
水素は、炎を近づけると「ポン」という音をたてて燃えます。
一方、ヘリウムは炎を近づけても変化がありません。

価電子を1個持つ水素は空気中の酸素と反応しやすく、一方ヘリウムは価電子を持たず安定しているため反応しにくいという性質があります。

  • ナトリウムの価電子は1個
  • ナトリウム

次に、ナトリウムを見てみます。
原子番号11のナトリウムの価電子は、水素と同じ1個です(左図)。

価電子が1個の原子は、反応しやすいという性質がありました。
そのため、ナトリウムは空気中の水蒸気など他の物質と反応しないように、灯油の中に厳重に保管されています。

ナトリウムは柔らかく、カッターナイフで簡単に切ることができます。
しかし、その断面には金属が持つ光沢があります。

  • 水に激しく反応するナトリウム
  • 爆発が起こる

小さく切ったナトリウムを水の中に入れてみます。
すると気体を発生させて激しく反応し、炎を上げて爆発しました。
ナトリウムのような価電子が1個の物質は不安定で、非常に化学反応を起こしやすい性質があります。

  • 希ガス
  • 希ガスは閉殻

2つの実験をまとめました。

最外殻の電子が1個の水素やナトリウムは反応しやすい一方、最外殻の電子が2個のヘリウムは安定していました。
最外殻が埋まっている電子配置が、原子にとって最も安定した電子配置です。

ヘリウムは最外殻に2個、ネオン、アルゴンは8個の最外殻電子を持ちます。
ヘリウムを含め、ネオン、アルゴンは「希ガス」と呼ばれるグループです。
希ガスは、他の原子と「結びつきにくい」という特徴があります。

最外殻に最大数の電子がおさまった電子殻を「閉殻」といいます。

原子番号と電子配置の秘密
  • 最外殻電子が8個のとき非常に安定する

所長 「電子配置によって原子の性質が変わること、分かったかな?その原子の性質には、ある数字が関係しているんだ。いわば『マジックナンバー』だな。」

希ガスの電子配置を見てみます(左図)。
縦に原子が、横に電子殻が並んでいます。

K殻に入る最大の電子数は2個で、原子番号2のヘリウムの場合、K殻は満杯となります。

原子番号10のネオンの場合、K殻に入る電子は2個、L殻に入る電子は8個です。
L殻に入る電子は最大8個であり、L殻は満杯となります。

アルゴンの原子番号は18なので、K殻に2個、L殻に8個、M殻に8個入ります。

クリプトンの原子番号は36で、K殻に2個、L殻に8個、M殻に18個入り、N殻には8個の電子が入ります。

最外殻の電子に注目すると、ヘリウムの場合は2個ですが、他の希ガスの場合は全て8個になっています。
このようにヘリウムやネオン、アルゴンなど最外殻の電子が「2」か「8」の「希ガス」と呼ばれるグループは、価電子がゼロで非常に安定していて反応しにくいという性質があります。

  • 価電子1のグループは反応しやすい
  • 17族も反応しやすい

価電子が同じで縦に並んだグループは、原子の性質が似ています。

水素やナトリウムなど、価電子が1個のグループは非常に反応しやすい性質を持っています。
一方、17族の列は、あと1個電子をもらうと安定な電子配置になるため反応しやすい性質があります。

このように原子番号と電子配置、そして原子の性質には、深い関わりがあります。

  • ネオンサイン
  • 次回もお楽しみに〜

所長が「思い出の品」と話す、ネオンサインを点灯させました。

所長 「このガラス管には、希ガスが詰めてある。そこに電流を流してエネルギーを加えると、こんなふうに光るんだ。」

ローザ 「他のものと反応しにくい安定した希ガスだから、利用されるんですよね。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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