NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第6回

原子

  • 化学基礎監修:立教新座高等学校教諭 渡部 智博
学習ポイント学習ポイント

原子

  • 水は粒子からできている?
  • すべての物質は小さな粒子でできている

ケンが各地の名水を並べて味見しているところへローザがやってきます。
ケンは、それぞれミネラルの量が微妙に異なるといいますが……。

ローザ 「研究者なんだから、もっと化学的に分析すればいいでしょ。」

ケン 「それにしても、水って奥が深いよね。ローザ、水は何からできてるか知ってる?」

ローザ 「HOだから、水素と酸素でしょ。」

ケン 「でも、この水がこんなツブツブからできているなんて信じられる? 本物の水の分子なんて、見たことないでしょ?」

ローザ 「それは……、見たことはないけど。でも目に見えないくらい小さいものなんでしょ。」


そこへ所長が登場します。

所長 「常識を疑ってみるというのは、研究員として悪いことではない。でもそれなら、水は何からできているとケンは思うんだ?」

ケン 「HOではないとまでは言いませんが……。ただ、こんな “さらさらの水” が小さな粒子でできているというのが、どうも信じられなくて。」

所長 「自分の実感を大切にするというのも悪いことではない。だが、この世の中のすべての物質は、小さな粒子からできていると考えられているんだ。」


今日は、その「原子のミクロの世界」を見ていきます。

物質は小さな粒子でできている?
  • どちらも100mL
  • 混ぜても200mLにならない

すべてのものが目に見えないほど小さな粒子でできていると考えられているのは、そう考えると「うまく説明できること」があるからです。


それを実験で確かめてみました。
100mLの水と、100mLのエタノールの2つの液体を混ぜると、体積は何mLになるでしょうか。

ケンは200mL と予想しましたが、実際にメスシリンダーの中にエタノールと水を入れてみると、約194mL という結果でした。

  • ガラス玉で実験
  • 200mLにならない

なぜ200mLにならなかったのでしょうか。
同じことを、大きさの違うガラス玉を使って試してみます。

大きい玉と小さい玉をそれぞれ100mLずつ用意し、混ざり合うようにメスシリンダーに入れます。
このときの、体積は約185mLです。

よく見ると、大きなガラス玉の間に、小さなガラス玉が入り込んでいます。
混ぜ合わせた時の体積が、最初の体積の合計より小さくなってしまうのは、このためです。

水100mLとエタノール100mLを混ぜても200mLにならなかったのは、これと同様の理由です。
エタノールの大きな粒子の間に水の小さな粒子が入り込んでしまうため、200mLにならなかったのです。

この現象は、物質が小さな粒子からできていると考えないと、うまく説明できません。

  • 渡辺 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)

物質が小さな粒子でできていることを実験で確かめましたが、ケンはまだ うまくイメージできない様子です。
そこで、特別研究員の渡部 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)とともに、別の実験で確かめてみます。


「物質は小さな粒子からできている」という考え方は、古くは古代ギリシャの時代にさかのぼります。
当時の哲学者 デモクリトスが「すべての物質は小さな粒子でできている」と考えましたが、多くの人は信じませんでした。
時代は進みおよそ200年前 イギリスの 科学者ジョン・ドルトンは、「気体が水に溶けるのは、水を構成する粒子の隙間に気体の粒子がはまることではないか」と考え、そのことをきっかけに「原子説」を唱えました。
しかし、それもすぐに受け入れられたわけではありませんでした。
その後、「物質が小さな粒子でできている」と考えることで、いろいろな実験や現象をうまく説明できることが次第に分かってきました。

その現象の1つに「ブラウン運動」と呼ばれる現象があります。

  • 牛乳を数滴水に入れて薄める
  • 水の粒子が脂肪の粒子を動かす

ブラウン運動を実際に見てみました。
牛乳を数滴 水に入れて薄め、それをスライドグラスに載せてカバーグラスでふたをし、顕微鏡で観察します。
すると、白い粒が細かく動いている様子が観察できました。

ローザ 「虫みたいに、ウョウョ動いている。生きているみたい……。」

渡部先生 「ローザさん、それは生きているのではなくて、脂肪の粒なんですよ。」

ケン 「先生、どうして小さな粒が、このような動きをするんですか?」

渡部先生 「それは、牛乳の中の脂肪の粒を、さらに小さな水の粒子が動かしていると考えられます。そう考えると、脂肪の粒の動きが説明できるのです。」

ローザ 「小さな粒子が、大きな粒子を動かす……。どういうことですか?」

  • ブラウン運動体感マシーン
  • ビー玉が赤い玉を動かす

ここで、「ブラウン運動・体感マシーン」を使って確かめてみます。

赤い円柱状のものを脂肪の粒、水色のビー玉は水の粒子だとします(右図)。
箱を揺らすと、小さなビー玉が赤い玉に当たって動きます。
つまり、水の粒子が脂肪の球に当たって動かしている様子が再現されています。

水の粒は常に熱運動によって動いています。
そして、その水の粒子がぶつかって脂肪の粒を動かしているのです。

原子の大きさと質量
  • 水分子は酸素原子と水素原子からなる
  • 原子の種類によって大きさ・質量が決まっている

これまで見たように、さらさらの水も小さな粒子である水分子からできています。
そして水分子は、酸素と水素が結びついたものです。
酸素や水素のように、物質を構成する基本的な粒子を「原子」といいます。

原子は、

・化学変化によって、それ以上分けることができない
・化学変化によって新しくできたり、なくなったり、別の原子に変わったりしない
・種類によって大きさや質量が決まっており、大まかに表現すれば1億分の1cmほど

という性質があります。


たとえば酸素原子と水素原子とを比べると、酸素原子の直径は水素原子の2倍、質量は16倍にもなります。

  • アルミニウム原子は1円玉に1億個並ぶ
  • アルミニウムの質量は1/220億×1兆g

ケン 「ところで原子って、どのくらいの大きさなんですか?」

所長 「とても小さい。たとえばこの1円玉と比較してみよう。1円玉はアルミニウムでできている。アルミニウム原子を1円玉の直径2cmの長さに並べるとおよそ1億個並ぶことになる。」

ローザ 「では質量は、どのくらいなんですか?」

所長 「1円玉の重さが1g。この中には、アルミニウム原子が、220億個のさらに1兆倍含まれている。つまり1個のアルミニウム原子の質量は、『220億の1兆倍』分の1gだ。」

ケン 「この小さな原子、自分の目で見ることはどうしてもできないんですか?」

所長 「方法がないわけではない。自分の目で見届けるがいい!ケミカルワールドの神秘を。」

原子を見る
  • 物質・材料研究機構の宝野 和博さん
  • 試料はタングステンの針

ケンは原子を見るため、茨城県つくば市にある、物質・材料研究機構を訪れました。
案内していただくのは、磁性・スピントロニクス材料研究拠点長の宝野 和博さんです。


原子は、電界イオン顕微鏡という特殊な顕微鏡で見ることができます。
原子を見るための試料は、金属元素の一つであるタングステンでできた、非常に細い針です。

  • タングステンの針を拡大した模型
  • 六角形の構造が並ぶ

宝野さん 「使っている試料は、こういう非常にシャープな針なんです。この針の先端をクローズアップしていきます。先端を、拡大してみるとこの模型のようになります(左写真)。丸くなっていますね。原子レベルで見ると、この模型のようにステップ状に並んでいるんです。このステップの周囲にある原子だけが、見えるという仕組みです。」

針の先端には、模型のような六角形の構造が何万個と並んでいるといいます。

実際に倍率100万倍で観察すると、右写真のように原子が並んでいる様子が見えました。
明るく輝く点の一つひとつが、タングステンの原子の姿です。

  • 3次元アトムプローブ
  • 試料に高電圧をかけ、飛び出した原子を検出

さらに、金属の内部まで立体的に見ることができる、3次元アトムプローブという顕微鏡も開発されています。
この顕微鏡は、金属に高い電圧をかけることにより、飛び出した原子をとらえて映像化します。
表面だけではなく、内部の原子の並び方まで見ることができます。

  • ネオジム磁石
  • 緑の点はネオジム原子、赤い点は銅原子
  • 原子の位置を3次元的に視覚化

3次元アトムプローブを使って、ネオジムや鉄などの合金から作られる強力な磁石=ネオジム磁石の内部を見てみます。

中写真の緑色の点がネオジム原子、緑色の中に混じっている赤い点は、銅の原子です。
この2次元の画像を3次元的に拡張したものが右写真です。

この研究によって、原子の種類や位置と、磁石の強さの間には深い関係があることが分かってきました。

  • 弱い磁石は結晶同士の境界に何も見えない
  • 弱い磁石は結晶同士の境界がはっきりしない

2次元の写真で合金内の結晶同士の境界を見たときに、弱い磁石の場合は結晶と結晶の間に何も見えません。
3次元の映像で見ても境界線は、かすかにしか見えません。

  • 強い磁石は結晶同士の境界にネオジムが集中
  • 赤い点は銅原子

これを、ネオジムや銅を加えて改良した強力な磁石と比べてみます。
強い磁石の場合、2次元・3次元ともに、結晶と結晶の境界の部分にネオジム原子が集中している様子が見られます。
3次元の画像に見られる赤い点は銅の原子です(右写真)。


強い磁石を作るには、
・ネオジムなどの原子が金属の結晶の間に入り込んで層を作る
・この層に微量な銅が含まれる
ということが重要だと分かってきました。


宝野さん 「こういうふうに物質の内部の原子を3次元的に、立体的に、いろんな方向から見る。するといろいろな材料の中に入っている微量元素の役割が分かってきます。

  • 原子が見えれば構造が分かる
  • 次回もお楽しみに〜

所長 「先生、現代の科学は、物質に含まれる小さな粒子・原子を直接見ることができるようにしました。さらにその構造を変え、新しい物質を作り出す段階に入ったということですね。」

渡部先生 「そのとおりです。たとえば、ある材料の原子が見えれば、材料の構造を調べたことになります。先ほどの研究で紹介されたネオジム磁石のように、その材料が “どんな元素からできているのか、原子がどんな並び方をしているのか、どんな不純物がどのように入っているのか” が見えたということです。」

所長 「それらが分かると、どうなるんですか?」

渡部先生 「その材料がどうしてそういう性質なのかも分かってきます。そうすれば、うまく構造を作りかえることで、材料の性質を変えることもできるようになるということです。そして、どんな構造にすれば良い材料ができるかまで、予想がつくようになります。そのためには、まず原子の世界を よく知る必要があるんですね。」

所長 「この技術を応用して、新しい物質を作る時代はもうすぐですね。ところで、2人は新しい物質を作り出すことができるとしたら、どんなものを作りたい?」

ローザ 「私は、食べても食べても太らない物質!」

ケン 「僕は、どんな病気にも効く特効薬を作りたいな。」


それでは次回もお楽しみに!

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