NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

今回の学習

第1回

日常生活と化学のかかわり

  • 化学基礎監修:東京学芸大学附属高等学校教諭 岩藤 英司
学習ポイント学習ポイント

日常生活と化学のかかわり

  • ケン
  • ローザ

深い森の奥にある古い館。ここは気鋭の研究員たちが、日夜ユニークな研究に取り組む秘密の研究所です。朝、ローザ(長谷川 眞優)が研究所にやってくると、ケン(水谷 駿)が徹夜で実験を続けていました。


ローザ 「あんまり根を詰めると体に毒だよ。何やってるの?なんだか怪しげな実験だね。」

ケン 「そんなことないよ。宇宙開発にも役立つ高性能電池を作るつもりなんだ。だけど、何度実験しても上手くいかなくて。もう、嫌になっちゃうよ。」

ローザ 「エジソンも言ってるわよ。“私たちの最大の弱さは、つい諦めてしまうことだ。成功するのに最も確実な方法は、もう一回だけ試してみることなんだ。”って。」

ケン 「分かってるよ。だけど、あと何回試せばいいんだろう。だいたい、こんな実験していて本当に意味があるのかなあ……。化学反応の研究なんて、日常生活とはほとんど関係ないし。」

  • フラメル所長
  • 至るところで化学反応

フラメル所長 「何を言ってる、ケン!我々の住んでいるこの世界では、至る所で化学反応は起こっている。文明とは、化学反応を制御することと言っても過言ではないんだ。世界を動かすもの、それはケミカルパワーだ!」

この人こそ、この研究所の所長、フラメル博士(金子 昇)です。なんでも祖先は錬金術師なのだとか……。


フラメル所長 「たとえばステーキを焼くと、こんがりした焼き色がつくだろう。ここではタンパク質やアミノ酸と糖が化学反応を起こしているんだ。それに、いい匂いもするだろう?この化学反応で同時にさまざまな香り成分が生まれているんだ。」

  • コンクリート
  • ローマ帝国の時代にコンクリートの利用

化学反応と深く関係しているのは、食べ物だけではありません。人の衣食住すべてが関わっています。
色とりどりの洋服の中には、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維でできたものがあります。合成繊維の原材料は石油です。化学変化によって石油から繊維が作り出されています。

衣食住の「住」で、化学反応と関係が深いものの1つが、コンクリートです。セメント・砂利・砂・水を混ぜて固めるコンクリートは、セメントが水と化学反応を起こすことで、しっかりと固まります。

ビル・高速道路・橋など、近代的な建築で大量に使われるコンクリートですが、実はその歴史はかなり昔にさかのぼります。驚くことに、ローマ帝国の時代に建てられた神殿、パンテオンにもコンクリートが使われています。

このように、人々は古くから暮らしの中で化学反応を利用してきたのです。

生活の中の化学
  • セラミックスも化学の産物

所長 「ちなみに、皿やグラスだって粘土やケイ砂を高温で処理して作るセラミックスだ。
これも化学の産物だな。それに、ごはんを炊くときにだって化学変化が起こっているんだ。」

ローザ 「どういうことですか?ただ加熱しているだけじゃないんですか?」

所長 「炊飯器の中でも、かなり複雑な変化が起こっているぞ。」

  • 炊飯時に酵素がデンプンの一部を分解
  • 生米と炊いたご飯を比較

ご飯を炊くとき、炊飯器の中では、お米に含まれている酵素がデンプンの一部を分解して糖分を作り出すという化学反応が起きています。

さらに、お米のデンプンの構造にも大きな変化が起きています。
生のお米の電子顕微鏡写真を見てみます(右写真-左)。
断面を見ると、デンプンのかたまりが、たくさん詰まっています。
この状態でローザが試食すると、「味もあまりせず、少し粉っぽい感じ」という感想です。

しかし、ご飯を炊くとデンプンの構造が変化します。
炊いたご飯粒では、スポンジのような細かい隙間のある構造ができています(右写真-右)。
ふっくらとやわらかいごはんに変わったのです。
試食すると、今度は「ふっくらしていて、おいしい」という感想です。

ごはんを炊くと、生のお米の中の分子が規則正しく並んだ硬いβ‐デンプンの構造が崩れて、
軟らかいα‐デンプンに変わります。

  • 南部鉄器が採用された最新炊飯器
  • 岩手の特産品

炊飯器メーカーでは 「デンプンが適度にアルファ化した理想のごはん」を目標に激しい技術競争を続けています。

ある炊飯器メーカーの開発担当者、中山 知哉さんに話をうかがいます。
まずは、最新の炊飯器で炊いたごはんを味見します。

ローザ 「さっきのよりも、もっとふっくらさが全然違う気がします。甘みも強くなっていますか?」

中山さん 「分かりますか?」

この炊飯器の内釜には、いろいろな材質を検討した結果、南部鉄器が採用されていました。
南部鉄器は、岩手県に江戸時代から伝わる特産品です。伝統的な鉄器作りの技術を生かして、かまどで炊く鉄釜の味を再現しようとしたといいます。

  • 炊飯器メーカー 開発担当の中山さん
  • 南部鉄器採用のメリット

中山さん 「鉄は、いろいろな金属の中でもIH加熱と相性が良く、均等に熱を伝えることができるんです。それで高い火力を生み出すことができます。」

高い火力で釜全体に熱を伝え、中のごはんを均等にアルファ化していきます。さらに、圧力を加えることで沸点を上げて、100℃以上の高温で炊き上げます。こうしてアルファ化を一気に促進します。

“おいしいごはん” といっても、人によって好みは分かれ、そのすべてにこたえるのは簡単ではありません。

中山さん 「ごはんというのは、まだまだ分かからないことが多いです。それを一つひとつ解明していって、世界中の誰もがおいしいと言ってもらえるごはんを炊きたいですね。」


炊飯器の内釜にも使われた鉄ですが、実はその利用の歴史も化学反応と深い関わりがあります。

金属と化学
  • 岩藤 英司先生
  • 合金を作ることが重要だった

所長 「ところで鉄といえば、人類の文明の中で、鉄を利用することがいかに画期的なことだったか知ってるかい? 」

ケン 「“すき” や “くわ” は生産の道具だし、武器に使われたことも大きいでしょうね。」

所長 「そうだ。しかし、鉄を利用することは簡単ではなかった。金属の性質と利用について、あの人に聞いてみよう。特別研究員の岩藤先生だ。岩藤先生!」


金属の利用の歴史と化学反応との深い関わりについて、岩藤 英司 先生(東京学芸大学附属高等学校 教諭)に話をうかがいます。
自然の中の金属を利用するためには、酸化物などの化合物の中から金属だけを取り出す技術が必要であり、それがやりやすい金属から利用されてきたといいます。

岩藤先生 「銅とか鉄は比較的古くから利用されてきました。アルミニウムは地殻を構成する元素としては最も多い金属なんですけれども、鉄よりも酸化されやすい金属であるため、酸化物からアルミニウムを取り出すのが難しかったんです。アルミニウムが利用できるようになったのは、電気が豊富に使えるようになった19世紀末以降のことなんです。」


さらに、優れた製品を作るために、“金属の性質自体を変える技術” も重要でした。

岩藤先生 「金属の性質自体を変える技術として、1つ目に合金を作ることが重要でした。銅はもともと柔らかいのですが、スズとの合金である硬い “青銅” が作られると、利用の幅が大きく広がりました。2つ目として、たとえば鉄のように、含まれる炭素の量を調節して硬くて強い鋼 “鋼鉄” を作る技術によって世界中に広がっていったんです。人類が知恵を働かせ、地球上に存在するいろいろな金属を、より使いやすい形に変えることによって、さまざまに利用してきたんです。」

  • 酸化鉄(III)
  • アルミニウム
  • 磁石に反応しない

鉄を利用するために必要になる、“酸化鉄から鉄を取り出す” 作業を実際に行ってみます。

まず、酸化鉄(III)と、アルミニウムの粉末を用意します。磁石を近づけてみますが、酸化鉄もアルミニウムも反応せず、くっつきません。しかし、実験を行うことで鉄ができ、磁石に引きつけられることが予想されます。

  • 混ぜた粉にマグネシウムリボンをセット
  • 火をつけると、明るく光る

酸化鉄から鉄を取り出す実験を、以下の手順で進めていきます。
※この実験は適切な指導者のもとで行ってください

1. 酸化鉄をアルミニウムに混ぜる
2. 混ぜた粉末を、レンガの上に乗せて山を作る
3. 導火線として、マグネシウムリボンを山に立てる
4. マグネシウムリボンに火をつける
※安全のため、保護めがねを必ず着用し、着火する人以外は離れて観察する

マグネシウムリボンに着火すると、金属の粉末が炎を出して花火のように明るく光りました。
反応が収まって冷えるのを待ち、レンガにくっついている金属をスプーンではがします。

  • 出来上がった金属は磁石に引き寄せられる

出来上がった金属に磁石を近づけると、金属が磁石にくっつき、鉄になったことが確認できました。
このように、酸化されやすいアルミニウムの性質をうまく利用し、鉄を取り出すことができました。

ほんの少しの鉄を取り出すのも、大変だということが分かった実験でした。

よりよく生きるための化学
  • 繊維も進化
  • メーカーの保城さんに案内していただく

所長 「人類の文明が発達するのに、化学がいかに深く関わってきたか分かったかな。
でも、過去の文明だけじゃない。人類の未来にも化学反応が大きく関わっていくことは間違いない。」

ケン 「人類の未来ですか?」

所長 「今、繊維がどんどん進化して、これまで考えられなかったようなスーパー繊維が生まれているんだ。」

スーパー繊維について調べるため、ケンは化学合成繊維のメーカーを訪ねました。
担当の 保城 秀樹さんに案内していただきます。

  • 手でちぎれて、くっつく包帯
  • 細かく波打つ繊維

最初に見せていただいたのは包帯です。
普通の包帯と違う点は、ハサミを使わずに手でちぎることができるということです。
そのうえ金具などを使わなくても、包帯の布地がくっついて止まるようになっています。

この包帯を顕微鏡で見ると、細い繊維が細かく波打っていることがわかります(右写真)。
ここに、切れた繊維の端がうまく絡まって止まるようになっているのです。

  • 25kgの重りで割れてしまうセメントの板
  • 合成繊維を混ぜたセメントの板

次は、建築材料の中に混ぜて使われているという繊維を見せていただきました。

その繊維の効果を実験で調べてみます。
まずは、普通のセメントの板に25kgの重りを落とします。
すると、板は割れてしまいました(左写真)。

一方、先ほどの合成繊維を混ぜたものに重りを落とすと、
今度は折れることなく曲がって重りを受け止めました(右写真)。
合成繊維を混ぜることで、硬くてもろいセメントが、強くてしなやかな素材に生まれ変わったのです。

  • ポリアリレート繊維
  • 火星探査車スピリット
  • 着陸用エアバッグに使われている

実際に、“スーパー繊維” を見せていただきました。
実はこの繊維は、既に宇宙で活躍しているといいます。NASAが火星に送った無人探査車「スピリット」が火星に着陸するとき、衝撃に耐えるためのエアバックの素材として、この繊維が採用されています。

  • カッターで切っても…
  • 跡がつくだけ

ポリアリレート繊維と呼ばれるこの繊維は、カッターやハサミで切ろうとしても、跡がつくだけで切れません。
しかも、引っ張る力にも強いという特徴があります。

  • 人を持ち上げることもできる
  • 分子の方向をそろえ高い引っ張り強度に

そこで、直径2ミリの繊維にケンがぶら下がってみます。すると、繊維は切れることなく、ケンの体が浮かびました。

ポリアリレート繊維は、ポリエステルと同じ合成繊維ですが、分子の方向をそろえることで、高い引っ張り強度を実現しています(右図)。
さらに、マイナス100℃の低温や、300℃以上の高温にも耐えることができます。
この繊維を使用して、月面での利用を想定したテントも開発されているといいます。

  • 細い繊維が集まっている
  • 次回もお楽しみに〜

ケン 「見て、これがポリアリレート繊維。触ってみる?」

ローザ 「すご〜い!細い繊維がたくさん集まっているんだね。」

ケン 「髪の毛よりも細い繊維なんだけど、これ1本で60kgの人を持ち上げられるんだ。スーパー繊維と呼ばれるものには、ほかにも炭素繊維やアラミド繊維などがあるんだ。軽いのに強度や耐熱性の優れた繊維が次々に開発されているんだって。」

所長 「繊維だけでなくプラスチックでも電気を通すものや、環境の中で分解するものなど、これまでにない機能を持ったものが次々に生まれているんだ。」

ローザ 「まさに化学の力で未来を切り開いているわけですね。」

ケン 「宇宙開発に役立つものも いろいろありそうですね。僕、なんだか急に研究意欲が湧いてきちゃった。」

ローザ 「よ〜し、私もやるぞ〜!私は宇宙食の開発をしようかな。」

ケン 「ローザはやっぱり食べ物か。」

ローザ 「え?だって大事でしょ?」


それでは、次回もお楽しみに!!

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