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今回の学習

第7回 生活文化の多様性と国際理解

気候変われば暮らしも変わる? 〜各気候の生活〜

  • 監修・講師 筑波大学附属高等学校教諭・中村 光貴
学習ポイント学習ポイント

気候変われば暮らしも変わる? 〜各気候の生活〜

  • 井桁弘恵
  • 南圭介

ここは、編集デスクの南圭介と期待の新人編集部員・井桁(いげた)弘恵が所属する、創立間もないネットニュース「ツバサニュース・ドット・コム」の編集部です。

南さんと井桁さんが、今回の特集「世界のグルメを食べ尽くそう!」で紹介するメニューについて話し合っています。

井桁「正直、グルメを紹介する記事って、ネット上に溢れてるじゃないですか。それなのに、あえて特集を組むんだから、紹介する料理のラインナップには、“さすがツバサニュース!”と思わせるような斬新な基準が欲しいんですよね…」

南「読者のメインは日本人なんだから、“ご飯にバッチリ合う”ってのはどう?」

井桁「だったら、“パンに挟むと美味しい”だっていいじゃないですか」

南「改めて思ったんだけど、日本や東南アジアでは、主食は米だよね。で、ヨーロッパや中東あたりだと、小麦を使ったパンやパスタが主食じゃない?」

井桁「確かにそうですね。あ、そういえば、そんな資料を見た覚えが…」

米と小麦の生産量ベスト7

上の画像は、米と小麦の生産量上位国を示した図です。

中国とインド以外は、米の生産上位国は、東南アジアの国ばかりです。
一方 小麦は、ロシアやカナダのような、寒いイメージの国でも生産量が多いことがわかります。

井桁「以前にも、米と小麦の産地の違いって見たことありませんでしたっけ?」

米の生産量と気温

上の左の画像は、中国の米と小麦の産地をドットマップで表した分布図です。
これを、年平均気温をメッシュマップ(上の右の画像)で表した分布図と比べてみます。
すると、米の産地は平均気温が高い地域(図中の丸で囲まれた地域)だということが分かります。

中国の米と小麦生産量と雨量等値線図の関係

先ほどのドットマップを、年降水量を示した等値線図と比較すると、雨がたくさん降る地域で米が生産されているということは以前見てきました。

世界の生産地の場合もこれが当てはまるのでしょうか。
それぞれ小麦と米の生産量が、第三位のロシアとインドネシアの場合を比べてみましょう。

ジャカルタとモスクワの雨温図

インドネシアとロシアの気温と降水量を比較する場合、場所も離れているので、中国のように分布図を比較するわけにはいきません。
そこで、月別の気温と降水量で気候を読み取れる、雨温図を使います。

上の画像のように、2国の雨温図を並べると、一目で違いが分かります。

ジャカルタは、一年を通して気温が高いことが分かります。
降水量は、5月から10月にかけては少ないですが、全体的には多いようです。

一方 モスクワは夏は気温が高いのに対して、冬はかなり低く、0℃を下回ります。
降水量も、ジャカルタに比べてずいぶん少なくなっています。


井桁「つまり、中国の場合と同じく、米は気温が高くて降水量が多いところで作られる。そして、小麦は気温が低い時期があって雨が少ないところで作られるということですね」

南「主食が米になるか、小麦を使ったパンやパスタになるかは、気候に左右されるってことかな?」

植物と気候の関係は?
  • 米
  • 小麦

米、すなわち稲は高温多湿を好み、寒さに弱いという性質があります。
東南アジアで広く栽培されているインディカ米という種類は、特にその傾向が強いです。

一方 小麦は、発芽するためにある程度の低温期間が必要で、乾燥にも強いという性質があります。

そのため、気候によって米が育ちやすいのか、小麦が育ちやすいのかが決まります。
それぞれの土地で育ちやすいものが選ばれて、主食になった
ということが言えそうです。

  • 植生
  • ケッペン

このように、植物にはそれぞれ生育に適した環境があります。
そして、ある地域を覆っている植物の集まりを植生といいます。
この植生と気候との関連性に注目したのが、ドイツの気候学者 ケッペンです。

ケッペンの気候区分図

ケッペンは、植生の分布を基準に気温と降水量を指標として、「熱帯」「乾燥帯」「温帯」「亜寒帯」「寒帯」の5つに世界の気候を区分しました。
さらに、それぞれの気候を細分化したものが、「ケッペンの気候区分図」(上の画像)です。
いくつかの気候の植生を、見てみましょう。

  • 熱帯雨林
  • オランウータン

赤道周辺には「熱帯」が広がっています。
気温が高く降水量が多いジャカルタ周辺などには、さまざまな種類の常緑広葉樹からなる熱帯雨林が広がっています。
ケッペンの気候区分では「熱帯雨林気候」に区分されています。

  • 砂漠
  • 砂漠

熱帯の北と南には「乾燥帯」があります。
アフリカ大陸北部にある世界最大の砂漠「サハラ」は、乾燥帯のうち「砂漠気候」に区分されています。
雨がほとんど降らないために、背の高い樹木が育ちにくく、見渡す限り砂や岩石ばかりの風景が続いています。

  • 亜寒帯
  • タイガ

緯度の高いロシアの国土の大部分は、「亜寒帯」です。
冬の寒さは厳しいですが、一年中降水がある「亜寒帯湿潤気候」では、「タイガ」と呼ばれる常緑針葉樹の広大な森林が見られます。

植生の分布は、農業や林業などとも関係が深いため、人々の生活文化を理解するうえで大いに役立ちます。

乾燥帯と回帰線

井桁「以前、“赤道周辺が、一番太陽光線から受けるエネルギーが大きい”という話を聞きましたが、確かに、一番暑い熱帯になっていますね」

南「ただし、キレイに分かれているわけではなく、けっこう入り組んでいるようだね。これは、もしや陸地と海洋が関係しているとか?」

井桁「“大陸性気候“と“海洋性気候”というのがありましたね。それから、熱帯と温帯の間に乾燥帯があるのは、“大気大循環”の影響だと思います」

南「南北の緯度30度くらいが“亜熱帯高圧帯”だったよね。この図にある“回帰線”の緯度が23度26分だから、だいたいそのあたりに乾燥帯があるってことか」

井桁「この気候区分を意識して、それぞれの地域の主食にフィーチャーすれば、我が社の特徴が出せるんじゃないでしょうか」

暑いところの生活
  • ナシゴレン
  • 香辛料

インドネシアが属する熱帯では、どんな生活をしているのでしょうか?
まずは、インドネシアの食生活から見ていきましょう。

ナシゴレンは、“インドネシア風チャーハン”とも呼ばれる伝統料理。
各家庭で作られるのはもちろん、ジャカルタには年中無休、24時間営業の屋台村があって、現地の人々にも観光客にも大人気です。
具や調味料を変えたさまざまなバリエーションがあります。

屋台を出て市場に足を向けると、そこにはバナナやパパイヤなどが所狭しと並べられています。
こうした、色鮮やかな農作物や香辛料が豊富なことも、熱帯の特徴のひとつです。

熱帯の気候区分

熱帯は、植生の違いによって「熱帯雨林気候」と「サバナ気候」に大別されます(上の画像)。

  • 広葉樹林
  • スコール

昼でもなお暗いうっそうとした広葉樹林が広がる熱帯雨林気候。
世界の熱帯雨林には、生物種のおよそ半分が生息していると言われます。
生物多様性に富んだ場所です。

年間を通じて降水量が多いこの気候で特徴的なのが、スコールです。
午後に、激しい雨を伴って吹く強風です。

  • 集落
  • 急傾斜な屋根

こうした気候に対応した住宅を見てみましょう。
フィリピンで伝統的な生活を守っているイフガオ族の集落の屋根は、傾斜がかなり急になっています。
強い雨を流しやすくする工夫だと考えられています。

  • 高床式
  • 稲作

また、高床式になっているのは、風通しをよくして家の中に熱や湿気がこもらないようにするためです。

イフガオ族の人々は、山肌に美しい棚田を築いて、水田稲作を行っています。
熱帯雨林では、その他に自給的な焼畑農業や、商品作物のプランテーションが営まれているところもあります。

  • サバナ
  • コーヒー農園

熱帯雨林と違って、雨季と乾季の差がはっきりしているのが、サバナ気候。
「サバナ」とは、樹木が点在する草丈の長い草原のことです。
アフリカ大陸のサバナは、野生動物の宝庫として知られています。

一般的にやせた土壌が多いサバナですが、ブラジル高原やインドのデカン高原など、肥沃な土地もあります。
そうした土地では、さとうきびや綿花、コーヒーなどの栽培が行われています。


南「以前インドネシアに行ったときに、その日がたまたまイスラームの犠牲祭だったの。いたるところでヤギとか牛とかがさばかれてて、その夜にヤギの串焼きをいただくのよ。サテカンビンっていうんだけど、ナシゴレンの付け合わせにもなるって言うから、今回の特集に加えようよ」

井桁「まだ熱帯しか見ていないじゃないですか。いったん保留とさせていただきます。小麦が栽培されているロシア、亜寒帯の様子も見ておきましょう」

寒いところの生活
  • タイガ
  • 永久凍土

まずは亜寒帯の植生をもう一度確認しましょう。

亜寒帯の植生は、「タイガ」と呼ばれる、亜寒帯特有の常緑針葉樹林です。
一年を通してある程度の降水があることに加えて、地下の永久凍土層から供給される水分も、広大な森林を支えています。
熱帯雨林がさまざまな種類の樹木で構成されているのに対して、種類が限られていることが特徴で、林業には好都合です。

  • 小麦
  • ピロシキ

国土の大部分が亜寒帯に属しているロシアでは、小麦の生産が盛んです。
2000年代以降、農業生産を拡大させ、世界第1位の小麦輸出国となりました。

小麦を使った伝統的な料理といえば、ピロシキが有名です。
小麦粉を練った生地で肉や魚、ゆで卵、野菜など、さまざまな具材を包み、オーブンで焼いたり油で揚げたりした「ロシア風惣菜パン」です。

  • ダーチャ
  • 野菜づくり

さて、ロシアで、亜寒帯の短い夏を謳歌するために欠かせないものが、郊外の別荘「ダーチャ」です。
5月から9月にかけて、仕事を離れて休息したり自然を楽しんだりしています。
ダーチャでは、野菜作りに勤しむ人も多くいます。
収穫したものは、酢漬けにするなどして、長い冬に備えます。

  • 高床式の建物
  • 中村先生

ここで問題です。
寒い亜寒帯でも、上の左の画像のように高床式の建物が見られます。
どうしてでしょう?

井桁「熱帯の高床式住居は風通しをよくするためだったけど… 雪がたくさん降るので、出入口が塞がらないようにするため?」


中村先生「それもあるかもしれませんが、一番の理由はちょっと違います。ヒントは、亜寒帯の地面は永久凍土であるということです」

井桁「凍った地面から、冷気が伝わってこないようにするため?」

南「逆に、暖房の熱が、地面に伝わらないようにするためとか?」

井桁「なるほど。永久凍土が溶けて、下手したら建物が傾いちゃう?」

中村先生「正解!ただ、永久凍土が溶ける理由は、暖房だけではなく、今 世界的な課題となっている地球温暖化の影響も考えられます」

  • 次回もお楽しみに

熱帯雨林とタイガはどちらも広大な森林地帯ですが、伐採による面積の縮小がより大きな問題になっているのは、熱帯雨林です。
タイガでも林業が発展していますが、熱帯雨林のほうが大きな問題になるのは、熱帯雨林が密林であるためです。


中村先生「人が立ち入るのがとても難しく、必要な木だけを切り出して運ぶということは難しいんですね。それで、木を伐採してから必要な木を選別しています。つまり、広い範囲をいったん伐採しなければならないのです」

南「熱帯雨林の消失は、地球温暖化の一因とも言われていますよね。」

中村先生「地理を学ぶ上で、気候についての理解は欠かせません。そのために、衣食住という身近なテーマに注目するのはとても効果的です。今回は触れなかったんですが、衣服、気候に合わせたいろいろな民族衣装にも違いがあって面白いですね」

井桁「衣服!ファッションだったら大の得意分野です。デスク、次の特集 決まりですね♪」

それでは、次回もお楽しみに!

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