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※この番組は、2022年度の新番組です。

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今回の学習

第6回 生活文化の多様性と国際理解

なぜ気候の違いが生まれるの? 〜気候の成因と生活〜

  • 監修・講師 筑波大学附属高等学校教諭・中村 光貴
学習ポイント学習ポイント

なぜ気候の違いが生まれるの? 〜気候の成因と生活〜

  • 井桁弘恵・南圭介

ここは、編集デスクの南圭介と期待の新人編集部員・井桁(いげた)弘恵が所属する、創立間もないネットニュース「ツバサニュース・ドット・コム」の編集部です。

井桁「うーん、何だろう。東京にクレタ島、テヘランにメンフィス」

南「どうしたの?イゲちゃん。なに悩んでいるの?」

井桁「解説委員の中村先生が、また難題を…。この4つ都市で共通点を探せっておっしゃっているんです」

南「どこのこと?」

井桁「イメージがわきやすいように、4つの都市の特徴をまとめてみたんですけど、見てもらえますか?」

  • ミシシッピ川
  • 綿花刈り入れ

最初は、アメリカ合衆国のメンフィスです。
ミシシッピ川のほとりにあるこの都市は、かつては綿花の栽培が盛んでした。
今も綿花、肉牛、木材などの取引の中心地です。

  • バスの車窓
  • バザール

上の左の画像は、テヘランに向かうバスから撮ったもので、乾いた地域であることがうかがえます。
イランの首都テヘランは、イスラム建築の粋を極めた美しい建造物が並ぶ古都です。
イランは、サフランやピスタチオ、リンゴなどの生産量も多く、農業が盛んです。

  • 海岸
  • オリーブ畑

エーゲ海に浮かぶ、ギリシャ最大の島、クレタ島。
宮殿などの遺跡が残り、多くの観光客が訪れます。
土地は肥沃ではありませんが、オリーブやかんきつ類の栽培が盛んです。

  • 4都市の位置
  • 東京の雨温図

南「テヘランは砂漠の中で乾燥しているイメージだし、クレタ島は温暖なリゾート地、メンフィスはかつて綿花栽培で栄えた土地。どこも東京とは違うな」

井桁「こんなに違うのに、共通点って何でしょう?」

世界地図で4つの都市の位置関係を調べると、メンフィスも、クレタ島も、テヘランも東京と同じ北緯35度にあることが分かりました。

南「同じ緯度なら、同じように太陽の光を浴びるから、同じような気候になる気がするけど、どうして違うんだろう?」

ここで中村先生から、ヒントとして1枚のグラフが届きました。

井桁・南「雨温図(うおんず)!」

上の右の画像は、東京の雨温図です。
折れ線グラフが気温、棒グラフが降水量を表しています。

雨温図をどう使えば、都市の違いが分かるのでしょうか?
まずは、雨温図の見方を確認しましょう。

雨温図の見方とは
  • 気温の見方
  • 降水量の見方

気温は、1月の平均気温が4℃、それに対して、8月の平均気温は26.5℃。
最も温かい月の平均気温と最も寒い月の平均気温の差を、年較差といいます。
東京の気温の年較差は、22.5℃。
年較差が大きいか小さいかは、その土地の気候の特徴を示す基準のひとつです。

次は、降水量を見てみましょう。
東京は、梅雨や台風の影響で夏や秋に雨が多くなります。

雨温図からは、こうした気候の特徴を読み解くことができます。

テヘランとクレタ島の雨温図

では、テヘランとクレタ島の雨温図を比べてみましょう。

降水量のグラフを見ると、テヘラン、クレタ島とも夏に少なく、冬は比較的多く降っていることが分かります。

南「テヘランとクレタ島の降水量のグラフは、あまり変わらないな」

これに対し、気温は2つの都市で大きく違います。
テヘランは、一番高い7月が30.5℃、一番低い1月が0℃と、年較差が30℃以上あります。

クレタ島は、一番高い7月が25.9℃、一番低い1月が10.1℃。
年較差は、テヘランよりかなり小さく、15.8℃です。

南「気温の年較差は、クレタ島はテヘランの半分しかない。一年中暖かくて過ごしやすそうだ」

  • クレタ島とテヘランの位置

井桁「こんなの見つけちゃいました。イランのスキー場」

イランは、暑い砂漠の国というイメージがありますが、冬は寒くて降水量が多いため、雪になります。

井桁「でも、同じ緯度なのに、どうしてこんなに違うんでしょう」

もう一度、地図を見て位置を確認してみましょう。
クレタ島は島なので、周りを海に囲まれています。
一方、テヘランは内陸にあります。

井桁「これはもしかすると、海に近いか内陸にあるかの違いが、気候の違いの要因になっているかもしれませんよ」

海洋性気候と大陸性気候
  • 陸地と海の温まりやすさ

2つの都市の気温の年較差の違いは、陸地と海の温まり方の違いが関係しています。

陸地を覆う岩や土は、温まりやすく、冷めやすいという性質があります。
一方、水は温まりにくく、冷めにくいという性質があります。

海洋性気候と大陸性気候

クレタ島は、周りを海で囲まれています。
海水温は、夏でもそれほど上がらず、冬もそれほど下がりません。
その影響で、クレタ島では気温の変化、つまり年較差も小さくなります。
このように海に近い地域で年較差の小さい気候を、海洋性気候といいます。

一方、テヘランは内陸にあるため、温まりやすく、冷めやすいという陸地の影響を大きく受けます。
そのため、気温の年較差も大きくなります。
このような内陸地域で年較差の大きい気候を、大陸性気候といいます。

井桁「なるほど。海に近いか遠いかで、気候はずいぶん変わってくるんですね」

テヘランとメンフィスの雨温図

残った一枚の雨温図、メンフィスも見てみましょう。

メンフィスは、7月が一番暑く平均気温は27.6℃、一番寒い1月は4.9℃です。
年較差は22.7℃です。

テヘランと比べてみると、一年を通して雨がよく降っていることが分かります。
雨の多い3月の降水量を比べてみると、メンフィスはテヘランの2倍近くあることが分かります。

南「二つの都市の大きな違いは降水量だ

  • 中村先生
  • メンフィスの綿花

中村先生「2人とも、雨温図の見方や使い方をだいぶマスターしたようですね。ちょっとこれを見てください」

上の右の画像は、メンフィスの綿花の畑の写真です。
一般的に綿花栽培は、生育期に高温多湿、収穫期に乾燥することが好ましいです。
また、年間の降水量が600〜1500mmないと育ちません。
テヘランは、気温は問題ないのですが、降水量が少ないため綿花は生育しにくい環境です。

メンフィスで綿花産業が盛んだった要因はいろいろありますが、雨温図からもその一端を読みとることができます。

中村先生「では、どんなところで雨が多く降るのか、分かりますか?」

雨の降りやすいところとは
  • 雲
  • 上昇気流

まず、雨はどうして降るのでしょうか。
空気中に含まれている水蒸気が冷やされると、雲ができ、降水を生じます。
雲ができるのは、上昇気流が発生するときです。

  • 風上側
  • メキシコ湾流

どんなところで上昇気流が発生するのでしょうか。

上昇気流が発生する場所はいくつかありますが、ひとつは、山脈の風上側です。
湿った空気が山脈にぶつかり、斜面に沿って上昇気流が発生します。
そして、山脈の風上側で雨を降らせます。

他には暖流、つまり温かい水の流れがあるところでも上昇気流が発生します。

メンフィスの場合を見てみましょう。
上の右の画像のように、アメリカ合衆国の南にあるメキシコ湾には暖流が流れています。
ここで、上昇気流が発生します。
そのため、メンフィス周辺では、雨が多く降ります。

ここで、3地点の雨温図を並べて見てみます。

3地点の雨温図

同じ緯度ですが、3地点でそれぞれ特徴が異なります。

テヘランは、大陸性気候で、気温の年較差が大きい。
クレタ島は、海洋性気候で、気温の年較差が小さい。
メンフィスは、暖流の影響で、降水量が多い。

中村先生「緯度が同じでも、気候が違うことがよく分かったでしょうか。ここでひとつ、考えてもらいたいことがあります」

赤道付近は、太陽エネルギーを強く受けているので、気温は上昇します。
一方で、極付近は、気温はあまり上昇しません。
このままでは、赤道付近はどんどん暑くなり、極付近はどんどん寒くなります。
しかし、現実には、一定の気温で保たれています。
これはどうしてでしょうか。

井桁「もしかして、赤道付近の熱が移動しているということですか?」

中村先生「その通り!地球には“大気大循環”があるからなんです」

大気大循環
  • 風

大気大循環を理解するには、まず風が吹く仕組みを知らなくてはなりません。

上昇気流が起こるところでは、地上付近の気圧は周りより低くなります。
これを低気圧といいます。

逆に、下降気流が起こるところは、気圧が高くなります。
これを高気圧といいます。

気圧の差が生じると、地表付近の大気は、高気圧から低気圧に向かって移動します。
これが、風が吹く仕組みです。

大気大循環とは、この現象が地球規模で起きることをいいます。

  • 貿易風

赤道付近で大気があたためられ、上昇気流が生まれる場所に、熱帯収束帯があります。
ここは、気圧が低くなっています。

雨を降らせて乾燥した大気は、高緯度に移動し、冷やされて、緯度30度付近で下降します。
これが、亜熱帯高圧帯です。
ここは、気圧が高くなっています。

風は、高圧帯から低圧帯に向けて吹きます。
そのため、ここでは亜熱帯高圧帯から熱帯収束帯に向けて、地表付近で常に同じ方向に風が吹いています。
これを、貿易風と呼びます。
貿易風は、地球の自転の影響で、東寄りの風になります。

  • 曲循環
  • 偏西風

上の左の画像は、極付近の大気の循環を示しています。
極付近では、冷やされた大気が下降する極高圧帯が生じます。
緯度60度付近には、亜寒帯低圧帯があります。
そこに向かって、地表付近を吹く風を、極偏東風と呼びます。

そして、緯度30度から緯度60度付近で、亜熱帯高圧帯から亜寒帯低圧帯に向かっても、地表付近を風が吹きます(上の右の画像)。
これを、偏西風と呼びます。
偏西風は、西から東へ向かう風です。

大気大循環

このような大気大循環によって、熱が運ばれ、赤道付近と極付近の気温差は小さくなっているのです。

  • オランダの風車

中村先生から さらに問題です。
上の左の画像はオランダの風車の写真です。
これは東西南北どちらの方角を向いているでしょうか。

南「オランダのアムステルダムの緯度は、北緯52度」

井桁「緯度30度から60度の間で吹いている風は偏西風ですから、西寄りの風。それを受ける風車は、西向きですね」

中村先生「正解です」

こうした、偏西風や貿易風のように、1年中同じ方向から吹く風を、恒常風と呼びます。
これに対して、季節によって風向きが変わる風を、季節風といいます。
恒常風は、強くなったり、弱くなったりすることがあります。
恒常風の吹き方が変わると、日本も大きな影響を受けます。

エルニーニョ現象とは
  • エルニーニョ現象の起こる海域

エルニーニョ現象という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、貿易風の吹き方が変わることで起きる現象です。

平常時は、インドネシア沖の温かい海水と、ペルー沖の冷たい海水は、一定のバランスを保っています。
これは、貿易風の影響です。
これを、断面図でみてみましょう。

  • 平常時
  • エルニーニョ

恒常風である貿易風が、弱まることがあります。
貿易風が弱まると、インドネシア沖の温かい海水が、東に向かって広がってきます。

この状態が、数か月から1年程度続く場合があります。
これが、エルニーニョ現象です。

  • 平常時の低気圧の位置
  • 冷夏

インドネシア沖の海水は温かかいため、上昇気流が起き、低気圧が発生します。
エルニーニョ現象が起こると、温かい海水の広がりとともに、低気圧も東に広がってしまいます。
その影響で、日本に暑い夏をもたらす高気圧も東へ遠ざかってしまい、夏に気温が上がらず冷夏になってしまいます。

  • 日照時間現象の影響
  • 次回もお楽しみに

井桁「先生、冷夏の影響で私たちの生活には、どのようなことが起きるんですか?」

中村「いい質問ですね。日照時間が減少しまうので、まず、農作物が不作になります。そして、夏の衣類などは売れず、消費が低迷。さらに、太陽光発電にも影響が出ます」

井桁「なるほど。地球規模の気候変化が、私たちの身近な暮らしにさまざまな影響を及ぼすんですね。

それでは、次回もお楽しみに!

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