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Eテレ 隔週 水曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。

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今回の学習

第5回 生活文化の多様性と国際理解

暮らしは地形と結びついている? 〜小地形と生活〜

  • 監修・講師 東京大学教授・須貝 俊彦
学習ポイント学習ポイント

暮らしは地形と結びついている? 〜小地形と生活〜

  • 井桁弘恵
  • 南圭介

ここは、編集デスクの南圭介と期待の新人編集部員・井桁(いげた)弘恵が所属する、創立間もないネットニュース「ツバサニュース・ドット・コム」の編集部です。

今回の特集は、「Iターンして農業を始めてみない?」。
デスクの南さんは、今回の特集にあわせて、農業体験をしてきたようです。

南「で、いげちゃん。モデル地域を探しておいてって頼んだけど、どこかいいところ、見つかったかな?」

井桁「岐阜県の養老町(ようろうちょう)です」

南「養老町の“推しポイント”は、どんなところかな?」

  • 岐阜県養老町
  • 養老の滝

養老町は、岐阜県で2番目の水田面積を誇る、穀倉地です。
主に作付けされている「ハツシモ」という品種は、艶やかな炊き上がりが特徴で、「すし米」としてのニーズが高いそうです。
米作の他に、畑作や果樹栽培も盛んです。
特に、町のシンボルである「ひょうたん」が特産で、工芸品などもいろいろあります。
また、親孝行な息子のお話で知られる「養老の滝」もあります。

どんなところなのか、「地理院地図」で⾒てみましょう。

養老町小倉地区

上の地図は、養老町の小倉(おぐら)地区です。

地図記号に注目します。
短い縦の2本線が「水田」、アルファベットのvに似ているものが「畑」です。
そして、丸の上に縦の短い線がついているものが「果樹園」です。

⽔⽥を⻘色、畑・果樹園を⾚色で⾊分けしてみると、津屋川(つやがわ)を境にして、ほぼクッキリと畑・果樹園ゾーンと⽔⽥ゾーンに分かれていることがわかります。

井桁「⽔⽥は、保⽔⼒が⾼いところでしかできないですよね。逆に、畑や果樹園は、⽔はけがよいところが適しています。それが⾯⽩いっていうか、不思議ですよね」

南「なるほど。そんな正反対の土壌が、なぜこんなにもクッキリ分かれているのか?ふむふむ、こいつは、ちょっとしたミステリーだな」

地理院地図には、陰影起伏図や3D表示など、多彩な機能があります。
地理院地図からもっと読み取れる情報はないか、さらに詳しく見てみました。

  • 等高線
  • 陰影起伏図

ここで、井桁さんが等高線に特徴があることに気づきました。

井桁「山地から津屋川にかけてはけっこう等高線が目立つのに、川を越えたらピタッとなくなっています」

「標高・土地の凹凸」という項目にある「陰影起伏図」を重ねると、上の右の画像のようになります。

南「これは分かりやすい!山裾からのすーっとなだらかな斜面が、津屋川のあたりで終わっているね」

  • 3D
  • 中央を横切るライン

さらに地理院地図では3Dでの表示に加え、縦・横の比率も、変更することができます。

南「ん?なんだか、中央を横切っているラインがあるけど、あれは何かな?」

井桁「⾕の出⼝から、川が流れ出しているんですね。デスク、この地形って…」

2⼈「扇状地︕」

  • 扇状地

扇状地とは、主に川の中流で⾒られる典型的な地形のひとつです。
川は、⼭地から平野に出たところで流れが遅くなります。
そのため、⼟砂などを運ぶ働き「運搬⼒」が低下して、⼟砂を堆積させます。


こうして出来た扇のような形の地形が、扇状地です。

⾕の出⼝を「扇頂(せんちょう)」、なだらかな勾配の部分を「扇央(せんおう)」、勾配が終わる部分を「扇端(せんたん)」と呼びます。

扇状地では、扇央は地下⽔位が低くなって⽔はけがよいため果樹園などに、扇端は湧き⽔が得られるため住宅地や⽔⽥などに利⽤されることが多いのです。

なぜそうなるのか、ちょっとした実験をして考えてみましょう。

  • 実験装置
  • 水を注ぎ始める

トレイの上に、⼟で作った⼭があります。
トレイ全体を少し傾斜させて、⽔差しで⼭の頂上あたりに少しずつゆっくり⽔を流していきます。
この⼭は、いろいろな⼤きさの粒が含まれている⼟で作ってあります。

  • 流れる
  • 扇状地

山の頂上に水を注いでいきます。
水が土を押し流して広がった部分が、扇状地のようになりました。

  • 扇央の粒
  • 扇端は泥水

この山を作っている土には、いろいろな大きさの粒が含まれていました。

ところが、山裾で扇状地のように広がったにところには、上の左の画像のように、粒の大きいものが多く見られます。
そして流れた先は、上の右の画像のような、泥水になっています。
小さな粒は、水と一緒に遠くまで流されたことが分かります。


水差しから流れた水は勢いがあるため、どの大きさの粒も流します。
ところが、傾斜が緩やかになると大きな粒は運べなくなるので、そこに堆積します。
そして、小さな粒は先へと流れていきます。

土壌に大きな粒が多いと隙間がたくさんできるので、水はけがよくなります。
したがって、扇状地の「扇央」は、果樹園や畑に適した土地になります。

小さな粒が多い土壌は、水はけが悪くなります。
つまり、保水力が高くなるので、扇状地の先である「扇端」は、水田に適した土地になります。

  • 土地利用との比較
  • 中央を通る川

ここで、地図と実験結果とを比べてみると、養老町の土地の使われ方と同じであることが分かります。
このように、畑・果樹園ゾーンと水田ゾーンがはっきりと分かれているのには、川の流れが関係しています。

地理院地図で養老町の扇状地の中央を流れる川をよく見ると、川が点線で描かれていることが分かります。
3Dで見ると、周りの土地よりも盛り上がっているよう見えます。
また、上の右の画像の赤矢印の部分では、地上を走る鉄道が、川の「下」を通っているように見えます。

扇状地の河川の特徴
  • 水無川
  • 水無川断面

地理院地図で、川筋が点線になっているのは、「⽔無川」です。
⽔はけのよい扇状地では、川の⽔が地下に浸透してしまって、普段は地上を流れないことがあります。

  • 水無川・養老町
  • 水がない川

養老町の小倉地区を流れる川も、上の左の画像のように普段は地表付近では水が見られません。

ほかの扇状地の例として、栃木県那須野が原を見てみましょう。
上の右の画像では大きな川筋が見えますが、やはり水がまったく流れていません。

  • 降雨直後
  • 数時間後

源流の山々に雨が降ると、水無川も姿を変えて、川の流れが現れます。
しかし、雨がやんで数時間もすると、見る見るうちに水が消えてしまいます。

  • 天井川

井桁さんが気づいた「線路が川の下を通っている」という点について、このような川を「天井川」といいます。
実際に現地を⾒てみると、川底が、周囲の⼟地よりもだいぶ⾼くなっていることが分かります。

  • 川筋を固定
  • 川底が上がる
  • 鉄道が下

このような地形は、次のようにしてできます。
扇状地のように川に流れる土砂が多いところでは、川底に土砂が溜まって洪水が起きやすくなります。
そこで、堤防を築いて川筋を固定すると、さらに土砂が溜まって川底が上がります。

これを繰り返すうちに、天井川が出来上がったというわけです。
水無川と天井川は、どちらも扇状地でよく見られる特徴的な地形です。

井桁「川の流れ、それによって作られた地形、それが人の暮らしと結びついているんですね」

河川の3つのはたらき
  • 南アルプス
  • V字谷

ここで須⾙解説委員から、扇状地の特徴を記事に載せるなら「川の3つのはたらき」に注⽬するよう、アドバイスがありました。

扇状地は、川によって運ばれてきた土砂のうち、大きな粒が堆積してできた地形でした。
そのため、⼟砂を「運ぶ」「積もらせる」という働きがあることが分かります。

3つめは、もっと上流を見れば分かります。
ヒントは「川が運ぶ土砂は、どこから来るのか」。

上の左の画像は、3000m級の山が連なる南アルプスです。
ここから大井川が流れ出していて、その両岸は切り立った急な斜面になっています。

アルファベットの「V」に見えることから、「V字⾕(じだに)」と呼ばれる地形です。

  • はじめ
  • 途中
  • 完成

激しい水の流れが、長い年月をかけて川岸の岩や山肌を削ります。
すると川沿いの斜面は不安定になって崩れ、V字谷になります。

  • 実験のV字谷
  • 川の3つの働き

先ほどの実験で、⽔を注いだ部分が、まさにV字⾕です。
つまり川の3つのはたらきとは、⼟砂を⽣み出す「侵⾷」、⼟砂を運ぶ「運搬」、⼟砂を積もらせる「堆積」ということになります。

  • 須貝先生

井桁「川の3つのはたらきによって、地形はできているんですね」

須⾙先生「そうですね。前回”内的営⼒”についてお話ししましたが、川のはたらきは”外的営⼒”に分類されます。地球内部からの⼒ではなく、太陽エネルギーを源にして地形をつくる⼒が外的営⼒です」

南「川が流れるのは雨が降るからで、太陽エネルギーが源なんですね」

須貝先生「日本で生活する私たちにとって、特に河川がつくる地形の特徴を知っていることは重要です」

河川がつくる地形の生活への影響
河川の勾配

上の画像は、世界と日本の主要河川の勾配を表した図です。
縦軸が標高で、横軸が距離です。

日本の川は、距離は短いけれど、標高差は大きいことが分かります。
つまり、流れが急で、侵食、運搬、堆積のはたらきも大きくなるということです。

須貝先生「日本には、川のはたらきによってつくられた地形がたくさんあるんです。そして、川がつくる地形について考えるときは、⼤きく2つに分けてみるといいと思います。ひとつは⼭地・丘陵地の”侵⾷域”で、もうひとつは平野の”堆積域”です」

侵食域の地形は、V字谷のほかに、⼭崩れ⼟⽯流などが⾒られます。

堆積域で見られるのが、川の中流に特徴的な地形である扇状地です。
川の下流では、氾濫原(はんらんげん)、河⼝付近では三⾓州などが⾒られます。
氾濫原は、河川の堆積作用で生じた低地です。

また、氾濫原の周辺には台地が分布することがあり、そのうち河川沿いに広がるものを河岸段丘といいます。

  • 河岸段丘
  • 地図

群馬県沼田市の河岸段丘は、教科書などにもよく掲載される、代表的な河岸段丘です。
ここでは、利根川と片品川という二つの川が合流していて、その少し上流の片品川の両岸に美しい段々が発達しています。

  • 一段目
  • 谷幅を広げる
  • 掘り込み再開

一般的に河岸段丘は、次のようにつくられます。
川の浸食により一段目が出来た後、いったん川の侵食力が弱まります。
すると、川は下に向かって掘り込むのを止めて、土砂を溜めたり脇の段丘を削ったりして、谷の幅を広げます。
その後、地盤の隆起や海面変化、気候変化などにともなって再び侵食力が強まると、川は掘り込みを再開し、新たに2段目の段丘が形成されます。

これが、数万から10万年くらいかけて何度も繰り返されて、河岸段丘ができるのです。

須⾙先⽣「沼⽥の河岸段丘の場合、それに加えて、⾚城⼭の⽕⼭活動も関係しています。⾚城⼭からの⼟砂の供給が増えたり減ったりして、それを川が侵⾷して…ということが繰り返されて、これだけの河岸段丘が出来上がったと考えられているんです」

河川がつくる地形の生活への影響
河岸段丘の土地利用

ここで、人々はどんな生活をしているのでしょうか?
地理院地図から陰影を外して、土地利用を見てみましょう。

上の画像で青色で示した部分は水田、赤色で示した部分は畑・果樹園です。

井桁「河岸段丘の下の段は、水田のようです。これは、水が得やすいから?上の段になると畑や果樹園が増え、一番上の段は市街地になっています」

  • 城跡
  • 城下町の面影

河岸段丘の上の段は、水は得にくいが地盤が安定しているので、古くから集落が発達しました。
沼田公園のところには、城跡を表す地図記号があります。
ここは城下町で、周りに寺や神社などもあり、「鍛治町(かじまち)」「馬喰町(ばくろまち)」といった当時の面影を残す地名も見られます。

須貝先生「養老町や沼田市の例を見て、土地をどう利用するか、そこで人々がどのように暮らしているのかということは、地形と密接に関係していることが分かったと思います。地理院地図を活用して、いろいろな土地と生活との関係を調べてみると、面白い発見があるのではないでしょうか」

  • 次回もお楽しみに

南「地形と暮らしの関係か…。特集のネタになりそうだね」

井桁「せっかく沼田を調べたので、”地形と城”っていうのは、どうですか?」

南「あっ!それいいね!」

それでは、次回もお楽しみに!

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