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地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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今回の学習

第40回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜オセアニア〜

  • 地理監修:首都大学東京教授 菊地俊夫
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜オセアニア〜

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、何か考えごとをしています。
そこへ、所長の石原良純さんがやってきました。

さくら 「1年間のお休みを頂くことができないか、所長に相談しようと思って。」

所長 「1年間?なぜそんなに長い期間休むんだ?」

  • オーストラリアにワーキング・ホリデーに行きたい
  • ワーキング・ホリデー

「オーストラリアにワーキング・ホリデーに行きたい」
これが、今回の依頼です。
依頼主は、なんとさくらさん。

所長 「『ワーキング・ホリデー』って、海外で働くやつだろ?」

さくら 「そうなんです。国と国との取り決めで18歳から30歳までの若者が、一定の期間、働きながら外国に滞在できるっていう制度です。」

所長 「それにしても、なんでオーストラリアなんだ?」

オーストラリアの地理的な位置
  • オセアニア
  • グレート・バリア・リーフ

さくら 「まず、オーストラリアの地理的な位置に興味を持ったからです。オーストラリアは、オセアニアにあります。オセアニアは、オーストラリア大陸、ニュージーランド、太平洋の島々によって構成されます。太平洋の島々が点在する地域は『ミクロネシア』『メラネシア』『ポリネシア』に区分されます。広大な大陸と太平洋の島々。オーストラリア大陸の北東部の沿岸には、世界最大の『サンゴ礁』、グレート・バリア・リーフが広がっているんです。どうですか、素敵でしょう?」

所長 「どうですかって言われてもな、自然は素敵だけど、あんまり説得力がないぞ。」

  • 日本とオーストラリアは季節が逆
  • コアラ

さくら 「ほかにもあります。日本とオーストラリアは季節が逆なんです。オーストラリアは日本と経度がほぼ同じで、日本の真南、赤道を挟んで南半球にあるので、季節は逆になるんです。日本が冬の時オーストラリアは夏。だから、クリスマスには真夏のビーチにサンタさんがやってくるんです。照りつける太陽の下で、トロピカルなクリスマス!」

所長 「そんな理由でオーストラリアに行きたいのか?」

さくら 「それだけじゃありません!コアラちゃん!一生に一度でいいから本物を抱きしめたーい!私の大好きなコアラちゃんがオーストラリアにしかいないのは、実は地理的な理由があるんです。」

オーストラリア大陸の形成とコアラ
  • レッドランド地区
  • コアラは有袋類

オーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州レッドランド地区。
およそ600頭の野生のコアラが生息しています。
コアラはお腹にある袋の中で子どもを育てる有袋類です。

なぜオーストラリアにしかいないのでしょうか?

  • 2億5000万年前すべての大陸は陸続き
  • オーストラリア以外の大陸では有袋類が生存競争に負けほとんどが絶滅

およそ2億5000万年前、すべての大陸は陸続きでした。
この時代、有袋類は地球全体に生息していたと考えられています。
その後、大陸の移動で、オーストラリア大陸が分裂しました。
オーストラリア以外の大陸では、有袋類が生存競争に負け、ほとんどが絶滅してしまいました。
しかし、オーストラリアでは強力なライバルが現れなかったため、たくさんの有袋類が生き残ったのです。

  • ウォンバット
  • タスマニアデビル

ウォンバットのおなかの袋は後ろ向きについています。
そのため子どもの顔がおしりから出ているように見えます。

そして、タスマニアデビル。
子どもは袋から出たあとも、しばらく母親にまとわりつきながら暮らします。

多くの有袋類がオーストラリアに生息しているわけは、大陸の移動にあったのです。

  • パンゲア大陸

所長 「もともとすべての大陸は陸続きで、1つの大きな大陸だったんだよな。」

さくら 「はい、パンゲア大陸です。大陸が移動して現在のような形になるなかで、コアラが見られるのはオーストラリアだけになったんです。」

所長 「でも、コアラを見に行くだけなら観光旅行でもいいじゃないか。」

さくら 「ほかにも興味があるんです。それは産業です。オーストラリアの産業も、大陸移動と深い関わりがあるんです。」

自然と産業
  • 南極大陸を取り巻く海流が生まれた
  • 乾いた不毛な土地へと変わって行った

オーストラリアの国土面積は日本のおよそ20倍もあります。
ところが、その3分の1は乾燥した砂漠や荒れ地です。
その原因は、およそ3500万年前にさかのぼります。
このころ、南極大陸を取り巻く海流が生まれました(左図)。
この海流によって、赤道からの温かい水がさえぎられたため南極は冷え始め、やがて氷で覆われます。
大気中の水分が氷になったため空気は乾燥しました。
南極に近い位置にあったオーストラリアも影響を受け、雨があまり降らなくなりました。
そのため森は小さくなり、乾いた不毛な土地へと変わっていったのです(右図)。

オーストラリアでは、この乾燥した大地に適応した産業が発達しました。

  • 羊毛産業
  • 鉱産資源

その1つが羊毛産業です。
羊は乾燥地帯でもよく育つため、18世紀の後半から盛んに育てられるようになりました。
羊毛はセーターやスーツなど、毛織物の原料になります。
オーストラリアは羊毛の輸出量世界一。
日本にもたくさん輸出しています。

オーストラリアのもう1つの世界一は鉱産資源です。
100を超える車両を連ねて走る貨物列車。
運んでいるのは鉄鉱石です。
オーストラリアの鉄鉱石は、埋蔵量、産出量、輸出量ともに世界一。
日本が輸入している鉄鉱石のおよそ6割がオーストラリア産で、最大の輸入相手国です。

そのほかにも、石炭やボーキサイトなど、豊富な鉱産・エネルギー資源に恵まれています。

  • オーストラリアの石炭輸出先(2014年)

所長 「人が住むには厳しい広大な荒れ地に、実はたくさんの鉱産・エネルギー資源が眠っていたというわけか。ラッキーな国だな。」

さくら 「オーストラリアの人は自分たちの国をラッキー・カントリーって呼んでいるんですよ。これらの鉱産・エネルギー資源は日本などアジアの国々に輸出されています。」

オーストラリアの石炭輸出先を見てみると、1位は日本、2位は中国、そして韓国、インドと、ほとんどがアジアの国となっています。
アジア、特に日本との関係が深いのは鉱産資源だけではありません。

アジア諸国に輸出される農畜産物
  • オージー・ビーフ
  • 牛肉の輸出先(2017年7月〜2018年5月)

さくら 「私の大好きな牛肉!オーストラリアといえばオージー・ビーフ!」

オーストラリアの牛肉輸出先を見てみると、第1位は日本。
輸出量の30%近くを占めています。

  • 放牧している牛は12000頭
  • ロードトレイン

オーストラリア中西部にある牧場。
東京都よりも広い面積をたった1軒の家族で経営しています。
放牧している牛は12,000頭。
無線で連絡を取りつつ、自動車を使って群れを移動させます。
広大な牧場を見回るためには、飛行機が欠かせません。
牛を出荷するときに活躍するのが、ロードトレインと呼ばれる巨大なトラックです。
全長50m、1度に180頭の牛を運ぶことができます。
近年、牛肉の輸出量が大きく伸びている相手先が中国です。
牛1頭を4分割した大きなかたまりで輸出します。

  • さくらんぼ

牛肉以外にも、オーストラリアの地理的条件を生かして、アジアに輸出している農作物があります。
その1つがさくらんぼです。
日本では6月に収穫されますが、南半球にあるオーストラリアでは12月に収穫されます。
北半球とは反対となる気候を生かし、収穫期が重ならない農作物を作ってアジアの国々に輸出しているのです。

ヨーロッパからアジアへ 多文化社会の歴史
  • 最初からアジアとの関係が強かったわけではない

所長 「いろんな分野でオーストラリアとアジアは深い結びつきがあるってことだな。」

さくら 「最初からアジアとの関係が強かったわけじゃないんですよ。」

所長 「オーストラリアはもともとイギリスの植民地だったよな。」

さくら 「そうです。ですからもともとはヨーロッパとの関係が強かったんです。それがどのようにアジアとの結びつきを強くしていったのか、振り返ってみましょう。」

  • アボリジニー
  • 1787年に移民船が到着

もともとオーストラリアには、先住民「アボリジニー」が生活していました。
18世紀の終わり、イギリスからの移民船の到着によって、植民地開拓の歴史が始まります。

  • ハイド・パーク・バラックス

イギリスからの移民の多くは、本国で罪を犯し、流刑とされた囚人たちでした。
当時の囚人収容施設が世界遺産に登録されています(図)。
彼らは植民地開拓の労働力として、過酷な労働を課せられました。
囚人たちによって生産された羊毛は、毛織物業が盛んなイギリスに輸出されました。

  • ゴールドラッシュ
  • 中国からの移民受け入れに反対する挿絵(1880年代)

19世紀半ばには、金鉱が発見され「ゴールドラッシュ」が起こります。
この時、大勢の中国人が入植し、外国人のなかでもっとも多い割合を占めるようになりました。
増え続ける有色人種に脅威を覚えた白人たちは、白人を優遇し、有色人種の移住を厳しく禁止する政策、「白豪主義」を進めました。

  • アジアからの難民を数多く受け入れるようになる
  • 1979年に移民制限撤廃

しかし第二次世界大戦が終わると、白豪主義の一方で、減少した労働力を確保するために、ベトナムなどアジアからの難民を、数多く受け入れるようになります(左図)。
彼らの多くが、最も人手不足が深刻だった工場で、単純作業に従事しました。
そして1979年、オーストラリアは移民制限を撤廃し白豪主義と決別。
その後、移民を積極的に受け入れたのです。
もともとイギリスの植民地だったオーストラリアは、移民を受け入れるなかでアジアとの結びつきを強めていったのです。
現在、オーストラリアに暮らす移民の4割以上がアジア出身。
そのほかにも200以上の国や地域から、人々が移住しています。

オーストラリアは、人々がともに暮らす多文化社会なのです。

観光で結びつく日本とオーストラリア
  • 菊地俊夫先生

オーストラリアと日本の結びつきが強いものは、もう1つあります。
研究所のブレーン・菊地俊夫先生に伺います。

菊地先生 「それは、観光産業です。日本とオーストラリアは、互いに多くの人たちが観光で訪れているんです。

  • オペラハウス
  • グレート・バリア・リーフ
  • ウルル

オーストラリアの観光名所といえば、まずはシドニーのオペラハウス。
そして世界最大のサンゴ礁地帯、グレート・バリア・リーフ。
先住民アボリジニーの聖地、ウルルは巨大な1枚岩。
こうした観光地に年間43万人の日本人が訪れ、その数は年々増加しています。

  • ニセコ

一方、オーストラリアから日本への観光客も増えています。
なかでも人気があるのがスキーです。
人気の理由は、オーストラリア人にとっての夏にスキーを楽しめるということ。
しかもカナダやヨーロッパよりも近く、料金も比較的安いため、年間33万人が日本を訪れています。

  • 季節は逆だが時差がほとんどない。距離的にも近い。
  • 経済的、政治的に安定し治安がよい

菊地先生 「1つめは、季節は逆になりますが、時差がほとんどなく、距離的にも近いことです。例えば、東京を夜の便で出発すると朝にはオーストラリアに着きます。9時間ほどの飛行時間です。そのため航空運賃も安く、手軽に行きやすい国と言えます。」

菊地先生 「2つめは、社会経済的にも政治的にも安定し、治安がよいことです。安心安全な国と言えます。加えてオーストラリアの人々はきわめてフレンドリーです。」

結びつきを強めるオーストラリアと日本
  • 今後もオーストラリアは移民の国として寛容であり続け日本との結びつきは強くなっていく

菊地先生 「そのような観光や経済的な結びつきに加えて、アジアとの文化的な結びつきも強くなっています。例えばオーストラリアの高校生が選択する第1外国語は、さしずめ日本では英語になりますが、日本語が多くなっています。そして日本語を学ぶ大きな理由は、マンガやアニメあるいはお茶や禅など、日本文化を知ることが大きな理由となっています。」

菊地先生 「今後もオーストラリアは、移民の国として寛容であり続け、オーストラリアと日本の結びつきはそれぞれにとって身近な国の1つとして、経済的にも文化的にも強くなっていきます。

  • オーストラリアは移民を積極的に受け入れた多文化社会。異なった文化を受け入れてくれる寛容な国
  • 1年間ありがとうございました!

それでは、今回の依頼に対する答えです。
回答するのは、所長です。

所長 「オーストラリアは移民を積極的に受け入れた多文化社会だ。日本とのつながりも深く、日本人の君がワーキング・ホリデーに行っても、異なった文化を受け入れてくれる寛容な国だ。と思うよ。」

1年間ありがとうございました!

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