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地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2018年度の新作です。

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地理

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今回の学習

第30回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜南アジア〜

  • 地理監修:広島大学大学院教授 友澤和夫
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜南アジア〜

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、ヨガをやっています。
そこへ、所長を務める石原良純さんがやってきました。

  • インドでチェーン展開したい。どんなメニューが狙い目だろうか?
  • 南アジア

「インドでチェーン展開したい。どんなメニューが狙い目だろうか?」
これが、今回の依頼です。

日本からインドまでは、およそ6000km。
パキスタン、ネパール、バングラディシュなどと国境が接しており、この辺りを南アジアといいます(右図)。
ヒマラヤ山脈から赤道近くまで広がるインドには、高山気候の寒帯から熱帯まで多彩な気候と人々の生活があります。

インドの自然と農業
  • 北側にヒマラヤ山脈
  • 巡礼者たちが祈りを捧げに来る

日本の9倍という広大な面積を持つインド。
北側には、急しゅんなヒマラヤ山脈が2000kmに渡って連なっています。
世界一標高が高いヒマラヤ山脈は「世界の屋根」とも呼ばれ、8000メートルを超える山がいくつもあります。
ヒマラヤはガンジス川の源流。
夏になると巡礼者たちが4000mもの高さを上って祈りを捧げに来ます。

  • インド北西部大インド砂漠
  • ラクダの毛を美しく刈り上げる

インド北西部とパキスタンの国境付近は乾燥した砂漠気候。
大インド砂漠が広がります。
タール砂漠とも呼ばれる大インド砂漠には、古くからインドとペルシャ、ローマまでを結ぶ重要な交易ルートありました。

昔ながらの変わらぬ生活を送る遊牧民は、大事な財産でもあるラクダと共に暮らしています。
猛暑をしのぐためにラクダの毛を美しく刈り上げるのがこの土地の習わしです。

  • 茶の生産量世界第2位、紅茶の生産量世界第1位
  • ダージリンティー

インド北東部、ダージリン地方。
インド有数の紅茶の産地のひとつです。
インドはお茶の生産量が多く、紅茶の生産は世界一です。
ダージリン地方で作られる紅茶が、それを支えています。
ヒマラヤ山麓(さんろく)の水はけのよい斜面に広がる茶畑は昼夜の気温差が大きく、降水量も多いため、良質な紅茶を作るのに適しています。
香りを楽しむ紅茶とされるダージリンティーは「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。

  • 小麦の生産量世界第2位
  • チャパティ

インドは国土の半分が耕作地と言われます。
北西部に広がるのが小麦の生産地です。
冬場の平均気温が10度台にまで下がる気候で、年間降水量は多くありません。
寒冷、乾燥を好む小麦には、まさに栽培適地なのです。
インドの小麦は中国に次ぎ、世界第2位の生産量です。

インドの北部では小麦が主食です。
牛乳を加えて練った生地を薄く伸ばし鉄板で焼き上げて作るチャパティが家庭の味です。
自家製のバターを塗ってカレーに添えます。

  • インディカ米
  • バナナの葉に盛り付ける

熱帯に属するインド南部は、米の主要産地です。
乾季と雨季で降水量が大きく変化する気候に適した品種、インディカ米が栽培されています。
南インドでは田植えから3ヶ月で米が収穫できるため、1年に2回収穫が可能です。
機械化が進んでいない一面もありますが、インドの米は、中国に次ぐ世界第2位の生産量を誇っています。
稲作が盛んな南インドでは、米が主食です。
バナナの葉に盛り付けるのが、おもてなしです。

  • 緑の革命(1960年代)農業の近代化に成功

イギリスの植民地だったインドは第二次世界大戦後に独立。
建国当初は資源もお金もなく、食糧難が続きました。
しかし、東南アジアと同様に、1960年代にインドでも「緑の革命」と呼ばれる技術革新が始まり、農業を近代化することに成功。今では穀物の自給を達成しています。

多様な言語のある国 インド
  • 500ルピー
  • 裏側に英語とヒンディー語で500ルピーと書かれている

所長 「これはインドの500ルピー札。1ルピーが約1.7円だから850円くらいかな。真ん中に描かれているのがインド建国の父と言われている『ガンジー』。そして裏側を見ると、上部に英語で500ルピーズと書かれている。そして左側に書かれているのが『ヒンディー語』で500ルピー(右図)。」

  • 裏側の真ん中にはインドの15の言語で500ルピーと書かれている

さくら 「真ん中にある四角の中にもたくさん文字が書いてありますけど…?」

所長 「よく気がついたな。この枠の中にはインドの15の言語で500ルピーと書かれてあるんだ。なぜなら、インドには国語にあたる言葉がないからだ。これだけの言葉で書かないと通じないんだよ。」

  • インドには29の州がある

所長 「インドには29の州がある。中には日本ほどの広さの州や、人口が2億人を超える州もある。州の境は、主要言語の分布に基づいて引かれているから、州が変われば言葉も変わる。服や食などの文化も変わるということだ。」

所長 「最も多くの人が話すのがヒンディー語。インド連邦の公用語とされているけど、それでも人口の4割ほどだ。ほかに、憲法で指定されている言語が22もある。」

もうひとつ、インドを知るには宗教が重要なポイントになります。
インドでは、ヒンドゥー教を中心に、さまざまな宗教が信仰されています。

ヒンドゥー教によりそう暮らし
  • インドの人口ピラミッド

インドの人口は、およそ13億人。
平均年齢が25歳という、まさに伸び盛りの国です。
人口ボーナス期にあり、働き手が多いことが、目覚ましい経済発展の要因のひとつと言われます。

  • ヒンドゥー教
  • ガート(沐浴場)

インドの80%近くの人が信仰しているのが、「ヒンドゥー教」です。
ヒンドゥー教とは、3500年ほど前に生まれたバラモン教が、インドの土着の神々を取り込んで変貌した宗教です。
聖地ヒマラヤの氷河を源流とするガンジス川は、ヒンドゥー教徒の聖なる場所です。
川岸には80を超える「ガート」という沐浴(もくよく)場があります。
“業(ごう)”を恐れ“けがれ”を嫌うヒンドゥー教徒は、ガンジス川で沐浴(もくよく)し、一心に祈りを捧げます。

  • 乳の出ない雄牛は街に放たれる

ヒンドゥー教では、基本的に菜食が理想とされています。
特に牛は神聖なものとして崇められ、食用にすることはありません。

  • イスラーム
  • 仏教

ヒンドゥー教に次いで信者が多いイスラームは、豚の食用を禁止しています。
そのほかに信仰されている仏教、そしてジャイナ教でも、殺生を禁じていて、菜食の教えがあります。
肉料理の文化がありながらも、大半の人が心情的にベジタリアンであることを理想と考えています。

  • 全国民の約30%がベジタリアン

さくら 「インドではベジタリアンが多いんですか?」

所長 「全国民の30%くらいと言われている。インドの人口は13億人を超えているから…。」

さくら 「およそ3億9000万人!日本の人口の3倍がベジタリアン!」

所長 「しかも残りの70%の国民も、肉を日常的に食べているわけではない。卵だけとか、たまに肉を食べるだけの人も含まれているんだ。」

さくら 「インドでは多くの人が宗教のルールを守って生活しているんですね。」

所長 「インドの人の生活や社会は、ヒンドゥー教との結びつきが、ものすごく強いんだ。インドで見られる『カースト制』もヒンドゥー教に根ざしている。」

インドに根付いたカースト制
  • 友澤和夫先生
  • カースト制はインド特有の社会制度

「カースト制」とはなんなのか、研究所のブレーン・友澤和夫先生に伺います。

友澤先生 「『カースト制』とはインド特有の社会制度のことです。ヒンドゥー教徒は、生まれながらにして『ヴァルナ』による身分を持ち、『ジャーティ』という職業を同じくする集団に属しているんです。」

  • カースト制

カースト制の身分制度「ヴァルナ」は一番上から「バラモン」「クシャトリヤ」「ヴァイシャ」「シュードラ」です。
そしてその下には、4つの身分に入れられず、すべての面で差別されてきた「ダリット」という身分があります。    
ヒンドゥー教徒はヴァルナのいずれかに入り、さらに2000種類以上ある、職業を同じくする社会集団「ジャーティ」に属しています。
この「ヴァルナ」と「ジャーティ」を組み合わせた社会制度が、インド特有の身分制度、カースト制なのです。
カーストによって身分や職業が決まり、それぞれに慣習や生活様式に違いがあります。
違うカースト同士で結婚することは、今でもほとんどありません。

カースト制の今
  • 指定カースト

さくら 「カーストって生まれながらに決まっているっていうけど、変えるってことはできないんですか?」

友澤先生 「変えられないと言えますね。ただし、現在ではカースト制は完全なシステムとしては、存在してはいないんです。インド憲法でもカーストによる差別を禁止しています。最下層のダリットの人々を指定カーストと位置付け、特別の優遇措置を講じることを国家に義務付けています。」

所長 「憲法に定めたら差別はなくなりましたか?」

友澤先生 「公的な場では見られませんが、慣習や人々の心からは、まだまだ消えてはいません。特に人が嫌がる職業や、農村貧困層には指定カーストが多いのが現状です。」

  • カーストに縛られない方法

さくら 「自分のカーストに縛られない方法はないんですか?」

友澤先生 「ひとつは、ヒンドゥー教からほかの宗教に改宗することですね。カーストはヒンドゥー教固有の制度だからです。もうひとつは、ジャーティにはない新しい職業に就くことですね。例えば自動車産業、そして『ICT産業』のエンジニアです。この2つの仕事は、伝統的なジャーティにはない新しい職業なので、誰でも実力さえあれば就くことができます。中でも経済をけん引しているのがICT産業なんです。」

発展するICT産業
  • 教育の蓄積が花開いた

ICT産業が発展した要因その1。 
イギリスからの独立後、資源も資金もないインドが発展するために、政府はペンさえあればできる「数学」の教育に力を注いだのです。

その2。
イギリスの植民地だったインド。
そこで英語を準公用語と定め「英語教育」に力を注ぎました。

その3。
こうした教育の蓄積が、アメリカでICT産業が急成長した際に、インドの人々がその担い手となる形で花開いたのです。

つまり、アメリカが ICT産業に必要とする、高い数学的頭脳、そして英語力を兼ね備えた安い労働力が、インドにはたくさんあったのです。

  • アプリを通じて配信される授業を制作
  • 撮影した授業の映像にCGや臨場感のある映像を加える

現在では、アメリカやヨーロッパで学んだ頭脳が、インド国内に戻り多くのICT会社を起業しています。
この会社は、スマホやタブレットのアプリを通じて配信される授業を制作しています(左図)。
小中学校のカリキュラムに合わせた内容で、学校の授業を補う教材として活用されています。
子どもたちにより分かりやすく興味を持ってもらうために、撮影した授業の映像に、CGや臨場感のある映像を加えます(右図)。

今では、1200万人の子どもたちが、配信される授業を利用しているそうです。
現在インドは、世界最大のICTサービスの輸出国となっています。

インドで進む“ピンク革命”
  • ピンクは肉のこと
  • インドの識字率の推移

友澤先生 「もうひとつ、インド経済の上昇とともに『ピンク革命』が進行中です。ピンクは肉のことですね。特に鶏肉の生産と消費が伸びています。所得の上昇とともに“肉を食べたい”という人口も増加しており成長産業に育ちつつあります。しかし、こうした新しい業種で収入を増やす人は一部です。貧困者は、まだまだ大勢います。」

所長 「インドには、まだ経済格差があるんですね。」

友澤先生 「その経済格差を縮めるためにも、まず必要なのがやはり教育です。インドの識字率は昔より上がってきていますが、男子で71%、女子は57%に過ぎません。地域差も大きい状態です。そこで政府が始めたのが無償の給食です。」

給食が教育を支える
  • SDMCスクール
  • 赤インゲン豆のカレーライス

首都ニューデリーから45km離れたところにあるカルカリ・ヴィレッジ。
この村にある小学校がSDMCスクールです。
ここには3歳から11歳まで229人の子どもたちが通っています。
インドの食事は平均して1日5回。
しかし、中には1食か2食しか食べられない子どももいます。

子どもたちの成長を助けるのが、無償で配られる給食です。
この日のメニューは、赤インゲン豆のカレーライス。

  • 給食を食べる子どもたち
  • 1年生の担任ナレッシュクマールさん

貧しい家庭では、子どもは大切な働き手。
そんな子どもたちが学校に通えるようにと、インド政府は1995年から、全国の公立小学校で無償の給食を提供するようにしました。
無償の給食で栄養が確保できると考え、子どもを学校に通わせる親が増加しました。
識字率も上がっています。

  • 多様な価値観や異なる文化を持つ人々がひとつの国の中で共存している

所長 「勉強ができる環境を作るということが、インド国民全体の生活向上につながっていくんですね。」

友澤先生 「インドは若く、出生率も高い、伸びしろのある国。多様な価値観や異なる文化を持つ人々が、ひとつの国の中で共存している、そんな懐の深い、とても興味深い国と言えるでしょう。」

それでは、今回の依頼に対する答えです。

さくら 「インドではヒンドゥー教など宗教のルールを厳しく守っている人が多いので、ベジタリアンが多く、狙い目はベジタリアンメニューです。最近人気の高まっている鶏肉のメニューを考えてみるのもいいかもしれません。」


それでは、次回もお楽しみに!

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