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Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第29回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜東南アジア〜

  • 地理監修:東京大学教授 永田淳嗣
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜東南アジア〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷さくらさん

石原良純さんが所長を務める、「フィルドストン研究所」。

所長 「サラリーマンは大変だよな、転勤があるから。」

そこへ、新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、依頼を持ってやってきました。

  • 東南アジアに転勤を打診されたが、暑そうだし、宗教のことも知らないし、不便なイメージ。断った方が良いだろうか?
  • 赤道が近い!

「東南アジアに転勤を打診されたが、暑そうだし、宗教のことも知らないし、不便なイメージ。断った方が良いだろうか?」
これが、今回の依頼です。

所長 「赤道に近い地域は確かに暑い。でも、だからと言って、暮らしにくいとは限らんぞ。」

東南アジアの気候
  • 東南アジアはほとんどが熱帯
  • 雨が多いのも東南アジアの特徴

11の国で構成される東南アジアは、そのほとんどが熱帯に属しています。
バンコクやマニラなどの都市では、気温は1年中25度以上。
東京と比べても、暑さは歴然です。

しかし、1年中、日本の夏のような気候が続くとはいえ、夕方、スコールと呼ばれる土砂降りがあると、夜は涼しくなり、それほど寝苦しいこともありません。
1年の降水量で見ると、雨が多いのも東南アジアの特徴なのです。
雨季と乾季が見られる地域もありますが、東南アジアには乾燥帯はありません。

東南アジアの稲作
  • フィリピンのルソン島
  • コルディレラの棚田

高温かつ降水量の多い地域で栽培されるのが稲です。
フィリピンのルソン島。
標高1500mを超える山の斜面に作られた美しい「棚田」
日本でも見られそうな風景です。

  • インドネシアのバリ島
  • 田植えから3か月後には収穫の時期

フィリピンだけではありません。
インドネシアのバリ島でも、昔ながらの方法で水田を作り、田植えを行っています。
こうして、バリ島でも棚田で稲を栽培しているのです。
田植えからおよそ3か月後には、実りの時期を迎えます。
バリ島は常夏の島。
1年中気温が高い東南アジアでは、水さえ十分にあれば、「二期作」や三期作がよく行われています。

  • ベトナム南部メコン川の河口に広がる水田
  • 気温の高さとモンスーン(季節風)による十分な降水が東南アジアの稲作を支えている

ベトナム南部、メコン川の河口に広がる水田。
世界有数の稲作地帯、メコンデルタです。
ベトナムはコメの生産国、輸出国としても知られています。
気温の高さと、「モンスーン」と呼ばれる「季節風」のおかげで十分な降水があり、それらが東南アジアの稲作を支えているのです。

発達した米食文化
  • 市場のコメ売り場
  • コメの加工品を使った料理

収穫量が多いだけではありません。
市場のコメ売り場には、産地や種類、用途に分けて30種類ものコメが売られています。
これらのコメは主食として食べるのはもちろん、コメを材料に使った料理もたくさんあります。
こんなところも、日本の文化に近いですね。

東南アジアの農業
  • 緑の革命

所長 「ところで先ほどのVTRでは、昔ながらの方法でコメを棚田で作っていたけど、東南アジアの各地では農業は近代化が進んでいるんだ。その大きな転換点となったのが、1960年代半ば、東南アジア諸国で始まった『緑の革命』だ。収穫量の多い新しい稲の品種が開発され、肥料の投入や灌漑(かんがい)の整備がなされて、たくさんのコメが収穫できるようになったんだ。」

それだけではありません。
東南アジアではコメ以外にも、熱帯ならではの作物がたくさん作られています。

  • 東南アジアの農業地域
  • あぶらやしはパーム油の原料になる

所長 「緑の部分が、さっき見た稲作を行っている地域だ。それ以外にもいろいろあるだろう?」

さくら 「さとうきび、天然ゴム、ココやし、あぶらやし?」

所長 「あぶらやし。パーム油(ゆ)という植物油(しょくぶつゆ)の原料になるんだな。」

さくら 「あとは…バナナ!フィリピンのバナナよく食べてます!」

所長 「アメリカや日本に本社のある『多国籍企業』が生産や流通に関わって、日本にバナナを輸出しているんだ。またベトナムでは、近年コーヒーの栽培が急増している。今や生産量は南米のブラジルに次いで、世界第2位。これも日本にたくさん輸出されている。」

次は、宗教・文化を見てみましょう。

多様な宗教・文化の受容
  • 仏教とイスラームの伝播ルート
  • スコータイ

東南アジアでは、インドから仏教が大陸部や島しょ部に伝わり、その後西アジアからイスラームが島しょ部に伝わりました。

タイ族・最初の王国の都、スコータイ(右図)。
13世紀の独立後、仏教を広めることで国をまとめていきました。

  • たく鉢

ミャンマーでは、出家して僧侶になった若者や子どもたちが、たく鉢(はつ)をしている光景によく出会います。

  • インドネシア
  • マレーシアの市場
  • ブルネイ

一方、インドネシアは世界最多、2億人あまりのイスラーム教徒、ムスリムが暮らしています(左図)。

マレーシアの市場。
国民のおよそ6割がムスリムです(中図)。

ブルネイの首都、水上都市のバンダルスリブガワン。
行き交う船の多くにムスリムの姿があります(右図)。

  • フィリピン

一方、キリスト教徒の多いのがフィリピンです。
16世紀以降、スペインの植民地支配によって広まりました。

こうして見てみると、東南アジアは宗教文化がいろいろあって、共に生活すると混乱しそうですが・・・。

異なる宗教を尊重
  • 数人の生徒が立ち上がり別の教室に向かう
  • キリスト教プロテスタント
  • 仏教とヒンドゥー教

人口の9割近くがイスラームを信仰するインドネシア。
その中学校を訪ねてみると、宗教の授業が始まったとたん、数人の生徒が立ち上がり、別の教室に向かいます(左図)。

実は彼らは、イスラーム以外の生徒たち。
1000人の生徒のうち、45人しかいないキリスト教プロテスタント。
その生徒たちにも宗教の授業が保障されています(中図)。

そして更に少数の、仏教とヒンドゥー教の生徒たち(右図)。
それぞれの宗教を尊重して授業を行うよう、国が全国の学校に通達を出しているのです。

教頭先生 「インドネシアには多様な宗教があります。だからこそ、子どものときから尊重し合うことの大切さを教えます。これはインドネシアが1つであり続けるという、最大の目標のためにも必要なことなのです。」

複雑な民族構成
  • 多民族国家
  • ブミプトラ政策

またマレーシアも、マレー系と中国系、インド系住民などから構成される「多民族国家」です。
1960年代の終わりには、経済的に豊かな中国系住民とマレー系住民の間で対立が起こり、多くの人が命を落としたこともありました。
そこで政府は、「ブミプトラ政策」を取って、雇用や教育面でマレー系住民を優遇し、多民族が共存する道を推し進めてきました。

多民族の共生
  • マレー系先住民と中国系選手がペアを組む

それを象徴するのが、シンクロ高飛び込みのマレーシア代表選手。
同調性が重視されるこの競技では、髪型や肌の色を揃えたペアで出場するのがほとんどです。
しかしマレーシアは、マレー系先住民と中国系選手のペアでメダルに挑み続け、リオ・オリンピックで銀メダルを獲得。次は頂点を目指しています。

異なる宗教、異なる民族を互いに認め合う寛容な精神。
それが根付いているのも、東南アジアの大きな特徴なのです。

多民族共生の背景
  • 東南アジアの植民地支配

所長 「中には例外もあるけど、他の民族を認めて、みんなで一緒に発展しようというのが東南アジアの国々の考え方なんだ。どうしてこんなふうになったと思う?」

ここで、歴史を振り返ってみましょう。

所長 「これは19世紀末から20世紀初頭の東南アジアの姿だ(図)。」

さくら 「え?タイ以外みんな色が塗られてるってことは…植民地だったんですか?」

所長 「どの国も植民地支配のもとで苦しんだ歴史があるんだ。だから20世紀半ばになって独立しようとしたとき、1つの国にさまざまな民族がいても、みんなで力を合わせて、独立を勝ち取ったんだ。」

次は、経済の発展ぶりを見てみましょう。

東南アジアの農業と工業
  • マレーシア天然ゴムのプランテーション
  • ゴムノキの樹液を集める

植民地時代の東南アジアは、宗主国の欧米諸国の富を増やすことを目的に開発されました。

マレーシア、天然ゴムの「プランテーション」
ゴムノキの樹皮を削って、樹液を集めます。
これが天然ゴムの原料になります。
集めた樹液に薬品を加えて、凝固させたものが生ゴム。
これが輸出され、タイヤなどに加工されていくのです。

他にも鉱産資源のスズなど、単一の農産物や鉱産物に依存した「モノカルチャー経済」を押しつけられた東南アジアの国々では、経済発展がなかなか進みませんでした。

東南アジアの工業化
  • 中学校の機械実習
  • 木材加工工場

しかし、今や、世界有数の経済成長を遂げている東南アジア
国内総生産の成長率では、日本が近年1%前後を推移しているのに対し、東南アジアの多くの国が5%前後で推移しています。
国民全体の真ん中の年齢・中位年齢は、日本が40代後半なのに対し、ほとんどが20代から30代です。
この発展の背景にあったものは、20世紀半ばの独立以降、各国がモノカルチャー経済から抜け出すべく推し進めた工業化政策です。

  • ASEANを結成
  • 1970年代から輸出加工区を設置。輸出指向型の工業化を進めた。

1967年にはインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイの5か国が「東南アジア諸国連合(ASEAN)」を結成。
次第に加盟国を増やし、東南アジアをまとめる地域連合へと成長しました。
1970年代からは、各国とも「輸出加工区」を設置するなどして、「輸出指向型」の工業化を進めました。
いち早く成功したシンガポールは、「アジアの新興工業経済地域・アジアNIEs」の一員に成長。
続いてマレーシアとタイでも工業化が進みました。

そしてベトナムも、「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる市場開放政策を取り、経済のさまざまな分野で成長を遂げています。

経済格差の是正
  • カンボジアASEAN加盟
  • ASEAN自由貿易地域、ASEAN経済共同体の発足

一方、ASEAN域内に格差が生じたのも事実です。
内戦が続いたカンボジアは、経済発展から取り残されていました。
そのカンボジアが、1999年ASEANに加盟。

すると、隣国・タイとの物流が一気に活発になりました。
「ASEAN自由貿易地域(AFTA)」や、「ASEAN経済共同体(AEC)」の発足によって、域内の関税の撤廃が進んだことが大きな理由です。

  • 日本の企業が作ったカンボジア工場

日本の企業が新しく作ったカンボジア工場です。
元々タイに生産拠点があったのですが、人件費が安いことから、作業工程の一部をカンボジアに移したのです。

こうした外国企業の誘致などによって、格差の問題は少しずつ改善されています。

素顔の東南アジア
  • 永田淳嗣先生

東南アジアには他にも、日本人にとってなじみやすい要素があります。
研究所のブレーン・永田淳嗣先生にお話を伺います。

永田先生 「私自身、マレーシアで長い間ムスリムの村で暮らしたことがあるんですけれども、宗教や文化の面でそれほど大きな緊張を強いられることはありませんでした。また、経済や産業の面でも、教育を受けて新しい分野に乗り出そうという意欲を持った若い人たちも多くて、そうしたエネルギーに満ちているのもとても魅力的だと思います。」

  • 大都市の線路際や河川敷にはスラムと呼ばれる劣悪な住宅地区もある
  • ひとつひとつの村にまで舗装道路が達している

さくら 「でも、貧しくて困っている人たちがいるって、ニュースでよく見るんですけど…。」

永田先生 「確かに、インドネシアのジャカルタのように、大都市で線路際とか河川敷に、多くのスラムと呼べるような劣悪な住宅地区があったりもします。その一方で、私が調査でよく訪れるスマトラの奥地では、ひとつひとつの村にまで、舗装道路が達していて、ちょっと幹線道路に出るとコンビニができていたりして、本当に驚かされるんですね。」

永田先生 「確かにアンバランスなところはあるかと思いますけれども、現在の東南アジアというのは、数年もすれば町や村の姿っていうのはどんどん変わっていきます。人々の暮らしが全体として底上げされてきていることは確かだと思います。私たちも、東南アジアの人々の日々の暮らしに、もっともっと目を向けていきたいですね。」

  • 東南アジアは日本と共通点が多くて暮らしやすい。今後も大きな発展が予想されるこの地を直接見てみるのもいい

それでは、今回の依頼に対する答えです。

さくら 「東南アジアは日本と共通点が多くて暮らしやすい。今後も大きな発展が予想されるこの地を直接見てみるのもいい、ということだと思います。」


それでは、次回もお楽しみに!

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