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Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2018年度の新作です。

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地理

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今回の学習

第1回 さまざまな地図と地理的技能
【地理情報と地図】編

地図で地球を見てみよう

  • 地理監修:明治大学非常勤講師 田代 博
学習ポイント学習ポイント

地図で地球を見てみよう

  • 石原良純所長
  • 籠谷さくらさん

地球上で起きているすべての事柄は、自然現象であれ人の手によってなされたものであれ、すべて地理の知識で理解することができます。
みなさんも今日から一緒に、地理の知識を深め、世の中の謎を、調査・分析していきましょう!


ここは、石原 良純さんが所長を務める「フィルドストン研究所」です。
そこに、新人所員である籠谷(こもりや) さくらさんが、今回の依頼を持ってきました。

世界地図に 東京からの等距離を示す線を引くには
  • 今回の依頼
  • 世界地図に同心円を描けばOK?

所長 「『世界地図に東京からの等距離を示す線を引きたい』。これはね、世界地図の本質に迫る、なかなか深い依頼だな。」

さくら 「こんなの、簡単じゃないですか!この世界地図に、コンパスで同心円を描いて……。」

所長 「ちょっと待て!そんなことをしたら、我が研究所の威信が地に落ちるじゃないか!」

  • 球面を平面に描こうとするとひずみが生じる
  • メルカトル図法は角度を正確に表す

大慌てで所長が持ってきたのは地球儀です。
地球は立体、球であり、その表面は球面です。
一方、地図は平面です。

球面を平面に描こうとすると、どこかに“ひずみ”が生じてしまうのです。


所長 「世界地図って、いろいろあるだろう?何かを正確に表そうとすると、何かがひずんでしまうんだ。ちなみに、このメルカトル図法の世界地図は、『角度』を正確に表したものなんだ。」

さくら 「角度?」

メルカトル図法とは
  • ゲラルドゥス・メルカトル
  • 1569年に作った地図
  • 東京からホノルルへは真北に対し105°を保てばよい

「メルカトル図法」を考案したのは、1512年に現在のベルギーで生まれた地理学者のゲラルドゥス・メルカトルです。

当時、ヨーロッパは、大航海時代を迎えていました。
大学で天文学や地理学を学んだメルカトルは、航海に役立つ地図の作成を志すようになります。

1569年に完成した地図は、「すべての緯線と経線が直角に交わる」「緯線方向と経線方向の拡大率を一致させる」という2つの工夫によって、角度を正しく再現した「正角図法」でした(中図)。

たとえば、東京からハワイのホノルルに行く場合、地図上の2点を直線で結んだものが、航路になります。
この直線と経線とのなす角度、真北に対して105°を保って航海を続ければよいのです。

メルカトル図法のメリットとデメリット
  • 札幌よりもパリの方が北にある
  • メルカトル図法のメリット

さくら 「なるほど、昔の船乗りさんは、この角度に進んでいけば、目的地までたどり着けたんですね。でも、私、航海とかしないのに、なんでメルカトル図法をよく見るんですかね?」


メルカトル図法のメリットとして、緯線と経線が直交しているので2つの地点の緯度・経度を比較しやすいことが挙げられます。

たとえば、札幌とパリを地図上で比べると、パリの方が札幌よりも北にあることがわかります。


所長 「さらにね、狭い範囲なら形もよくて、インターネット配信をしやすいっていうメリットもあるんだ。だから、世界地図っていうと、このメルカトルを思い浮かべる人が多いんじゃないかな。」

さくら 「へぇ〜、いいとこばっかりじゃないですか!」

所長 「ところがね、そうも言っていられないんだよね。」

  • 地球上では高緯度ほど緯線が短い
  • 地図上では緯線は同じ長さ

地球上では、緯度が高いほど緯線は短くなります。
同じ経線と経線との範囲内において、北緯60°では、緯線の長さは赤道の半分です。

ところがメルカトル図法では、北緯60°と赤道では、緯線が同じ長さで描かれています。
これは、すべての緯線を、赤道と同じ長さまで引き延ばしているためです。
さらに、角度を正確に保つために、経線の長さも引き伸ばしています。

そのため、メルカトル図法には、赤道から離れるほど距離と面積が拡大され、ひずみが大きくなるデメリットがあります。

  • グリーンランドとアフリカ大陸の大きさは?
  • アフリカ大陸の面積はグリーンランドの14倍

所長から説明を聞いたものの、さくら君はなんだか納得していない様子です。
そこで、インターネットの地図サイトで、わかりやすい例を見てみることにします。


所長 「ちょっとこれを見てもらえるかな。メルカトル図法の世界地図が出てきました。この中で、グリーンランド(左図・上の赤丸)とアフリカ大陸(左図・下の赤丸)、どちらが大きいでしょうか?」

さくら 「一緒ぐらいに感じますけど、ちょっとグリーンランドの方が大きい気がします。」

所長 「じゃあね、このグリーンランドをアフリカ大陸と同じ緯度に動かしてみます。さぁ、どうなる?」

さくら 「わぁ!ちっちゃくなった!こんなにちっちゃいの?」


地図上のグリーンランドをアフリカ大陸の隣に移動させると、右図・黄色で表した大きさまで縮んでしまいました。
実際のアフリカ大陸の面積は、グリーンランドの14倍もあります。
ですが、グリーンランドは高緯度に描かれているため、メルカトル図法の地図では非常に面積が大きくなってしまうのです。


さくら 「メルカトル図法では、大きさを判断しちゃいけないんですね。」

所長 「じゃあ、面積を正しく表している地図って、どんなものか知りたくない?」

さくら 「知りたいです!」

所長 「それは、こんな地図なんです。」

サンソン図法とモルワイデ図法
  • ニコラ・サンソン
  • サンソン図法

ニコラ・サンソンは17世紀のフランスの地理学者で、「フランス地理学の祖」といわれています。

右図は、サンソンが発行した地図帳に使われたことから「サンソン図法」と呼ばれる世界地図です。
まるで、そろばんの玉のような形をしていますね。
赤道から離れるほど、緯線が短くなっていくため、高緯度では変形が大きくなって見づらくなっています。

  • カール・モルワイデ
  • モルワイデ図法

18世紀のドイツの天文学者カール・モルワイデは、もう少し見やすい地図を作りました。
北極と南極付近を広げ、緯線の間隔を調整して全体を楕円形にしたのです(右図)。
これを「モルワイデ図法」といいます。

サンソン図法やモルワイデ図法のように、面積が正しい図法を「正積図法」といいます。

正積図法の使い方
  • 正積図法は分布図に使われる
  • メルカトル図法だと高緯度の面積が拡大される

正積図法の世界地図は、分布図として使われることが多くあります。
左図は、2017年の気温と過去のデータを照らし合わせたものです。
赤いところほど、過去のデータに比べて2017年の気温が高くなっており、地球全体で地球温暖化が進んでいるということがわかります。


さくら 「……でも、南極と北極がわかりにくくないですか?見にくいし、これだったら、メルカトル図法でやった方がいいですよ!」

所長 「いやいや、それじゃダメなんだよね。いい?ちょっとこれを見てね(右図)。」


緯度が異なり、面積は同じ2つの地点で、人口分布を点で表したとします。
これをメルカトル図法にすると、高緯度に位置する地点の面積が大きく描かれてしまいます。


さくら 「スカスカに見えます。なるほど……じゃあ、今回の依頼はこれに同心円を描いて……!」

所長 「待って待って!あのね、この地図でもダメなのよ。さくら君は、『そもそも、人間がどうして地図というものを作ったのか』から学び直す必要がありそうだな。リサーチに行ってきなさい!」

さくら 「はい、行ってきます!」

地図の発達と世界観の変化
  • 地図と測量の科学館
  • 伊能忠敬

さくら君がやってきたのは、茨城県つくば市にある、国土地理院 地図と測量の科学館です。
この科学館では、地図や測量に関する歴史や原理、新しい技術などを、楽しみながら体感できます。

江戸時代に作られた伊能忠敬の日本地図を見ることもできます。
全国を歩いて測量し、今の地図と比べても誤差の少ない、完成度の高さです。

  • 門脇利広さん
  • 最も古い地図

案内をしていただくのは、門脇 利広さんです。

地図の通史コーナーでは、地図の昔から現代までのさまざまなことを説明しています。
右図はトルコで発見された壁画で、もっとも古い地図といわれています。
作られたのは紀元前6200年頃、今から約8200年ほど前に作られた地図です。


さくら 「そのときから、地図っていうものはあるんですね!確かによく見ると、こっちは家で、これが道っぽいですね。地図ですね〜!」

門脇さん 「文字が発明されるよりはるか昔から、人々は大切な情報を、このような形で記録したといわれているんです。」

  • バビロニアの世界地図
  • ユーフラテス川やバビロンが描かれる

さくら 「でも、世界地図ではないですよね?」

門脇さん 「はい。では、こちらを見てください。これは、紀元前700年ころに作成されたバビロニアの世界地図というものなんです。」


バビロニアは、古代メソポタミア文明の、南部の地域です。
ユーフラテス川や、中心的な都市バビロン、その他の都市が粘土板に刻まれています。


さくら 「バビロニアしか描いてないのに、世界地図なんですか?」

門脇さん 「当時のバビロニア人の世界観を表しているといわれています。バビロニア人にとっては、この円盤状のものが世界だったんです。時代が進むに従って、交易する人たちも増えますし、そうすると世界も広がっていくわけです。」

  • プトレマイオスの世界地図
  • マレー半島まで描かれている

左図は、150年ころの「プトレマイオスの世界地図」といわれています。
ローマ帝国が最盛期だった時代で、北はイギリスから、南は赤道の周辺、東はマレー半島までの広がりをもった世界地図になっています。

プトレマイオスの世界地図は、初めて緯線と経線を入れた世界地図です。
緯線は曲線で、等間隔で描かれてあり、球体の地球を平面の地図に表現するような工夫がされている、科学的な地図といえます。

  • ベアトゥスによる世界地図
  • 世界は簡略化して描かれている
  • TOマップ

その後、ヨーロッパではキリスト教の影響力が強まり、その世界観を反映した世界地図が描かれるようになります。

ベアトゥスによる世界地図では、エデンの園がある東が上、中心に聖地エルサレムがあり、世界の形は簡略化されています。
このような世界地図は、外周が「O」、内部が「T」の文字に見えることから、「TOマップ」と呼ばれています。

その後、ルネサンスの時代にプトレマイオスの世界地図が復活します。
さらに大航海時代を迎えて、メルカトルの地図へとつながっていくのです。


門脇さん 「世界地図というのは、人々がどのような生活範囲をしているか、どのように世界を捉えているかということを知ることができるものなんです。いろんな時代の世界地図を眺めてみて、その当時の人々がこういうことを大切にして世界地図を作っていたんだなと思って、楽しんでもらえればいいんじゃないかなと思います。」

地球儀で考える地球上の位置
  • 田代博先生
  • メルカトル図法で距離を見る

地図の歴史もわかり、世界地図の本質である「何を大切にするか」ということもよくわかる、いいリポートをしてくれたさくら君。
しかし、今回の依頼の回答まで、まだたどり着いていません。

そこで、研究所のブレーン・田代 博先生と一緒に、回答を導き出していきます。


田代先生 「地球上の位置関係、特に距離や方位を考えるときは、実は、地球儀を使うのが一番なんです。たとえば、オーストラリアの首都キャンベラと、フィンランドの首都ヘルシンキ。東京から近いのはどっちですか?」

さくら 「この地図(メルカトル図法)だと、東京とヘルシンキ、東京とキャンベラ……。キャンベラの方が近いようですけど。」

田代先生 「でも、メルカトル図法は、高緯度では距離や面積のひずみが大きいんでしたよね。地球儀で見てみましょう。」

  • 東京・キャンベラ
  • 東京・ヘルシンキ
  • 線の長さで比べる

東京とキャンベラの間に青いひも、東京とヘルシンキの間に赤いひもを貼り、長さを比べてみます。


さくら 「あんまり変わらないようですけど……ちょっとキャンベラの方が長い?」

田代先生 「そうですね。実際、東京とキャンベラの間は7942km、ヘルシンキまでは7820km。ちょっとヘルシンキの方が……。」

さくら 「近い?」

所長 「でも、メルカトル図法でやると、東京とキャンベラの間の方が近くなっちゃう。やっぱり、メルカトル図法は、距離や面積を正しく表してくれていないということですね。」

田代先生 「そういうことです。」

  • 方位
  • ニューヨークは東京の東?

もうひとつ、地球儀を使って方位を見てみます。
方位というのは東西南北ですが、少し難しく言うと「ある地点での基準の方向に対する向き」のことです。


田代先生 「たとえば、東京から見て、アメリカのニューヨークの方位はどうなりますか?」

さくら 「ニューヨークは、(メルカトル図法の地図では)東京のほぼ右側にあるから。上が北だから……東ですか?」

  • 東京を基準に十字のテープを貼る
  • 線を東にたどると、南米にたどり着く

田代先生 「地球儀で確認してみましょう。東京を中心に、十字のテープを貼ってあります。北極点に向かう方向が北です。で、南極点に向かう方向が南。これが、方位の基準です。東というのは、北に対して右側90°の方向なので、この青い線をずーっとたどっていくと……北米、ニューヨークの方に行かないで、南米の方に行っているんです。」

所長 「あれーっ!?南米に行っちゃうんだ。じゃあ、南米は日本の東にある。」

田代先生 「ニューヨークは、むしろ、東というよりも北に近いくらいですよね。」

距離と方位が正しい地図とは
  • 正距方位図法
  • 南極点を中心とした正距方位図法

さくら 「……でも先生、今回の依頼は、地球儀じゃなくって地図に等距離の線を引くっていうことなんですけど?」

田代先生 「ちゃんと、距離と方位を正しく表す図法があるんです。インターネットにいいサイトがあるので、それを見てみましょう。」


これは「正距方位図法」の世界地図です。
中央の「×」印から見て、距離と方位が正しい世界地図となります。
北極点を中心に持ってくると、国際連合の旗の元になっている地図が表れます(左図)。


田代先生 「逆に、南極点を中心に持ってくると、これはどうですか?なかなか見たことがない世界地図だと思います(右図)。」

所長 「こうやって視点を変えると、また新しい世界が見えてきますね。」

  • 東京を中心にした正距方位図法

田代先生 「では、東京を中心に持ってきます。すると、こんな形。ぐーっと伸びているのは、南アメリカです。周辺部にあるとひずみが大きくなるんですけれども、この地図だと、東京からの同心円を描くと、それが東京からの等距離を示す線になるんです。」

さくら 「つまり、今回の依頼に対しては、この『正距方位図法の世界地図を使う』と回答すればバッチリですね!」

  • グード図法、ボンヌ図法
  • ヴィンケル図法、ミラー図法

世界地図には、他にもいろいろな図法があります。

グード図法(左図・左)、ボンヌ図法(左図・右)は、面積を正しく表している正積図法です。

ヴィンケル図法(右図・左)やミラー図法(右図・右)など、全体としてひずみが小さいものもあります。

  • 次回もお楽しみに!

田代先生 「こういうふうに、世界地図にはさまざまな図法があります。角度が正しい、あるいは面積が正しい……と、それぞれ特徴を持っています。どんな目的で地図を使うのか、それを明確にして、それに応じた地図を使うことが大切です。

所長 「今日は、地図について、たっぷり知ることができたね。これから地理の知識を学んでいく上で、地図っていうのは大きな戦力になりますからね。さくら君、しっかり復習しておいてくださいね。」

さくら 「はい、わかりました!」


これから1年間、よろしくお願いします!

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