NHK高校講座

地学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第26回 第3編 私たちの大地

火山活動の多様性

  • 東京学芸大学附属高等学校教諭 田中 義洋
学習ポイント学習ポイント

火山活動の多様性

今回のテーマは“火山活動の多様性”
  • 富士山
  • 三つの隠れた山

サワ 「アイコさんにもらったこの貯金箱、一杯になると10万円たまるんだよね。いつの間にかたまってた。」

アイコ 「ちりも積もれば山となる。富士山みたいにね。」


日本を代表する山である富士山は、一度の噴火だけでできた山ではありません。

数十万年前の噴火で最初に先小御岳ができ、次に10万年以上前の噴火によって小御岳ができます。
さらに、10万年から1万年前の噴火で古富士ができ、そして1万年ほど前から現在までの噴火でできたのが新富士です。

富士山の下には、隠れた山が3つあり、今の富士山の姿をつくり出しているのです。
富士山は、溶岩や火山灰などが幾重にも降り積もってできた山で、こうしてできた山を成層火山といいます。

火山の噴火と形
  • マウナロア
  • 粘性が低い場合

はじめに、火山の噴火と火山の形がどんなふうに関係しているのか見ていきましょう。
火山の噴火と形は、地下で発生したマグマの性質で決まります。
前回、沈み込み帯でできるマグマと、海嶺やホットスポットでできるマグマは粘り気が違うということを学びました。

ハワイのマウナロア山は、ホットスポットの火山です。
富士山の形に対して、ハワイのマウナロア山はとてもなだらかです。

溶岩の粘り気を、粘性といいます。
粘性が低いマグマは発泡したガスが外に抜けやすく、噴火のときに大きな爆発が起こりにくいという特徴があります。
また、流れやすいため遠くまで流れて、山の形はとてもなだらかになります。


マウナロア山のようなマグマの粘性が低い火山を盾状火山といいます。
盾を伏せたような形をしているところから つけられた名前です。

  • 粘性が高い場合1
  • 粘性が高い場合2

一方、粘性が高いマグマは、発泡したガスが外に抜けにくく、ガスが地上付近で爆発的に膨張し、大量の噴煙が立ち上がります。
吹き飛ばされたマグマと火山灰が繰り返し降り積もり、成層火山になります。

  • 伊豆大島火山と雲仙普賢岳の溶岩
  • 伊豆大島火山と雲仙普賢岳のマグマ

粘性は、マグマの温度と、含まれている二酸化ケイ素という物質の量によって決まります。

温度と二酸化ケイ素の量が異なる、マグマの粘性の違いを比べてみます。
右の画像から分かるように、粘性が高いマグマは温度が低く、二酸化ケイ素の量が多いという特徴があります。

火成岩と造岩鉱物
  • 粘性の高低
  • 火山岩と深成岩

マグマが固まってできた岩石を火成岩といいます。

上の画像は、6種類の火成岩を、ある特徴で分けて並べたものです。
右側の方が白っぽく、左側の方が黒っぽい色になっています。
これは固まる前、マグマだったときの粘性と関係があります。
右側の方が粘性が高く、左側の方が粘性が低くなっています。

また下の段の岩石には全体的に粒がありますが、上の段は粒が少なかったり、大きさの違う粒が所々にあります。

上の段は、マグマが急に冷やされてできた火成岩で火山岩といいます。
下の段はマグマがゆっくりと冷やされてできた深成岩です。


サワ 「冷やされ方の違いで、こんなにツブツブの状態が変わるなんて不思議ね。」

アイコ 「それを理解するには、ツブツブの正体を知る必要があるわ。」

  • 急に冷やされて固まった火山岩
  • アイコとサワ

左の画像は、火山岩を拡大したものです。
粒が所々に散らばっており、よく見るとその周りは、さらに細かい小さな粒子で埋め尽くされています。
このように、比較的大きな粒と細かい小さな粒、さらに粒がまったく見えない部分があります。
これらは全て岩石を造る鉱物で造岩鉱物と呼ばれ、粒に見えるのは鉱物の結晶です。
粒が小さいものは、マグマが急に冷やされたために結晶が大きく成長できなかった鉱物です。
一方、粒の大きいものは、マグマが急に冷やされる前に成長した鉱物です。


サワ 「マグマがとけてる状態でも結晶はできるってこと?」

アイコ 「そうよ。マグマだまりの中のマグマは条件次第で早く結晶になり始めるの。そういう鉱物を含んだマグマが地表に出るころには、結晶が大きく成長している場合もあるのよ。」

  • 斑状組織
  • 等粒状組織

火山岩を構成する比較的大きな鉱物の結晶を斑晶(はんしょう)、そのまわりを石基といいます。
また、このような火山岩の組織を、斑状組織といいます。

一方、深成岩の粒も鉱物の結晶で、ゆっくり冷えるので鉱物の結晶は大きく成長できます。
しかし、成長する結晶どうしがぶつかり合って同じ大きさの粒になりやすくなります。
こうした深成岩の組織を、等粒状組織といいます。

  • 問題の岩石
  • 有色鉱物と無職鉱物

アイコ 「では、ここで問題です。これも火成岩なんだけど、どんなことが言えるでしょうか?」

サワ 「6個の岩石のどれとも違うように見えるけど… 分かった!全体的に白っぽいので、固まる前のマグマは粘性が高かったのね。ツブツブがまんべんなく広がっているので等粒状組織。よってゆっくりと冷えて固まった。これはずばり深成岩でしょう!」


火成岩をつくる鉱物を見てみました。
火成岩をつくる鉱物は、色がついている有色鉱物と、白っぽい無色鉱物にわけられます。

火成岩が含む造岩鉱物の量比

火成岩は、火山岩か深成岩かの違いに加え、有色鉱物と無色鉱物の含まれる割合によって名前がつけられています。

例えば、玄武岩とはんれい岩では、有色鉱物の占める割合が40〜70%程度です。
また、さらに細かく分類すると、岩石が鉱物一つ一つを含む割合もおおよそ決まっていることがわかります。

このように、有色鉱物の割合が、つくられる火成岩によって異なるのです。


サワ 「火成岩の名前を推理するためには、鉱物の割合までを見なければだめなのね。細かく見分けるのは難しそうね。」

アイコ 「そんな時に力を発揮するのが、偏光顕微鏡なの。」

偏光顕微鏡のしくみ

偏光顕微鏡は、偏光と呼ばれる、振動面が特定の方向に限られた光を利用した顕微鏡です。
薄く削った岩石に偏光を通すと、岩石に含まれる鉱物の特性を観察することができます。

  • 開放ニコルでの観察
  • 直交ニコルでの観察

実際の観察では、偏光板を一枚使った開放ニコルと、岩石を通過した光をもう一枚の偏光板を通す直交ニコルがあります。
2つの観察方法によって、鉱物の結晶の特徴が分かるのです。


アイコ 「一つだけ覚えておいてほしいのは、同じ鉱物なら大きくても小さくても形が違って見えても、同じ性質を持っているということ。つまり鉱物に偏光を通すと、その鉱物の性質によって光に変化が起こるということよ。」


デジタル偏光顕微鏡を利用して、偏光顕微鏡での岩石観察を体験してみました。

理科教材データベース(岐阜聖徳学園大学)
//www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/CHISITSU/dezital_henkoh/index.html

  • 黒雲母・開放ニコル1
  • 黒雲母・開放ニコル2
  • 黒雲母・開放ニコル3

まずは有色鉱物の黒雲母から観察してみました。

「Nicol」のところで「OPEN」が選択されているのは、開放ニコルで観察していることを表しています。
この状態でステージを回してみると、上画像のように色が変わります。

  • 黒雲母・直交ニコル1
  • 黒雲母・直交ニコル2
  • 黒雲母・直交ニコル3

次に、「CROSS」を選択して、直交ニコルで観察すると、上画像のようにさまざまな色が出てきました。
ステージを回転させると、色も少し変わりますが、角度によって真っ暗になります。

  • 斜長石・開放ニコル1
  • 斜長石・開放ニコル2
  • 斜長石・開放ニコル3

次は無色鉱物の斜長石を見てみました。
開放ニコルでは、回転させても変化がありません(上画像)。
「変化なし」というのも鉱物の性質のひとつです。

  • 斜長石・直交ニコル1
  • 斜長石・直交ニコル2
  • 斜長石・直交ニコル3

直交ニコルにすると色がついて見え、黒雲母と同じように角度によって暗くなります。

  • ある火成岩・開放ニコル1
  • ある火成岩・開放ニコル2
  • ある火成岩・開放ニコル3

ここで、ある火成岩を観察してみました。
はじめに開放ニコルで観察すると、中央付近に、黒雲母に似ていますが少し違う鉱物があります。
端には黒雲母のような鉱物が見えます。

  • ある火成岩・直交ニコル1
  • ある火成岩・直交ニコル2
  • ある火成岩・直交ニコル3

続いて直交ニコルにしてみると、中央の結晶がカラフルになりました。
さらに、透明だった四角い鉱物の色が斜長石と同様に変化します。


アイコ 「ここまでで分かったことは?」

サワ 「まず、結晶の成長具合がバラバラだから斑状組織になっている、つまり火山岩ね。あとは、黒雲母と斜長石っぽいのがあるけど…」

  • 火山岩
  • 東京学芸大学附属高等学校教諭田中義洋さん

アーカイブスにアクセスして、東京学芸大学附属高等学校 教諭の田中 義洋さんに聞いてみました。

  • 火成岩の造岩鉱物の割合を示したグラフ
  • 角閃石

先ほど、斑状組織っていうことをおっしゃってましたね。それで火山岩だということになりました。すばらしいですね。それに気づいたってことは、さきほど見てもらった火成岩の造岩鉱物の割合を示したグラフで上の段だということになります。

つまり6個の火成岩のうち、3つに絞られたわけです。そして、斜長石と雲母があるということも分かりましたね。残念ながら中心にある鉱物は分かりませんでした。あの鉱物は、開放ニコルや直交ニコルで調べると実は角閃石です。角閃石があって、そして黒雲母、斜長石があるということは、先ほどのグラフの左側、真ん中、右側のどれになるでしょう?


サワ 「安山岩!」

そうですね!そのとおりです。これをきっかけにして、いろんな火成岩や岩石をデジタル顕微鏡をはじめとした画像を見て楽しんでくれたらうれしいです。


サワ 「なんかロマンチック。火山で造られる岩石って、地球からのメッセージみたいだし。」

アイコ 「メッセージだけじゃなくて、人の暮らしに直接役に立ってきた火山の恵みもあるわよ。」

  • 国会の外壁
  • 皇居の石垣

国会が行われる国会議事堂は、日本中の石を取り寄せて建築され、1936年に完成しました。
外壁には、2種類の石が使われています。
ひとつは山口県で採石された白い花こう岩、もうひとつは広島県で採石されたピンク色の花こう岩です。

国会議事堂のすぐ近くには、皇居があります。
皇居は、もとは江戸城で、江戸時代につくられた石垣が多く残ります。
石垣に使われているたくさんの石は、どこで採石されたのでしょうか。

  • 早川石丁場
  • 生命の星・地球博物館の山下さん

そのひとつが、神奈川県小田原市です。
江戸時代に石を切り出したとされる場所を、神奈川県立 生命の星・地球博物館の山下浩之さんに案内してもらいました。
山道の橋の下に、当時の石切り場が残されていました。

山下さん 「このあたりは約30万年前に噴火した火山の溶岩がたくさん見られる場所です。石の種類は安山岩と呼ばれる石ですね。」

運べる大きさにまで切り出された石は、山を下り、江戸城にまで船で運ばれたのです。


アイコ 「昔だけじゃなくて、今でも火成岩が利用されているのを見つけることができるのよ。」

サワ 「なんだか見つけたら鑑定してしまいそう。わたしの住んでるマンションのロビーが、花こう岩なんだよね〜。」


それでは、次回もお楽しみに!

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