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物理基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、前年度の再放送です。

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物理基礎

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今回の学習

第40回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー

放射線と原子力 〜原子核のエネルギー〜

  • 物理基礎監修:東京都立八王子東高等学校教諭 野口 禎久
学習ポイント学習ポイント

放射線と原子力 〜原子核のエネルギー〜

  • 放射線と放射能
  • 知らない言葉がいっぱい

リコが新聞を読んでいると次のような記事が出てきましたが、よくわからない言葉がたくさん並んでいます。


原子力発電所で原子炉が急停止し核分裂の連鎖反応が止まりました。
所内の測定装置によると、1.2マイクロシーベルト毎時の放射線を観測しました。
また、水もれした冷却水から1リットル当たり2000ベクレルの放射能が検出され、調べたところ、半減期およそ30年のセシウム137が含まれていました。


※この記事はフィクションです



ノブナガ 「なるほど。これは少し、大変かもしれない。放射線が大量に出ている。」

リコ 「えっ本当!?どういう状況なの?」

ノブナガ 「リコにわかりやすく説明すると、放射能が大変ってことだよ。」

リコ 「……お兄ちゃん、全然わかってないでしょ。さっきは『放射線』って言ってたけど、今は『放射能』って言ったよ。」

ノブナガ 「あれ?そうだっけ?」

リコ 「そうだよ。ほかにも、この記事『マイクロシーベルト』『ベクレル』『半減期』『セシウム137』とか、聞いたことがない言葉がいっぱい!」

父 「ただいま。あれ、どうかしたの?」

リコ 「この新聞の記事なんだけど、内容が難しくてよくわからないの。」

父 「じゃあ、1つ1つ考えてみようか。」

放射線とは?
  • X線、γ線
  • α線やβ線、中性子線

父 「まずノブナガが混同していた『放射線』と『放射能』について考えていこう。」

リコ 「放射線って、電磁波のときにやったよね(第37回)。X線とか、γ(ガンマ)線とか!」


X線、γ線といった放射線は電磁波の一種です。
そのほかにも、粒子の流れであるα(アルファ)線やβ(ベータ)線、中性子線などもあります。

放射線には、物質中を通り抜ける性質である「透過性」衝突した相手の原子から電子をはじき飛ばしてイオン化する性質である「電離作用」があります。
放射線の利用例としては、X線はレントゲン検査、γ線は農作物の品種改良、α線は業務用の煙探知機などにも使われています。


父 「実は、この家の中でも放射線が飛んでいるんだよ!」

ノブナガ 「えっ!本当に?この辺りに?」

父 「じゃあ、見てみようか!」

放射線を観察してみよう
  • 霧箱
  • 放射線を観察

父 「これは霧箱といって、放射線を観察する装置だよ。ちょっと暗くして見てみようか。」

リコ 「長くて白い線が、ピュンピュンって、走ってる。飛行機雲みたいに跡ができているね。」

父 「これは、放射線の飛跡が見えているんだよ。色々な放射線が自然にも存在していることがわかるね。」

放射線の単位
  • シーベルト
  • 今の測定値

次に、放射線を測定する装置で、家の中の放射線の強さを数値でも見てみます。

放射線の強さはマイクロシーベルト毎時[μSv/h]という単位で表されます。
μというのは、100万分の1という意味です。
そしてSvは、放射線がどれくらい人に影響を与えるかを表しています。


父 「測定値はいまどれくらいかな?」

リコ 「うーん……0.057μSv/h。この数字って大丈夫な値なの?」

ノブナガ 「リコは心配性だな。さっきの記事で1.2μSv/h。それよりずっと低い値なんだから問題ないよ。」

リコ 「でも、どれくらいが安全な値かわからないじゃない。」

父 「気になるよね。じゃあ、この図を見てくれるかな。」

放射線による人体への影響例

さまざまな状況で人体が浴びる放射線の量を表した図です。

先ほどの記事のような原子炉で生成された放射線やレントゲンなど人為的なものによる「人工放射線」と、宇宙や空気や大地など自然にあるものから放出される「自然放射線」があります。

私たちが1年間に浴びる自然放射線量は、平均して1人当たり2.4mSv(世界平均。日本平均は2.1mSv)です。
マイクロに直すと、2400μSv(1年間)になります。



ノブナガ 「記事の原発事故は1.2μSv/h。」

父 「それを24時間365日に換算すると、だいたい11mSvになるね。」

リコ 「ということは、1年間に自然から浴びる量は2.4mSv、そのおよそ4倍の数値になるってことね。」

放射能とは?
  • 放射能

父 「次に『放射能』について考えてみよう。ノブナガ、どういう意味だと思う?」

ノブナガ 「う〜ん、『放射・能』だから放射線を出す能力的な……。」

父 「いいね。ノブナガが言うように、放射能とは放射性物質が放射線を出す能力のことなんだ。」

リコ 「待って、また新しい言葉が出てきた。放射性物質ってなに?」

父 「放射性物質とは、放射線を出す物質のことだね。その1つが、記事にあった『セシウム137』なんだ。」

原子とは?
元素周期表

「セシウム」とは、原子の種類の名前です。
元素の周期表を見ると、セシウムは55番目(1列6行目)にあります。


ノブナガ 「記事では『セシウム137』って書いてあったけど、どういう意味?」

父 「その137という数を理解するためには、原子の構造を確認する必要があるんだ。」

原子の構造
  • 原子の構造
  • ヘリウム原子

ヘリウム原子を例に、原子の構造を見てみます(左画像)。

原子は、原子核電子からできています。
そして原子核は、正の電荷を帯びた陽子と電荷を持たない中性子で構成されています。

ヘリウム原子の場合、陽子と中性子がそれぞれ2個あるので、右画像のように表記します。
2は陽子の数のことで、これを原子番号といいます。
一方、4は陽子の数と中性子の数を足したもので、質量数といいます。

  • セシウムの原子番号は55
  • セシウム133

リコ 「セシウムは、55番。」

ノブナガ 「つまり、陽子の数が55個。」

父 「そのとおり、セシウムは陽子の数が55個。中性子の数は自然界では78個だよ。」

リコ 「すると、質量数は陽子55と中性子78の合計になるんだから、133?」

父 「そのとおり。だからこの原子の名前は『セシウム133』になる。」

ノブナガ 「でも、『セシウム137』じゃないよ?」

セシウム137
  •  セシウム137

同じ種類の原子でも、中性子の数が違う原子があります。
セシウム137は人工的に作られたもので、質量数の137から陽子数の55を引くと中性子は82個になります。

セシウム137のような放射性物質が放射線を出す能力のことを数値で示すのが、ベクレル[Bq]という単位です。


ノブナガ 「あっ!『ベクレル』っていうわからない言葉が出てきた。」

放射線の単位
  • ベクレル
  • 2000Bqは1秒間に2000個変化しているという意味

父 「Bqというのは、『1秒間に何個の原子核が変化し放射線を出すか』ということを表しているんだ。」

リコ 「記事にあった『セシウム137が2000Bq』というのは、1秒間に2000個、変化しているって意味なのね。」

ノブナガ 「なるほどね。でもなんで原子核が変化するの?」

父 「セシウム137もそうだけど、ほかにウランやラジウムなど、中性子と陽子の数のバランスが悪い原子核は不安定なんだ。そこで、粒子や電磁波を放出して、より安定な原子核に変化していくんだ。このような現象を放射性崩壊といい、放射性崩壊をする原子核を放射性原子核というんだよ。」

放射線の透過性
  • 放射線の透過性

ノブナガ 「お父さん、さっき『放射線は物質を透過する性質がある』って言ってたけど、なんでもかんでも透過するの?」

父 「そういうわけでもないんだよ。放射線のうち代表的なα線、β線、γ線で考えてみるよ。」


α線は透過力が小さく、紙一枚でも止まってしまいます。
β線は紙は透過しますが、薄い金属板は透過できません。
γ線は透過力が非常に強く、紙や薄い金属板も透過しますが、鉛の厚い板は透過できません。


リコ 「放射線の種類によって、透過力は違うのね。レントゲン写真でX線を使うのも透過力が関係あるの?」

父 「透過する割合が違うんだ。同じ強さのX線を当てて、骨の部分でX線の減衰が強いので、骨がはっきり見えるというわけだ。」

ノブナガ 「なるほど。放射線をうまく利用しているんだね。」
   
父 「ただし、人体が多量の放射線を受けると、細胞の遺伝情報を担うDNAが傷つけられるなど、悪影響を及ぼすことがある。だから、不必要に放射線を浴びることはしてはいけないんだ。」

放射線の透過性を利用したゲーム
  • 格子状の箱に電池を入れる
  • 放射線測定器と放射性物質

父 「放射線の性質もわかったところで、その性質をうまく利用したゲームをしてみよう。」


お父さんが用意したのは4×4の格子状の箱です。
その中に電池を入れ、この電池の位置を当てるというゲームです。
出題の条件として、電池が1個の列と4個の列、そして0個の列を必ず作ります。
(縦横どちらにその列が作られるかはわかりません)

電池を入れ終えたら、見えないよう蓋をしてゲームの準備は完了です。


父 「これを当てるためには、先ほどの放射線を測定する装置と、バリウム133というγ線が出る放射性物質を使って測ってもらうよ。2人は協力して、放射線の性質をうまく使って個数を当ててください。」


※放射線教育用線源を利用しています

  • 電池をセットするお父さん
  • 不敵な笑みを浮かべる

ノブナガとリコに目隠しをしてもらい、お父さんが電池をセットします。
お父さんは電池をどこに置くのでしょうか。
不敵な笑みを浮かべて、何かたくらんでいるようですが……?

お父さんの準備も終わり、いよいよゲームスタート。
ノブナガとリコは、放射性物質と測定器を使いどのように電池の数を当てるのでしょうか。

  • 放射性物質と測定器で挟み込む
  • 一列ごとに放射線量を調べる

ノブナガ 「どうやって調べるかだよね……。」

リコ 「透過性があるから、格子の左側に放射性物質、右側に測定器を置いて計測すれば、電池が入っている所は、減衰して数値が低くなるんじゃない?」

ノブナガ 「そうか。じゃあ、1列ずつ試してみよう。」

リコ 「まず赤い列、0.184。次は黄色の列、0.128。さっきより数値が低いね。」

ノブナガ 「赤より黄色のほうが低いということは、電池が多いってことじゃない?」


残りの緑と青の列も同じように測定していきます。

  • 横の列の測定結果
  • 縦の列の測定結果

ノブナガ 「整理すると、緑が一番高くて、次に青と赤が似たような数値、黄色が一番低い。」

リコ 「今度は縦の列で同じように測れば、どのマスに入っているのかわかるよね?黄色い列が一番低い値なら、黄色い列の電池は4個。」


同じように縦の列を測定した結果が右の画像です。
みなさんも、ノブナガやリコと一緒に考えてみましょう。

改めてルールを確認すると、必ず電池が0個の列と1個の列、そして4個の列があります。
2人は、どこに電池があるのか導き出せたのでしょうか。

  • 2人が導き出した電池の配置
  • 順調に正解していく

ノブナガ 「お父さん、電池の配置はこうなりました!(左画像)」

父 「なるほどね。じゃあ赤の列から順番に答え合わせをしていこう!」


赤の列が2個、黄色の列が4個、緑の列が0個と順調に正解していき、最後は青の列です。

  • 答え合わせ
  • 紙の筒が入っている

リコ 「最後の青い列は、2個!」

ノブナガ 「……あれっ、これ何の紙?」

父 「紙の筒だよ。でも電池の数は合っていたね。」

リコ 「なんで紙なんか入れたの?」

父 「これは、CTスキャンの原理を模式的に表したゲームなんだ。色々な角度から放射線を当てて、体の中の様子を画像にするんだね。でもこの紙のように、見えないものだってあるかもしれない。それを2人に教えたかったんだ。」

リコ 「なるほど。でもこのゲーム、すごく頭の訓練になるね。」

核分裂と連鎖反応
  • 核分裂の連鎖反応

父 「さあ、あと記事でわからない言葉は何かな?」

リコ 「『核分裂の連鎖反応』、イマイチよくわからない。」


ウラン235のように陽子や中性子をたくさん持っている原子核は、中性子が当たると、2個に分裂してしまいます。
そのとき同時に大きなエネルギーを放出するものがあります。
これが核分裂です。

このとき、分裂した核が高速で飛び出すのと同時に中性子が2、3個飛び出し、ほかの原子核を次々と核分裂させていきます。
これが連鎖反応です。

原子力発電所の構造

原子力発電では、この核分裂を制御して発生したエネルギーを利用しています。
上の図は原子力発電所の構造です。
原子力発電は、ウランを核分裂させて熱エネルギーを得て、水を沸かし蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こします。
つまり、核分裂の連鎖反応を制御し、エネルギーを得て、発電しているのです。


ノブナガ 「核分裂を発電に利用しているってことなんだね。」

父 「そうだよ。でも、核分裂で生じた原子核が放射性原子核なので、その放射性廃棄物の処理のことをきちんと考える必要があるんだ。残っている放射性原子核の個数が、元の半分になるまでの時間を『半減期』といい、種類によってその値が異なる。たとえばセシウム137の半減期はおよそ30年なんだよ。」

  • お父さんのひと言
  • 1年間ありがとうございました!

リコ 「これでやっと新聞の記事を理解できた!」

ノブナガ 「わからないと、ただ怖いって思っちゃうもんね。」

リコ 「やみくもに怖がるんじゃなくて、知識を持つことが大切なんだね。」

ノブナガ 「そして、その知識を元にどう判断するのか。それが大事ってこと!」

父 「ノブナガ、リコ、いいこと言うじゃないか!」


〜お父さんのひと言〜

世界は90種類ほどの原子の組み合わせでできています。
この原子は、昔の星の中で生まれました。
この原子が生まれるときのエネルギーで、星は光っていたのです。
つまり、私たちは皆、かつて星として輝いていたのです。
宇宙から見れば、私たちの人生はほんの一瞬です。
でも、私たちはこの一瞬のうちに、わずか1.4リットルほどの脳の中で、広大な宇宙の空間と時間を理解しようとしています。
この脳が宇宙を再現しようとしているそのツールは、物理学です。
そんな見方のできる人生は楽しいと思いませんか?
そう、人生は楽しいんです!



1年間、ありがとうございました!

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