Eテレ 毎週 水曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、前年度の再放送です。
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第25回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー
母 「それにしても今年の防災訓練は、はりきったわね。」
リコ 「今年は地震体験車が来ていたからね。お母さんがキャーキャー言うから恥ずかしかったよ。」
母 「地震って、いつ来るかわからないから怖いよね!」
ノブナガ 「でもさ、緊急地震速報とかで、スマホとかが事前に教えてくれるよ。」
母 「そうなんだ。でもさ、どうして地震が来る前にそれがわかるんだろうね?」
父 「それはね、波の速さや表し方を知れば、緊急地震速報のことも理解できるはずだよ。」
リコ 「そう言えば、地震も波だったよね。」
父 「それじゃあね、これから波の伝わり方について学んでいこう!」
地震は、震源で振動が起こるとそれが遠くまで伝わって行くという、振動が伝わる現象です。
地震の波は実際には複雑ですが、ウエーブマシンで単純化して考えてみます。
物理基礎の第24回では、お父さんがストローを並べて作ったウエーブマシンで、波は振動の伝わりであるということを学びました。
左写真は、ウエーブマシンの動きを止めて写真にしたものです。
ストローの端を線でつないで示してあり、波の形になっていることがわかります。
この波の形をグラフにして表したものが右写真です。
波の最も高いところを「山」、最も低いところを「谷」と呼びます。
また、変位の最大値を「振幅」といい振動の大きさを表しています。
父 「波は連続しているけれど、その1個分はどう表せば良いと思う?」
ノブナガ 「この、山から山が波の1個分なんじゃないかな?」
リコ 「でも、谷から谷でもいいんじゃないの?」
父 「さあ、どうだろうね?ウエーブマシンの動きをよく見てみようか。」
ウエーブマシンにモーターで一定の振動を与え、ストローが上下に振動する様子を観察します。
各点での振動のタイミングは違いますが、同じタイミングで振動している点があります。
止めて見ると、谷と谷、また山と山でも一緒になり、タイミングが同じであることがわかります。
父 「2人とも正解だよ。山と山、あるいは谷と谷でも波1個分なんだ。この波1個分の距離を波長といって、λ (ラムダ)という記号で表すんだ。山から山、そして谷から谷、どちらも1波長、同じ長さになっているんだね。」
波長は、「山と山」「谷と谷」以外の場所でも、同じ長さになっています。
この点と点の間がなぜ波1個分かというと、これらの点は同じタイミングで振動しています。
つまり、波の1個分は、同じタイミングで動いている2点間の長さということになります。
ある1点の振動に注目して、通過した波を観察します。
1点が1回上下に動いて元に戻るまでの間に、その点を通過する波はちょうど波の1個分であり、その距離が波長λ になります。
リコ 「1回の振動で波1個分が出来るんだね。これで緊急地震速報の仕組みってわかるの?」
父 「いやいや、緊急地震速報を知るためにはね、波が伝わる速さも知らなければいけないんだ。地震の振動は、時間を掛けて伝わるものだろう?」
母 「地震って、こう震源からだんだん近づいて来るのよね。」
父 「じゃあね、もう1度ウエーブマシンの動きを見てみよう。」
ある点が上下に1回往復するのが、振動の1回分です。
1回振動するのに掛かる時間を周期といいます。
周期とは波を1個分作る時間を指し、単位は秒[s]で表します。
左の写真の波は、1秒間に1回振動しています。
つまり、周期は1秒です。
それでは、1秒間に2回振動したら、どうなるでしょうか(右写真)。
周期は、半分の0.5秒になります。
父 「今見た波を比べてみよう。上が周期1秒で、下が周期0.5秒だよ。何か気付くことはある?」
リコ 「周期1秒の波1個分の距離に、周期0.5秒の波は2つ入ってる。」
父 「周期1秒では1秒間に1個の波が出来て、周期0.5秒では2個波が出来ているね。1秒間で何回振動したかを表すのが振動数だ。単位はHz(ヘルツ)を使うんだよ。だから周期1秒の波は1Hz、0.5秒の波は2Hzになるんだ。」
周期と振動数の関係をまとめると、次のようになります。
f は振動数で、1秒間の振動の回数です。
T は周期で、1回振動する時間です。
「1秒間にf 回振動」したとき、周期T は1/f と表わされます。
また、f =1/T と書き直すこともできます。
母 「数式にすると、とたんにややこしくなるんだけど。」
父 「いやいや難しくないよ。たとえばね、1秒間に2回振動したらf が2になるでしょ?f が2だから、T =1/2になって、つまり0.5ってことだよね。じゃあ、1秒間に3回振動したら、周期はどうなる?」
母 「1秒間に3回だから、1個は1/3秒?それって、すごく当たり前のことなんじゃない!」
父 「そう、当たり前なんだよ。」
次に、波の伝わる速さについて考えていきます。
媒質のある点が1回振動する時間を、周期T とします。
そして、その間に波は1波長分移動し、その距離は波長λ です。
距離を時間で割れば波が伝わる速さが求まるので、求める波の速さv は、波長λ を時間T で割ることで求められます(右図)。
これを、ウエーブマシンを使って実際に求めてみます。
ウエーブマシンで作った2Hzの波の速さを求めてみましょう。
波長は約13cm、つまり0.13mです。
周期T は0.5秒です。
v =λ /T なので、この波の速さは0.26m/sです。
父 「1秒間に26cm進む波だったよね。これで、v =λ /Tの関係はわかったよね。ところがね、こういう式もあるんだな。v =f λ 。」
母 「これって、どういうこと?」
父 「じゃあね、実際に波の振動数と波長と、そして速さとの関係を考えてみようね。」
父 「まずは振動数から考えていこう。これはね、オシロスコープという、振動の様子を見る装置なんだ。ノブナガ、そのマイクに向かってしゃべってくれない?」
ノブナガ 「うん、わかった。いくよ。『物理ノブナガです。こんにちは』。」
母 「あ、面白い。声がなんか波みたいになってる。」
父 「これを使ってノブナガの声の振動数を求めてみようか。普段通りの声の高さで『あー』ってできるだけ長く言ってみて。……ちょっと測定してみようね。うん、140Hzくらいだね。」
リコ 「じゃあ、1秒間に140回振動しているってことだよね。」
父 「そうだね。」
父 「これが、ノブナガの声1波長分だよ!」
母 「長い!」
父 「空気中を伝わる140Hzのノブナガの声の1波長分。これは243cmあるんだ。分かりやすいように、簡単な波の形に表したよ。これが何個も連なって伝わって行くんだよ。」
同じタイミングで振動している2点間が、波長λ でした。
ノブナガの声のλ も、2点間の距離を調べて求めることができます。
父 「ところで、ノブナガの声の振動数はいくらだった?」
ノブナガ 「およそ140Hzだよね。」
父 「ということは、1秒間に140個の波が波源から出て行くということだね。そして、この243cmの波が1秒間で140個並ぶという意味なんだよ。1秒間に声、つまり音が進んでいく距離はどのくらいになるかね?」
リコ 「243cmだから2.43m×140は……。およそ340!これが1秒間に進む距離だから、秒速340mだ。」
ノブナガ 「音ってそんなに速いの?」
父 「そうなんだよ、気温などの条件によって多少違う事はあるんだけども、まあ空気中では大体それくらいなんだね。」
このように振動数f や波長λ がわかれば、波の速さはv =f λ でも求められます。
ノブナガの声の場合、振動数f は140Hzで、波長λ は2.43mです。
式に当てはめると140×2.43となり、速さv は340m/sとなります。
母 「これも実はとても単純な式だったのね。なんかλ とかf に惑わされちゃった。」
ノブナガ 「波の速さはわかったけど、これが緊急地震速報にどう関係してるの?」
父 「この前、地震の波にはP波とS波があるっていうことを教えたよね。」
リコ 「うん、P波が縦波でS波が横波だったよね。」
父 「この2つの波と、今日わかった波の速さがヒントになるんだよ。ノブナガ、ここから先は自分で調べてみたら?」
ノブナガ 「わかった!調べてくる!」
ノブナガは、緊急地震速報を発表している気象庁を訪れました。
気象庁 地震火山部の菅沼一成さんに話を伺います。
菅沼さん 「これは、ある地震のある場所で記録された地震波のグラフです。この始めの震幅の小さな部分はP波(Primary Wave)で縦波です。その後の震幅の大きな振動の部分、これはS波(Secondary Wave)で横波です。実はP波とS波では伝わる速さに違いがあるんです。」
地震が発生するとP波とS波が震源から広がります。
伝わる速度が速いのはP波ですが、揺れは弱い波です。
一方、S波は速度が遅く、揺れが強い波です。
地震による被害は、主に揺れが強いS波によってもたらされます。
P波とS波を見ることができる装置で、それぞれの波を観察してみました。
金属のおもりが等間隔でつり下げられ、その間はバネでつながっています。
1番端のおもりを、おもりの列の延長方向に引っ張って放せば、波の進行方向に対して縦に振動するP波(縦波)が出来ます。
おもりの列に対して垂直方向に引っ張って放せば、波の進行方向に対して横に振動するS波(横波)が出来ます。
斜め方向に引っ張ると、P波とS波を同時に作ることができます。
P波が先に到達し、まずおもりが縦方向に動きます。
そして、その後にS波とP波の2つの波が混ざり合った波が来ます。
菅沼さん 「この速さの違いを利用したのが、緊急地震速報なんです。」
地震が発生すると、震源に近い地震計で速度の速いP波を捉えます。
P波を捉えた地震計のデータは気象庁でただちに解析され、緊急地震速報として発表されます。
ノブナガ 「P波は約7km/s、S波が約4km/sで、P波の方が先に伝わる。この速さの違いを利用して、速報を出しているってことがわかった。」
リコ 「音が空気中を伝わる速さが340m/sだったから、地震の波って音よりも速く伝わるんだね。」
母 「なんか、あっという間にやって来ちゃうのね。でも、少なくてもこう……『来る!』っていう心構えは出来るわけだから、やっぱり速報って必要なのね。」
父 「気象庁ではね、いろいろな地点に地震計をたくさん配置して、それぞれの地点での振動の時間的変化を測定しているんだね。そのデータをね、ノブナガが貰ってきてくれたんだ。これは、ある地震が起きた時の地震波を震源地からの距離で並べてあるものだ。震源地から遠いほどP波からS波までの時間が長いことがわかるよね。このデータを使えば震源地の位置も計算することができるんだ。」
母 「それにしても、地震の波が伝わる速さの違いで速報を出したり、震源地を探ったりするって、人間って本当すごいね。」
〜お父さんのひと言〜
ノブナガの声の振動数は140Hz、波長は約2.4mでしたね。
ということは、2.4mの波が1秒間に140個も並ぶ。
この距離は340m、つまり、音は1秒間に340mも進むんですね。
ところが地震のS波はその音の速さの10倍。
P波になると20倍くらい、これはもう人工衛星の速さに近いんです。
ここでみなさんに、物理を理解するコツを教えましょう。
まず式を暗記してはいけません。
具体的な数値を式を使って表して、それを人に伝えてみましょう。
きっと、よくわかりますよ。
それでは、次回もお楽しみに!
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