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物理基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、前年度の再放送です。

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物理基礎

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今回の学習

第7回 第1編 物体の運動とエネルギー

投げられた物の運動 〜放物運動〜

  • 物理基礎監修:学習院女子中・高等科教頭 増渕 哲夫
学習ポイント学習ポイント

投げられた物の運動 〜放物運動〜

水平に投げられた物の運動
  • 放物線を描いて…
  • 物理家

野球部の試合を観に行ったリコは、その興奮が冷めないようです。


リコ 「4番でエースの先輩が、いいところで逆転ホームランを打ってね。真っ青な空に白いボールが放物線を描いて飛んでいったの。すごい感動しちゃった。」

父 「放物線には感動するよね。あれは美しい形だ。」

リコ 「そうなの。すごい剛速球を投げるんだよ。キャッチャーがいなかったらどこまでも飛んでいって、落ちないんじゃないかってくらい。」

ノブナガ 「オーバーだな。どんなに速く投げても、地球には重力があるんだからボールは落ちるに決まってるよ。」

リコ 「そりゃそうだけど、それくらい速いっていうことよ。」

父 「ちょっと待って。水平に投げた、速いボールと遅いボール。どちらが先に落ちると思う?」

リコ 「それは遅いボールでしょ。速いボールなら勢いがあるから、なかなか落ちないでしょ。」

ノブナガ 「そんなに変わらないんじゃないかな。水平に投げた場合なら、水平方向に速く飛んでいても、落ちやすさには関係ないんじゃないかな。」


さっそく実験で確かめてみます。

  • バネの伸びで力を調整できる
  • 速度に関わらずボールの高さは一定

ボールをバネの力で打ち出す投射装置で、高さ156.5cmの位置から水平に打ち出してみます。
ボールを打ち出す力は、バネの伸び具合で2段階に調節することができ、打ち出す速度が速い場合と遅い場合を比較します。

装置から打ち出されたボールを一定の時間ごとに止めてみると、水平方向に打ち出しても、両者とも曲線を描きながら次第に下に落ちていきます。

ボールの速さが異なる2つの映像を重ねて比べてみると、発射されてから同じ時間が経過した2つのボールの高さは、つねにほぼ同じです。
そのため、速いボールも遅いボールも、地面に落ちるのはほぼ同時でした。


母 「速く投げれば遠くには飛ぶけど、でも落ちるのは一緒なのね。」

  • 水平方向には一定の速さで運動している
  • ボールは常に高さが同じ

ボールの運動の水平方向に注目してみます(左図)。
速いボールは黄色の縦線、遅いボールの場合はピンク色の縦線が引かれており、どちらも等間隔で動いていることがわかります。
この実験ではほとんど空気抵抗も考えなくていいので、ほぼ水平方向に、それぞれ一定の速さで進んでいると言えます。


母 「だんだん勢いがなくなって遅くなりそうだけど、でも実際には、同じ速さで進んでいくってことよね。」


続いて、鉛直方向に注目してみます(右図)。
横線は一定時間間隔の位置を示しており、ボールが速く飛んだ場合も、遅く飛んだ場合もつねに高さが同じです。
鉛直方向は、どの場合も同じ運動をしているといえます。


ノブナガ 「それなら、ボールを真下に落した場合と比べたらどうなるの?」

母 「いや、そりゃいくらなんでも真下に落とした方がずっと速くなるでしょ。」

リコ 「うーん、自信がなくなってきた……。」

父 「じゃあ、これも実験してみよう。」

  • 真下に落とす
  • 自由落下

先ほどの実験と同じ条件で、ボールをそっと真下に落としてみます。
一定の時間ごとに止め、先ほどの実験の映像と重ねてみました。
そっと真下に落としたボールは、水平に打ち出したボールとつねにほとんど同じ高さになっています。
そのため、水平に投げたボールも、真下に落としたボールも、地面に落ちるのはほぼ同時でした。

真下に落としたボールの運動を見てみると、移動する距離が、一定時間ごとにどんどん広がっています。
このような運動は自由落下といい、重力による等加速度直線運動のことでした。
静かに放したボールと水平に打ち出したボールを比べると、高さがつねに同じになっています。
つまり、水平に投げ出された物体は、鉛直方向には自由落下、水平方向には等速直線運動をしています。


母 「つまり、一生懸命投げても、そのままポトっと落としても、落ちる時間は同じなんだ。」

鉛直に投げ上げた物の運動
  • 鉛直投げ上げ運動

ノブナガ 「それじゃあ、ボールを真上に投げたらどんな運動になるの?」

母 「真上に投げ上げるわけだから、ある程度の高さまで上がって、そのまま落ちる。」

リコ 「落ちてくるときは自由落下でしょ?」

ノブナガ 「上がっていくときは……、どうなるんだろう?」

父 「じゃあこれも、実験で見てみよう。」


物体を真上に投げることを、鉛直投げ上げ運動といいます。
リンゴを鉛直に投げ上げてどんな運動をするのか、0.1秒ごとに止めて見てみます。

リンゴは上に上がるにしたがって次第に遅くなり、やがて止まります。
そして次第に速くなりながら落ちてきます。

  • 上向きを正、下向きを負
  • 上がるとだんだん遅く、下がると速く

上に向かって運動をしている場合、速さは次第に遅くなっています。
上向きを正とすると、加速度は下向きになっているため、「負の加速度」となります。

投げ上げられたリンゴが一番上まで来ると、この後はどんどん速くなっています。
そのときの運動の向きは下向きで、この場合も加速度は「負の加速度」になっています。

同じ高さで見ると、ボールが上がるときも落ちるときも矢印の長さは同じなので、それぞれの瞬間の速さは同じです。
ただし、上昇しているときと落下しているときでは、矢印の向きは反対になります。

鉛直に投げ上げられた物体は、負の加速度の等加速度直線運動をしています。

  • 鉛直投げ上げ運動のv−tグラフ
  • 鉛直投げ上げ運動は等加速度直線運動をしている

父 「ところで、この運動を速度と時間の関係、つまりv−tグラフに表すと、どんなグラフになりそうかな?」

ノブナガ 「等加速度直線運動のv−tグラフは直線だったよね。」

リコ 「負の加速度だから……右下がり?」


最初の時間0のときは、初速度がvです(左図)。
1秒後には、そこから重力加速度gだけ減るので、v−gで、緑の矢印のようになります。
2秒後にはv−2gです。
ある瞬間vが0になり、その先はさらに−g、−2gと変化していきます。

左図の矢印の先を直線で結んだものが右図のグラフで、一定の傾きをもったv−tグラフになります。
傾きはマイナスなので、負の加速度です。

  • 放物線のグラフ

ノブナガ 「つまり、等加速度直線運動をしているってこと?」

父 「そういうことなんだ。今度は、高さをyとして縦軸に、そして横軸は時間にしてみたよ。するとグラフは山なりになるんだけれども、そこから最高点もわかってしまうということなんだね。」

  • 等加速度直線運動公式
  • 鉛直投げ上げ運動の式

等加速度直線運動では、速度と移動距離は左図の式で求められました。
鉛直投げ上げ運動も等加速度直線運動なので、この式を使って求められます。

ただし、重力加速度gが負の方向に働いているので、加速度aを−gに変えます(右図)。
速度vはv−gt、高さyはy=vt−(1/2)gtとなります。

  • グラフの形は放物線
  • 放物線

父 「ところで、この山なりのグラフの形、何だっけ?」

リコ 「放物線!」

父 「よくできました。このグラフの横軸は時間軸なんだけど、斜め上に投げ出した場合も水平方向には等速運動だから、横軸を水平の距離にしても、やはりこのような形になる。つまり放物線を描くわけだ。こういう運動を放物運動というんだよ。」

  • 放物運動 噴水
  • 放物運動 イルカ
  • 放物運動 カンガルー

実は、放物運動は身近な所にたくさんあります。
噴水の水や大海原を泳ぐイルカ、陸を跳ねるカンガルーも、放物運動をしています。

  • サッカーボールを蹴ると等速直線運動と鉛直投げ上げ運動
  • サッカーボールを蹴ると放物運動

サッカーボールを蹴り上げたときも放物運動をしています。

斜め上に飛び出す放物運動の場合、水平方向には等速直線運動をしています。
そして鉛直方向には鉛直投げ上げ運動をしています。

落ちる的をねらえ!
  • 射出装置
  • 黄色いボールを狙う

放物運動を利用した実験装置でゲームをしてみます。

机の上にあるのは、赤い球を打ち出す装置で、球を打ち出す角度も変えられます。
この装置でねらう的は、少し離れたところにある黄色いボールです。
黄色いボールが下に落ちるまでの間に、命中させるのがルールです。

  • 装置を下向きに調整
  • 装置を上向きに調整

的の下をねらったリコと、的の上をねらったノブナガは、ともに当てられずに失敗しました。
最後はお母さんの番になり、お父さんがある秘けつを教えます。

  • 見事成功!
  • 装置の先端にスイッチ

いざお母さんが挑戦してみると、見事に的のボールに命中!
お母さんは、お父さんのアドバイスにしたがって、的そのものを狙っていました。

実は、装置の先端にスイッチが付いていて、赤い球が飛び出す瞬間に的のボールを落下させるしかけになっていました。


父 「もし重力がなければ、球も的も落下しないので、球はまっすぐ進んで的に当たるね。重力があると、球は時間とともに落ちてくるんだけど、赤い球が的のところまで移動する時間に、的も同じだけ落ちるんだ。同じ時間には、2つとも同じ距離だけ落ちる。だから必ず当たるの!」

  • 的と球が落ちた距離はどの時間でも同じ_その1
  • 的と球が落ちた距離はどの時間でも同じ

この装置から打ち出した球と落下する的の運動を、一定の時間ごとに止めて見てみましょう(上図)。
発射台と的を赤い線で結ぶと、赤い球が落ちた距離は、どの時刻を見ても的が落ちた距離と同じになっています。

的をまっすぐにねらって球を打ち出し、それと同時に的が落ちれば、角度・高さ・距離が違っても百発百中で的に当たります。

  • お父さんのひと言
  • 次回もお楽しみに!

ノブナガ 「結局、放物運動するものは、初速度と打上げ角度がわかれば動きを全部計算できるってことだよね。リコもそれを計算して、先輩のホームランボールをキャッチすれば?」

リコ 「いいよ。そんなことは計算しなくていいの。」

母 「そうよ。何もかも計算できるのがいいとは限らないの。特に恋愛なんかでは、思いがけないことが起きるのが楽しいんだから。ねー、お父さん!」


〜お父さんのひと言〜

外野に上がったボールの落下点も落ちる時刻も、空気抵抗さえ考えなくてよければ正確に計算することができます。私は、この計算を美しいと感じています。
その一方で、風に散る花びら、これは放物運動とは違った美しさをもっていますよね。
どこに落ちるか、いつ落ちるのか、この分からないことも面白いことですよね。
私たちの未来は計算できません。
だから、誰の人生も貴重で美しく、そして面白いんです。



次回も、お楽しみに!

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