NHK高校講座

総合的な探究の時間

今回の学習

第1回

仕事と自分(1) 〜のんちゃんの場合〜

  • 番組監修:元・東京コミュニティースクール校長 市川 力
学習ポイント学習ポイント

仕事と自分(1) 〜のんちゃんの場合〜

探究的な学習とは?
  • 総合的な探究の時間

総合的な探究の時間、第1回です。
探究的な学習は、与えられたテーマから、生徒が自発的に「仮説」を立てるところから始まります。

そして、その仮説について「追究・調べて」、「表現・まとめる」ことで、新たな「仮説」が立ち上がります。
これを繰り返すことで、仮説が変化・発展し、考えが深まっていきます。
こうして身に付く「探究する力」は、あなたが社会に出てからの「生きる力」になります。

この学び方は「総合的な学習の時間」でも活用できます。

テーマ「仕事と自分」
  • のんちゃん
  • 市川力さん

今回、探究的な学習に取り組むのは、都内通信高校の1年生のんちゃん=B
そしてのんちゃんの伴走者、市川力(いちかわ・ちから)さん。
通称、おっちゃんです。

おっちゃんは何も教えず、語り合うだけ。
探究していくのは、のんちゃん自身です。

  • 仕事とは?
  • どんなこと頭に思い浮かんだ?

おっちゃん「今日考えたいことを言っちゃうよ。『仕事とは?』って言われた時、どんなことが頭に思い浮かんだ?」

のんちゃん「………難しい。」

のんちゃんの頭に思い浮かんだのは「責任感」「専門家」「やりがいがある」でした。

仮説@を立てる
  • 「仕事とは責任・専門家・やりがい・新しい人と出会える」だ
  • 仮説を明らかにするための「追究」

「仕事とは何か?」自分なりの考えを書いてみます。

のんちゃん「『仕事とは責任・専門家・やりがい・新しい人と出会える』だ。」

「仕事とは何か?」という問いに対して、のんちゃんの「仮説」が立ちました。
これから、この仮説を明らかにするための「追究」が始まります。

仮説@を追究する
  • 発想が飛んじゃってもいいので。夢に近いものもあっていいから。
  • もうちょっとピアノが弾けるようになりたい

おっちゃん「のんちゃんは仕事をしたいですか?」

のんちゃん「……はい。人それぞれあると思うんですけど、共通するのは生活していくため。」

おっちゃん「そうだよね。どんなことだったら(仕事で)してみたい?」

のんちゃん「自分のできることをしたいというか…。」

おっちゃん「“こんなことを実はしてみたいんだよね”みたいな、夢に近いものもあっていいから。」

のんちゃん「もうちょっとピアノが弾けるようになりたい。音楽が好きというか…、癒しとかがあると思って。」

おっちゃん「癒し、なるほどね。」

  • 好き≠仕事にできるのか?さらに「追究」する
  • 「音楽」「仕事」で検索すると、いろいろな仕事がヒットした

好き≠仕事にできるのか?さらに「追究」していきます。

おっちゃん「なにを調べる?

のんちゃんは、好きな音楽に関連する仕事をスマホで調べ始めました。
「音楽」「仕事」で検索すると、いろいろな仕事がヒットしました。

その中で、のんちゃんがやってみたいと思ったのは「舞台・特殊効果」。
でも、おっちゃんはのんちゃんの口から出てきた「癒し」という言葉が気になります。

おっちゃん「『音楽』『癒し』『仕事』にすると、検索結果が変わるか確かめたいんだけど。」

するとヒットしたのは「音楽療法」。
のんちゃんは音楽療法にも関心が出てきたようです。
おっちゃんに「なんで?」と聞かれたのんちゃん。

のんちゃん「なんかいいんじゃないかなって。」

おっちゃん「それ、すごく重要。」

仮説@を表現する
  • 仕事とは発見
  • 新たな仮説を追究していく

ここまで追究してきたことを「表現」してみます。

のんちゃん「『仕事とは発見』
仕事について考えたことで、仕事にも種類があることが見つかりました。」

最初の「仮説」を「追究」したことで、のんちゃんの「仮説」は変化し、新たな「仮説」が立ち上がりました。
次は、この仮説を「追究」していきます。

仮説Aを追究する
  • のんちゃんが調べてきた資料
  • 図書館のレファレンスサービス

のんちゃんは、図書館にも出かけて音楽療法の仕事について、もっと詳しく調べてきました。
図書館ではレファレンスをしてもらったといいます。

おっちゃん「レファレンスするってことは、たぶん図書館の人に何か聞いたんだよね?どんなふうに聞いたの?」

のんちゃん「音楽療法とかの仕事について書いてある本はありますかって。」

  • 佐々木和佳さん
  • 実際に見学に行く

見つけた本に、次の追究につながる情報がありました。
音楽療法士の佐々木和佳(わか)さんです。
のんちゃんはこの人に興味をもちました。
ただ、本を読んでも「まだまだ分かっていない」といいます。

おっちゃん「どうやって調べる?

のんちゃん「実際に見学に行く。音楽療法をみなさんでしている所に。」

  • 音楽療法について、佐々木和佳先生に聞いてみたい
  • 佐々木先生に会うのは無理なのだろうか

電話で佐々木先生にコンタクトを取ることにした、のんちゃん。
事前に話すことを、ノートにまとめておきます。

まずは佐々木先生が講師をしている大学に問い合わせをします。
ですが、簡単に連絡先は教えてもらえません。

佐々木先生が所属する学会や、音楽療法を行っている介護老人保険施設にも電話をしてみますが、なかなか佐々木先生本人にはたどりつけず…。
佐々木先生に会うのは無理なのでしょうか?

おっちゃん「今、かけてみてどんな感じがした?アポを取ってみて。」

のんちゃん「ちょっとホッとしました。」

仮説Aを表現する
  • 仕事とはつながり
  • 仕事とはつながり また新たな「仮説」が立ち上がった

仮説@、仮説Aと、ここまで追究してきたことを「表現」してみます。

のんちゃん「『仕事とは、つながり』
いろいろな人とつないでもらって、調べることができたので。」

2つめの「仮説」を「追究」したことで、のんちゃんの「仮説」は変化し、また新たな「仮説」が立ち上がりました。
次は、この仮説を「追究」していきます。

仮説Bを追究する
  • みなさんと信頼関係を築いていくのかを聞きたい
  • 音楽療法士に会ってインタビューする

「つながり」は予期せぬ結果を生みます。
後日、電話をした介護老人保険施設から、佐々木和佳先生が会ってくださるという連絡がありました。

のんちゃん「音楽療法をする時に、どういうふうにみなさんと信頼関係を築いていくのかっていうのを、ぜひお聞きしたいです。」

  • 佐々木和佳さん
  • 音楽療法をされていく中で、どうやって信頼関係をみなさんと築いていきますか?

のんちゃん「今日はお聞きしたいことがあります。音楽療法士とは、どういう仕事ですか?」

佐々木さん「障害や病気をもっている方の健康性を高めることであったり、その方がその人らしく過ごせために、音楽を使って関わらせていただく仕事です。対象となる方の笑顔が出たり、その方のうれしいとか楽しいとかいう言葉を聞いた時は、とてもやりがいを感じています。」

のんちゃん「音楽療法をされていく中で、どうやって信頼関係をみなさんと築いていきますか?」

佐々木さん「認知症の進行が進んでいる方などの重症度の高い方の場合ですと、言語でのコミュニケーションが難しくなっている方もいらっしゃるので、そういう方とはアイコンタクトであったり、身振りとか動作などの非言語的な言葉を使わない関わりなどで、コミュニケーションを取っています。言葉で会話できる方とは、言葉でお話をしてコミュニケーションを取っています。」

  • 音楽療法を見学する
  • 音楽療法の様子

この介護老人保健施設では、ケアサービスの一環として音楽療法を取り入れています。
佐々木先生は、ピアノを弾きながら認知症のお年寄りといっしょに懐かしい歌を歌ったり、楽しく会話しながら、心も体も癒していきました。

のんちゃん「やっぱり、実際に参加されている方の顔、表情とかが生き生きされているのが印象に残りました。よかったです。」

  • 音楽をみんなで楽しむ時間というのが、すごく違う時間だった

おっちゃんに、今回の追究の報告をします。

実際に音楽療法の現場を見られたのがよかったという、のんちゃん。
自分でも音楽療法士の仕事をやってみたいと感じたようです。

のんちゃん「音楽をみんなで楽しむ時間というのが、すごく…、なんか違う時間だったなと思ったので。」

  • 仕事とは時間をかけてつくられていくものだ

ここまで追究してきたことを「表現」してみます。

のんちゃん「『仕事とは時間をかけてつくられていくものだ』
(佐々木先生も)みなさんを観察するとか、いろんなことが(最初から)できたわけではなくて、時間がかかってできたとおっしゃっていたので。」

のんちゃんの探究学習・振り返り
  • 仮説1
  • 仮説2

それでは今回、のんちゃんが探究的な学習をしてきたプロセスを振り返ってみましょう。

最初にのんちゃんは、「仕事とは責任、専門家、やりがい、新しい人と出会える」という仮説を立てました。
そして、好きな音楽とつながる仕事がいろいろあることを発見しました。

その結果、「仕事とは発見」という新たな仮説が立ち上がります。

この仮説をさらに追究するために、いちばん興味をもった音楽療法の仕事について調べます。
アポ取りにもチャレンジしたのんちゃんは、音楽療法に関わる人や場所とつながります。

  • 仮説3
  • 仮説4

その結果、「仕事とはつながり」という新たな仮説が立ち上がります。

この仮説をさらに追究するために、音楽療法士の先生にインタビューをし、音楽療法の見学もしました。

その結果、「仕事とは時間をかけてつくられていくものだ」という新たな仮説が立ち上がりました。

  • のんちゃんのレポート2
  • 仕事に就くまでもすごく勉強が必要

のんちゃんが今回の探究的な学習を「表現」したのが、このレポートです。
これを見ると、のんちゃんの探究的な学習はまだまだ続いていきそうです。


のんちゃん「心理学や福祉、医学についても調べたいです。実際にやってみたいことは、オープンキャンパスに行くことです。」

のんちゃん「仕事に就くまでも、すごく勉強が必要だけれど、仕事に就いてからも常に勉強し続けることが続いていくという…、ってことですかね。」


それでは次回もお楽しみに!

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