NHK高校講座

社会と情報

今回の学習

第20回 情報システムと人間

これからのネット社会

  • 日本大学教授 中橋 雄
学習ポイント学習ポイント

これからのネット社会

  • 緑川光さん
  • 松田好花さん

第20回のテーマは「これからのネット社会」。
司会は緑川光さん、一緒に学んでいくのは日向坂46の松田好花さんです。

緑川さん 「『メディアの意味と特性を理解し、情報を読み取ったり、発信したりする力』のことをなんていうでしょうか?」

松田さん 「メディアリテラシー。めっちゃ覚えています。」

緑川さん 「では、今まで学んできた中で、情報との向き合い方をテーマにした回を振り返ってみましょう。」

  • 第2回どこまで信じる?ネット情報
  • 人工知能が問題のある箇所を見つけ出す

2016年、熊本地震が発生したときに「動物園からライオンが逃げた」という、うその投稿がありました。
インターネットに出回っている情報は、そのまま信じていいかどうか、見極めることが大切です(第2回)。

そこで、インターネット上の情報を監視している会社では、人工知能が対象サイトを巡回し、文字や動画、画像で問題のある箇所を見つけ出し(画像・右)、さらに人がチェックすることで、正しいかどうかを見極めています。

情報が信用できるか見抜くコツは、情報の発信元を探ること、複数のメディアを確認すること、そして文章の表現に注目すること。
どういう背景でその情報を発信しているのかを、しっかり考えることが大切です。

  • インターネットの登場

第10回では、メディアの発達に伴う社会の仕組みの変化について学びました。
インターネットの登場によって、消費者は興味がある商品を自らネットで検索。
比較サイトやブログなどを使ってじっくり検討する、という行動をとるようになりました(画像)。

さらにSNSが急速に普及すると、それにひもづいた情報がSNSのユーザーのもとへ、次々と入ってくるようになります。
今やSNSによる広告が主流になり、商品の情報や購入の案内など、情報が絶え間なく入ってくるようになりました。

  • レコメンド機能
  • cookieクッキー

また、インターネットのアクセス記録を利用した広告も増加しています。
見たwebページの内容と近い商品を紹介したり、ほかの人が買っている商品などをおすすめの商品として提案してくれたりする、レコメンド機能も広告の主流のひとつになっています(画像・左)。
それを可能にしているのが、クッキーという機能です(画像・右)。
クッキーによって、ユーザーは、前回の情報を活かしたサービスを受け取ることができます。

  • 目や鼻など顔の特徴を登録データと照らし合わせて認証する
  • 顔データにひもづけされたクレジットカード情報を使って決済

生体認証のひとつ、顔認証システム。
目や鼻など、顔の特徴を登録データと照らし合わせ、認証されれば、ドアが自動で開きます。
店で商品を買うときも、顔データにひもづけされたクレジットカード情報を使って、即座に決済終了です。

  • ひとつの端末で操作できる
  • ネットで選んだレシピの情報をIHコンロに送る

第16回では、最新のIoT(Internet of Things)、モノのインターネットを紹介しました。

この家では照明器具やエアコンなど、さまざまな設備がWiFiネットワークでつながり、ひとつの端末で操作できます(画像・左)。
時間や状況に応じて自動で操作したり、複数の設備を連動させたりすることも可能です。

さらに、ネットで選んだレシピの情報をIHコンロに送ると、調理時間や火力などをコントロールしてくれることも可能になってきます(画像・右)。

家の機能がすべてスマホでコントロールできる、そんな日がくるかもしれませんね。

フィルターバブルとは
  • 中橋雄先生
  • フィルターバブルのイメージ

今回は中橋雄先生に教わります。

中橋先生 「今回は、情報化による社会の変化について考えたいと思います。おふたりは、フィルターバブルっていう言葉、ご存じですか?」

インターネット上には、ありとあらゆる情報があふれています。
その中で、例えば「あなた」。
日々、検索エンジンを使って情報を得たり、購入サイトで買い物をしたり、ネットでニュースを見たりしています。
つまり、あなたはネットから得ている情報をすべて、このようなネットサービスを通して得ているのです。

こうしたサービスでは、利用者が求める情報をコンピュータが予測して、個別に提供する技術が使われています。
こうして、コンピュータが選んだ特定の情報があなたを「泡」のように包みこむような現象が生じます。
これを、フィルターバブルといいます。
コンピュータが、あなたの好みに合わないと判断した情報には、あなたは知らないうちに、触れる機会がなくなってしまうという状況になるのです。

  • 私の好みの広告がよく出てくると思った

緑川さん 「知らず知らずのうちに、こうなっちゃっているってことですか?

中橋先生 「はい。例えば、自分がおすすめされたニュースが、ほかの人の画面に表示されているとは限らないんです。利用者は、自分の画面に出てくるものしか見ていないので、ほかの人と違う結果を見ていることに、なかなか気づけないと思うんですね。」

  • 思い込みを疑い自分とは相いれない人々の議論にも耳を傾ける

中橋先生 「自分にとって都合のよい情報ばかりを見ていると、どうなってしまうと思いますか?」

松田さん 「客観的に見れないというか、情報が絞られ過ぎてしまうのかなと。」

中橋先生 「そうですよね。偏った情報になってしまうってことはあるかなと思います。
欲しい情報を推測して提供してくれる機能はすごく便利ですよね。だけど、本来であれば得られた情報が得られなくなってしまうということがあるんです。
多様な考えがあるはずなのに、自分の考えは世の中の多数派の意見だと誤解してしまうこともあるかもしれません。
そうしたことから、社会の中で孤立してしまったり、世の中に対する認識が歪んでしまったりするような危険性っていうのが指摘されているんです。」

緑川さん 「どんなスタンスでネット情報に取り組んでいけばいいんですか?」

中橋先生 「自分の思い込みというのを疑っていくということが必要になります。自分とは相いれない人々の議論にも、耳を傾けていくことが重要だと思います。」

緑川さん 「なんだかんだで、生身の人間関係と同じですよね。」

ディジタルデバイド 情報格差
  • ディジタルデバイドが起きている

ネットなどを使って膨大な情報に囲まれている一方、さまざまな理由で最新の情報が届かない人たちもいます。
私たちの日常生活は、コンピュータや通信ネットワークを活用することで、より豊かで便利になってきています。
しかし、なんらかの理由により情報技術の恩恵を受けられない人々は、社会から疎外され、その差は情報化が進めば進むほど広がってきています。

ディジタル化されたサービスにアクセスできるかできないかの格差のことをディジタルデバイド(情報格差)といいます。

現在のディジタルデバイドは、高齢者など、コンピュータなどの操作を覚えるのが困難な人や、障害によって情報機器を扱えない人、貧困のため情報機器の購入が困難な人、通信インフラが都心に比べて整っていない地方に住む人々などに起きています(画像)。

誰もが情報化社会の恩恵を受けることができるために、ディジタルデバイドの解消方法が求められています。

情報格差をなくすために
  • 市役所などで自由に使えるようにする

緑川さん 「こういった格差をなくすためには、どうしたらいいと思いますか?」

松田さん 「パソコンだったりを買えないのであれば、図書館とか、誰でも自由に使えるようにしたり。市役所とかに行けば自由に使えるとか、そういうのがあれば、ちょっとずつなくしていけるのではないかなって思います。」

中橋先生 「いいアイデアですね。やっぱり情報技術を使いこなせる人が、そうでもない人をサポートしていってあげられるような、そんな環境を整えていくことが重要だと思います。」

情報技術を使って未来への挑戦
  • 全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト
  • ロボットで送電線を撮影、ディープラーニングで解析する

2019年4月、全国から選ばれた高等専門学校の学生たちが、「ものづくりの技術とAI」を活用した作品をプレゼン形式で発表しました。

武智さん 「それでは送電線点検ロボットについて紹介させていただきます。送電線は、私たちの生活に欠かせないインフラのひとつです。
現在行われている送電線の点検方法として、人による目視点検があります。しかし、時間がかかることや労働災害のリスクがあるといった欠点があります。
これらの問題点を解決するために、私たちは新しい点検方法を提案します。
その方法は、ロボットで送電線を撮影し、その撮影されたデータをAI、ディープラーニングで解析するという方法です。(画像・右)」

  • AIを搭載したロボットで送電線を自動的に点検
  • 正常な状態をAIに覚えさせ異常箇所を検出

この学生たちは、AIを搭載したロボットで送電線を自動的に点検しようと考えました。
実際に送電線を使った実験が地元の電力会社と共同で進められています。
正確に送電線を点検するために、正常な状態をAIに覚えさせ、異常箇所を検出する方法を開発。
実に、90%以上のデータの信頼度が出ています。

  • プレラボチーム
  • 複数のメータを1台のカメラで読み取る装置

続いて、新潟県にある長岡工業高等専門学校。
ここに、AIの利点をフルに活用して、地元の産業に貢献しようとしている学生たちがいました。

複数のメータを1台のカメラで読み取る装置です(画像・右)。
この地域には、古くから金物などを製造している工場がたくさんあります。
工場を見学する中で、学生たちは働く人たちの苦労や悩みを目の当たりにしました。

工場には、温度や湿度などを計測するさまざまなメータがあります。
それぞれ単位が違うこともあれば、形もさまざま。
夏場には40℃を超える暑さの中、メータを見て細かくデータをとることは、大きな負担です。

「メータの点検を楽にしたい」という要望に応えるために、AIの活用を考えました。

  • 可能な限り多くのデータを取りたい
  • METERAIメテライ

開発メンバーは、地元の学生とモンゴルからの留学生たち。

常にデータを得るために、カメラでメータを読み取り、そのデータをコンピュータにWIFIネットワークを使って転送。
それをAIが分析し、数値化します。
メータとAIを組み合わせて、METERAI(メテライ)と名付けました。

  • メータの画像を使ってAIに学習させている

では、どうやって、AIにメータの読み取りを学習させているのでしょうか。

オドンチメドさん 「画像をよく見ると、角度が動いているのがわかると思うんですけど、この角度の特徴をAIにわからせて、『何度ですか』みたいな。そういうふうに教えています。」

わずかな角度の違いも読み取る。
そして、どんなメータも読み取れるように、さまざまな種類のメータをAIに学習させます。

  • カメラを入れるケースも自作

一方、誰でも使えるようなアプリも開発中です。
カメラを入れるケースも3Dプリンターを使って、自分たちで作りました。

星野さん 「工場に見学に行って、『夏は40℃を余裕で超える』みたいな話を聞いて。そういう企業の課題とかを解決して、ちょっとでも楽させてあげられたらいいなって。問題を解決できたらいいなと思います。」

AIを活用した、学生たちの思いが込められた新技術。
今、導入が本格的に検討されています。

  • コンピュータに何を学ばせるかが重要

中橋先生 「今の2つの例は、AIを使った技術っていうのを応用していたわけです。AIって、コンピュータに何を学ばせるかということがすごく重要になってくるんですけど、アイデア次第でいろんな課題を解決できるんですよね。柔軟な頭を使って、斬新なアイデアをどんどん出していくってことが、重要かなと思います。

社会と情報を学んで
  • 望ましい社会を目指して学び続けることが重要

中橋先生 「情報技術っていうのは、これからも進化し続けるということがあります。知らず知らずのうちに、社会が悪い方向に行ってしまわないか。それは怖いことなので、気をつけていかなければなりません。
望ましい社会を目指して、学び続けていくことが重要だと思います。」


1年間、ありがとうございました!

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