NHK高校講座

書道T

今回の学習

第10回 漢字の書

日本の書のパイオニア 〜空海「風信帖」〜

  • 書道監修:横浜国立大学教授 青山 浩之
学習ポイント学習ポイント

日本の書のパイオニア 〜空海「風信帖」〜

  • 皆藤愛子さん
  • 生徒のみんな

MCは皆藤愛子さん。
そして今回みなさんと一緒に学習する高校生は、
黒木うららさん、下国歩夢くん、古橋舞悠さんの3人です!

みなさん「弘法も筆の誤り」ということわざを聞いたことがありますか?
これは、達人でも油断すると間違えてしまうことがある、という意味です。
ここで出てくる弘法とは弘法大師(空海)のことです。
今回は空海の書をお手本にして行書を学びましょう!

  • 風信帖
  • 空海が最澄に宛てた手紙

風信帖は、平安時代の初期、日本を代表する僧侶だった空海が最澄に宛てた手紙です。
遣唐使の一員として中国に渡った空海は、当時書の最高峰と言われていた王羲之をはじめとして、先端の中国文化を学びました。
風信帖も中国の文化を取り入れ、堂々とした行書で書かれているのが特徴です。

  • 二人の書を比べてみよう
  • 歩夢くん

最澄が返信した手紙も残っています。
2人の書いた手紙を比べてみると、
空海の書には勢いがあり、最澄の方が落ち着いた書という印象を受けませんか?
ちなみに、最澄も達筆で、とても真面目な人柄だったと言われています。

達人に聞こう
  • 青山浩之先生
  • 空海の書には王羲之の影響が見受けられる

ここで、「達人に聞こう!」のコーナーです。
今回の達人・青山浩之先生に風信帖のポイントを教えていただきました。

空海の書には王羲之の影響が見受けられます。

  • 「風」や「恵」などの字が特に似ている
  • 「妙」という字は曲線で軽やかに書かれている

風信帖(空海)と蘭亭序(王羲之)を比べてみると、「風」や「恵」などの字が特に似ています。
これらの文字は骨格がしっかりしているのが特徴で、当時の中国でよく使われていたため唐様(からよう)とよばれています。
ただし、あまり似ていない文字もあります。
例えば、空海の「妙」という字は曲線で軽やかに書かれていて、空海の豊かな表現力が感じられます。

  • 「風」という字は、力強さと直線的な線がポイント
  • 先生と談笑中!

風信帖の中から、先生に「風雲」という字を書いてもらいました。
「風」という字は、力強さと直線的な線がポイントです。
次の画へと筆をつなげる意識を持ちながら、筆は上下にも動かすのが書き方の特徴です。

風信帖の臨書
  • 臨書に挑戦
  • 風信帖の臨書

生徒の3人も風信帖の臨書に挑戦!
みんな、だいぶ特徴がつかめたようですね☆

みんなの書
  • 築地市場で働くみなさんに書に挑戦してもらいました
  • 築地市場で働くみなさんに書に挑戦してもらいました

誰でも書のアーティスト☆
今回は、東京都立中央区にある築地市場で働くみなさんに書に挑戦してもらいました!

三筆 平安の書家
  • 空海、嵯峨天皇、橘逸勢
  • 三人の書

平安時代初期に書の名人といわれた空海、嵯峨天皇、橘逸勢(たちばなのはやなり)の3人のことを三筆とよんでいます。
空海と橘逸勢は同じ時期に遣唐使として唐へ渡り、空海は仏教や書を、橘逸勢は書や芸術を学びました。
当時最先端の唐の文化をたくさん吸収した2人が帰国した後に即位したのが嵯峨天皇でした。
嵯峨天皇は空海が学んだ最新の仏教を広めるため、空海を援助しました。

こうして中国の書を身につけた3人の書を見ると、中国の書の模倣だけではなく、独自の柔らかい表現も取り入れており、当時の日本の書のレベルの高さが感じられます。
この後、平安時代の中頃になると、日本独自の書が発達していきます。
三筆の書がその礎をつくったのです。

紙の種類
  • 全紙
  • 全紙の2分の1のサイズの紙を半切(はんせつ)

上の左図の赤い線で囲ったサイズの紙を全紙(ぜんし)といいます。
そして、全紙の4分の1のサイズの紙を聯(れん)、残りの4分の3のサイズの紙を聯落(れんおち)といいます。
また、全紙の2分の1のサイズの紙を半切(はんせつ)といいます。

紙の大きさに適した表現のあり方を考えることも大切です。
また、紙によって厚さや書き心地、にじみやすさなども違ってきますから、その点も考慮しましょう!

半切の書に挑戦
  • 風信雲書 自天翔臨 披之閲之 如掲雲霧
  • 先生のお手本

今回は、生徒のみなさんに半切に風信帖の最初の2行を書いてもらいます。
「風信雲書 自天翔臨 披之閲之 如掲雲霧」
これは
「あなたからの手紙が天から舞い降りてきました。それを開いて読むと、雲や霧が晴れる思いがします。」
という意味です。

最初に、青山先生に見本を見せてもらいました!
姿勢に気をつけ、背筋を伸ばして体全体を使って書きましょう。
文字は全体のバランスを見ながら大きさを整えます。
半切を書くときに大切なのは文字のつながりです。
一度墨をつけたら何文字か続けて書ききるようにしましょう。

  • 生徒のみんなも臨書中!
  • 完成!

生徒のみなさんが書いた作品がこちらです☆
半紙では表現しきれない、書の流れを意識して書くことができました!

  • 次回もお楽しみに〜

次回もお楽しみに〜☆

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