NHK高校講座

物理基礎

今回の学習

第22回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー

熱と仕事の関係を調べる 〜熱と仕事〜

  • 物理基礎監修:豊昭学園豊島学院高等学校教諭 大津 豊隆
学習ポイント学習ポイント

熱と仕事の関係を調べる 〜熱と仕事〜

  • ビー玉スターリングエンジン
  • 冷蔵庫なのにどうして熱?

お父さんがリコに見せているのは「ビー玉スターリングエンジン」です。


リコ 「これって、どんなしくみで動いているの?」

父 「装置の中に空気を密閉しておいて、その空気を加熱したり、冷却したりして、膨張や収縮をさせて、熱を運動エネルギーとして取り出しているんだ。」

リコ 「ふ〜ん。」

母 「ねえ、どうしよう、なんか冷蔵庫壊れちゃったみたい!それにほら、氷も溶けちゃった〜。お父さんなんとかして、直して冷蔵庫。」

父 「じゃあ、ちょっとモーターの調子でも見てみようか。」

母 「大丈夫?」

父 「大丈夫。しくみがわかっているから大丈夫だよ。」

母 「しくみ?そういえば、冷蔵庫ってどうして冷えるのかしらね?」

父 「いい質問だよ。じゃあ、今日は冷蔵庫の冷えるしくみを知るために『熱機関』について調べてみようか。」

母 「熱機関?冷蔵庫なのにどうして“熱”なの?」

父 「冷蔵庫はね、熱と仕事の関係を上手に使った装置だから、熱機関のことがわかれば、冷蔵庫のしくみもわかると思うよ。」

熱機関
  • バイクのエンジンも熱機関
  • エンジンのしくみ

ノブナガ 「ただいま〜。」

母 「お帰り。ツーリング、どうだった?」

ノブナガ 「今日は渋滞もなくて快適だったよ。今度はもっと遠くに行きたいなあ〜。」

父 「そうそう、ノブナガの大好きなバイクのエンジン。これも、熱を仕事に変える熱機関なんだね。」

ノブナガ 「熱機関?何の話?」

リコ 「今日は、熱機関なの。」

父 「ノブナガ、エンジンのしくみなら説明できるでしょ。ほら、これを使って説明してごらん。」

ノブナガ 「え〜っと、エンジンは空気と燃料を一緒に混ぜて、そこに火をつけて爆発させて仕事をしているんだよね。」

父 「そう、それが熱機関だね。エンジンは熱を仕事にしているんだよ。でも、逆に仕事が熱を生む場合もあるんだよ。」

母 「仕事が、熱を生む……?」

父 「じゃあ、こんな実験をやってみようか。」

仕事が熱を生む
  • ガラス管の中には紙
  • ピストンを勢い良く押すとどうなる?

ガラス管の中に小さく切った紙が入れてあります。
このガラス管にピストンをはめ、勢い良く押すと、中の空気が圧縮されます。
そのときに、中の紙はどうなるでしょうか。

  • ピストンを押すと中の紙は燃える
  • 内部エネルギー

安全のため、ガラス管をケースの中に入れてピストンを押します。
勢い良くピストンを押すと、ガラス管の中の紙が燃えました。

ライターなどの着火装置なしに、なぜ紙が燃えるほど温度が上がったのでしょうか。

ピストンを使って気体を圧縮すると、その仕事によって、中の気体の原子や分子が激しく運動するようになります。
そのため、熱を加えなくても、ガラス管内の気体の温度が上がったのでした。

物理基礎の第20回で行った実験では、手回し発電機を速く回すことでシリンダーの中にある空気分子のモデルが激しく飛び跳ね、温度を表す目印が上昇しました。
実験では、温度が高いものほど分子が激しく運動する様子が見られました。


父 「気体をつくっている原子や分子は、熱運動による運動エネルギーの他にも、お互いが引き合っている位置エネルギーなども含まれているんだよね。それらを全部合わせた総和を『内部エネルギー』というんだ。」

温度を下げるには?
  • 温度を下げるには分子運動の激しさを小さくする?
  • バントの構え方

父 「じゃあ、温度を下げるためにはどうすればいいと思う?」

ノブナガ 「温度を下げるには、分子運動の激しさを小さくすればいいんじゃないかな?」

母 「なら、分子運動の激しさを小さくするにはどうすればいいの?」

父 「野球が大好きなリコちゃん。バントをするときには、どうする?」

リコ 「ん、バント?そうね、こうやって腰のあたりにバットを構えて、ボールが来たらバットを引いて、ボールの勢いを小さくするかな。」

父 「そうだよね。じゃあ、実際に実験してみよう。」

  • ボールの速さは当たった後も変わらない
  • バットを引くとボールは止まる

リコがバントの構えでバットを持ちます。
一方、ボールは振り子のように吊り下げられており、お父さんが手を離すとバットに当たるようになっています。

最初はバットを動かさず、ただボールを当てます(左写真)。
ボールがバットに当たる前の速さと、当たった後の速さは、あまり変わりません。

続いて、バントの要領で、ボールが当たった瞬間にバットを引いてみます(右写真)。
すると、ボールは跳ね返らずそのまま止まりました。

分子運動の激しさを小さくするには、この「引く動作」が大切だといいます。

続いて、別の実験装置で、「引く動作」について考えてみます。

  • 注射器のピストンを引くと?
  • バントと同じ?

父 「まず、この実験装置の説明をするね。フラスコと注射器がある。この2つはチューブでつながっているよ。このフラスコの中には、アルコール蒸気が入れてあるんだ。でも透明だから見えないね。ではここで、問題。この注射器のピストンを急にぐっと引っぱる、するとどうなるかな?」

リコ 「ぐっと引く……バントだ!」

ノブナガ 「分子運動の激しさを小さくするってことかな?」

母 「そうすると、どうなるの?」

父 「こうなります。」

  • ピストンを引くと温度が下がる
  • ピストンを押すと温度が上がる

母 「あっ、白くにごった!」

リコ 「なんで?」

父 「それはね、ピストンを引くことで分子運動の激しさが小さくなって内部エネルギーも小さくなる。そして温度が下がったためにアルコール蒸気が霧になったということなんだね。逆に、ピストンを押すと、分子運動の激しさが大きくなり、内部エネルギーも増して温度が上がって、霧が消えてしまった、というわけだね。」

ノブナガ 「引くと温度が下がって、押すと温度が上がる。さっきの、押すと火がつく実験と同じだね。」

リコ 「内部エネルギーが減ったり、増えたりしているわけね。」

父 「そうなんだよ。」

  • ピストンを押すと内部エネルギーが大きくなる
  • 熱を加えると内部エネルギーがさらに大きくなる

父 「ちょっと、ここでまとめてみるね。今この状態、最初の内部エネルギーは です(左写真・左)。さて、ここで内部エネルギーを大きくするためには、ピストンをギュッと押してやる。そうすると、気体の原子分子の運動が激しくなって内部エネルギーが大きくなる。ピストンが気体にした仕事が、内部エネルギーを大きくしたわけだね。では、この内部エネルギーをさらに大きくするにはどうしたらいいかな?」

リコ 「熱を加える?」

父 「そうだよ。熱を加えれば、さらに内部エネルギーは増大します。熱を加えて、熱量 が来ました。そうすると、内部エネルギーは から凾t 増えます。 ですけど、この は仕事 と熱量 から来たわけだから、 という形になります。では、さらにこれを整理してみよう。」

熱力学第1法則とは?
  • 熱力学第1法則
  • 熱機関

気体の内部エネルギーの変化が です。
は気体が吸収した熱量 と、気体がされた仕事 の和になっており、単位はすべてJです。

この関係を熱力学第1法則といい、ピストンを押すという力学的エネルギーだけでなく、熱まで含めたエネルギー保存の法則です。
つまり気体が熱を与えられたり、仕事をされたりすると、それらのすべてが気体の内部エネルギーとして蓄えられるということを表しています。


ノブナガ 「内部エネルギーっていう形でエネルギーを蓄えるのって、なんだか電池みたいだね。」

父 「そうだね。逆に、この内部エネルギーを外部に熱や仕事として取り出すこともできるんだよ。内部エネルギーを使って外部に仕事をすれば、車を走らせたり発電機を回したりすることができるね。ただし、外部に仕事をしてしまえば温度が下がってしまい、温度が下がれば仕事もできなくなってしまう。そこで、熱で仕事をさせ続けるためには、冷めたらまた加熱して熱くすればいい。これを繰り返して、熱を仕事に変換する装置が『熱機関』なんだよ。」

熱機関の弱点
  • 熱をすべて仕事に変えることはできない
  • 主な熱機関の熱効率

熱を仕事に変える熱機関ですが、「熱をすべて仕事に変えることはできない」という大きな弱点があります。

熱をどれだけ仕事に変えられるかという割合を0〜1で表したものを熱効率といい、1が100%という意味です。
たとえば、蒸気機関の熱効率は0.1〜0.2です(右図)。
これは10%から20%くらいしか仕事が取り出せないという意味です。


父 「ノブナガの大好きなオートバイのエンジンはガソリン機関だよね。この場合の熱効率は20%から30%なんだね。」

ノブナガ 「じゃあ、7、8割の熱は捨てちゃっているってことなの?そんなに捨ててるんだ。」

父 「そうだね。いくら技術が進歩しても、熱効率を100%にすることは理論的にできないことがわかっているんだよ。それから、熱機関で大事なことがもう一つあるんだ。それがね、“不可逆変化”。」

母 「不可逆変化?なにそれ?」

不可逆変化
  • 赤い氷が溶ける
  • 氷が溶けてなくなる
  • 赤い色が全体に拡散する

不可逆変化の例を見てみます。

赤く着色した氷を水の中に入れます。
時間が経過すると、氷が溶けて水が赤くなりました。
氷の赤い色が、水槽の水全体に拡散したのです。

この様子を逆に再生すると、広がっていた赤い水が集まって氷に戻っていきますが、自然界では決してこのようなことは起こりません。

このように、一方向にしか進まない変化を不可逆変化といいます。
熱の移動は、温度が高いほうから低いほうへ移動する不可逆変化です。

冷蔵庫の冷えるしくみ
  • 冷蔵庫は中の熱を外に流す

リコ 「温度が高い方から低い方へ移動するのも不可逆変化なの?」

父 「リコちゃん、さすが。その不可逆変化が冷蔵庫のしくみと関係があるんだよ。」

母 「お父さん、そろそろ冷蔵庫の冷えるしくみ、教えてくれてもいいんじゃないの?」

父 「そうだね。これを見てください(上図)。仮に、冷蔵庫の温度が25℃で室温も25℃だとする。これだと、冷蔵庫にならない。これをなんらかの方法で中の熱を外に出して温度をどんどん下げて、やがて5℃までもっていきたいわけだ。そのためには、この中の熱を外に流さなきゃいけない。でもね、熱というのは温度の高いところから低いところに向かって流れるんだよね。だから、これはおかしいよね。」

ノブナガ 「うん。」

父 「でも、それを冷蔵庫は電気を使ってやっているんだよ。」

  • 冷媒
  • 冷蔵庫の冷媒のはたらき

冷蔵庫の壁には、冷媒とよばれる、液体や気体に変化する物質が通っています。
冷媒は冷蔵庫の中と外を循環し、中で熱を受け取り外で熱を捨てるというはたらきをします。

冷媒は、冷蔵庫の中では気体になっています。
この気体を圧縮機で集めて圧縮すると、先ほどの圧縮発火器の実験のように熱くなります。
その熱を外に逃がしながら、さらに圧縮すると、冷媒が液体に変化します。
この液体は熱く、周りの空気の温度の方が低いので、熱は外に捨てられます。

この液体を特殊な弁を通して、広い体積のところに吹き出します。
このとき、液体が気体になるため、内部エネルギーを使って温度が下がります。
この状態では、周りの空気よりもずっと温度が下がっています。

さらにその気体が、広がることによって、仕事をしなければならないので、内部エネルギーが下がります。
これは、先ほどのバットを引いたバントの実験と同様のはたらきになります。
この冷媒の気体の温度が十分に下がれば、熱は温度の高い庫内から気体に向かって流れてきます。

冷蔵庫では、「冷媒が熱を集め、外に向かって熱を捨てている」というはたらきをくり返しています。
これは、先ほどのフラスコと注射器の実験と、よく似ています。
フラスコの場合には、圧縮するとそのまま霧が消えましたが、冷蔵庫では圧縮して出た熱を外に捨てているということになります。

  • コンセントが…
  • 次回もお楽しみに!

〜お父さんのひと言〜

それまで、異質なものだと考えられていた熱と仕事を、内部エネルギーという考え方でつないだ人たちがいます。
熱や仕事は、物質内にエネルギーとして蓄えられると考えたわけですね。
まだ、その時代には、原子の存在はあきらかにはなっていなかったんですよ。
今では冷蔵庫が冷えるのも、オートバイが走るのも、宇宙のしくみすら、エネルギーを使って説明しようとする。
エネルギーは重要な役割を持っているんです。
異質な物をつなぎあわせると、新たな発見があります。
壁が消えることもあります。
あなたが壁にぶつかって困ったとき、あえてあなたと違う考え方の人と話をしてみたらいかがでしょう。



母 「……あ、それより、冷蔵庫!早く修理お願いね!そうしないと、中のもの腐っちゃうから〜。」

父 「よし、まかせて。まず圧縮機から見てみよう。」

リコ 「あの〜!コンセントから外れてるんですけど……。」

母 「あれ……掃除機かけたときかな……。」


それでは、次回もお楽しみに!

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