第1回
実験!発見!科学体験! B−サイエンス!
ベーシックサイエンスは、科学的な考えを養うサイエンスワークショップです。
司会は田畑藤本の田畑祐一さん、そしてチーフは東大卒の理系芸人、藤本淳史さんです。
藤本 「理系にとって一番大切なのは科学的なものの考え方です。それをこれから一緒に身につけていきましょう。」
生徒は浜田 彩加さん、山川 二千翔さん、宮川 里奈さんの3人からなる“テクノ・エレクトロ要素 × アイドル”ユニット、キュピトロンの3人です。
キュピトロン 「カラフル・ポップ・フロム・テクノワールド、キュピトロンです。よろしくお願いします!」
今回のテーマは「音の速さ」です。
音に速さがあるということは、普段気にしない人も多いのではないでしょうか。
しかしたとえば雷は、稲光の後、遅れて「ごろごろ」という音が聞こえてくることがあります。これは、音が伝わってくるまでに時間がかかるためです。
音の速さはどのくらいで、どのように伝わるのでしょうか。実験で調べていきます。
田畑 「キュピトロンのみんなは、音の速さ、どうやって測れば良いと思います?」
彩加 「でも音って見えないからね……、測れるのかな?」
藤本 「でも、実は簡単なことなんですよ。」
ここで、音の速さを測る実験を行ってみました。
藤本さんがシンバルを鳴らし、赤い旗を持ったキュピトロンの3人は、音が聞こえた瞬間に旗を上げます。田畑さんはシンバルが鳴ってから、3人がそれぞれ旗を上げるまでの時間を計測します。
シンバルを鳴らした瞬間から旗が上がるまでの時間を計ることで、音の速さを測ることができるのです。
しかし挑戦してみると、シンバルからキュピトロンの3人までの距離が近く、シンバルが鳴ってから旗が上がるまでの時間がほぼ同時になってしまいます。
そこで、より広い場所で、計測する人数も増やして実験を行います。
実験場所は1700mの直線、今度は計測者を86人に増やしました。
20m間隔で旗を持った人を配置し、見やすいように200mおきに旗の色を変えました。
実験時の気温は25℃、風速は毎秒5mです。
実験を開始します。
シンバルを鳴らすと、近くの人から順々に上がっていき、音は980mまで届きました。かかった時間は2.89秒です。
980m離れると、音が届くのに約3秒もかかることが分かりました。
二千翔 「最初と最後の人が絶対に重ならない、というか段々と旗が上がっていくっていうのがよく分かりましたね。」
彩加 「距離÷速さ?」
藤本 「距離÷時間=速さです。」
田畑 「算数・数学で勉強したよね?」
里奈 「“みはじ”か!」
藤本 「道のり・速さ・時間ね。」
音の速さは、 距離(道のり)÷時間=速さ で計算できます。
先ほど出てきた「みはじ」で計算すると、
980m÷2.89秒=339m/秒
という結果になりました。
音が大きくなると、速さは変わるのでしょうか。
次は警音器を使って、より大きな音で実験してみます。
すると、今度は1700mまで音が届きました。かかった時間は5.03秒でした。
距離(道のり)÷時間=速さで計算すると、
1700m÷5.03秒=338m/秒
となり、秒速338mであることが分かりました。
これらの結果から、シンバルと警音器どちらの場合も、音の速さは秒速 約340mということが分かります。
藤本 「まったく同じ数値にはならなかったですが、これはもう誤差の範囲なんですね。だから、空気中の音の速さは約 秒速340mだと覚えたらいいと思います。」
藤本 「ここでもう一つ問題です。今までは空気中の音の速さを調べてきたんですが、これが水の中だったら音の速さは一体どうなるでしょうか?」
里奈 「やっぱり走るのと泳ぐのでは速さが違うから、水の方が遅いんじゃないかなと。」
田畑 「それでは実験を見てみましょう。」
2そうの船が1700m離れて停泊しています。赤い旗をつけた船から、水中専用の特殊スピーカーを水中に下ろします。水中で連絡を取り合う時に使う信号音を使い、音を出すと同時にライトを点灯します。
一方、黄色い旗の船からは、水中専用の特殊マイクを水中に下ろしています。音が聞こえた時にはライトを点灯します。
赤い旗の船のライトがついてから黄色い旗の船のライトのつくまでの時間が、音が1700mを伝わる時間です。
実験時の水温は27℃、水深は3mです。
実験を開始すると、音は1700mを1.09秒で伝わりました。
音の速度を計算すると、
1700m÷1.09秒=1550m/秒
となりました。
空気中を伝わる音の速さである、秒速340mと比べると、音は水中では5倍近く速く伝わることが分かります。
キュピトロン 「え?なんでだ?!」
彩加 「地上より速く伝わるということですか?」
里奈 「水中は、酸素など、邪魔するものがないからですか?」
田畑 「なるほどね。水中の方が逆に邪魔するものが少ないから速くなるのではないかと。それでは、もっと詳しくガリレオ先生にお聞きしましょう。ガリレオ先生!」
ここで、「ガリレオ先生」こと、東京理科大学教授の川村康文 先生に詳しく解説していただきました。
音は振動が波となって伝わる現象であり、波を伝えるものを媒質といいます。空気や水は、波を伝える媒質です。
川村先生 「空気は邪魔をしているのではなくて、どちらかと言うとスカスカなの。だから波を伝えようとしても、相手がちょっと遠いとこ行っちゃってていない。それに対して水の方は、もう少し詰まってるんだね。だから次の人に伝えようって思った時には、『あ、そこにいたのね』となって伝わりやすい。」
音は媒質の影響を大きく受けます。
一般的に、気体→液体→固体の順に、音は速く伝わっていきます(左図)。
田畑 「今日は音の伝わり方を勉強してきましたが、どうですか?」
彩加 「水の中で音が聞こえるということが、まず新しく分かったことで、そこからさらに速く伝わるということがすごいと思って、媒質が大切なんだなって思いました。」
それでは次回もお楽しみに!
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