NHK高校講座

ベーシック国語

今回の学習

第12回

文学史 〜夏目漱石〜

  • 出演:杏林大学教授 金田一 秀穂
学習ポイント学習ポイント

文学史 夏目漱石

文学史 夏目漱石
  • 東京都内にある本を楽しめるカフェ
  • 茂木健一郎さん

今回は文学史の授業の2回目!夏目漱石についてです。
東京都内にある本を楽しめるカフェで、ゲストの茂木健一郎さんと待ち合わせをした滝沢カレンさん。
脳科学者の茂木さんは、毎日漱石作品を読んでいるという大の夏目漱石ファンです。

  • 夏目漱石
  • 茂木さんとカレンさん

文豪・夏目漱石といえば「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「こころ」など、作品を読んだことのない人でも、名前と作品名は聞いたことがあるのではないでしょうか。
芥川龍之介も師と仰いだ国民的作家です。

茂木「作家っていろいろいるけど、僕は夏目漱石とそれ以外っていう(分類をする)くらい好きです。」
カレン「1個(漱石)、2個(それ以外の作家)ってことですか?」
茂木「音楽でいうと、ビートルズとそれ以外みたいな。」
カレン「えーっ!何かそこには理由があるんですか?」
茂木「すごく賢い人なのに、かわいいんですよ。」
カレン「かわいい?」
茂木「うん。賢い人って、えばっているような人もいるじゃない?でも、漱石は “菫(すみれ)程な小さき人に生まれたし(菫みたいな小さな人に生まれたかった)”というような俳句を作っていたりするんですよ。謙虚な人なんです。」
カレン「自分が、自分がってならない。」
茂木「ならない!」
カレン「結構、小柄な人なんですか?」
茂木「カレンさん、面白い(笑)…そうですね、当時の人なのでそんなに大きくはないですけど、今の言葉で言うとイケメンですよ。」
カレン「あの顔が?」
茂木「あの顔ダメですか?」
カレン「ダメというか、私は怖そう(なイメージ)とか(があって)…千円札に載っている顔なので、あれで入っちゃうじゃないですか。」
茂木「あ、でも本人は、もし今生きていたら千円札(の肖像画に使われるのを)断ったと思います。」
カレン「勝手にのせられちゃったんですか?」
茂木「亡くなっているんで。」
カレン「あ〜、そっか。」

茂木先生は『坊っちゃん』の文庫本を手に、カレンさんに質問をしました。
茂木「子どもの頃は幸せでしたか?」
カレン「はい、幸せでした。」
茂木「この(主人公の)坊っちゃんは幸せじゃなかったんです。お父さんが坊っちゃんをいじめて、お兄さんばかりをかわいがるんです。」

  • 父親や兄と仲の悪かった主人公
  • 味方をしてくれたのは、キヨというお手伝いさん一人

坊っちゃん』は四国の松山を舞台にした夏目漱石の中編小説です。
子どもの頃から無鉄砲で、父親や兄と仲の悪かった主人公。
味方をしてくれたのは、キヨというお手伝いさん一人だけだった、という語りからストーリーは始まります。

  • カレンさん

茂木「ちょっとかわいそうな主人公なんですよ。だけど、明るく前向きに生きていて。でも結局失敗しちゃうんですね。だから、失敗しちゃう小説です、これは。青春は失敗じゃないですか。」
カレン「(失敗)だらけです。」
茂木「カレンさんもあるんですか?」
カレン「もっと勉強しておけばよかったなとか、もっとあのとき親にこう言っておけばよかったなとかあります。」
茂木「今から考えると(そう思うってことですね)。」
カレン「そうです。」
茂木「そういうことが書いてあるんです。」

さて、ここで茂木さんが持っている文庫本に注目してみてください。
茂木「すごくないですか、これ!」
カレン「すっごくボロボロになっちゃってますけど…どんだけ読んだんだっていう。」
茂木「これ、お風呂で読んでいるんですけど、ちょっと触ってみます?」
カレン「すごーい!本当だ、お風呂らしい!この湯気でやられた感じ。」
茂木「ぼく、夏目漱石がすごく好きなので、文庫本ももともと持っているんですけど、旅先で読みたくなると買っちゃうんですよ。だから同じ文庫本が五冊も六冊も(ある)。カレンさんも、そういうのあります?」
カレン「わたしも…さくらももこさん!」
茂木「ちびまる子ちゃん!」
カレン「はい、(さくらももこさん)のエッセイですよ!」
茂木「あっ、エッセイの方!お風呂用もあります?」
カレン「お風呂用というか、なくしちゃった用みたいな感じで何冊もあります。」
茂木「じゃあ、さくらももこさんみたいなのがコレ(坊っちゃん)ですよ!これ、1週間くらいで書いちゃったって言われているんです。」
カレン「えーっ!」
茂木「しかも、当時の漱石は大学と高校で教えていて、授業もあって、試験の採点もしていて。」
カレン「お忙しいのに…。」
茂木「ダーーーーーって書いちゃったらしいです。」
カレン「ひらめきで生きているような人なんですかね?」
茂木「小説を書くのってデトックスに似てるんですよ。毒出しというか。自分の中にモヤモヤしたものがあるじゃないですか。」
カレン「あります。」
茂木「それを外に出すことでスッキリする。だから、漱石は『坊っちゃん』を書くことでスッキリしたんです。ただ、我々が『坊っちゃん』を読んでもスッキリするんですよ。」

  • 茂木さん
  • 無防備ってかわいい!

茂木「さくらももこさんもそうだと思いますよ。デトックスだと思いますよ。」
カレン「うん、おもしろい!」
茂木「どういうところがおもしろいんですか?」
カレン「自分をあそこまで書くっていうのが、すごく好きです。全部書いちゃう。」
茂木「でしょ!自分のダメなとことか。」
カレン「そう!それをおもしろく書いてくれるんですよ。」
茂木「それが、夏目漱石を考える上で一番大事なメタ認知(自分を外から見ているように客観視すること)ということ。」
カレン「メタ認知?」
茂木「脳科学的に言うと。」
カレン「さすが脳科学者。」
茂木「一応、脳科学やってるんで。漱石は自分を客観的に見る能力が優れているんですよ。実は、この坊っちゃんはかわいそうな境遇だったって言ったじゃないですか。それ、漱石自身のことなんですよ。漱石って里子に出されているんです。」
カレン「そういう方なんだ。」
茂木「そこであまりちゃんと育ててもらえていなかったので、かわいそうになったお姉さんが連れて帰ってきたとか。複雑な家庭環境なんですよ。そういうことを小説にしてデトックスしてるんです。」
カレン「それを、ちょっと面白おかしく書いているんですか?」
茂木「そうそう。漱石の一番の魅力はかわいいこと!」
カレン「それがちょっといまだに、絶対わからないんですけど。」
茂木「『吾輩は猫である』っていう作品(に出てくる)、くしゃみ先生が漱石自身なんです。いつも猫を抱いてかわいがっているイメージがあるんですけど、実際に書いているのは厳しい人間の見方なんですよ。だけど、そこをかわいらしく書いている。猫が好きっていう。」
カレン「動物好きだって、さりげなくアピールしてるってことですか?」
茂木「かわいらしさって、結局無防備であるってことだと思うんですね。子どもって無防備だからかわいいでしょ?おじさんでも、無防備なおじさんってかわいいじゃないですか。」
カレン「そうですね。」
茂木「ガチガチになっちゃってる人ってかわいくないじゃないですか。漱石は意外と無防備というか、自分を守ろうとしないんですね。自分をよく見せようとしない。」

  • 茂木さん
  • カレンさん

茂木「どうですか、夏目漱石。」
カレン「前回、ちょっと芥川龍之介さんに迫ろうみたいな話になっちゃったんですけど、それも5000倍と言っていいくらい興味をもってしまいました。それは茂木さんのうまい話し方に乗れたんだと思います。」
茂木「ぼくはきょう、漱石先生の魅力を少しでもお伝えできればと思って来たので、うれしいです!!」
カレン「本当におもしろかったです。」

それでは最後に、初めて漱石作品を読む人に、茂木さんおすすめの一冊を教えてもらいましょう。
茂木「それは、ずばり『坊っちゃん』ですね!」
カレン「やっぱり!」
茂木「そんなに長くないです。一気に読めます。それから、キャラクターが本当に魅力的です。そして最後は愛の小説なんですよ。」
カレン「愛の小説?」
茂木「坊っちゃんを救うのは愛なんです。そこもステキな小説かな、と思います。」
カレン「それを見てくださいってことですね。」
茂木「はい!ぜひ、これ(坊っちゃん)をお読みください!」
カレン「はい、じゃあみなさんそうしてください!」

  • 次回もお楽しみに

茂木「“アイ・ラブ・ユー”って、漱石はなんて訳したか知っています?言葉遊びなんですよ。」
カレン「言ったんだろうなぁ。変なことっていうか、すばらしいこと。」
茂木「言っちゃいましたよ、漱石!」

その答えは、諸説ありますが…
月がきれいですね」と訳したと言われています。

みなさんも、漱石の作品が今も愛される理由を、漱石の作品の中に探しに行ってみませんか?


それでは次回もお楽しみに!

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