くう ねる あそぶ こども応援宣言

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いしかわ県民教育文化センター理事長 金森俊朗


○「応援宣言」とは何か?
子どもたちへの「応援宣言」は、何よりも「一緒にオレも楽しみたいのだ」というガキっぽい大人であり続け、しかも子どもを主役にできる伴走者であるのだ!との宣言をすることではないのか、と思っています。小学校教員38年間、運動場や水田にての「どしゃぶり泥んこ遊び」(スライディング・サッカー・ラグビー)、晩秋のプールにて作製したイカダに乗っての競争、大樹にロープを吊してのターザンブランコなどを典型にしたダイナミックな遊び=学習を展開してきました。一見気楽に実施しているように見えるのですが、多くの人が気づかないところで緻密で周到な準備と学習を重ね、保護者・専門家・地域の人々の応援と協力・協働を得ていたのです。

 

○子どものリアルな声に耳を傾ける
だから、最も主張したいのは、学校・地域での子どもの遊び・活動を今以上にできることからサポートしませんかということです。以下の子どものリアルな声を聴いて下さい。そのことがまず確かにできる大人の仕事です。大学生になってから学童保育(放課後児童クラブ)の価値に気づいたのです。

―【私にとって「太陽クラブ」は「ただいま!」と大声で入っていくもう一つの我が家でした。「太陽」では、横の神社の隅々まで使い、力いっぱいあらゆる遊びをやりました。小さな境内でしたが何十回も探検し、その度にワクワクしました。「秘密の隠れ家」「私だけの場所」もいくつかありました。石ころ一つ、空き缶一つが立派な遊び道具で、私達はそれをめぐってハラハラしたりドキドキしたり、真剣そのもので、時も忘れて熱中しました。
あの頃はただ遊びに夢中でしたが、今になって思えば、年令もバラバラの子どもたちがみんなで一丸となって遊ぶということは、学童保育でしか経験できないことです。そのような貴重な体験の中で、人とのつながりや思いやりなどを無意識のうちに学んでいたのだろうと思います。

私は一人っ子なのですが、「おおぜいの兄弟がいるようだ」と言われます。それを聞くたびに、いつも「太陽」を思い出すのです。あの時一緒に遊んでいた仲間は、私にとって本当に兄弟のような存在でした。それは、うまく言えないのですが、何かすばらしい事に思えます。】―


夜遅くまで続けられた学童クラブの保護者懇談会にも、指導員研修会にもよく招かれ参加してきました。少年時代の経験を通してこそ獲得できる「何かすばらしいこと」をいっぱいの子どもたちに!と切に願います。 今は、夏休み、地域の児童館にでも行ってみますか!   


○厳しさを乗り越えて得られる“楽しみ”
一つ私と子どもが地域の人々の応援を得て取り組んだイカダづくりを紹介しましょう。これは、森林と木材と大工さんたち働く人の社会科学習をうちに包み込んだ総合的な学習です。子どもたちにとっては、イカダをつくって乗るという夢=フェスティバルの目標の中で学びを追求しているのです。イカダをつくって乗るのは、晩秋です。誰もが、「こんなに寒いときにどうしてやるのか、水に落ちたらどうするのか」と聞きます。「水の中に落ちたら風邪をひくのがせいぜいです。そうしたつまらない問いは、私には存在しない。」と笑って答えます。落ちたら大変だから、「落ちないためにどうするのか」という問いが私や子どもの力を高めるのです。

イカダに使う木は、建築現場を訪れ、大工さんに学習目的を告げ、もらってこなければならないのです。発泡スチロールは魚屋さんへ行き、同じように語り、運んでくるのです。いずれもひとりでは行けず、多忙な子どもたちがスケジュールを調整してグループを組んで働きかける行動です。私は、「働かざる者は食うべからず」 の通り、働かないものは楽しい活動に参加する資格はないとして、全員で行動することを条件にしています。

そして、集めた材料をどうやって組み立てるのかということや、わずかなひもを使って容易にはぐらつかないように組み立てる技を伝授します。このときの私は大変厳しい。いい加減なものを作れば、落ちることは子どもも承知しているので、なぜ厳しく技を伝授されるのかは、子どもにもわかります。材料の長い木材を他者に気づかずに持ち上げただけで、他者を傷つけることも起こります。材料の持ち運びひとつにも、神経を張り詰めて行うことを要求します。


20170809_kanamori002.jpg出来上がったイカダをプールに浮かべ、乗り込むとき、子どもたちは興奮しますが、そのときがもっとも水に落ちやすいのです。乗り降りにいかにチームワークをとるかが鍵になります。ひとりで乗るのは容易だから、三人で乗ることを要求します。先に乗った者がどの位置へ動けばいいか、足をどう開けばいいのか、体のバランスをとることが大変重要になります。いざイカダに乗って三人で進もうとしても、今の子たちは、簡単に進めることができません。どう漕いだらいいのか分からないのです。あちこちから声が飛び交い、ようやく自分で進め方の技術を手に入れたとき、彼らは大歓声を上げます。自分たちで作り、乗り、進めて他のグループと競争するというクライマックスを自分の手で迎えることができたのです。日常や普通の学級・学校の生活の中では決して意識せず、鍛えようとしない力が要求されるのです。他の学年の子どもたちは興奮している子どもたちの姿を見て単純に羨んでいますが、実は、子どもたちの活動の奥行きは深く、かなりの厳しさを乗り越えた上での喜びなのです。


金森俊朗さん 元小学校教諭、いしかわ県民教育文化センター理事長。石川県内の八つの小学校で、人と自然に直に触れ合うさまざまな実践を行い、妊娠中のお母さんを招いた「性の授業」や、末期がんの患者さんから生と死について学ぶ「デス・エデュケーション」を行うなど、「いのちの教育」に取り組む。