くう ねる あそぶ こども応援宣言

遊ぶ場所や時間が減っているといわれる昨今、子どもの遊びを応援するために、大人はどのように考え、何をしたらいいのでしょうか。5月6日に放送したすくすく子育て「生きる力を育む子どもの遊び」では 、横浜にある保育施設「りんごの木」に伺い、専門家のお話しを伺いながら、遊びが子どもの育ちに果たしている役割と大人に出来ることのヒントを考えました。

○子どもにとっての遊びとは?
保育施設「りんごの木」の代表・柴田愛子さんは「子どもにとって“遊び”は”ごはん”のようなもの。ご飯は毎日食べてエネルギーになっていく。遊びもそれぐらい自然なもので、育っていくための大事なエネルギーになる栄養素」だといいます。


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番組では、「りんごの木」に伺い、実際の保育の現場を取材しました。4歳から6歳の子が過ごしている建物を覗くと、相撲をとっている子がいたり、ひとりブロックで遊んでいたり、お絵かきをしている子や、外で遊んでいる子どもたちもいます。園庭はありませんが、園の前の広場や通りで自由に遊んでいます。水遊びをしながら、窓ガラスにぬれた新聞紙を何度も投げつけている子どももいますが、保育者はそんな様子を笑って見守っています。ひとりひとりがバラバラに自由に遊ぶ様子は、一般的に想像される幼稚園・保育園とは少し違うかもしれません。まるで自分の家や近所で好き勝手に遊んでいるようです。

柴田さんは「子どもたちは、ひとりひとりやりたい遊びが違う」といいます。「みんなが同じことに興味を持って、同じように遊ぶのは不可能だと思います。一方で、これをやりたい、おもしろそうだと思うと、さわがしくて混み合った中でも、集中してブロックで遊ぶ子もいます。子どもは自分のやりたいことをやるときは、あまり周りのことが気にならなくなります。だから、私は子どもの“自分がやりたいこと”を保証したいと思っています。」
一方で、幼稚園や保育園に「子どもの声がうるさい」などの苦情が寄せられ、地域で思い切り遊べなくなるという問題も各地で起きています。そういった声に対して、柴田さんはどのように応えてきたのでしょうか。


20170706_sukusuku002_shibata.jpg保育施設「りんごの木」代表 柴田愛子さん
「最初のころは、よく苦情がありました。もしかしたら住んでいた方々が子どものことをよく知らないため、子どもがうるさいし、チョロチョロして危ないし気になる、それが苦情になっていたと思います。ですので、相手が分かる場合にはひとつひとつ丁寧に説明してきました。そのうちみなさんがだんだんと慣れてきたんです。最初は「何をやっているんだ」と言っていた方から「おもしろそうなことをしているね」「子どもたちの目が輝いているね」と言ってもらえたり。子どもたちを知ることで、子どもアレルギーが緩和されたような気がしています。「思い返せば子どもって、こんなふうだったな」と、大人が子どもを見る目が優しくなるといいなと思います。」


○大人にできることは?
では、子どもたちの遊びを、大人たちはどのようにサポートすると良いのでしょうか?柴田さんは、子どもの「やりたいという気持ち」を何より大切にしてほしいと考えています。
「危ないことも体験してみないと分かりません。それから子どもが滑り台を登ろうとしている時に、大人が登らせるような手助けをしてはいけないと思います。それは、力量を超えたことを後押しすることになります。後で困って落ちたりした時、大きなけがになります。大人は辛抱して見守りましょう。落ちたら危ないと思ったら、下にある危険物をとりのぞく、受け止められるようにするなど、一歩ひいてフォローするような見守り方が良いと思います。」

一方、子どもが主体となった遊びは、「人間として生きていく力を育む」ことができると言います。
6月24日に放送したすくすく子育て「意外と知らない保育園・幼稚園」では、幼児教育で注目されている「非認知的能力」と遊びの関係について紹介しました。

○幼児教育のトレンド「非認知的能力」とは?

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幼児教育の目標は、ひとことで言えば「人間として生きていく力を育む」ことですが、これは世界のトレンドでもあります。
キーワードは「非認知的能力」。非認知的能力とは、例えば、目標に向かって頑張る力、他の人とうまく関わる力、感情をコントロールする力などです。数がわかる、字が書けるなど、IQなどで測れる力を「認知的能力」と呼ぶ一方で、IQなどで測れない力を「非認知的能力」と呼んでいます。

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この「非認知的能力」を身につけておくことが、大人になってからの幸せや経済的な安定に繋がると主張したのが、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんです。ヘックマンさんの代表的な研究に「ペリー就学前プロジェクト」というのがあり、1960年代から現在までアメリカのミシガン州で調査が続いています。調査の対象は、経済的に余裕がなく幼児教育を受けることができない貧困世帯の3~4歳の子どもたち123人。この中の約半数の子どもに、週3回、1日3時間のプリスクールに2年間通ってもらいました。さらに、週に一度、教師による家庭訪問も行いました。プリスクールに通ったグループと通わなかったグループ。その後の人生にどんな変化が起こるのか追跡調査をしたところ、40歳の時点で明らかな違いが現れました。
プリスクールに通ったグループは通わなかったグループより、収入が多い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの差がみられたのです。ヘックマンさんは、彼らが大人になってもより幸せでいられるのは、プリスクールに通って「非認知的能力」を身につけたことが大きな要因ではないかと考えています。


○非認知的能力は“主体的な遊び”の中で育つ

20170706_sukusuku005_shiomi.jpg 白梅学園大学学長の汐見稔幸さんは、次のように「非認知的能力」の大切さを指摘しています。「私たちは、文字が読める、うまくブロックを積み上げられる、三角形と四角形と五角形を区別できるといった目に見えて知的に賢くなったと感じる認知的な能力を重視しがちです。しかし、幼児期に認知的な能力を高めることが、その後の人生の成功や安定につながっているのか、いろいろ調べた結果、あまり関係がないことがわかってきました。大事なことは、うまくいかないときにあきらめず「どうしてかな」「こうやってみよう」「これがだめなら、ああやってみよう」など、あくまで目標の達成まで頑張る姿勢を身につけたり、我慢できたり、感情をコントロールする力などです。そのような力は一生残ります。大人になって社会で成功する力につながります。」


20170706_sukusuku006_oomamyuda.jpgまた、玉川大学教授の大豆生田啓友さんは「非認知的能力は“子ども主体の遊び”で育つ」といいます。「させられるのではなく、自分からやっていく中で非認知的能力は育ちます。特に幼児期の場合は遊びです。子どもたちは遊びこむ中で、やる気、意欲、粘り強さ、探求していく力が身についていくのです」