くう ねる あそぶ こども応援宣言

5.4キロ。この数字は、ある専門家が調べた、小学1~3年生のランドセルの平均的な重さです。
10月15日の「おはよう日本」では、“重すぎる”ランドセルの対策、“置き勉”を取り巻く状況をリポートしました(クリックすると番組書き起こしを読むことができます)
こちらは、担当した越智望ディレクターの取材後記です。


「ランドセルが重くて、転びそうになるから(姿勢を)猫背にして歩いてる。」
「肩が痛くなって学校を休みたくなる。」

少しショッキングなコメント。
いまどきの小学生に登下校時の話を聞くと、こんな答えが普通に返ってきます。
“ランドセルの中身が重くなっているらしい”。
そうして始まった取材でのエピソードです。

話してくれる内容そのものにも驚きましたが、
それ以上に取材に応じてくれた小学1、2年生の子どもたちが、
自分のランドセルが重たいことを“当たり前のこと”として受け止め
何も疑問に思っていない様子がこれまたショックでした。
(学校に入ったら、上級生も友だちもみんなが
普通に“重いランドセル”を背負って通学しているから、
そのことを当たり前だと考えるようになりますよね。)
社会に対して責任あるべき大人の一人として、子どもたちに申し訳なく思いました。

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ところで、大人のなかには自分の子ども時代を思い出して
ランドセルがある程度重いのはしょうがない、と考える方もいるかもしれません。
では、現在の子どもたちの“ランドセルの重さ”は
昭和の子どもたちの“ランドセルの重さ”と比べ、本当に重くなっているのでしょうか?

正確な調査は見つかりませんでしたが、
参考になりそうな資料をNHKのアーカイブスで見つけました。
NHKでも、40年以上前の昭和50年頃に同様の番組を放送していたのです。

当時の小学生たちが自ら「ランドセルが重すぎる!」と訴え、通学カバンの重さを調べる企画。
彼らのランドセルの重さは平均3.5キロほどでした。
(対して、お父さんの通勤カバンは2キロもなく、
子どもたちが「ずるい」と言って終わるどこか牧歌的な内容でした。)

そして、放送でもご紹介したとおり、現在の子どもたちの“ランドセルの重さ”は、平均5.4キロ。
教科書の大型化などが理由で、子どもたちのランドセルは重くなっているのです。

もちろんこの話、“教科書を悪者”にすれば解決する単純な話でもありません。
教育の専門家に伺うと、教科が増えたため、時間割が複雑になり、
子どもが荷物を管理しきれなくなっているなどの要因も考えられるそうです。

ただ、取材を進めるうちに興味深いことに気づきました。
教科書自体は、子どもたちが使いやすいように“進化”しているんです。

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どの出版社の教科書もイラストや図解が増えてわかりやすく、読みやすく、
子どもたちが興味を持って勉強できるような工夫を施しています。
そうした配慮が教科書の大型化、ページ数増加につながっている面はありますが、
単純に大きくしているだけでなく、薄くて質の良い紙を使うなど
なるべく重くならないような工夫までされています。
(大げさかもしれませんが、教科書を作った人たちの情熱を感じるほどです)

ランドセルも同様です。
かつてB5サイズだった教科書がA4になったことに伴い、
ランドセルもサイズ自体が大きくなっています。
でも、教科書同様、材質を工夫し重くならないようメーカーがそれぞれに試行錯誤しています。
また中身が重くても、背負ったときに、
子どもの体にフィットして負担が軽くなるように作られています。

教科書がいくら良いものに進化していても
“それをどう持ち運ぶか、どう管理するか”を大人の誰も考慮していなかった。
ランドセルが優れものでも
体重20キロの1年生が背負って歩く、
中に入れる“5.4キロ”は、あまりに重過ぎるのではないでしょうか。


子どもたちが肩こりや腰痛を訴えるほどになった“通学カバン”。
こうしたことが起きているのは日本だけなのでしょうか?
そこで、外国の子どもたちの状況が気になり、
各国の通学事情についても調べてみました。

ドイツやフランスでは、日本同様、通学時の荷物が重いことが問題になっていました。
ドイツでは去年ザールランド大学が調査を行い、ランドセルの重さが体重の15%ほどまでであれば
子どもの成長に害を及ぼさないという結果が出ました。
また、日本の“置き勉”のような取り組みをする学校もあるといいます。
アメリカでは、教科書は学校が貸与する制度になっており、学校が管理しています。
学校によっては、美術や音楽の授業の道具も貸し出してくれたり、体育も普段着で行ったりするので、
子どもの荷物はお弁当と水筒、それにおやつだけというケースもあるそうです。


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子どもの通学時の荷物がどうなっているのか?どうすればいいのか?
通学から学校での置き場のことまで、トータルで考えている大人がいなかったのかもしれません。
大人が良かれと思って子どもに何かをしてあげても、
それが一面的であったり、大人の気持ちの押し付けであったり、というのはままあることです。
“重すぎるランドセル”は、各地の小学校で広がる“置き勉”などの取り組みで
解消されていくと想像していますが、
子どもファーストの目線が欠けていると、また同じようなことが起きるかもしれません。
そのようなことも感じた取材でした。

 

おはよう日本 ディレクター 越智望


関連記事:“重すぎる”ランドセルの対策(おはよう日本・2018年10月15日(月))