くう ねる あそぶ こども応援宣言

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為末大



もうすぐ3歳になる息子がいます。夜は飲んでいることが多かったのですが、息子が生まれてから、仕事が終わるとすぐスキップで家に帰るようになりました。最近は会話もできるようになったので、ひとつひとつの物事を理解していくのをみて、子育てが一番面白いなと感じています。
一方で、子育てほど投資がかかるものはないなとも思います。お金の面もさることながら、自分の時間と労力をかなり投下しないと子育てができません。コントロールもなかなか利かないですし、もちろん思ったようにもなかなかいきません。

でも、考えてみると子どもを持つ親だけじゃなくてみんな忙しいですよね。人生もなかなか思うようにはいきません。自分の時間を作ろうと思ってもなかなかできないし、恋人にもなかなか会えない人もいると思います。目の前の人生を生きることに精一杯で周りのことを見渡す余裕もありません。当たり前ですが、自分の人生ですから、自分のことが一番大事です。余裕がなければなかなか他のこともできません。

スポーツでポテンヒットというものがあります。ちょうど人が守備をしている間に落ちたボールがぽとんと落ちてヒットになってしまったというものです。どちらかが思いっきり走れば間に合うようなボールでも、お互いにどちらかが取りに行くだろうと見合ってしまうような局面もあります。こういったプレイが頻発する時に、どうやってそれを克服するのかというと、とにかくコミュニケーションを増やすのだそうです。試合時には何度も声を掛け合い、日常でもコミュニケーションを取り合うことで、徐々に相手の動きを察知できるようになり、隙間が埋まって行くのだそうです。

大きな流れとして、近代社会は個人主義に向かってきたように思います。人類史の前半では誰の所有物でもなかった土地は国家の、個人の所有物になりました。ワークライフバランスなどで、仕事と個人の自由な時間はしっかりと分けられ、昔のように個人の時間を会社のために犠牲にすることも減ってきました。一方で個人が社会を埋めていくとどうしても隙間ができてしまいます。その隙間はどうしたらいいんでしょうか。

例えば街の真ん中にある公園。いろんな人が使いますから、迷惑をかけないようにと、今ではルールでがんじがらめになっています。ボール遊びはおろか、時には走り回ってはいけないというところもあります。子ども達の貧困。子どもが困っていて行政がなんとか助けようとしていますが、なかなかうまくいきません。大変だねとは思いますが、私ではなくあの人の問題だからと踏み込むことが躊躇されます。

私たちの社会は個人に最適化されるあまり、ポテンヒットが増えてしまっているのではないかと思います。問題が起きた時、必ずでてくるのは誰の、どこの問題かという話です。でもスポーツではポテンヒットが出た時に誰の問題かなんて振り返りはしません。チームみんなの問題だからです。どうすればそんな問題が起きないかを”みんな”で話し合います。

”私たちの子ども”は今どんなところで遊んで、どんなところで学んで、どんなことに悩んでいるのでしょうか。私も、”私の子ども”のことは少しはわかりますが、”私たちの子ども”となるとわからないことだらけです。
今回のくうねるあそぶをきっかけに私たち一人一人が、”私たちの子ども”のことをみんなで話し合えるようになれたらと思います。誰のせいでもない問題だってあります。誰のせいでもないんだから、みんなで話しあって解決するのが一番です。子どもはみんな”私たちの子ども”です。そう考えている社会の方が優しくてみんなにとってもいいんじゃないでしょうか。