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こちらは子どもの体を撮影した写真です。

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5ミリほどの傷は、タバコを押しつけられた、やけどの痕と見られています。
写真を見た医師は、ここから、虐待を疑いました。
相次ぐ児童虐待。
どうすれば、子どもたちを救えるのか。
いま、医療現場で様々な模索が始まっています。

 

弟はなぜ死んだ… 真相求め続ける男性

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東京の会社員・橋本隆生さん(仮名)です。
幼い頃、虐待を経験し、3歳の弟を亡くしました。
両親が離婚し、橋本さんは弟とともに父親に引き取られました。
父はしつけに厳しく、2人は毎日のように暴力を受けたといいます。

橋本隆生さん(仮名)
「よく殴られてたっていうのは覚えています。
お漏らししたとか、そういう、ささいな理由だったと思うんですけど。」

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あの日、コンビニ弁当を少し残して捨てたという弟。
すると、父親は激怒して暴行し、風呂場に連れて行ったといいます。
しばらくして、弟は浴槽で浮かんでいるのが見つかりました。

橋本隆生さん(仮名)
「父が急いで引き上げて、人工呼吸をしたんですよね、リビングで。
(自分は)救急車が着いたら、すぐに泣きながら助けて、絶対助けてねみたいなことを訴えたのは覚えています。」

父親は警察に「風呂で溺れた」と説明。
弟の死は、“事故”として扱われました。
そして真相はわからないまま、父親はことし(2019年)亡くなりました。
あのとき風呂場で何があったのか、徹底的に調べてほしかったと橋本さんは考え続けています。

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1年間に亡くなる14歳以下の子どもは、病気や事故を含め3.000人以上。
しかし多くは十分な調査は行われていません。

 

“子どもの死”を検証 埋もれていた「虐待」は

この中に、埋もれた“虐待死”はないのか。
前橋赤十字病院で行われているのが、子どもの死亡事例を検証する取り組みです。
関係機関が集まって、亡くなった子どもの治療履歴や養育環境などを細かくチェックし、データベース化していくもので、アメリカなどでは、すでに導入されています。
今回、全国の病院などの協力を得て、死亡事例2,000件あまりを試験的に調べた結果、10%にあたるおよそ200件で、「虐待」や「不適切な養育環境」が影響した可能性があることがわかりました。

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前橋赤十字病院小児科 溝口史剛医師
「いろんな機関が全力を尽くして何があったのか、この子の死から何をすればよかったのかということを学んで、こういう施策をつくれば同じような死亡は減るよねっていう可能性を高めるということが、その子の死に報いることだと思います。」

生きている子どもたちの体から、虐待を見抜こうという試みも始まっています。

 

“法医学の目”が虐待を見抜く

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千葉大学の法医学教室。
亡くなった人の体から、死因を究明しています。
その一方で、大学病院内に外来を立ち上げ、いま、生きた人たちの傷をみる取り組みに力を入れています。

千葉大学法医学教室 岩瀬博太教授
「普段から解剖などで、この傷がどうやってできたのか、年中診断していることです。
そこが法医学がみるいちばんの強みなんですね。」

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例えば、子どものふとももにできたこの傷を法医学者が見れば、2本ある皮下出血から、その間の部分が棒のようなもので勢いよく叩かれたことが疑われるといいます。

千葉大学法医学教室 岩瀬博太教授
「どうやってできたのって、親に聞いた時に、階段から落ちましたと言うと、合わないでしょって話になるんですよね。」


虐待の有無は、複数の法医学の医師が出席するカンファレンスで慎重に検討されます。
この日は、骨折があるのではと、児童相談所が連れてきたケース。

法医学の医師
「少なくとも短期間に複数の骨折が多発しているという点は、仮に虐待じゃなかったとしても、今後安全を脅かす状況であるということは言えるのではないか。」


この時点では、虐待の可能性を排除せず、さらに検討を重ねていくことになりました。
今年、法医学教室が対応したケースは60件以上。
その1つ1つが、意見書として、児童相談所に提出されます。

千葉大学法医学教室 岩瀬博太教授
「こんな傷があるなら、本当は虐待だったのに、死ぬまで気づかれない。
そんなことが起こらないようにするのが私たちの仕事。
しっかり活動した方がいいなと思っています。」
“虐待を見抜く” 社会に広がる「目」

 

いま、岩瀬さんたちは小児科や児童相談所などと連携し、「初期の証拠保全」に力を入れています。

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傷は1週間から2週間で消えてしまいます。
その前に、カメラなどで傷をしっかりと記録してもらう、というものです。
法医学の知識やノウハウを少しずつ広め、虐待の証拠を見逃さないという、“法医学の目”を増やそうとしています。
虐待を防ぐには、社会全体で向き合って行くことが必要です。
今後も、さまざまな取り組みを取材して行きたいと思います。

報告:松木遥希子(NHK前橋)
   今井朝子(おはよう日本)

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