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子どもサポートネット > リレーインタビュー > 第11回「子どもの虐待防止オレンジリボンたすきリレー 実行委員長 増沢 高さん」

リレーインタビュー

2009年11月 5日

第11回「子どもの虐待防止オレンジリボンたすきリレー 実行委員長 増沢 高さん」

ご存知でしょうか?11月が「児童虐待防止推進月間」であることを。虐待に関する相談対応件数は毎年増え続け、子どもの命が奪われる悲惨な事件も後を絶ちません。以前に比べればだいぶん知られてきた児童虐待問題。しかし、その広がりや深度は未だ充分とは言えないのが現状です。
もっと多くの人にこの問題について知ってほしい、そして子ども虐待の防止を呼びかけたい。そんな思いが込められたオレンジ色のたすきが、11月8日(日)神奈川県と東京都を駆け抜けます。この「子ども虐待防止オレンジリボンたすきリレー」の発案者でおられる増沢高さんにお話をうかがいました。

 
写真/増沢 高さん

大事なのは“多分野協働”

──「オレンジリボンたすきリレー」が生まれた経緯をお聞かせください。

増沢「2007年に個人的に出場した東京マラソンで、せっかく走るなら虐待防止をアピールしようと思って、オレンジリボンキャンペーンのTシャツに『子どもに明るい未来を』と印刷して着たんです。何万人と走るわけだから、そんなに反応はないだろうと思っていたんですが、意外にも道中いろんな方が温かい声をかけてくださったんです。

推進月間に開かれるシンポジウムなんかですと、既に虐待があることを知っている人たちが集まっている。それはそれで重要ですが、啓発とは言えないんじゃないか?と。この問題を知らない人たちに届けるにはどうしたらいいんだろう?と思っていました。それで、東京マラソンを走り終えたときに思いついたのが、この『たすきリレー』だったんです。オレンジリボンをたすきにして、あの箱根駅伝と同じようにリレーできないかと考えました」

──なぜ「たすきリレー」だったんでしょうか?

増沢「今まで子どもの問題で、これだけの機関や専門家が関わる問題はなかったと思います。虐待問題には、保健から産婦人科から小児科から、病院で言ったら全科ですよね。殴られて失明した、骨折した。眼科や整形外科だって関係してきますから。家庭裁判所を始めとする司法も関係します。それに、警察、学校、保育園、地域の民生委員。全部虐待問題に関連しているんです。つまりこの問題は、全ての分野が手を取り合って初めて前に進むことができる問題なんです。一領域、一機関、一専門家だけではとても前に進みません。

大事なのは“多分野協働”です。学校だけでは見えてこないことも、福祉と繋がれば見えてくることがある。司法の分野でもそう。連携を取っていくと見えてくるし、対応も違ってくる。そこで『たすきリレー』なんですよ。マラソンは個人戦だけど駅伝はチーム戦。ひとつのたすきをみんなでつなぐなんて、輪を重んじる日本人らしい発想ですよね。このチーム戦である『駅伝』と『多分野協働』を結びつけたかったんです」

──「オレンジリボンたすきリレー」は今年で三年目を迎えます。規模も少しずつ大きくなっています。

増沢「今年は日程が湘南国際マラソンとかぶってしまいまして。これは困ったと思ったんですが、『できれば一緒に走らせてもらえないか』とダメ元で事務局の方へ相談に行きました。そうしたら、事務局の方々が目を輝かせて話を聞いてくださって、今回は湘南国際マラソンと一緒に走らせてもらうことになりました。スタート地点にキャンペーン特設ブースも設けさせていただきます。当日は朝7時から一般ランナーにオレンジリボンを配布する予定です。とにかく多くのランナーにリボンをつけてもらいたい。走ることが目的で集まったランナーたちに、虐待について考えるきっかけを持ってもらう。これが本当の意味で、我々の声を届けることにつながるんじゃないかと思っています」

ようやくそこにたどり着いた

──「たすきリレー」をきっかけに虐待問題に対する意識が広がることを願っていらっしゃる。

増沢「第一回、第二回は児童福祉関係の施設が中継地点になっていましたが、今年は湘南国際マラソンへ参加するほか、東京タワーや小学校のグラウンドが中継点に決まりましたし、お寺や病院も中継地点になっています。児童福祉だけじゃない、これがいいと思っているんです。ミックスなんですよ。私は全部児童福祉関係の施設ではダメだと思っています。それでは福祉の枠から出られない。

今回ご協力いただく小学校では、ちょうどその日が町内の運動会なんです。それで、自治会の話し合いの場に参加させていただきました。そうしたらこう言われたんです。『なんでもっと早く話に来てくれなかった?』って。『いくらでも私たちが協力するのに』って。みなさんは自治体会の役員の方たち、本当の意味での地域の人たちなんです。うれしかった、初めてそこにたどりついた気がしました。

当日配る五千個のリボンも、全部そういった方たちがボランティアで作ってくださった。ああ、これが啓発だなと思いました。ようやくそこにたどり着いたなって。一番届きたいところなんですよ、そこが。地域の人たちは前線なわけですから。しかも届いてみたら『待ってたよ』って言ってくださる。今までいかに違う所にいたのかな、という意識もあります。大きな会議をしたり、関係者だけで研修をしたり。だから、たすきリレーをしてよかったですよ。そこに行けた、ということが。今後もなるべく地域へ地域へと行けたらいいなと思っています」

 
写真/「子どもに明るい未来を」と書かれたオレンジのたすき

世界に向けて発信していきたい

──オレンジのたすきには二つのキャッチコピーが印刷されています。

増沢「ひとつは『STOP!子ども虐待』。そしてもうひとつは『子どもに明るい未来を』。こちらはオレンジリボン独自のキャッチコピーでなんですが、これなんですよ!どちらかというとこちらを全面に出したいんです。私は健康で明るいイメージでキャンペーンをやりたいと思っています。それにはやっぱりこちらの方が合いますから」

──岐阜県や山口県でもオレンジリボンたすきリレーが行われるそうですね。

増沢「そうなんです。岐阜県では去年から、今年からは山口県でも行われるそうです。我々の活動を見て、私たちも!と動いてくださったようで本当にうれしいです。他にもいくつか動きがありそうな県や市があります」
※岐阜県(11月15日開催予定)、山口県(11月22日に開催)

──「たすきリレー」の今後のビジョンは?

増沢「やっぱり、各区間ひとりずつでもいいから全国展開したいですね。そして、世界に向けて発信していきたい。『たすきリレー』という文化を。虐待防止に関して日本はまだ輸入なんですよ。発信しているものはまだ何もないと思います。だからこそ、『協働』という心を発信していきたい。
虐待問題に関してアメリカやイギリスは進んでいるけれど、多分野協働のところで足踏みしています。欧米は主張の文化なこともあって、本当に難しいようです。その点、日本人は民族的に輪を重んじる傾向があるので、その気持ちにさえなれればできていくんじゃないかと思うんです。私はこの『駅伝=たすきリレー』に象徴されるような日本人の民族性が、虐待問題を考えて行く上で大きな力になっていくのではないかと思っています」

 「子ども虐待防止オレンジリボンたすきリレー」



■日時:2009年11月8日(日)

■事務局:「子どもの虐待防止オレンジリボンたすきリレー」実行委員会
・子どもの虹 情報研修センター
・NPO法人 虹のリボン事務局
・日本子ども家庭総合研究所

■コース
湘南コース:【スタート】大磯ロングビーチ→【第1中継所】社会福祉法人 茅ヶ崎学園→【第2中継所】遊行寺前→【第3中継所】西横浜国際総合病院→【第4中継所】横浜市立永野小学校→【ゴール】日本丸メモリアルパーク

都心コース:【スタート】東京都児童会館→【第1中継所】日本子ども家庭総合研究所→【第2中継所】東京タワー前→【第3中継所】泉岳寺前→【第4中継所】品川児童相談所→【第5中継所】川崎市役所→【第6中継所】株式会社ナイス→【ゴール】日本丸メモリアルパーク

■ゴール会場:日本メモリアルパーク(横浜)
当日は特設ステージが設置され、終日子ども虐防止の啓発に向けたプログラムが実施される予定です。東京では「東京タワー」が中継地点のひとつとなっています。こちらでもイベントが開催される予定です。

11月8日オレンジリボンたすきリレー報告   Yディレクター


写真提供:NPO法人 虹のリボン事務局

日曜の休日、東京はよく晴れた。  「どこか行きたい!」と叫ぶ4歳の我が子。行楽先に最適と思い、たすきリレーの中継点である東京タワーと、ゴール会場の日本丸メモリアルパーク(横浜)の 両方に出かけた。

しかし、いきなり思い立って出かけてみても、時すでに遅し…。東京タワーのたすき交換は、見届けられなかった。ああ、残念!走者を送った後の特設会場は、青空と東京タワー、心を癒すピアノの弾き語り…、親子連れの憩いの場になっていた。オレンジリボンの由来を書いたパネルに、通りすがりの人が足を止め見入っていた。

とても居心地がよく、しばらく子どもと一緒に、ぼーっとすごした。肝心のリレーは見逃したけど、ここへ来てよかったと思った。これまで、私が取材の中で虐 待という言葉を口にするとき、当然ではあるけれども暗く辛い感情ばかりが伴っていた。しかし青空の下で、ふだんこの問題を意識したことがないかもしれない 人々の目にもふれる形で、明るく虐待防止を訴えたり、子どもの幸せを考えようと呼びかけることもできるんだなあ…という発見があった。

ゴール会場でも、驚きがあった。 数年前に取材でお世話になった川崎市あゆみの会の里親さんと、ばったり出会った。聞けば、お子さんはたすきリレーのランナーとして走っている最中とのことだった。

別のテントには、先日とある研究会で「虐待してしまったお母さん」役を名演しておられた児童相談所の職員さんもおられた。もちろん、リレーインタビューに 応じてくださった、実行委員長の増沢高さんもいらっしゃった。多彩な人々が、オレンジリボンのもとに集っておられる事実、インタビューで増沢さんが言って おられた、"多分野協働"の実践をここで見ることができた気がした。

実際に今年は、湘南マラソン大会との連動や、中継地点となった地元の横浜市立永野小学校など、これまでにない新しい連携もあったという。参加者数も、ランナーがおよそ150名、ボランティア250名にも及んだそうだ。

事務局のひとつである日本子ども家庭総合研究所の研究員有村大士さんは、毎年広がりを見せるたすきリレーに大きな期待を寄せるとともに、11月の虐待防止月間の様々な地域の取り組みどうしが相互につながり、大きなムーブメントになっていくとよいなあと話しておられた。来年は、海外の国際マラソンでランナーにオレンジリボンの たすきを託して、走ってもらおうという話も出ているそうだ。

▼ リンク
「子ども虐待防止オレンジリボンたすきリレー」
http://www.orange-tasuki.org/
(PCサイトのみ)(別ウィンドウ)クリックするとNHKのサイトを離れます。

編集後記
増沢さんは普段、「子どもの虹 情報研修センター」で研修部長をなさっています。ここでは虐待問題などに対応する機関職員のための研修が行われており、増沢さんはいわば虐待問題対応のプロフェッショナル。インタビューは「オレンジリボンたすきリレー」の話に留まらず、親御さんへの支援のあり方から海外の支援事情にまで及びました。その間、増沢さんが一貫しておっしゃっていたのは「多分野恊働」の重要性です。潜在的に恊働の意識が強い(協調性を重んじる)日本人だからこそ、突破できる壁があるのでは?というご意見には、縦割りと言われる行政にメスが入ろうとしている今、「もしかしたら…」という期待を感じました。

ライター カジノリコ


▼増沢 高さんプロフィール
千葉大学大学院教育学研究科教育心理修士課程修了。社会福祉法人横浜いずみ学園副園長を経て、平成14年度より「子どもの虹情報研修センター」勤務。現在、同センター研修部長。共著に「日本の子ども虐待」(福村出版)、「一緒に考える子ども虐待」(赤石書店)など。