

高知県では人口の減少が急速に進んでいます。特に山間部や郡部の「中山間地域」では、農業の担い手がいなくなって田畑が荒れるなどといった問題が深刻化しています。
第4回目は、高知市の「中山間地域」にビジネスを生み出して、将来の定住人口を増やそうと始まった学校を、植田治男記者が取材しました。


ことし1月、高知市北部の山間地、土佐山地区で、ある学校が産声を上げました。
その名も「土佐山アカデミー」。高知市の外郭団体が始めました。1期生は東京などで働く20代から40代の会社員など男女7人。生徒たちは3か月間、土佐山地区で共同生活し、最終的には、地域の活性化策やビジネスモデルを考案することになっています。
生徒は30人の応募者の中から選考され、入学金と受講料、それに家賃を含めたおよそ30万円と3か月間の食費と光熱費を、みずから負担して参加しています。

学校が始まった背景には、高知県を襲う急速な人口減少があります。
国勢調査によると、県の人口は、昭和60年から減り続けていて、平成22年の時点で、およそ76万4000人(平成22年時点)。国の研究機関の試算では、23年後には59万6000人にまで減少するといわれています。特に減少が顕著なのが、山間部や、郡部などの「中山間地域」です。こうした地域では、農業の担い手不足による田畑の荒廃、地域社会の崩壊などが起きています。
高知市から車でおよそ30分の「土佐山地区」も、この「中山間地域」です。最盛期に3800人だった地区の人口は、現在1050人(平成24年1月時点)。このままでは、36年後には地区に住む人は、いなくなると言われています。


一方で、土佐山地区には、標高1100メートルの山から流れ出るきれいな水や、豊かな山林、それに地区をあげて取り組んできた有機栽培のしょうがなど、ほかの地域に誇れるものも多数あります。これらを外部の力を活用して、ビジネスにつなげるのが、「土佐山アカデミー」の狙いです。「土佐山アカデミー」では、基本的に土日をのぞく週5日、授業が行われています。講師は地元の人たち、教室は土佐山地区全体です。授業では、生徒が、地元の有機農家や企業を訪問し、ビジネスモデルを考案するヒントを探します。
高知大学の教授やNPO法人の代表などから、地域の生態系やビジネスの立ち上げ方などを学ぶ授業もあります。学校は始まったばかりですが、高知市は中山間地域を再生させるモデル事業として、全国に広げていきたいとしています。

取材で、人口拡大のために、土佐山地区の中心部に建設されたものの、利用者の低迷で、閉鎖されていた温泉療養施設に足を運んだ。今や訪れる人もなく、ひっそりと立つ廃墟となっていた。農家の高齢化や農業の担い手不足など、土佐山地区が直面している問題は、日本の多くの地域が抱える共通の問題でもある。過疎地域にどうやって人を呼び込むのか。その答えの一つは、「雇用」だと思う。「雇用」がなければ、定住人口は増えないからだ。
その点、「土佐山アカデミー」は、全国で数多く行われている単なる移住体験とは異なり、他の地域から訪れた生徒(参加者)に対し、「地域資源」を活用した「ビジネスモデル」の提供を求めているところが、大変、興味深い。組織を変えるのは「よそ者」だと言われる。東京などで暮らす20代から40代の社会人が、高知市の中山間地域「土佐山地区」で考え出すビジネスプランや活性化策は、中山間地域の再生につながるものになるのか。
今後も、取材を続けていきたい。
