ページの本文へ

こうちWEB特集

  1. NHK高知
  2. こうちWEB特集
  3. 岐路に立つ“おまちの屋台”

岐路に立つ“おまちの屋台”

  • 2024年04月23日

 

高知市中心部の市道で営業され人気を集めてきた「おまちの屋台」。この春、その姿が高知の夜から消えた。長年続いた屋台文化に何が起きたのか。
(高知放送局記者 中川聖太)

高知に根づいた“屋台文化”

長年、市民や観光客の人気を集め、文化として根づいてきたのが「おまちの屋台」。

高知市の「おまちの屋台」は昭和30年代に中央公園の周辺に出てきたと言われ、徐々に場所を北に移し、昭和後期にその数は一気に増え、今の廿代町のグリーンロードを中心に並ぶようになった。

3月26日、高知市廿代町の屋台を取材したところ、午後8時の開店とともに人が流れ込み、20分たらずで店内は満席に。酔客らがにぎやかに卓を囲んだ。

大阪から訪れた男性

(大阪から訪れた男性)
なかなか大阪では食べられない味ですね

(高知県内在住の男性)
いろんな人の雰囲気を感じながら食べられる、飲めるのは屋台のいいところかなって思いますね。

岐路に立つ屋台

しかし、市道を利用したこうした屋台は、道路法や道路交通法に定められた許可が無いまま営業されてきた。観光資源として定着していることから高知市も黙認し、持ちつ持たれつの関係だった。

ところが、この「おまちの屋台」に待ったがかかったのが5年前。騒音やにおいから住民が指導を求める要望書を市に提出された。

市は、代わりの場所を確保できないか検討したものの、グリーンロード南側の市有地も近隣事業者の同意が得られなかった。そして2023年、高知市は「移転は難しい」と結論づけ、2024年3月末までに市道での営業をやめるよう、対象の10店舗の屋台に通達する事態となった。

今回取材した屋台「松ちゃん」も対象の1つになった。40年以上営業していて、名物の薄皮のギョーザなどが市民や観光客に愛されてきた屋台だ。

 

過去には小泉元総理大臣やプロ野球の松坂大輔さんも訪れた人気店だが、屋台の営業をやめることを決め、近くの空き店舗へ移転することになった。

「松ちゃん」の正木店長

(「松ちゃん」の正木直之店長)
ここの場所に居座ってもやがては撤去されることですから。やっぱりもう行政には従わないといかん。お客さんには違った形で来てもらうような感じになっていますが、まあ、風情がよかったんですけどね。

屋台が路上での営業をやめることについて利用客からは惜しむ声が聞かれた。

(高知県内在住の男性)
1つの文化みたいなものがなくなっていく、さみしいかな。

(高知県内在住の男性)
さみしいです、なくなるというのはね。でも、これも世の中の情勢の流れもあるし。

桑名市長「違法な状態は解消しないと」

高知市は対象の10店舗と交渉し、市道での営業をやめる合意書の締結を進めてきた。

2024年4月12日時点で対象の10店舗のうち、7店舗が市道での営業をやめる合意書を提出、2店舗とは口頭で同意したほか、1店舗はすでに廃業したという。 

(桑名市長)。
本当に屋台文化というのは残していきたいんですけれども、そこには法律というものがございますので、違法な状態でっていうのはこれは解消していかないといけない。残られている方たちにもですね、民有地で移るところがあればご紹介もしたいと思いますし、またどこかお店が空いていればそこに移っていただくといった応援をさせていただきたいと思います。

時代の変遷で消えた「おまちの屋台」。高知の夜の風景が変わろうとしている。

  • 中川聖太

    高知放送局 記者

    中川聖太

    2023年夏から高知局で
    経済や高知市政を担当。出身の富山県には屋台文化はありませんでした。

ページトップに戻る