川の歴史や特性を知ることが、いざというときの備えにつながります。
物部川 (2021年掲載)

高知県中部を流れる物部川。流域には農地や住宅地が広がりますが、洪水を繰り返してきました。平成30年の西日本豪雨では記録的な大雨で川の水位が急上昇し、あわや大惨事に。

想定される最大規模の雨が降った場合の浸水エリアを示した地図です。下流では空港も含めて広い範囲が3メートル以上水につかります。
全国有数の急流河川
かつては洪水のたびに流れを変えていた暴れ川。
江戸時代には堤防が築かれ現在に近い形になりました。

また流域は急しゅんな地形でおよそ90パーセントが山地。
物部川は2000メートル近い標高を短い距離で下る全国有数の急流河川なのです。
このため水の流れも早く、堤防などに与えるダメージも大きいと言います。
- その他
- 国土交通省高知河川国道事務所 多田直人所長
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「(河口から)8キロも行かないところで、こんなに大きな石がある川は、そんなにはないですよ。ああいうのが水の流れに乗ってきているから、洪水でボコボコあたるとそれは危ないですよね」。
ポイント①永瀬ダムの放流量に注目

多田所長はその1つに上流の永瀬ダムの放流量を見てほしいと話しています。
ダムから放流された水が下流の深渕水位観測所に到達するまでおよそ1時間。
急流のため水位が上昇するまでわずかな時間しかありません。
- その他
- 国土交通省高知河川国道事務所 多田直人所長
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「2000トン前後になると物部川の水がかなり高く上がってくる。その増えていく途中でこれはちょっと危ないのではないかという気になったら逃げなければいけない」。
ポイント②ダムの上流の雨の降り方に注意

さらにダムの上流域の雨の降り方にも注意が必要です。
年間およそ3000ミリの雨が降る豪雨地帯。
過去の洪水を分析すると上流の山地で降った雨がダムに入るまで4時間程度かかることが分かりました。
雨の降り方にもよりますが、上流の雨による川の水位の変化は最短で5時間程度で表れることになります。
- その他
- 国土交通省高知河川国道事務所 多田直人所長
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「雨のピークから水位のピークは過去は5時間くらいしかないんです。河口付近の人が住んでいるところまで上流の流域雨量が(12時間で)150ミリから200ミリ降った時点で、過去では5、6時間後にそれくらいの雨が降ったら下流で水位がかなり上がっていると」。
アプリなどで確認を

永瀬ダムの放流量や流域の雨の降り方は県の防災アプリなどで見ることができます。
こまめに情報を確認して川の変化に注意することが大切です。
そのうえで水害リスクを知るためにも川と人の関わりの歴史に関心を持つことが大切だと多田所長は話しています。