第17回「@東洋町」(2020年9月11日放送)
高知県東部の東洋町は、徳島との県境にあり、太平洋に面しています。今回の「中道この道逃げる道」は、県内外からサーファーが訪れる国内有数の人気スポット、生見海岸(いくみ)からスタートします。
水深が深いほど、津波は早く到達
- 中道アナ
- 高知県の最も東に位置する、東洋町に来ました。サーフィンをしている方がいらっしゃいます。ここで南海トラフ巨大地震が起きたら、どういったことが起きると想定されますか。
- 岡村さん
- 津波は、生見海岸から100キロぐらい南で発生しますが、海岸の近くまで、1000メートルクラスの深い谷が迫っています。津波は、その谷を通って入ってくるので、非常に早く到達するのが特徴です。
海上に向かって、津波をどう知らせる?
訪れたサーファーに話を聞いてみると、危険が迫っていることを確実に感じられるのか、不安の声が聞かれました。
- 中道アナ
- 地震が発生すると、サーフィンをしている時、何が起きると思いますか。
- サーファー
- 最初に想像つくのは、津波ですね。
- 岡村さん
- サーフィンをしている時、地震の揺れは、地上にいる時よりも感じにくいです。ただ、丘の方では大騒ぎしているから、手を振ったり、いろんなことをやってくれていると思います。
- サーファー
- 手を振られていても、自分に振られているとは、思わないかもしれないですね。他人事だと思ってしまうかも。
海にいる人たちに危険を知らせる「旗の普及」が始まっています。それが「津波フラッグ」です。
紅白の格子柄が特徴です。ことし(2020年)夏、気象庁などが、全国的に普及の取り組みを始めました。
- 中道アナ
- 陸上にいる人たちにも危険が迫っているので。ずっと振れるわけではないですね。
- 岡村さん
- 振れる時間は3分とか、最大でも5分程度でしょうね。この旗が振られた時は、緊迫した状況だと思います。
「津波フラッグ」は、聴覚に障害のある人たちが海を訪れた際にも、避難を呼びかける手段として期待されています。
- 岡村さん
- 子どもたちを引率して海に来る時にも、旗を持参していただいて、自分たちだけではなく、周りにも危険性を知らせていただくことはすごく大事なことだと思います。
川を渡るためにも、素早い避難を
東洋町周辺は、およそ300年前の土佐藩の古文書「谷陵記」には、津波による甚大な被害が記されています。
- 岡村さん
- 現在の東洋町の、甲浦(かんのうら)や白浜(しらはま)は、亡所。消えてしまったと書いてあります。次の南海トラフ巨大地震がどういうレベルになるのか、全くわかりません。最悪の想定をしていただきたいと思います。
被害が出る理由は、町の全体を見ると分かります。
白浜海岸に隣接する、津波避難タワーに上ってみました。
岡村さんは、この土地ならではの地形に注目しました。白浜海岸の周辺は、川に挟まれた地域です。津波の危険性は特に高いと指摘します。
- 岡村さん
- 町を取り囲むように、川があります。歴史的にも、津波は川をつたって、両サイドから襲っています。家から安全に外へ出て、近くの山に行っていただくのが一番ですが、間に合わず逃げられないという時は、このタワーを次善の策として使っていただきたいです。
海岸から、甲浦(かんのうら)小学校に向かいました。町が避難場所に指定しています。
避難する際には、川を渡らなければなりません。
小学校までは、歩いてわずか数分。避難を始める時間が、命を守るためのカギになります。
- 中道アナ
- この高さであれば、想定ですけれども、1波目は・・・
- 岡村さん
- ほとんどクリアできます。上へ行けば行くほど、命を守るレベルが上がっていきます。
避難場所、日ごろから確認
避難路を歩いた後、小学校の周りを歩いてみました。
- 中道アナ
- 「緊急避難所」と、窓に大きく書かれていますね。こうやって書いてあれば、地元の人たちは「ここに逃げればいいんだ」とわかりますね。
体育館の窓には、大きく「緊急避難所」の文字があり、柱には海抜も表示されていました。
津波の高さを日ごろからイメージできるようにもなっています。
- 岡村さん
- こういうことが書いてあると、いつも住民に、まずここに来ればいいんだという意識付けが、日頃からできます。
きょうのポイント
最後に、今回のポイントを伺いました。
- 岡村さん
- 東洋町でみなさんが住んでいる場所は、多くが海抜の低いところです。津波を待ち受けているような町づくりになっています。しかし、幸いにも住宅地からかなり近いところにも山があります。そこまで逃げるのが難しければ、避難タワーがあります。それを最大限活用して、この難局を乗り切りたいですよね。
- 中道アナ 編集後記
- 取材で話を聞いたサーファーたちや、町の人たちからは、「海で地震の発生に気付けるか」、「防災無線からサイレンが鳴っても聞こえるかどうかわからない」などという声がありました。ビーチに訪れた人たちも自らの命を守るためには、事前に避難路などを確認しておくことが大切だと思いました。一方、自治体や事業者にも不断の努力が求められます。万が一に備え、例えば「津波フラッグ」の準備も重要です。地元の人だけでなく、その土地を訪れる人の心配や不安に寄り添って対策を考え、備えておく必要性を感じました。