2022年11月07日 (月)"国生み神話の島" ひとめぐり ~南あわじ市・沼島~
「沼島」って、あの淡路島の南の?
山、ありましたっけ??
そんな声が聞こえてきそうですね。
実は私もそうでした。
といいますのも…
後々訪ねることになるとは全く思わずに、
沼島を撮影していました。
灘黒岩水仙郷からも。
緑に覆われてはいても、
「山」という感じはそこまで強くありませんよね。
実際、国土地理院の地形図を調べてみても、
最高点は標高120mそこそこです。
ロケに出ること自体、
6月放送の「鎌倉峡・百丈岩」以来でもあり、
ブランクを埋めるのにちょうどいいかな?
くらいに思っていたのです。
沼島へは、南あわじ市の土生(はぶ)港との間に
1日10往復の船便があります。
というわけで、まずは10分ほどの船旅です!
これまでにないパターンで、なんだか遠足気分。
さて、沼島というと有名なのは…
「国生み神話」の舞台、鱧(ハモ)やアジ、
そして地学好きの方には、
「ブラタモリ #185」でも登場した、
「1億年前の地球のしわ」ともいわれる
さや型褶曲(しゅうきょく)でしょうか。
その「さや型しゅう曲」が現れた貴重な岩石!
沼島汽船のターミナル内で見られます。
お寺や神社も数多くあるようで、
「国生み神話」のみならず数々の歴史に彩られた島です。
そんな沼島の周遊路を時計回りにほぼ一周します。
スタート後にもう少し北上してから
東~南へと回り込むルートもあるのですが、
今回は少しショートカットしています。
その分岐点には、木の根元に隠れるように
「沼島灯台まで1.5㎞」の表示がありました。
そちらに向かうと…
いかがでしょう?
海からそんなに離れていないのに、
もう雰囲気は普段通りの「山歩道」ですね。
いや、それどころか、
しばらく山に足が向いていなかった分、
脚がなまっていることを早々と痛感させられる始末。
「山は標高だけじゃない!」
頭の中はこの言葉でいっぱいになり、
去年5月放送の「加西アルプス」を思い出しました。
そういえば、あの時もご案内は羽田さんでしたねぇ…
そんな道沿いに並ぶ「沼島八十八カ所霊場」の石仏。
戦争や疫病で亡くなった方々を慰霊するため、
明治時代に建てられたそうです。
こちらは「十二番 焼山寺」、
こちらは「十六番 観音寺」。
四国八十八か所と同じ番号と寺院名です。
よく山で見かける「丁石(ちょうせき)」、
つまり頂上の社寺からの距離標は約109mごとですが、
それより明らかに間隔が狭く、次々に現れます。
島一番の標高125m、「石仏山(いしぼとけやま)」。
その山頂に建つ沼島灯台は木々の中でした。
唐突に道沿いに現れた鳥居群!
深い薮の中、倒れたり傾いたりしながら続きます。
人が通った気配もあまりないのですが、通れそう。
たくさん張っているクモの巣を払いながら進むと…
ひそやかに、そして厳かに! という印象で、
その姿が視界に入った時は思わず声が漏れました。
「山ノ大神社(やまのおおじんじゃ)」です。
手の込んだ装飾は漁業の島ならでは。
草が茂る境内には、「昭和五十六年正月」と刻まれた
再建記念碑がありました。
あとで地元の方に聞いたところ
今でも年に一度、餅まきの行事があるそうです。
ここまでは「オーシャンビュー」も意外に少なく、
島にいるという感覚はきわめて希薄。
すっかり「いつもの山歩道」の気分でしたが…
恐らく、島いちばんの人気スポット? であろう、
「上立神岩(かみたてがみいわ)」。
ここまでズドンと一気に下りていく道中で、
島を歩いていることをようやく意識しました。
観光パンフレットによると高さはおよそ30m。
「国生み神話」に登場する「天沼矛(あめのぬぼこ)」、
あるいは「天御柱(あめのみはしら)」のモデルといわれ、
イザナギ・イザナミ二神ゆかりの地とされます。
そのうえ、中央のくぼみがハート形なのも相まって、
恋愛成就のパワースポットとして人気上昇中なのだとか!?
確かに、ロケのときにも、
ここには老若男女、何組もの方々が来ていました。
なお、この「上立神岩」までは、
島の市街地からほぼ直線の道があるので
船着場からでも徒歩20分程で着けるそうです。
私たちのように山道をはるばる歩かなくても
到着できますので、どうぞご安心を!!
時間の関係で番組ではお伝えできませんでしたが、
コース後半、この道標から坂を登り、
最後の激烈な笹やぶをかき分けた先に…
標高117.1mの三等三角点と、
「三角」つながりなのか、
八十八カ所霊場の「第六十五番・三角寺」。
(クモが写っていますので拡大注意です!)
そして…
「『ロボット測風機』建設記念碑」を見つけました!
石碑だけで、それらしい痕跡すらなかったようですが。
ただ、その代償といいましょうか…
クルー全員、チクチクした植物のタネ、
いわゆる「ひっつき虫」のたぐいが山ほどつきました。
夏場などは虫も多いと思われますので、
この薮漕ぎ、けっしてお勧めはいたしません!
最終盤も、ほぼ普段の「山歩道」の雰囲気。
木々の間から徐々に里の風景がのぞくようになり、
「下山口近し」を感じ始めるころ…
見えてきたのは「忠魂碑」。
「おのころ神社」の境内に入りました。
2002年の改修時に建てられたという、
イザナギ・イザナミ二神の像です。
「国生み神話」によると、
「天の沼矛」でかき混ぜた潮が
矛の先から滴り落ち…
「自(おの)ずと=ひとりでに」
「凝(こ)る=集まって固まる」ことでできた、
“はじまりの島”が「おのごろ島(=おのころ島)」。
その場所がいったいどこなのかは諸説あり、
あくまで沼島もそのひとつなのだそうです。
ただ、この地に立ってみると、
神話の伝承を大切に守ってきた
地元の方々の思いがおのずと伝わってきました。
島をあちこち見てきたあとだからこそ、
より強く感じられたのかもしれません。
そう考えると、一般的なルートの逆を行ったのは
とてもよかったと思っています。
今回のゴール、沼島八幡神社。
手水鉢には… おや? 上立神岩!
ハートのくぼみもありますよ!
古くは昭和四年奉納と記された絵馬や、
天井の「逆羅針盤」を見学しているうち…
日はすっかり傾き、海も茜色に染まりつつありました。
なお、山門のむこうに構造物とクレーンが見えますが、
これは南海トラフ地震に伴う津波に備えて建設中の
「港口水門」だそうです。
これを見た時はさすがに気持ちが引き締まりましたが…。
その後、夕暮れの空にお寺の鐘の音が響きわたり、
心穏やかに一日を締めくくることができたのでした。
沼島、えぇトコでした!(あれ? 番組が違う?)
さて、今年度の「山歩道」は兵庫五国の全てを回る算段。
ここまで摂津、但馬、淡路と来ましたので、
残すは播磨と丹波となります。
次回はどちらになりますか!? どうぞお楽しみに。
投稿者:田中 崇裕 | 投稿時間:18:30