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北九州ラヴァーズ#33 N響特別コンサートマスター/篠崎史紀さん

原点は”おせっかい”
  • 2024年04月16日

 

N響の顔 篠崎“まろ”史紀さん

バイオリニストでNHK交響楽団“N響”の顔としても知られる篠崎史紀さん、愛称“まろ”さん。N響のコンサートマスターを1997年から26年間務め、2023年から特別コンサートマスターとして活躍しています。北九州市出身の篠崎さんに、ふるさとや子どもたちへの思いについて聞きました。

おちゃめなN響の顔

オーケストラのコンサートマスターは指揮者の意図をくみ取って、より具体的な指示を団員に出す重要なまとめ役で、高い演奏技術も求められます。そんな重責を担う篠崎さんにお会いすると、おちゃめな素顔をみせてくれました。バイオリンケースを開けると、子どものころから好きでたまらないというキャラクターのグッズの数々。その日かけていた赤いメガネのわけも教えてくれました。

好きなものがいっぱい!

バイオリンケースの中には、僕の好きなもの。ゴジラとスターウォーズとウルトラセブン。メガネは普通のメガネなんだけど、赤いでしょ?ウルトラセブンのシュワッチってやるのに似てるじゃない?子どものころはウルトラセブンや仮面ライダーになるのが夢だった。

シュワッチ!

原点は”おせっかいな町”北九州

1963年1月、北九州市が5市合併で誕生する直前に小倉で生まれた篠崎さん。3歳でバイオリンを始め、高校卒業後にウィーンに渡りました。ヨーロッパで、人種や宗教が違う人たちと音楽に向き合う日々。北九州で子どものころからさまざまな大人と触れ合っていた経験から、誰ともでも仲良くなることができたといいます。

用もないのに声かけるのが多かったのがこの町よね。朝は「おはよう」、帰りがけは「今帰るのか」って。お菓子をくれたり、果物をくれて「食べていけ」とか言われるし。黄金(こがね)市場にもよく来てたんだけど、お総菜屋さんの前を通るとお総菜くれたり、ソーセージももらった。市場を一周するとおなかいっぱいになってね。おせっかいよね、今考えると。

いろんな大人に“おせっかい”された

北九州は人と人との接点がすごく多い町で、いろんな大人がいた。そのいろんな大人っていうのがすごく大事で、立派な人もいたり道ばたで寝ている人もいたりいろんな面を全部見ることができたのがラッキーだった。僕にとって北九州は多様性があるすてきな場所。これが自分が大人になっていろんなものをいろんな角度から考えたり感じたりすることができる原点だったのかなって。

音楽の前ではみんな平等

東京に住む今も、年に3回以上は北九州に帰ってくるという篠崎さん。アマチュアオーケストラの北九州交響楽団の活動にも協力しています。定期演奏会に指揮者として参加したり、弦楽器の団員にプロのノウハウを教えたり。篠崎さん自身も中学1年から高校3年までの6年間、北九州交響楽団に在籍していました。年齢も職業もさまざまな団員が集まるこの楽団で得たものは大きかったと言います。

北九州交響楽団にレッスン

子どものころ、ジュニアオーケストラがなくてここのオーケストラは子どもだった僕を迎え入れてくれて「音楽は勉強するものじゃなくて楽しむものだ」っていうのを教えてくれた。お医者さんでも弁護士でも学校の先生でも子どもでも、同じものを同じように感じて一緒に奏でることができる。音楽によって人はつながっていくっていうのを教わったし、音楽によって人は平等であるってことを教わった。音楽の原点を教えてくれた場所。

子どもたちに“おせっかい”を

篠崎さんは2007年から、あるセミナーをピアニストと一緒に行っています。参加するのはピアノ教室に通う子どもたち。ひとりで完結してしまう楽器のピアノを篠崎さんのバイオリンと合わせて演奏することで、子どもたちに合奏する楽しさを知ってもらい、新しいアイディアや発想を持ってもらうのが狙いです。

一番大事なのは発想、発想すると自分がこうしたいとか、こうありたいとか、それが好奇心になるわけ。そしてそこから先に出てくるのが憧れ。好奇心と憧れがあるから前に進もうとする。自分で進んで習得したものは絶対に忘れないし、忘れなければ上達する、上達すれば次の好奇心がわく。だからそれを感じ取れるものを教えていかなきゃいけない。

「おんがくはまほう」

篠崎さん初めての絵本

篠崎さんは4月、初めての絵本「おんがくはまほう」を出版しました。ひとりぼっちの猫「マロ」が音楽を通じて友だちの輪を広げていくストーリーです。「音楽をやっていると世界中に友だちができる」。18歳で単身ヨーロッパに渡った篠崎さんの経験が基になっています。篠崎さんは大人が子どもに読み聞かせしてほしいという思いを込めて、絵本の文字をあえて小さくしたと言います。

大人と子どもで一緒に読んで「音楽をやっていると世界中に友だちができるよ」「一緒にやってみたらどうかな」って。字は大人が読んであげて、絵は直感で感じてほしい。子どもは「これなあに?なんて読むの?」って聞いてくるよね。これを一緒にしゃべってほしい。それをやることで子どもたちは次の発想をしようとするのよ。子どもはほったらかしちゃだめ、大人たちがおせっかいでも一緒に過ごしてあげないとだめ。

”夢があるから人生は輝く”

篠崎さんにはずっと大切にしている言葉があります。モーツァルトの「夢があるから人生は輝く」という言葉です。今回の取材でも、夢を持つことの大切さを繰り返し、自身のいまの夢についても語ってくれました。

子どもたちが夢を見るような場所を作りたい。子どもが夢を見ればまた次の人が夢を見る。大人が現実的になれば、子どもも現実的になる。夢を与えられる場所を作ることが今の僕の夢かもしれない。

  • 増本治子

    北九州局 映像制作

    増本治子

    平成16年入局
    ピアノ、トロンボーン、パーカッション、バイオリンと経験しましたが今はもっぱら聴く専門です。 

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