【特集】危険な高齢者の転倒 原因や予防・対策、関連する病気について

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【特集】危険な高齢者の転倒 原因や予防・対策、関連する病気について

転倒の原因は加齢によるものが多く、病気や薬の影響、運動不足による身体機能の低下などが考えられます。高齢者の転倒は介護が必要な状態になる大きな要因にもなります。転倒予防には筋力の維持が大切。効果的な筋トレについても合わせて紹介します。

転倒の原因

サルコペニア

サルコペニアとは

加齢とともに筋肉が減っていくのは自然な現象ですが、筋肉量の減少が急激で病気ととらえて対処すべき状態を「サルコペニア」といいます。
サルコペニアは65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると急に増えてきます。しかし、65歳以下の人でも、デスクワークや自動車に頼る生活習慣などによって、筋肉が著しく減っている場合があります。若い人の中にもサルコペニア予備群がいるので、注意が必要です。

サルコペニアになると、さまざまな影響が起こってきます。歩く速度が低下し、着替えや入浴など日常生活の動作も行いづらくなります。体のバランス機能が悪くなり、転倒・骨折の危険性が高くなります。

サルコペニアについて詳しくはこちら

サルコペニアのセルフチェック

サルコペニアの自己チェック

サルコペニアは自分でチェックすることもできます。「歩くのが遅くなった(横断歩道を渡りきれない)」「手すりにつかまらないと階段を上がれない」「ペットボトルのキャップを開けにくくなった」といった場合はサルコペニアが疑われます。

また、サルコペニアである可能性を知る方法として、ふくらはぎの筋肉の太さをチェックする「指輪っかテスト」があります。

指輪っかテスト

輪っかテストの方法は、いすに座り、両足を床につけ前かがみになります。利き足でないほうのふくらはぎの一番太いところを、両手の親指と人さし指で囲みます。

指先どうしがつかず、ふくらはぎを囲めない場合、サルコペ二アである可能性はほとんどないと考えられます。指輪っかテストで隙間ができる場合、全身の筋肉量の減少が考えられます。

サルコペニアのセルフチェックと診断について詳しくはこちら

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは、骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって転倒・骨折しやすくなることです。介護が必要な状態や寝たきりにつながりやすくなります。

ロコモティブシンドロームの原因は、長年の生活習慣ややせすぎ、肥満などです。エレベーターやエスカレーター、自動車ばかり使う生活を続けていると、筋肉や骨が衰えます。また、やせすぎると骨が弱くなり、筋肉量が減ります。肥満はひざ関節にダメージを与えるため、腰痛やひざの痛みを起こしやすくします。

ロコモティブシンドロームを確認するための「ロコモ度」テストのひとつに、歩行能力を総合的にチェックする方法があります。
ロコモ度をチェックし、機能の能力などの低下が認められた場合は、筋肉や骨の強化のために運動を少しずつ習慣化し、食事ではたんぱく質やカルシウムなど、筋肉や骨を強くする栄養素を積極的にとるように心がけてください。

「ロコモティブシンドロームの原因やロコモ度テスト」について詳しくはこちら

圧迫骨折

圧迫骨折は背骨がつぶれたように折れてしまうことです。
圧迫骨折の主な原因は骨粗しょう症です。骨の強度が低下し骨がもろくなって、転んで尻餅をつくなど、背骨に衝撃が加わると圧迫骨折が起き、背骨がつぶれてしまいます。
圧迫骨折は、痛みなどの症状が現れることがほとんどないため、骨折していることに気付きにくく、次の圧迫骨折が起こる確率が高くなります。複数の場所に拡大してしまうと、背が縮む・背中が曲がるなどの症状があらわれます。また、背筋が伸ばせなくなるため、バランスが悪くなり転倒しやすくなります。そして、寝たきりにつながってしまうことも多いのです。

圧迫骨折で寝たきりにならないために、「圧迫骨折」に早く気付き、適切な治療を受けることが大切です。早く気付くために次のようなチェックがあります。

壁を背にして立ち、かかと、尻、背中を壁につけ、顔は正面を向く。後頭部が壁につくかどうかをチェックする。
後頭部に壁がつかない場合は、圧迫骨折があるかもしれない。かかりつけ医に相談することがすすめられる。

圧迫骨折について詳しくはこちら

薬の副作用

高齢者に多い薬の副作用

高齢者に多い薬の副作用には「ふらつき・転倒」などがあります。「ふらつき・転倒」は、骨折して寝たきりになることも少なくありません。

高齢者に副作用が増える理由は、服用する薬の数が多いことや、肝臓や腎臓の働きが低下するため、薬の代謝分解が遅れて効き目が必要以上に長引いたり、薬の排泄が遅れて薬が体内に長く残り、薬が効き過ぎてしまうためです。

転倒などの副作用を避けるためには、「多すぎる薬は減らす」が鉄則です。

薬を減らすポイントについてはこちら

高齢者には副作用が強く出やすいため控えたい薬が数多くあります。そのリストが『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』(日本老年医学会などが作成)という医師むけの冊子に公表されています。
不眠症の薬としてよく使われるベンゾジアゼピン系睡眠薬は、のんだあとや夜中に目覚めてトイレに行く時などにふらついて転倒しやすい薬です。また、高血圧の薬の非選択的α1遮断薬ループ利尿薬立ちくらみ・転倒の副作用があります。

薬の使用に関しては、自己判断で中止せずに、必ず医師・薬剤師に相談してください。薬の情報をよく知って積極的に相談すれば、より詳しいアドバイスが得られるでしょう。

高齢者が注意すべき薬について詳しくはこちら



転倒予防

筋トレ

筋肉量が20代をピークに減少し始めることを表すグラフ

特にトレーニングなどを行っていなければ、筋肉は20代をピークに減少し始め、70代では20代の頃にくらべて筋肉量は半分近くまで減ってしまいます。筋肉量が減少すると、脚が上げづらくなり、低い段差などにつまづいて転倒しやすくなります。下半身を中心に筋肉を鍛えて、転倒を予防することが、健康寿命を延ばすことにつながります。

下半身筋トレ ~強い足腰で元気に歩く 転ばないために~

※転倒に注意し、安定した机やいすを使って行ってください。

いすから大股1歩分離れた位置にまっすぐ立つ

①いすから大股1歩分離れた位置にまっすぐ立つ。
②両足を肩幅程度に開く。

片方の足を大きく前に踏み出し、ひざが地面につく直前くらいまでしゃがむ

③片方の足を大きく前に踏み出して、いすか机に両手を添える。
④後ろ側の足のひざが地面につく直前くらいまで深くしゃがみこむ。

足を替えずに、同じ動きを左右それぞれ10~15回ずつ繰り返します。

ポイントは、ひざはつま先より前に出ないようにする

【ポイント】
ひざはつま先より前に出ないようにする

⑤力強く地面を蹴って元の姿勢に戻る。
⑥戻るときは、腕の力でいすを押さずに足の力を使う。

【ポイント】
踏み込んだ足だけでなく、後ろ側の足の力も使って戻す

その他の中高年のための筋力にあわせた筋トレはこちら

太極拳

太極拳の動きには「あらゆる関節が同時に動き続けている」という特徴があり、頭・腕・足など、体のそれぞれが、常にとどまることなく、同時に動き続けています。さらに、こうした複雑な動きの中でも、体が地面にかけている「圧力の中心」が、常に両足の間付近にとどまり、安定が保たれています。こうして培われるバランス能力が、転倒を予防するカギになるとされています。

自宅でカンタン!太極拳で転倒予防の動画はこちら

ウォーキング

歩行など日常生活における身体活動は、転倒を予防し、寝たきりや死亡を減少させる効果があります。
身体活動を増加する方法として、ウォーキングがあります。
運動というと、スポーツジムに通ったり、ウォーキングを行ったりする人も多いですが、長く続かず、効果を実感できないまま途中であきらめてしまうことも少なくありません。

そこで、高齢者でも「無理なく」、さらに「お金もかからず」「効率的に」実践することができる「インターバル速歩」をおすすめします。

インターバル速歩の最大の特徴は「ゆっくり歩き」と「はや歩き」を交互に行うことです。はや歩きの目安は全速力の6~7割程度、3分ほど早足で歩いたときに息が弾む程度のペースで、「ゆっくり歩き」を挟んでリラックスすることが大切です。
「はや歩き」3分間、「ゆっくり歩き」3分間、合計6分間を1セットとして1日5セット以上、これを週4日以上行うと効果的です。

「インターバル速歩」その効果と正しいやり方についてはこちら

腰やひざなどに痛みのある人、肥満のある人などは、比較的楽に体を動かすことができる「水中ウォーキング」をおすすめします。
水中ウォーキングは、運動中の心臓への負担が軽減され、効率的なトレーニングができ、転倒予防などの期待が見込めます。
ただし、「心臓に疾患がある」「日頃から強い頭痛がある」人は医師に相談の上、行うようにしましょう。

【動画解説】運動不足解消!水中ウォーキングの効果的なメニューとやり方についてはこちら



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